2017年03月03日

【LIFE SHIFT−100年時代の人生戦略−】リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット



原題: The 100-Year Life: Living and Working in an Age of Longevity
序 章 100年ライフ 
第1章 長い生涯
第2章 過去の資金計画
第3章 雇用の未来
第4章 見えない「資産」
第5章 新しいシナリオ
第6章 新しいステージ
第7章 新しいお金の考え方
第8章 新しい時間の使い方
第9章 未来の人間関係
終 章 変革への課題

このところ未来予測的な本を続けて読んでいるが、これもその一つ。現代は100年以上生きられる時代であり、そんな100年ライフを過ごすつもりでいた方が良いという。事実、長寿世界一の我が国では、2014年に生まれた子供の平均寿命は109歳だとか。1964年生まれの自分も92〜96歳くらいだというが、やはり素直に喜ぶべきだろうか。

そんな時代、もはや過去のロールモデルは役に立たず、親の世代に有効だったキャリアの道筋や人生の選択が我々にも有効だとは限らず、当然ながら我々の子どもたちも違う決断をするという。長生きするのはいいが、医療や年金は大丈夫かなどと心配したくなるが、それは全体像を見失うことになるので、視野を広く持たねばならないとする。長寿化時代には新しい生き方が試みられるようになるのである。

事実、人々が70代後半や80代になっても活力と生産性を失わず、長く働き続けられれば年金問題や人口減少の弊害はだいぶ和らぐ。20世紀の人生は、「教育」「仕事」「引退」という3つのステージだけであったが、100年ライフではマルチステージになる。そこでは、生涯に2つもしくは3つのキャリアを持つようになる。これは今の自分もそうだから間違いないだろう。

そうしたマルチステージの人生では、「エイジ」と「ステージ」とが結びつかなくなる。「大学生」という情報だけでは年齢を推測できなくなる。「レクリエーション」から「リ・クリエーション」へと変わる。そこでは自分がどのような人間か、自分の人生をどのように組み立てたいか、自分のアイデンティティと価値観を人生にどのように反映させるかを一人一人考えなくてはならないとする。

そんな人生のあり方を著者は、ジャック、ジミー、ジェーンという三世代を例に挙げ、具体的な人生を例示し説明してくれる。自分はジミーの世代だが、そんな自分自身の現状と重ね合わせて考えてみる。我が子供達の世代であるジェーンについては、どんな変化があるのか著者にもわからない。「あらゆる事態に備えていないということは、まったく備えていないのと同じ」という言葉が紹介されるが、我が子たちも大変である。

100年ライフに備えるには、2種類の資産が必要だとする。「無形の資産」と「金銭的資産」である。「無形資産」は、さらに「生産性資産(スキルと知識)」「活力資産(肉体的精神的な健康と幸福)」「変身資産(人的ネットワーク)」とに分けられる。そうした資産を元に、「エクスプローラー」「インディペンデント・プロデューサー」「ポートフォリオ・ワーカー」のステージを生きることになる。

個人的にそれでも不安なのは、加齢による衰え。しかし、脳の機能が低下するペースは、1/3が遺伝的要因で残りは生活習慣、日々の行動、コミュニティの関わり方、人間関係の強さ、肉体的健康、食事などだという。心したいところである。その他、長く生きることによるお金の問題、時間の使い方、さらに子育てが中心だったこれまでと比べ、友達付き合いが生活の中心になる時期が新たに出現するかもしれないということ、考えるべきことは多い。

 「私は何者なのか」「私はどのように生きるべきか」それに応えられるのは自分だけという著者の言葉に深く頷く。自分の生き方について、人生について、今一度考えてみないといけない。もうとっくに折り返し地点を過ぎたと思っていた我が人生。どうやらまだ折り返し地点をウロウロしているのかもしれない。そんな今後の人生を真剣に考えさせてくれる一冊である・・・



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2017年01月15日

【ロケットササキ】大西 康之



プロローグ 孫正義の「大恩人」、スティーブ・ジョブズの「師」
第1章 台湾というコスモポリス
第2章 「殺人電波」を開発せよ
第3章 アメリカで学んだ「共創」
第4章 早川電機への転身
第5章 「ロケット・ササキ」の誕生
第6章 電卓戦争と電子立国への道
第7章 未来を創った男
エピローグ 独占に一利なし

 著者は、『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』『ファースト・ペンギン 楽天三木谷浩史の挑戦』を書いた方。どうやらこうしたビジネス系の書き物が得意な方のようである。そんな著者が、今回対象にしたのは元シャープの役員であった佐々木正。若き日の孫正義やスティーブ・ジョブズに力を貸した人物と知って興味を抱く。

佐々木は戦前の台湾で生まれ育つ。高校時代、成績は優秀だったが全校生徒を率いてストライキをやるなど破天荒であったという。卒業すると父の命で京都大学へ進学する。卒業後は学者になるつもりだったらしいが、在学中から逓信省の研究所に呼ばれて働き、軍の意向で川西機械製作所に送られレーダーの研究をする。戦時中はドイツへ行き、Uボートで帰国する。別便で帰国した同僚は、撃沈されたというから運も良かったのであろう。

戦後はGHQの命令でアメリカに行く幸運を得る。真空管、トランジスタ、時代の変化の中で、その時の最先端技術の世界で佐々木は生きる。この時以来築き上げた人脈と、教えあう『共創』という概念が佐々木の心に刻み込まれる。通産省に通って予算をつけてもらい、トランジスタの研究を始める経緯は、時代を感じることができる。この頃、のちにノーベル賞を受賞する江崎玲於奈を育てたというのも興味深いエピソードである。

そして佐々木が真骨頂を発揮するのが、早川電気(現在のシャープ)に入社したあと。初めは大学で教えるつもりであったものの、創業社長らから日参して口説かれる。そしてここからのドラマは日本のエレクトロニクス産業史そのものである。世はコンピューターの時代となり、早川電気は電算機の開発に着手する。佐々木は独自の人脈を生かし、技術と資金を確保する。

やがて始まる電卓戦争。各社騒乱状態となるも、小型化・低価格化の争いで早川電気とカシオが抜け出る。MOS-LSIなど専門用語はよくわからないが、佐々木はあちこちと自由に飛ぶ発想の豊かさから、米ロックウェルの技術者たちに「戦闘機のスピードでは追いつけない、ロケット・ササキだ」と言わしめる。これがタイトルの由来。

結局、最後に太陽電池を採用し、シャープは電卓競争で勝利する。自由な発想と「共創」という佐々木の信念のなせる技と言える。一人の頭よりもみんなの頭、考えてみれば当然であるが、アイデアを生み出すのには「共創」という保育器の役割は大きいのかもしれない。自分の仕事でも何か役立つことが多い気がする。

時代は下り、栄光のシャープも業績不振で台湾ホンハイ・グループの傘下に入った。そんな現状に対し、101歳になった佐々木は現社長にあるアイデアを授ける。ラストのエピソードは心温まるものであり、時代を走り抜けたシャープの再生を期待させるものがある。時代背景は違うものの、基本的な考え方ではまだまだ我々にも参考になるところが多い。

ビジネスの先人の教えとしてもよく、物語として読んでも面白い。さすが著者はよくこういう人物を見つけてきたものだと思う。著者の出版動向には、これからも注目していきたいと思うところである。



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2016年12月19日

【何を捨て何を残すかで人生は決まる】本田直之



第1章  「人生を縛る常識」を持たない
第2章 「なくてもいい物」を持たない
第3章 「必要以上のつながり」を持たない
第4章 「やらなくていい仕事」を持たない
第5章 「振り回されるほどのお金」を持たない

著者はビジネス界で実績を残し、現在は年間でハワイ、東京、ヨーロッパとそれぞれで暮らしているという誠に優雅な生活を送る成功者。そのビジネスで得た成功のエッセンスを様々な著書に記している方のようである。そんな方の著書を一冊でも読んでみようかと手に取ったのが本書。

著者がまず初めに唱えるのは、「持たない生き方」。「持たない生き方」とは、単なる断捨離のようなものではなく、「自分にとって必要なモノを見極め、それを選び取り、見た目ではない豊かさを手に入れること」だとする。そしてそのために大事なのは、「何を捨て、何を残すか」を決断する自分を取り戻すことだという。「何々だけはしたくない」と叫んでいる心の声に耳を傾けるべしとする。

「他人と自分とを比べ、『あの人のようにできない』などと考えるのは、誰かの作った価値観で自分を縛っているのと同じこと」と著者は語るが、このあたりはどうも納得しかねるものがある。「踏み出す前に『大変なリスクだ』と思っていたことのほとんどは、通り過ぎてしまえばどうということもない」とするが、まったくその通りだろう。ただし、「成功した場合は」であるが・・・

ティッシュやフリーペーパーなどの貰い物は、著者はすべて断るのだという。貰うという行為は「完全に受け身だから」というのがその理由。しかし、個人で取りに行ける情報には限りがある。時として「入ってくる情報から」ヒントを得ることもある。そう思ってティッシュをもらっている自分には、受け入れる要素のない言葉である。どうも著者とは波長が合いそうもない。

「『みんながいいと言っているから』と流されてしまうのは危険なこと」ということには同意できる。しかし、「ルーティンになっていると感じたらとにかく壊す」という部分は、「ルーティンも所によっては必要」と考える自分とはまたしても合わない。「世間の常識にとらわれてはいけない」という部分には同意できるが、それは自分にとっては「わざわざ言うほどのことでもない初歩的なこと」である。

読みながらそんなやりとりをしていたら、なんとなく読み進む集中力が欠如していってしまった。著者は、自分など足元にも及ばない凄い方だとは思うが、考え方の合う合わないは当然ある。ただ、傾聴に値するところもあって、それは素直にメモした。
1. お金を稼ぐ力とお金を持ち続ける能力はまったく別のもの
2. 変化にいち早く対応するのはいつも若い世代、彼らは批判の対象ではなく学ぶべき対象
3. 人生で大切にしている点@自分で考え続けることA過去の常識をリセットすることB実験をし続けることC少しの勇気を持つこと

著者に対しては、自分など足元にも及ばぬ成功者だし、その意見をどうのこうのと言える立場ではないが、自分の人生の指南役としてはどうも合わないと言う感じだ。それはそれで、仕方がないと思う。無理に合わせようとすれば、それこそ著者が批判する「誰かの作った価値観で自分を縛る」ことになるからである。自分に合うと思うところだけ、ありがたく拝聴したいと思う。

まさに、自分でしっかり考えながら読みたいと思う一冊である・・・


     
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2016年10月21日

【天才】石原慎太郎



最近、田中角栄がブームである。関連書籍やテレビ番組等よく目にする。そのきっかけとなったのが何かは知らないが、ベストセラーとなってブームの「象徴的」でもあるのがこの本であると言える。そんなわけで手に取った一冊。

 角栄さん関連の本といえば、これまで元秘書だった早坂茂三氏の著書や、先月は『冤罪 田中角栄とロッキード事件の真相』を読んだが、そのほかにも実にたくさんの本が書かれているのだという。戦後の政治家で角栄さんほど多くの本が書かれている者はないのだそうである。これはそんな角栄さんの本であるが、内容はすべて一人称で書かれており、一瞬、角栄さんが自ら書いたのかと錯覚させられる。

 子供の頃はジフテリアの後遺症でドモリだったらしいが、ある時それが理由でイジメられ、思わず大声でわめき散らしたことがヒントとなり、学芸会で先生に頼み込んで弁慶役をやらせてもらう。その舞台をこなすことで見事ドモリを克服したのだという。その時の経験から、何事も事前の仕掛け=根回しが必要だと学んだという。子供の頃からやはり違いをみせている。

 高等小学校を卒業し、土方となってトロッコを押して暮らしていたが、嫌になって辞める。そして、柏崎の県の土木派遣所に応募して採用され、現場監督としてトロッコを押していた現場に戻り驚かれる。このあたりからもうその才能を発揮している。そして東京に出て土建会社の小僧となるも、兵役に従事。第二次大戦は病気で本国送還となり、命を拾う。

 その後事業で成功するが、政治家へ立候補することになり、二度目の挑戦で政治家となる。同期にはのちの中曽根首相がいたそうである。30歳で吉田内閣の法務長官となり、すでにこの頃、この世は互いの利益の軋轢で、これを解決するのは結局互いの利益の確保=金次第と考えるようになる。造船疑獄に際しては、大事な頼みごとをするのに200万円ほど持参するのは、菓子折りを持っていのと同じと言い切る。

 やがて大蔵大臣、通産大臣を務める。当時は、アメリカに「何から何まで言いなり」の状態だったが、角栄さんは日米協議で堂々と日本の立場を主張する。ニクソンとはすぐに昵懇となり、後継は福田赳夫と考えていた佐藤首相の思惑とは裏腹に、ゴルフや会見の場で福田を押しのけてニクソンと田中は親密さをPRする。そして角福戦争を経て、角栄さんは総理大臣に就任する。

 あくまでも小説の形をとっているのではあるが、選挙で空前の一人3,000万円もの金を配ったなど金権政治と言われた部分は、そのまま出てくる。ロッキード事件が起こり、世間は騒然とするが、問題となった5億円は、選挙で集めた300億円の一部に紛れ込んでいたと主張。ロッキード裁判の異様さも語られる。

 そんな華やかな活躍の一方で、青年時代の淡い恋から、結婚後も愛人(それも二人)がいたことが語られる。まさに「英雄色を好む」を地で行っている。
著者の石原慎太郎も、自らの金権政治を批判する先方として登場する。著者は、角栄さんの金権政治を真っ先に批判したらしいが、そんな著書が角栄さんの本を描くというのも面白いものである。

 ロッキード事件の当時は批判一色だったように記憶しているが、ここにきて事件はアメリカの陰謀だったという説が濃厚に語られる。歴史の評価というものが正しいのだとしたら、まさにその見直しが行われているのかもしれない。何はともあれ、当時の「田中総理」を知る者にとっては、興味深い一冊である・・・


  
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2015年08月04日

【狼たちへの伝言】落合信彦



まだ社会人になって間もない頃、どういう経緯だったかは忘れてしまったが、読んで衝撃を受けた本である。
久しぶりに著者の落合信彦の名前を見かけ、本棚の奥から引っ張り出してきて、パラパラめくっているうちに読み返したくなってしまった一冊である。

書いてあることは、落合信彦氏の実体験に基づく人生観。
タイトルにある「狼たち」とは、真の男たらんとするものたちということだろう。
女性が活躍する時代というのは、基本的に平和な時代。
それはそれで素晴らしいし、否定する気はない。
だが、その中にあって、「男たるもの」とやっぱり考えてみる必要はある。

衝撃を受けたのは、著者の実体験。
中学生の時に父親は女を作って出ていく。
「お前たちも好きに生きろ」と言い残して。
そして日本に幻滅した著者は、アメリカ行きを決意する。

決意しても、貧困母子家庭に留学費用なんてない。
英語の辞書を1ページずつ破り捨てる方法で英語を学び、アメリカ大使館に行って直談判し、アメリカの大学入学試験を受けさせてもらい、奨学金も確保して合格する。
されど渡航費用がなくて、横浜の港に泊まり込んで船を捜し、頭を下げまくって臨時船員としてアメリカまで乗せてもらう。
着いた西海岸から、コーラで腹を満たしながら大学のある東海岸までヒッチハイク。
今読み返しても胸が熱くなるようなど根性だ。

男にとって大事なのは、おしゃれなんかより生き様だと語り、イイ女を抱きたかったらエキサイティングに生きろと説く。
「ケンカもできないヤツ、弱いヤツは男としてダメだ」との主張は、女性が聞いたら顔をそむけるかもしれない。
けれど、「男にとって力は絶対必要だ」という主張は、それまでの自分の意見と同じであり、激しく同意したのを覚えている。

一方で、宗教にのめり込む危険性を説くところは、のちのオウム真理教事件を暗示しているかのようだし、アメリカの戦争体質から近々の戦争の可能性を指摘している部分は湾岸戦争で実現するなど、世の中の動きも的確に語っている。
こういう視点に影響され、その後私は、国際情勢に興味を持っていったものである。

電車の中で若いサラリーマンがマンガを読んでいる姿を嘆き、きちんとした思考を持つことの重要性を語る。
これに影響を受けて、ビジネス書を読み漁るようになったものである。
若き日の私にとって、非常に大きな影響を残した一冊である。
今、あの頃に増してナヨナヨした男が多くなった気がするが、今の若い人にもこの本を読む価値は大きいと思う。

改めて読み返してみても、死語になった言葉や古い事例以外は今でも十分通用することばかりである。
読んでも響かないようなら、それは"ナヨナヨヤサ男くん"の証拠かもしれない。
たとえ女に笑われようとも、「男たる者かくあるべし」と思って読むといいと思う。
もう少し大きくなったら、息子に読ませたいと思う一冊である・・・

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2015年08月01日

【ぼくの命は言葉とともにある】福島智



プロローグ 「盲ろう」の世界を生きるということ
第1章 静かなる戦場で
第2章 人間は自分たちが思っているほど強い存在ではない
第3章 今この一瞬も戦闘状態、私の人生を支える命ある言葉
第4章 生きる力と勇気の多くを、読書が与えてくれた
第5章 再生を支えてくれた家族と友と、永遠なるものと
第6章 盲ろうの視点で考える幸福の姿

著者は、9歳で失明、18歳で聴力を失うという「盲ろう」の方。
それでも大学を卒業し、今は東大の教授だというから、その努力たるや並大抵ではないのだろうと思わされる。
視力と聴力が失われた著者にとって、外界との意思疎通の接点となるのは「言葉」。
ヘレン・ケラーは、生まれつきの「盲ろう」だったから「言葉」すらなく、だから「三重苦」と言われたが、著者の場合は18歳まで言葉によるコミュニケーションができていたわけで、だからこそ、よけい「言葉」というものに対する重みを感じているのかもしれない。

暗く静かなるところにいる著者にとって、我々がさりげなく使う言葉に対する感性も違うのかもしれない。
ホロコーストを生き抜いたフランクルからは、「絶望=苦悩−意味」という言葉を学ぶ。
「絶望とは意味なき苦悩」
よくよく考えてみれば、なるほどと思うも、言われなければスルーしてしまいそうだ。
そんな言葉をつかみ取るのも、著者の感性のレーダーが発達しているからに他ならない。

この本は、著者の思うままが綴られているが、「いかに生きるべきか」というところが強く出てくる。
自分の生きる意味を見出すことが救いになると語るのである。
前向きに生きていければそれが良いが、時として横向きや斜めを向いてしまう時もある。
さらに後ろ向きにさえなることもあるかもしれないが、そうなったら「後ろ向きに後ずさればいい」と語る。
この発想は、私にとっても参考になる。

著者は、他者とのコミュニケーションには従来の点字に加え、指と指とで行う「指点字」なるものも利用しているという。
そうした他者とのコミュニケーションこそが自己を認識できる機会であり、著者からすれば、「コミュニケーションは命」ということになる。
「ぼくの命はいつも言葉とともにある」と語る理由がそこにある。

盲ろう者になって、著者が学んだことの一つが「挑戦」。
「どんな困難な状況にあっても、可能性がゼロになるわけではない」という。
「挑戦とは相手を打ち負かして競争に勝つことを意味するのではなく、その本質は自分自身に対する挑戦」
「挑戦とは他者の立場を想像する力と、他者と協力しながら新しいものを生みだしていく営み」
考えてみれば、著者は他者の協力がなければ生きてはいけないわけであり、それゆえに紡ぎ出された考え方なのだろうと思う。

著者に比べれば、健常者はそれだけで恵まれているわけである。
それを当り前とせず、切磋琢磨しつづけないといけない。
前向きに、常に挑戦者たらんと思わせられる一冊である・・・

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2015年07月23日

【東大名物教授がゼミで教えている人生で大切なこと】伊藤元重



序章  人生にも戦略があっていい
第1章 「読む」「書く」「話す」力を鍛える
第2章 発想力を鍛える
第3章 効率を上げ、仕事の質を高める
第4章 現場からめいっぱい学ぶ
第5章 ロールモデルを探せ−私の20~30歳代

著者はタイトルにもある通り、東大教授。
専門は経済のようであり、専門の著書も多数あるようであるが、この本においては経済のことは脇に置いておいて、ゼミで学生相手に語っている話が中心のようである。

はじめに、「人生にも戦略があっていい」と語られる。
ただ、人生は想定外の連続。
その中で何を大切にするかというと、「レイバー」「ワーク」から「プレイ」への変化だという。
レイバー=肉体労働、ワーク=事務仕事であるが、プレイとはやりがいのある仕事ということのようである。
なるほど、興味をそそられるイントロである。

著者も他の多くの人と同様、「読書」の効能を訴える。
速読などは必要なく、ただし、気がついたことを自分の言葉でメモすることを勧めている。
「自分の言葉で表現できたもののみが、自分の血や肉となっている」とする。
ランダムにメモしたら、今度はそのメモを再度読んでまたメモをつくる・・・
書くことはまた最良のインプットだというが、こういう考え方は新鮮である。

ゼミで重視しているのが、「人とのインタラクション」。
自分一人で考えるだけでなく、ディスカッションやディベートを通じて新たな気づきが得られる。
これは、何となく日頃実感していることでもある。

また、一方で、1日30分一人になってひたすら自分の仕事について考えることも大事だという。
著者は歩く時間をそれに充てているようである。
それゆえに、「ウォーキングエコノミスト」と呼ばれているらしい。

「プロの議論は疑ってかかれ」というのも、近頃強力に実感している。
プロはその世界のプロであるがゆえに、固定観念に固まってしまっているところがある。
素人だから、気づくこともあると、著者は自らの経験を例に挙げて説明する。
昨年、異業種に転職した私も、日々「プロ」相手に異文化を吹き込んでいるところである。

最後のロールモデルについては、教師よりむしろ仲間の方が刺激が大きいということを語る。
少人数制を極めていっても、ある程度のところで頭打ちになる。
それは「仲間からの刺激がなくなる」かららしく、著者もこれまでに大きな影響を受けた友人・同僚の例を挙げる。
自分の子供たちの教育を考えるにあたっては、大いに参考になる。

「人生で大切なこと」と大上段に振りかぶったタイトルであるが、その内容には全く同意である。
タイトルに偽りはない。
十分に一読の価値はある。
自分もそろそろこうした「語る言葉」を持ちたいと思うところである。
そういう意味でも、大いに参考にしたい一冊である・・・

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2014年12月09日

【奇跡の営業】山本正明



第1章 営業での成功は「紹介」なくしてありえない
第2章 うまく話せない人ほど紹介は生まれる
第3章 アンケート用紙一枚で成績が劇的に伸びる
第4章 楽しくなけりゃ、営業じゃない!

著者はソニー生命のライフプランナー。
44歳にしてまったく畑違いの建設業から転職し、10年連続で毎週2件以上の新規契約を獲得(これはかなり凄い事のようである)するという、まさに「奇跡」の成績を収めている方のようである。

そんな著者が、自らの「奇跡の成績」の要因として挙げているのが、「紹介」。
これは営業に関しては、もうあちこちで語られているので、「今更」感が強い。
個人的には、「やっぱりそうなんだね」と確認するのみである。
もちろん、初めてという人には非常に参考になるだろう。

そんな自分であるが、では学ぶべきところはないかというと、そんな事はない。
まず、建設業というまったく保険と関係のない世界から飛び込んで、なぜ成功へ辿りつけたのか。
その秘訣として著者は、「『いいな』と思うことを素直に真似すること」と語っている。

たとえば著者は、同僚からスーツの胸ポケットに木綿の白ハンカチをさすといいと聞き、即真似したという。
これは簡単なようで、なかなかできない(みんなやらない)事だと思う。
頭でわかっていても、やらないのが人間なのである。
こういうところは意識したいと思う。

さらにその考え方。
・「保険に加入できないお客様」のもとにこそ「行くべき」である
・「非効率の効率」
・価格をアピールすれば例外なく不安が生まれる
要するに、「目先の利益」を追いかけてもダメで、まずは「人の役に立つ」事を先に意識すべきという事なのだと思うが、思うところ大きい。

自らのスタンスについては、
・自分をさらけ出せば相手は共感してくれる
・「いいな」と思ったことは今日からすぐ実践する
・ノウハウは秘密にするより公開した方が断然お得
という点に注意を惹かれた。
こうした考え方はすぐに取り入れたいと思う。

また、「ニューロ・ロジカル・レベルにおける5つの階層」という考え方は、初めて知ったが、これも興味をそそられた。
@ 自己認識・ミッション・使命
A 信念・価値観
B 能力
C 行動
D 環境
という5つの階層があり、例えば下位の「環境」を変えたければ、その上位の「行動」を変えるという考え方らしい。

総じて並はずれた結果を出している人には、学ぶべき点が多い。
「紹介」こそすべてなのだろうが、そこにプラスαされたものがなければ、「仏作って魂入れず」になるだろう。
素直に見習いたいと思わせられる一冊である・・・
   
    
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2013年11月03日

【ハーバード・ビジネススクール「これから」を生きるための授業】エリック・シノウェイ/メリル・ミードゥ



原題:Howard’s Gift
1 すべての働く人へ−ハワード先生「後悔しない生き方の授業」
2 「ピンチ」を人生最大の「チャンス」に変える方法
3 夢をかなえる人はゴールからスタートを切っている
4 一度きりの人生を、あなたはどう描くか
5 「自分らしさ」は選べる
6 「自信を土台にできる人」「自信過剰に陥る人」
7 “弱点”をなくすより、“強み”を伸ばしなさい
8 「他人が敷いたレール」を走らない
9 情熱に火をつける「メンター」を探せ
10 上手に助けを求められる人
11 「もっと自分を高める環境」を選ぶ
12 時に「人生の迷路」を楽しめ
13 「失敗をバネにできる人」が得るもの
14 未来を切り拓く人は、もう静かに行動を起こしている

原題は、ハーバード大学教授であるハワード・スティーブンソン教授から取られている。
ハーバードの大学院で教授に師事した著者が、ハワード教授から学んだ教えを一冊の本にまとめたのが、本書である。
そこで語られるのが、「いかに生きるか」。

人生には「変動期」が訪れる。
それは、「追い風の時」「向かい風の時」「沈黙の時」の3つに分類される。
どの時期がどうだという事はなく、ただその時どうするか、が問われる。
「何もしない」のは最悪の判断。
一つ一つの出来事に、「自分はこのことに対し、何ができるだろう?」と問い掛けて、自分で人生の舵を取らないといけない。

生き方を考える上で、参考になるのが、「ゴールからスタートを切る」事。
「自分の葬式で、人々に自分のことをどのように語ってほしいか」を考えるといい。
自分はどんな人間になりたいのか。
何を遺したいのか。
それが考えるヒントとなる。

人生の日々を過ごす中で、すべてA評価をとろうとしてはいけない。
AマイナスかBプラスの平均点で良いのだと自分に認めてやる事が大切。
そしてその過程でやるべき5つの宿題がある。
@ 必要と欲求を区別する
A 投資コストと機会のコストを比較する
B 利益と不利益をはっきりさせる
C 比例と釣り合いを考えよ
D 目標を正しい順番に並べよう
宿題をすべて片付け時間配分に迷ったら、「エネルギーが一番増えそうなもの」を選ぶといい。

努力が有効なのは、ある能力が改善可能で、克服すべき壁が高くない場合のみ。
120キロのレスラーが努力しても、棒高跳びで良い成績を残すのは難しい。
仕事で目標を達成した人は、「自分の得意なこと」「好きなこと」「必要とされる能力」がピタリと合致する仕事を見つけられた人である。

自信と傲慢は別。
転職に二の足を踏むのは普通の感覚。
能力を正しく評価し、最大限に活用してくれる会社は必ず存在するが、自分から積極的に探さないとけっして見つける事はできない。

転職せずとも「リスクを負ってでも前進する」という考え方は、どこでも当てはまる。
その際、リスクについて予測するのに5つのステップがある。
@ リスクを分散する
A 長期的な影響を見る
B スタートからゴールまで見て、それからゴールからスタートまで見なおす
C やり直しがきく決断と、やり直せない決断とを分ける
D リスクを分散させる

さらに3つの注意点として、
@ リスクに関して、他人の定義に振り回されてはいけない
A 心配するべきときが来るまで心配するな
B 選択しないことを選択するな
が挙げられる。

そして、大事なことは「成功と失敗の間に線を引くことはできない」ということ。
失敗も次の成功の元となることは多々ある。
最後に「水しぶきを立てるだけでなく、さざ波を起こすように計画を立てる」事が説かれる。
より長く残り、広い範囲に広がるのがさざ波。
これはなかなか含蓄のある言葉。

全体的にアメリカの社会をベースにした話だが、日本の社会においても役立つ事が多い。
自らの生き方を考える上で、参考になる一冊である。
    
  
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2013年08月02日

【日本一勝ち続けた男の勝利哲学】加藤廣志



第1章 夢中になることの大切さ
第2章 組織作りは人作り
第3章 ピンチを絶好のチャンスに
第4章 勝つためにすべきこと
第5章 自らの引き際と後継者育成の極意

著者は高校バスケットボールの名門能代工業高校の元監督。
高校野球では甲子園が全国大会の象徴であるが、バスケットは国体、インターハイ、選抜大会と三大大会があるらしい。
その全国大会を述べ50回以上にわたって制覇しているというから、それは凄い。
その基礎を監督として作っていったのが著者。

まず目につくのが「情熱」という言葉。
「指導者は燃えるような熱い情熱がなければだめだ」という言葉には、文字通りの熱い信念が伝わってくる。
何事もそうであるが、やはり何かを為す時には、この「情熱」という言葉はキーになると思う。

秋田という田舎で、素質に恵まれない生徒たちを前に、著者はどうしたら勝てるかと考える。
強豪校へ電話をかけて教えを請う。
電話一本かける勇気が必要だと説く。
またそうして学んだ事でも、自分達に合わないと判断すると捨てるのを厭わない。

これはバスケットに限らずであるが、やはり全国制覇するチームには礼儀という部分でもしっかりしているようである。
指導者としてそういう部分にも著者は目を配っていたようである。
強豪校を作り上げる手法というものに興味はあったのであるが、そういう部分はあまり目につかなかった。
具体的な練習方法は書いても仕方ないと判断したのか、それはあまり重要でないのか。

ただある程度の緊張感というのは意識していたようで、監督が病気療養明けに出てきた時のエピソードは印象的である。
またチーム作りを「○年構想」とする指導者がいる事に反発する。
生徒は毎年変わる。
今いる生徒を重視しない考え方には同調できないという考え方には頷けるものがある。

「ひとりを大切にするチーム」
「留守部隊も勝利を喜べる組織」
そんな言葉が並ぶが、強いチーム作りには、技術以外のものが大きな意味を持つのかもしれない。

バスケットに限らず、いろいろなチーム作りに参考になるかもしれない一冊である・・・
    
  
posted by HH at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス/人生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする