2019年11月05日

【異端者たちが時代をつくる−諦めばかりの現代社会を変えた6つの勇気の物語−】松井 清人 読書日記1090



《目次》
プロローグ 地下鉄の惨劇
第1章 「オウムの狂気」に挑んだ六年
第2章 「がん治療革命」の先導者
第3章 「パイオニア」の意地と誇り
第4章 「宗教マフィア」への宣戦布告
第5章 「実名報道」陰の立役者
第6章 「少年A」の両親との二十二年
エピローグ 神戸の点と線

 サブタイトルを含め、興味を惹かれたのは、何より時代を切り開くパイオニアに対する畏敬の念があるからである。どんな異端者が採り上げられているのかと思ったが、6人のうち4人がジャーナリスト。著者が元文藝春秋社社長で、週刊文春の編集長も歴任したと言う経歴では仕方ないのかもしれないが、なんとなく最初のイメージとは異なるものである。

 最初に採り上げられるのは、ジャーナリストの江川紹子。その名を聞けばすぐに「オウム真理教」が脳裏に浮かぶ。執念を持ってオウムを追いかけた人であることはよく知っている。そのすべては坂本弁護士一家殺害事件から始まったと言う。坂本事件を執念で追いかける。一方、世間ではまだその実態を知らず、テレビ局やタレントは麻原彰晃らをもてはやし、一部の宗教学者らは麻原を宗教的に優れていると評価していた。実は江川紹子氏自身、オウムに毒ガスのホスゲンを郵便受けから部屋に撒かれたりもしたと言う。知られざる事実が興味深い。

 2人目は慶應病院のがん専門医の近藤誠医師。アメリカに留学し、乳がんの乳房温存療法を世に知らしめたのだという。それまでは切除が当たり前であったが、近藤医師の尽力により、温存療法を選ぶ患者は全国で6割を超えるまでになったという。乳がんは切るものという常識で生きていた医者仲間からは反発を受け、慶應大学病院では出世街道からも外れてしまったらしい。癌で亡くなった逸見政孝さんの手術に対しては、執刀した「神の手」と呼ばれる名医を向こうに回し、堂々と異議を述べている。つくづく、医者は選ばないといけないと思わされる。

 3人目は野茂英雄。今やメジヤーリーグの開拓者の第一人者である。冒頭で江夏との「テレビ電話」対談が紹介されているが、興味深いのはこのやり取りぐらい。野茂のことはもうあちこちで語られているから今更感がある。4人目は有田芳夫というジャーナリスト。はっきり言って知る由もない。著名人の合同結婚式で騒がれた統一教会の問題。桜田淳子も参加を表明したという記憶がある。最も、この本で中心となるのは、作家でタレントの飯星景子。その脱会までを追う。

 5人目は花田紀凱編集長。鬼畜の所業と言うしかない「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の少年犯罪。これは今も記憶に新しい。少年法が立ちふさがる中、花田編集長は実名報道の断を下す。当時はまだ少年法の高い壁が存在し、マスコミは実名報道を控えていた。この英断は当然だと思うが、影で少年4人の名前を特定した記者の活躍もあったらしい。実名報道は成し遂げたが、それでも実刑は軽く、中心となった4人が逮捕されるものの、のちに出所し、あろうことか3人は再び犯罪を犯したという。凶悪犯には更生など無理だという証拠だろう。

 最後は、「少年A」で有名な酒鬼薔薇事件。森下香枝記者が、少年Aの両親に寄り添い、両親に手記を書かせる。それは被害者への賠償金支払いのためであったそうであるが、事件の後、世間の知られざるところでどんなことがあったのか。その水面下のストーリーが面白い。今や出所し、さらには『絶歌』という告白本まで出版した元少年Aの波紋も紹介される。こういう世間には知られていない話は単純に興味深い。

 一読して思うのは、面白いとは思うが、本のテーマと内容がマッチしていないということ。6つの勇気の物語とあるが、近藤医師と野茂以外は身内ネタの感があり、違和感がある。それぞれの人物のその時の心情に迫るとか、どういう考え方を持っていたのかが語られるのであればまだしも、外から見た姿の紹介のみで、外側をなぞっているだけである。どうせなら改めて本人にインタビューしたらよかったのにと思わずにはいられない。

 繰り返すが、水面下の話はそれはそれで面白い。ただ看板を掛け違っただけと言える一冊である・・・






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2018年10月22日

【日本再興戦略】落合陽一 読書日記965



《目次》
第1章 欧米とは何か
第2章 日本とは何か
第3章 テクノロジーは世界をどう変えるか99
第4章 日本再興のグランドデザイン
第5章 政治(国防・外交・民主主義・リーダー)
第6章 教育
第7章 会社・仕事・コミュニティ221

 著者のことは、すでに『超AI時代の生存戦略<2040年代>シンギュラリティに備える34のリスト』を読んでいるが、あの落合信彦の息子という経歴も個人的には興味深い人物である。

 そんな著者が、タイトルにある通り、「日本の再興」について語った一冊。「日本をなんとかしないといけない」という思いを多くの人が持っているはずで、その解決策も見えてきているが、それだけでは日本は変わらないとする。日本を再興するため、世界を理解するために重要なのは「意識改革」だとする。
 こういう内容は個人的に大変興味深い。
 
 ちなみに著者個人の戦略としては以下の3点が挙げられている。
 1. 経営者として社会に対しより良い企業経営をすること
 2. メディアアーティストとしての活動
 3. 大学での活動
著者は、この本の後半でも出てくるが、いくつものわらじを履くことを推奨している。それを自ら実践するわけである。

 そしてまず語られるのが、「欧米」というユートピアの否定。西洋的な思想と日本の相性の悪さを指摘し、「個人として判断することをやめる」ことを著者は提唱する。「自分個人にとって誰に投票すればいいのかではなく、自分たちにとって誰がいいのか」で判断すべしとするもの。日本は東洋にあるのだから、もっと東洋化した方がイノベーションが起きやすくなると言う。その可否はともかく、考え方が面白いと感じる。

 『超AI時代の生存戦略<2040年代>シンギュラリティに備える34のリスト』でも語られていたが、「ワークライフバランス」から「ワークアズライフ」へという考え方がここでも語られる。日本人はもともと仕事と生活とが一体化していた歴史があり、その方が向いているとする。生活の中に労働を含み、時間やノルマのスタイルで過労すると心身がもたない。オンとオフとの区別をつけないというが、これは個人的には同感である。

 仕事と生活とが一体化するとついつい働き過ぎを連想してしまうが、「ストレスがないことが重要」というのはその通りであり、今の働き方改革がともすれば「残業禁止」という考え方に行きがちなことを諭す。今、自分がそういう働き方をしているだけに、よけいに納得してしまう。この辺りも西洋を重視し、東洋を軽視することに警鐘を鳴らす考え方が披露される。我々のバックグラウンドにある東洋思想をもっと学ぶべきだと。

 続いて語られる「デジタル・ネイチャー」も興味深い。人と機械の融合が進むと、やがて「健常者」、「障碍者」という考え方もなくなる。例えば電子プロジェクターで網膜に投影できる技術が広まればメガネも不要になり、老眼ともおさらばとなる。これなどできれば向こう10年くらいで一般化してほしいところである。

 今、あちこちで嬉々として語られる人口減少・高齢化は、逆にチャンスであるという。その3つの理由は下記の通り。
 1. 自由化、省力化に対する「打ち壊し運動」が起きない
 2. 少子高齢化対策技術(ロボット技術等)を輸出戦略に活用できる
 3. 人材の教育コストを多くかけることができる国になる
危機をチャンスにするというのは、一つのセオリーであり、面白いと思う。

 日本再興戦略として「ホワイトカラーおじさん」を生かすというのも共感度大である。大企業で出世コースから外れた「ホワイトカラーおじさん」は、実は優れた「ディフェンダー人材」であり、これが市場にリリースされれば若手が活躍しやすくなるという。自分もそう感じていたし、実際に転職して「鶏口となるも牛後となるなかれ」を実践した身として実感する。そのほか、「年功序列との決別」、「自分探しより自分ができることから始める」、「兼業解禁と解雇緩和をセットにせよ」などの意見は独特で面白い。

 まだまだ自分も老け込む歳ではないし、子供たちの成長を手助けしなければならない。これから我が国はどのような未来を目指すべきなのか、いろいろな意見に触れていたいと思う。そんな人には一読の価値ある内容であり、よく咀嚼したい一冊である・・・



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2018年07月21日

【不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか】鴻上尚史 読書日記939



第1章 帰ってきた特攻兵
第2章 戦争のリアル
第3章 2015年のインタビュー
第4章 特攻の実像

著者がこの本を書こうと思ったきっかけは、ある本の小さな記述で、「9回特攻に出撃して、9回生きて帰ってきた」人のことを知ったことだという。それだけ聞けば、確かに興味はそそられる。その興味だけで、手にした一冊。

その人物とは、陸軍の第一回の特攻隊のパイロットだった人だという。その人の名は、佐々木友次伍長。本は、ひょんなことからこの実在の特攻兵の存在を知った著者が、まだ存命と知って病院にまで駆けつけ、そしてインタビューしたものを基に書かれている。
そしてそれは佐々木伍長の生い立ちから始まる。

小さな頃から飛行機に憧れ、いつか飛行機に乗ると志し、逓信省航空局を受験する。なぜ陸軍ではなかったのかはよくわからないが、ただ陸軍並みに鉄拳制裁のある厳しいところであったようである。そして卒業後は鉾田陸軍飛行学校に配属され、九九式双発軽爆撃機に乗る。実際の特攻でもこの機を使ったそうである。何となく特攻機というと零戦をイメージするが、佐々木伍長は陸軍であり、イメージとは違う。

そして1944年、いよいよ特攻が始まる。佐々木伍長は第一回陸軍特攻隊「万朶隊」に所属。最初の特攻機には先端に3本の信管が付いていて、これが接触することで抱えていた爆弾が爆発する仕組みであったらしい。しかし、幸運なことに、上官の岩本隊長が特攻作戦に懐疑的な人で、3本の信管を1本に減らした上で、爆弾を投下できるように改修させたという。これがなければ佐々木伍長も生きては戻れなかっただろう。

9回の出撃といっても、正確には「出撃命令」であり、実際に飛び立っていないケースも含まれる(飛び立つ前に空襲で飛べなかった)。引き返した回数もあり、実際に爆弾を投下したのは2回。「9回出撃して」というのは誇張であるが、だからおかしいというものではない。肝心なのは、やっぱり生きて帰還したことで、かなり「死ね」と圧力がかかったこと。この圧力に耐えて帰還したのはかなりの精神力である。

それに始まり、著者の記述は広く特攻全般に渡る。それは読んでいて、絶望的な気分とともに激しい怒りも湧いてくる。読めば読むほど特攻作戦は、戦術的にも効果のないものであったらしい。特に軽い機体(そもそも飛行機は皆軽くするように作っている)は、急降下で揚力が発生し、重装備な甲板に突入しても効果がないのだとか。「コンクリートに卵をぶつけるようなもの」との喩えが心に響く。

さらに効果よりも死ぬことのみが目的化されていく恐ろしさ。飛行機が不足すると未熟練パイロットを練習機で突っ込ませることも厭わなかったという。もちろん、命令する方はいかにそれが無謀かと合理的に説いても、精神力を盾に正当化し、上官の命令は天皇陛下の命令という理論で強制する。それにはもう逆らえない。特にフィリピンの富永司令官は、自分1人戦線離脱して逃げてしまう有様で、特攻の虚しさばかりが浮き立っていく。

恐ろしいのは、この陸軍の理不尽性が決して過去のものではないということ。陸軍だけの特性なら安心もするが、今に至る現代でもあちこちに残っているのである。大企業なら当たり前のようにあるだろう。佐々木伍長の話ばかりでなく、特攻全般について知らなかった事実もかなりあり、これはこれで大いなる収穫であった。

日本人なら特攻についてきちんとその実態を知っておく必要があると思う。この本は、「カミカゼ」ではない特攻の真実を伝える貴重な一冊である・・・




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2018年01月05日

【無私の日本人】磯田道史 読書日記875



穀田屋十三郎
中根東里
大田垣蓮月

この本を読もうと思ったきっかけは、映画『殿、利息でござる!』を観たからに他ならない。映画は内容に似合わないコメディタッチだったが、感動的な実話をベースにしているものであり、原作本もきちんと読んでみたいと思ったのである。

その原作たる本作であるが、実は採り上げられているのは『殿、利息でござる!』の中心人物穀田屋十三郎の他にも2名いる。全部で三人の「無私の日本人」が採り上げられているが、中でもページ数が一番割かれているのが穀田屋十三郎である。

仙台城下、奥州街道沿いの宿場町吉岡宿。ここは藩から課される伝馬役という苦役に苦しんでいた。その背景事情として、実は吉岡宿は伊達家の直轄領ではなく、家臣の但木家の拝領地だったという。そのため、直轄領なら得られた殿様からの支援金が得られなくて苦役に苦しんでいたという。映画では描かれなかった事情だが、そういう詳細なところは本ならではだろうと思う。

そこで穀田屋十三郎が菅原屋篤平治の知恵を借りて、藩にお金を貸してその利息でもって苦役の負担を減らそうと考えるに至る。時に1766年3月5日の夜であったと『国恩記』に記されている。貸すと言っても実は運用は大文字屋という蔵元に預ける計画であり、またこの時代はお上の許しなく3人以上が密かに集まってご政道について語れば「徒党」として処罰されたなど、映画には出てこないディテールも興味深い。

しかし、人々のためにという熱い思いは人を動かす。大肝煎をはじめとして、計画を打ち明けられた人々はその熱い想いに触れ行動に移していく。ストーリーは映画で知っていたが、本は本でディテールも加わって面白い。官僚化した武士の世界の事情なども相まって、これはこれの面白さがある。「観てから読むべきか、読んでから見るべきか」という問題は、これに限れば「観てから読むべし」であろう。

一方、他の中根東里と大田垣蓮月はまったく知らない人物。中根東里は儒者であり、「詩文においては中根にかなうものはおらぬ」と言われた人物だったようである。また、大田垣蓮月は絶世の美人といわれた尼僧であり、和歌などの文学に才能があった人物のようである。それぞれ歴史に埋もれた感のある人物の人となりとその人生を紹介しているが、はっきり言ってその内容は地味である。悪くはないが面白くもない。

著者はもともと歴史学者で、「古文書を読むのが好き」という方だとか。古い古文書を読んでは、埋もれた話を紹介しているようである。そこから『武士の家計簿』『殿、利息でござる!』が生まれた訳であるが、面白いパターンだと思う。

これはこれで読むのもいいが、「穀田屋十三郎」の項だけでも映画とセットで読むと面白さ倍増であると思う。そんなセットで手にしたい一冊である・・・


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2017年10月11日

【未来の年表−人口減少日本でこれから起きること−】河合雅司 読書日記843



第1部 人口減少カレンダー
第2部 日本を救う10の処方箋-次世代のために、いま取り組むこと

日本が少子高齢化と言う問題を抱えているのは、もはや周知の事実。ただし、その「誰もが知る常識」について、「その実態を知る人がいったいどのくらいいるのか」。著者は冒頭でそう投げかける。そしてそれに対し、カレンダーのように一覧できるものは書けないかと言う問い掛けから生まれたのが本書だと言う。

今の我が国が目前としている少子高齢化は、急激な人口減をもたらすもので、それは「世界史において類例がない」と著者は言う。100年も経たぬうちに人口は5,000万人になると予想され、それを「静かなる有事」とする。これに対する対策としては、「戦略的に縮むこと」だと言う。そういう問題をカレンダーとして表示する。

2019年 世帯数が5,307万世帯とピークを迎える
2020年 女性の半数が50歳以上
2025年 東京都の人口が1,398万人とピーク
2039年 死亡者数がピークを迎え、火葬場不足が深刻になる
2045年 東京都民の3人に1人が高齢者
2050年 世界人口が97億3,000万人、世界的な食料争奪戦が始まる
2053年 総人口が9,924万人となり1億人割れ
2055年 4人に1人が75歳以上
2059年 5人に1人が80歳以上
2115年 総人口が50,555,000人

こうして見ると、なかなか刺激的である。高齢者の高齢化の主体は女性で、「おばあちゃん大国」になると言う指摘は、考えてみればその通り。その他にもそれに伴う深刻な問題が出てくる。
・女性の2人に1人が50歳以上で出産できる女性が激減
・要介護者の増加に施設整備が追いつかず、介護離職が増加
・輸血用血液の不足
・3戸に1戸が空き家

「高齢化」と「少子化」は一緒に語られるが、実はそれぞれ独立した別々の問題だと言う指摘はもっとも。「出生数の減少」「高齢者の増加」「社会の担い手としての勤労世帯の減少」が、これから様々な問題を巻き起こしていく。読んでいくうちに絶望的な気分になって来る。さらに悪いことに、それらが遠い未来の話ではなく、間違いなく自分が高齢者となっている未来の話だということである。

それに対し、著者は独自に10の処方箋を提示する。個人的に面白いと思ったのは、「高齢者の再定義」で、これは現在の65歳以上を75歳以上にしようと言うもので、一見意味のなさそうなことだが、定年の問題など「現役」世代を拡大すると言う意味では意味があるかもしれないと言う気がする。

その他、「居住エリアを明確化」と言うのも面白いと思う。いわゆるコンパクトシティと同じ考え方だと思うが、分散より集中というのは確かにいいかもしれない。第三子以降に補助金を1,000万円交付という意見も面白いと思う。この問題は人口という確実に予測できる問題であるだけに余計深刻だと思う。自助努力としては健康年齢を伸ばすことしかないが、個人的に関心を持っていきたい問題である。

大きな問題だけに、我が事として一読しておきたい一冊である・・・

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2013年04月16日

【現実を視よ】柳井正 読書日記327



プロローグ 成長しなければ、即死する
第1章 いまやアジアは「ゴールドラッシュ」
第2章 「資本主義の精神」を忘れた日本人
第3章 政治家が国を滅ぼす日
第4章 あなたが変われば、未来も変わる
エピローグ 2030年・私が夢見る理想の日本

ご存知、ユニクロの柳井会長兼社長の著書。今や日本を代表する経営者のお一人であるが、この本はよくありがちな経営者の成功本ではない。これからの日本に対する提言である。

もう既にこの手の本は、大前研一との共著 「この国を出よ」を記しているが、それに続くものである。既にユニクロは世界各地に営業展開している。社内の公用語も英語だし、外国人の採用も当たり前になっている。近いうちにもはや日本の企業という範疇に収まらなくなるのだろう。

この本の底に流れるのは強烈な危機感。「このままでいいはずがない」という意識だ。そしてそれを感じる事なく、太平の眠りを貪っている日本人に警告を発してくれているのである。大企業に入って、安定した日々を安らかに送っている身としては、耳の痛いところがある。

今や中国のみならず、アジアの若者たちは必死に勉強し、貪欲に成功を求めている。中国、韓国、フィリピン、シンガポール・・・
日本人がいつまでも上だと勘違いしていたらあっという間に抜かれる。得意の技術も「町工場」の職人だけだと言う。

本来競争社会であるはずの資本主義だが、日本では総サラリーマン化し、成長しなくても安定していればいいと言う風潮が支配し、いつの間にか社会主義のようになっている。国家財政が破綻状態にあってもなお改善しようとしない政治家。無駄の削減などいつのまにか忘れ去り、消費税を上げてお茶を濁し、年金問題も原発事故も一票の格差も、曖昧なまま時が流れている。

それを変えていくのは、もはや国民一人一人しかない。
ケネディの就任演説の有名な言葉を繰り返し、自覚を求める。
 Ask not what your country can do for you,
      ask what you can do for your country
それを社内でも社員に求めているという。

最後に柳井社長の考え方が、messageとして列挙されている。
 1 起こっていることは、すべて正しい
 2 人間は求めていい
 3 需要は「ある」のではなく「つくりだす」
 4 サムスンに躍進の秘訣を聞きに行け
 5 売れる商品は、世界中どこでも同じ
 6 100億円売ろうと決めねば、100億円売れない
 7 戦うのなら、「勝ち戦」をすること
 8 日本語はハンデにはならない
 9 日本の「商人道」を取り戻せ
 10 苦しいときほど「理想」をもて

読んでいて共感するところは多い。
されど、「では明日から何をする」となると難しいものがある。
年齢的に「今からでは」という気持ちもある。
されど、問題意識を持ち続ける事は大切だと思う。
自分に何ができるか。
考えながら、毎日を過ごしてみたいと思うのである・・・
   
   
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2012年12月01日

【もし、日本という国がなかったら】ロジャー・パルバース 読書日記297



≪目次≫
ここが、ぼくの国だ―タクシーの窓から見えたもの
驚くべき創造力の国へ―ぼくの人生は、あらかじめ準備されていた
世界には、誠実で正直な日本が必要だ―京都での生活と若泉敬との出会いから
日本人も知らない本当の世界遺産とは―日本美の思想と、宮沢賢治の心
「五つの日本」―小さな国に満ちあふれた多様性
一九六〇~七〇年代に現れた革命児たち―日本独自の大衆文化を創った、天才たちの功績
世界にも希有な表現者―親友、井上ひさし先生の思い出
『戦メリ』の助監督をしてわかったこと―「戦後」は転換期を迎えた
日本の文化は「振る舞い」に表れる―日本人だけが持つ礼儀正しさと、特有のユーモアセンス
ここではあらゆる場所が「舞台」である―日常における日本人の見事な演劇性〔ほか〕


 最近我が国についていろいろと思う事がある。そうすると、外国人から見た日本の姿というものを見てみたいという気になる。ちょうど人が我が身を鏡に映して見るように、である。ちょうどそんな時に、目の前にこんなタイトルの本があれば、それは手に取るだろう。そんな経緯で読んだ一冊。

 著者はもう日本に40年以上にわたって暮らしているロジャー・パルバース氏。知る人は知る人物であるようだが、もちろん、私は知らない。
ハーバード大学を出て、ロシア語を学び、その関係で訪れたポーランドではポーランド語を学び、そして来日するやまたたく間に日本語もマスターし、どうやら語学の才能は凄い人のようである。この本は、そんな人物の自伝。

 タイトルに紛らわされてしまったが、あくまでも自伝であるから、有名人ならともかく、知らない人の自伝はそれほど面白いとは思えない。まあマンガ、アニメ、スシ、カラオケをMASK現象と名付けたりするところは、外国人から見た日本であり、それなりに満足はさせてくれる。

 作家の井上ひさしなど著名人とも交流があり、宮沢賢治を絶賛。有名な童謡「赤とんぼ」や小津安二郎の映画を解説してくれたりするところは、日本人でもなかなか知らない事でもあり、驚くところである。著者はアメリカ人なのに日本に取りつかれ、なのにオーストラリアの国籍を取得し、日本には40年以上住んでいるというちょっと経歴は変わっている。

 しかし、やっぱり個人的に惹かれたのは、日本人についての部分だ。あらゆる人たちが礼儀正しく振舞う、正当性を主張する欧米人に対し譲り合う日本人、気配り、そしてサービス精神。東北大震災時にみせた“自粛”。あらゆる宗教に敬意を払えるのは日本人だけという指摘。一つ一つのエピソードを聞いても、日本人だと違和感がなくてわからないが、外国人からみるとよその国では見られないものらしい。

 また日本語の特徴についての話も面白い。
「あの〜」と言っただけで助けてもらえた外国人女性の話。
喫茶店で、「エスプレッソはありますか?」という著者の質問に、「“は”ないです」と答えた店員さん。(エスプレッソを省略しても通じてしまう)
小さい「っ」が表す多くの感情。
「むちゃくちゃだ」と「むっちゃくちゃだ」の微妙な違い。
「痛っ」「やばっ」などの表現や、「おばあちゃん」と「おばあちゃま」のニュアンスの違い。

 いちいちなるほどと思ってしまう。こうした後半部分の話は、最初にこの本を読んでみたいと思った気持ちを十分に満たしてくれる。少々大げさに褒めているところもあるが、世界に誇っても良い部分は、日本人として大事にしていかないといけない。
そんな気持ちを改めて持たせてくれた一冊である・・・
    
    
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2012年10月04日

【私は日本のここが好き!】加藤恭子 読書日記281



≪目次≫
第1章  アジア・中東・オセアニア
第2章  南北アメリカ
第3章  ヨーロッパ・アフリカ

私は日本のすべてを受け入れます ほか)サブタイトルに「外国人54人が語る」とあるように、これは外国人から見た日本についての意見集である。最近また激しくなっているが、韓国や中国での反日デモで嫌われ者としての日本人を意識した著者が、もっと日本人を励まそうと教え子たちも交えて集めたインタヴュー集である。回答を寄せているのが、さまざまな分野の外国人たち。アジア・中東・オセアニア、南北アメリカ、ヨーロッパ・アフリカ、国や地域もバラバラな54人の外国人たちが登場する。

「普通の日本人の魅力」
「良きイスラム教徒に最も近い日本人」
「人も仕事も正直で精密、繊細」
「世界一のサービス」
「やさしさと素朴さ」
「国民の資質が高い」
「世界一の一般人」
「一人一人が規則を守る」

何となく自覚しているものもあれば、日頃当たり前と思っている事が、実はそうではないとわかる意外さもある。人は褒められればだれもが嬉しく思う。そんな嬉しくなるような言葉がたくさん並んでいて、読んでいると気分がよくなる。

登場する人たちはみな日本のファンであると思うのだが、しかし良く読んでみると、苦言もさらりと述べられていたりする。
「シルバーシートに若い人が座り、電車の中で禁止されているのに携帯で話すなどモラルの低下がある」
「街が汚くなり、治安も悪くなった」
「本音と建前がある」
「突出したエリートを育てなきゃダメ」
「国歌を嫌う日本人がいる」
「心を開いてもらうのに時間がかかる」
こういう意見こそきちんと聞かないといけない。

ウズベキスタンの首都にあるナヴォイ劇場の話も紹介されている。戦後のシベリア抑留で連れてこられた日本人捕虜が建てた劇場であるが、後日首都を襲った地震に際し、周りの建物が次々と崩壊する中で、崩れる事なく残ったという。捕虜として強制的に働かされたにもかかわらず、しっかりとした仕事をした事に現地の人たちは感動したという。そんな事もあって、ウズベキスタンは親日的なのだという。

自分はそんな外国人たちに対して、日本人として胸を張れるだろうか。そんな事を自問したくなる。人は鏡を見る事によって自分の姿を見る事ができる。良くも悪しくも自分の姿をきちんと見る事が大事だと思うが、そんな時に参考にしたくなる一冊である・・・
      
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2012年04月12日

【 日本の未来について話そう 】  マッキンゼー・アンド・カンパニー   読書日記234


    

第1章 日本の再生に向けて
第2章 再び変化の時代へ
第3章 再建のための現状把握
第4章 国際化への鍵
第5章 日本外交政策の選択
第6章 グローバルな視座
第7章 技術と思考のイノベーション
第8章 人材の「発見」と活用
第9章 文化の継承と発展

マッキンゼー・アンド・カンパニーが各界の著名人にインタヴューし、それぞれ各章に掲げたテーマについて語ってもらった一冊。
内容は、タイトルそのもの、「日本の未来について」である。
副題に「日本再生への提言」とある通り、現状の長引く不況や震災の影響に揺れる我が国の再生方法についての意見である。

登場する著名人も実に様々。
経営者が多いが、スポーツ選手・監督、作家・漫画家、ジャーナリスト、大学教授に研究者等々国内外の多数が登場する。
個人的には孫正義、柳井正、南波智子、ハワード・シュルツ、ジョン・チェンバース、などの経営者、藤原和博(元民間出身校長)、ボビー・バレンタイン元ロッテ監督、漫画家の弘兼憲史などに興味を惹かれた。

当然ながら日本の未来を語る時に欠かせないのが、海外との関係。
これについては様々な形で提言されている。一言で言えば、「もっと積極的に外へ出ろ」という事だ。自身の著書でそのものずばり 「この国を出でよ」と主張した柳井正は、同じ主張をしている。メジャーに挑戦してその後の日本人プレーヤーのメジャー挑戦に先鞭をつけた野茂も取り上げられ、「グローバル」がキーワードとして語られる。弘兼憲史も「社長島耕作」で「シンク グローバル」と謳う。

一方で海外礼讃ばかりでなく、日本の良さも取り上げられている。
文化的な側面、活用されていない女性、ワークライフバランス。
「ジャパン アズ ナンバーワン」の著者であるエズラ・ヴォーゲルは、「日本人はチームで行動するのが上手」と語る。
「集団行動に必要な気配りと能力がある」と。
我々自身気がつかない部分も多いような気がする。

読み進めていくと、「今後日本はどうすべきか」というテーマと、「今後自分はどうすべきか」というテーマとが頭に浮かんでくる。
そんな事をあれこれと考えてみるには、良いヒントになる本かもしれない。
かなり量はあるが、読み応えのある本。
時にはこういう本を読んで、我が国の行く末を考えてみるのもいいかもしれないと思える一冊である・・・

     
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2011年06月14日

【日本よ、永遠なれ】山谷えり子 読書日記164



第1章 日本が嫌いですか?
第2章 独裁は許せません
第3章 国益無視の「媚中反米」
第4章 民主党は変わってしまった!?
第5章 「教育再生」を止めてはならない
第6章 子供たちの未来のために
第7章 家族崩壊が国を滅ぼす
第8章 再び保守の確立を
第9章 愛する日本を守りたい

著者は自民党参議院議員。
サブタイトルに『止めよう、民主党政権の独裁と暴走』とある。
まあ自民党議員という立場上、こういうタイトルの本を書きたくなるのだろうと半分訝しいと思いながら手に取った本である。
書いたのは平成22年3月であるから、そこを勘案して読まねばならない。
まだ菅政権は誕生していない。

冒頭から、外国人参政権問題をはじめとして、外国(特に中国・韓国)に無防備な民主党政権をぐさりと刺す。
小沢・鳩山コンビの危うさ、マニュフェストの問題等が続く。
著者が携わったという教育再生に関する予算が、日教組の後押しを受けた民主党政権によって反故にされていると悔しさを滲ませる。
そう言えば教員免許の更新制度もうやむやになっている。

前半は批判が続くも後半は提言が出てくる。
ジェンダーフリー思想は男性だけではなく女性も不幸にするという部分は、女性議員らしい発想かもしれない。
国のあり方、個人、家族、自身の経験を踏まえての意見はなかなか傾聴に値する。
伝統的なものを大事にしようという主張は、まさに保守本流の考え方で無条件に支持したいところだ。
全体的に説得力があり、こういう議員に一票を入れたいものだと思わせられる。
議員のふだんの活動状況などが窺い知れるところも、「やっぱりちゃんと働いているのだ」と思わせられる。

しかしながら、無茶苦茶やって自滅して民主党に政権を譲ったのは他ならぬ自民党。
この方にどこまで責任があるのかはわからないが、この本に書かれている事は実践をともなうものなのだろうかと、ふと思う。
みんながみんなこんな考え方で仕事をしていたら、日本はとっくに良くなっていたはずだ。
はたしてキレイ事なのか、それとも本心だが、単身ではままならないのか。
願わくば後者であってほしいと思う一冊である・・・


    
posted by HH at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本/日本人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする