2020年06月03日

【堀江貴文VS.鮨職人−鮨屋に修業は必要か?−】堀江 貴文 読書日記1155



《目次》
vs.くろ崎 黒崎一希氏
vs.照寿司 渡邉貴義氏
vs.鮨一幸 工藤順也氏
vs.はっこく 佐藤博之氏
vs.鮨りんだ 河野勇太氏
vs.鮓職人秦野よしき 秦野芳樹氏
vs.鮨あらい 新井祐一氏

「鮨職人になるために何年も修業するのはバカ」というホリエモンの発言は記憶にある。私にとってはちょっと衝撃的な言葉だったので、よく覚えている。衝撃的だったのは、「鮨職人になるには、何年も修業するのは当然」と考えていたこともあるが、何より「言われてみればその通りかもしれない」と思ったからである。最近では、回転寿司も独自にネタを調達してきたりしていて味も美味しくなってきている。であれば、握りの技術など意味はないのかもしれない。そんなこともあって、興味を抱かされた一冊。

内容は、ホリエモンと7人の鮨職人の対談本である。みんな高級店の職人である。最近、鮨をめぐる環境変化はすごいのだという。1人3万円以上もする鮨屋の予約が数年先まで埋まり、店の増え方も凄まじいらしい。悲しいかな、そういう鮨屋にはとんと縁がなく、したがってそんな状況もわかるはずもない。7人の職人は皆比較的若いが、何年も修業してやっと上に上がった先輩にしごかれまくった最後の世代だという。

そんな職人たちが語る現代の鮨職人の姿は、イメージとは異なる。何より夜明け前から毎日市場に行くことはないのだという。LINEを使えば産地の仲買人と簡単に写真をやり取りし、(写真だけでいいネタを見分けられるから)それを送ってもらうだけなのだとか。「市場は人と喋りに行くところ」という感覚は、鮨職人でも古い人にはついていけないものかもしれない。最初に仲買人を紹介してもらうと、普通は紹介した人の方にいいネタを渡すのは当然。そこでいかに食い込んでいくか。その時点でもう始まっている。

ここに出てくる職人さんはただ成功したのではない。若い頃に、日当を手に東京で食べ歩きをし、7〜8年分の給料はそれに使ったという努力は並大抵ではない。そして鮨は結局、「素材」だという。いいネタをいかに確保するか。競り番が1番2番変わるだけでネタも大きく変わるのだとか。名店になればなるほどいいネタを手にできるらしい。となると、一生懸命握りの練習をしてもダメなわけである。

さらに「教科書通りの仕込みは1万円以下の鮨屋にしか通じない」というのも知られざる世界。だからこそいいところで修業する意味があるのだという。コミュニケーションも大事で、「全員が“食べきる”満足感を得られるように、顔色を見てシャリの大きさを変える」なんてところも「また来たい」と思わせる秘訣なのかもしれない。「結局は人間力」という言葉もなるほどと思わされる。

「12時過ぎたらLINEが来て情報共有、競りの前に取引してしまう」
「マグロも1週間前から競りに出る前の情報が届く」
こんなこと、町の普通の鮨屋が聞いたらやってられないかもしれない。どうやらいくら回転寿司の味が向上しようと、この本に出てくる職人さんの経営する店には敵わないのかもしれない。一度くらいは確認に行きたいが、庶民にはなかなか勇気がいる。結論としては、カウンターの鮨屋だから回転寿司よりうまいということはなく、高級店ではない普通の店舗であれば回転寿司の方がコストパフォーマンスは高いのかもしれない。

いずれ1人3万円以上する鮨屋に、気軽に行けるようになりたいとつくづく思わせてくれる一冊である・・・



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2020年01月14日

【1兆ドルコーチ−シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え−】エリック・シュミット/ジョナサン・ローゼンバーグ/アラン・イーグル 読書日記1111



原題:TRILLION DOLLAR COACH THE LEADERSHIP PLAYBOOK OF SILICON VALLY’S BILL CAMPBELL
《目次》
1 ビルならどうするか?―シリコンバレーを築いた「コーチ」の教え
2 マネジャーは肩書きがつくる。リーダーは人がつくる―「人がすべて」という原則
3 「信頼」の非凡な影響力―「心理的安全性」が潜在能力を引き出す
4 チーム・ファースト―チームを最適化すれば問題は解決する
5 パワー・オブ・ラブ―ビジネスに愛を持ち込め
6 ものさし―成功を測る尺度は何か?

 この本は、アメフトのコーチ出身でありながら、優秀なプロ経営者であり、スティーブ・ジョブズの師であり、グーグルの創業者たちをゼロから育て上げたというビル・キャンベルという人物を紹介したもの。残念ながらご本人は既にお亡くなりになっているそうだが、3人のライターが取材を通じて、そのコーチングを追ったものである。

 そのビル・キャンベルであるが、生前は毎週日曜日にスティーブ・ジョブズと散歩に行き、そこでいろいろと相談に乗っていたという。そんな関係になったのも、1985年にスティーブ・ジョブズがアップルから追放された時、それに抵抗した数少ない同社幹部の1人だったということにあるのかもしれない。そのあたりの経緯はとても興味があるが、この本では触れられていない。

 やっぱり元アメフトのコーチらしく、個人よりはチームを重視していたようである。それは、「企業の成功にとって重要な要素は、会社のためになることに個人としても集団としても全力で取り組むコミュニティとして機能するチーム」という考え方があったようである。そしてそのチームにおいては、まずマネジャーの役割が大事なようである。
 1. リーダーは部下がつくる
 2. 人がすべて
 3. マネジャーの最優先課題は、部下の幸せと成功
そんな考え方が紹介されるが、部下の立場ならそんなチームで働きたいだろう。

 マネジャーにとってコミュニケーションが大事で、それが会社の命運を握るとも言える。そのための最重要ツールは「1 on 1」を正しくやることだとする。これが、部下が実力を発揮し成長できるよう手助けできる最良の手段だという。この時、相手に神経を集中させ、じっくり耳を傾け、相手が言いそうなことを先回りして考えず、質問を通して問題の核心に迫ることが必要らしい。質問を通じたソクラテス方式の対話である。

 人はありのままの自分でいられる時、そして全人格をかけて仕事をするとき最も良い仕事ができるという。そのためにはチームとして「正しく勝利する」ことがすべてであるとする。正しく勝利するとは、「倫理的に正しく」という意味で、勝てば何をやってもいいということではない。このあたりは、スポーツであろうとビジネスであろうと、およそチームで何かを成し遂げようとする場合は必要なことだろうと思う。

 そんなチームにおいては、個人も求められるものがある。「知性」「勤勉」「誠実」そして「グリット」。チームファーストの姿勢が大事であり、物事がうまくいかない時には「誠意」「献身」「決断力」がリーダーには求められる。チームを良い状態に持っていけば、必ず問題をうまく解決することができる。人々が絆で結ばれる時、集団は強くなれる。まったくその通りでないかと思う。

 繰り返すようだが、スポーツもビジネスも「チームで成し遂げる」という点では同じである。元アメフトコーチであるビル・キャンベルが成功したのは、そういう意味で当然なのかも知れない。残念ながら本人は故人であり、直接その考えを知ることはできない。そういう意味では、本人の考えをもっと知りたかったと思う。それでも多くの人を取材して故人の成し遂げたことを再現したこの本でもそのエッセンスは感じ取れる。

 今、自分の所属している中小企業でも「チーム」の考え方は当てはまると思うし、それを重視したビル・キャンベルの考え方を是非とも実践していきたいと思う。どんな人だったのか。もっと早くにその考えに触れてみたかったと思う一冊である・・・

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2019年12月12日

【時短の科学−非製造業の生産性向上を初めて体系化!−】内藤 耕 読書日記1103



《目次》

第一章   なぜサービス業では時短が進まないのか
第二章   生産性が上がり、時短が進む方法
第三章   サービス業の生産性はどこまで高められるか
おわりに

 世の中は「働き方改革」の掛け声が勇ましいが、中小企業ではなかなかそうも言っていられない。「残業削減」は、「働き方改革」の面でも「人件費負担軽減」の面でも会社の至上命題になっているが、一方でお客様に迷惑はかけられない。その板挟みとなった従業員は、「サービス残業」に走らざるを得ない。この本は、そんな状況を少しでも改善するべく、時短を進めながら売上や利益を伸ばして成長し、従業員は収入を増やし、お客はより良い商品やサービスを得ることを考えた一冊。
 
 人口減少社会において、生産性の向上はあちこちで叫ばれている(『日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義』)。中でも特にサービス業での生産性の向上が必須であると著者は説く。しかし、サービス業で生産性向上が難しいのは、製造業と比べサービス業では、在庫が不可能であることがその最大の違い。ラーメンを速く作るだけでは限界があるのである。ここで「生産性(労働生産性)」とは、「付加価値」➗「労働投入量」と定義されている。「付加価値」と「労働投入量」は一見、二律背反の関係に見えるが、実はそうではなく、独立した関係だとする。

 まず、大半の会社は適切な人員配置、シフト管理ができていないとする。ここで具体例としてあげられているのが、かつては 「地獄の白菊」と呼ばれた「ホテル白菊」。残業が多く、年間休日数も少ないという典型例。朝食バイキングの提供方法を変えることに象徴される改革で、わずか1年で残業時間は月数時間に減少し、年間休日数も大幅に増加。さらに顧客満足の向上で客単価もアップしたという。これほど劇的な変化だと気持ちもいいだろうと思う。

 世に言う「人手不足」は生産性が低い証拠だとする。何でも闇雲にやるのではなく、「お客様の求めていないことはすべてやめる代わりに求めていることはすべてやる」と言う徹底も必要。著者は、リアルタイム・サービス法こそ生産性向上の鍵だとする。これはお客の流れに合わせてスタッフを移動させるというもので、考えてみれば理にかなっている。そしてこれを可能にするのがマルチタスク化である。

 こうした改善に取り掛かるにあたり、現状把握として、「プロット分析」「業務・人員推移グラフ」などを利用する。ここで関心を向けなければいけないのは、「忙しい時間でなく、ひまな時間」。これは素人的にはなかなか思いつかないと思う。残業時間の削減は後回しにして、人員配置の無駄をなくすことから始める。リアルタイム・サービス法とは、「必要な時」に「必要な人数」が「必要な場所」にいるシフトを実現することである。

 個人的には理論もいいのであるが、やはり具体例に勝るものはない。例えば、作り置き料理をやめた大型旅館の例。「一度に大量に作る」ためには「営業開始の3時間前から大人数で調理」していたが、「こまめに注文量を作る」体制にシフトしたことにより、「営業が始まってから少人数で調理」できるようになったという。「小ロット化」と「マルチタスク化」の具体例がよくわかる。

 打つべき手は「やりたいこと」「できること」「やらねばならぬこと」という3つの中に必ずあるとする。通常、「戦略」→「戦術」→「実行」という流れになるが、まず「やらなければならないこと」をやり遂げ、中でも「できること」を優先して行い、最後に「やりたいこと」をやるという逆の流れ、すなわち、「制約条件から戦術を生み出す」ことが大事という考え方も、はたと気づきを与えてくれる。  

 今の仕事は特にここで改善例として採り上げられているような時短が必要な状況ではない。関係ないと言えば関係ないが、それでもこうした考え方を知っておく事は何かの参考にはなると思う。ましてや、同じようにサービス残業が常態化しているような会社であればなおさらであろう。「サービス品質を上げる」ということでも大いにヒントが得られる一冊である・・・





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2019年10月28日

【たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場】吉川圭三 読書日記1086



《目次》
第1章 日テレ快進撃の前夜に出会った「怪物」たち
第2章 たけし・所と『世界まる見え』で大逆襲
第3章 さんまと『恋のから騒ぎ』
第4章 所ジョージの品格と「ダーツの旅」
第5章 テレビはどこへ向かうのか

 著者は、元日本テレビのプロデューサー。現役時代は「世界まる見え!テレビ特捜部」や「恋のから騒ぎ」を手がけたらしい。そんな元プロデューサーが、明石家さんま、ビートたけし、所ジョージらとともに活躍したかつての時代を振り返りつつ、テレビの今後のあり方について語った一冊。

 著者は、テレビが最も妖しい魅力を放つのは次の3つだという。
1. 狂気を孕んだ時
2. 公序良俗に反することやタブーが暗喩として上手に表現できた時
3. 予測不可能な展開が起こった時
 かつての時代はそれがあったが、近年テレビを取り囲む環境は激変し、それによってテレビは飼い慣らされた大人しいメディアになってしまっているという。あまりテレビを見ない身としては、ちょっとピンとこない。

 『シン・ゴジラ』ならぬ「シン・テレビ」を目指すには、既成概念をひっくり返すような新しい映像コンテンツに変化することが待たれているというが、一体どんなものなのだろう。こういう考え方は、デレビ業界だけではない気もする。そう語る著者だが、まず始めは明石家さんまとのエピソード。当時、日本テレビの大物プロデューサーの対応のまずさから日本テレビは明石家さんまと仕事ができない状態だったのだとか。それを著者は毎週ラジオの収録現場に訪れ、オフアーの機会を待ったという。

 やがて、明石家さんまがシャレで言った「プールを持ってこい」という言葉を実現させ、気に入られたのだとか。当時、台本がきちんとあるのが当たり前だったらしいが、明石家さんまはフリートークの天才であり、それを著者は自分の番組では活かしたのだとか。そのほかビートたけしや所ジョージの数々のエピソードが語られる。ただ、そのあたりは人気タレントの舞台裏から見た顔というだけで、面白いと言えば面白いがそれだけである。

 個人的には、やっぱりタレントの裏側から見た顔という話よりも、自らの仕事の苦労話の方がなんとなく心地よい。「テレビマンとして一番鍛えられた体験は」という質問に、著者はある番組での海外ロケだという。予算がない中、面白いものを探し出し、それをどうすれば魅力的にできるかを瞬時に考えるということだったらしい。このあたりをもっと詳しく聞きたかったと思う。

 「自己発信力のビートたけし」、「反射神経の塊である明石家さんま」「空派を作り出す所ジョージ」という大御所3人の知られざるエピソードは確かに興味深いが、逆に言うと「それだけ」と言う気もしなくもない。あるいはテレビをよく見ている人なら、それなりに面白いのかもしれないが、例えば「ダーツの旅」の話が出てきても、どんな番組だったのかわからないからなんとなく話に乗れなかったところはある。それが証拠に、「恋のから騒ぎ」については、イメージが良くできて面白く読めたところである。

 テレビ番組を企画するにあたっては、「みんなが群がるものには成功の種は埋蔵されていない」と言う。それはどこの業界でもそうだろうと思う。著者は、今はドワンゴに転身していると言うが、テレビ業界はネット業界に学ぶところが多いと言う。やり方次第ではいかようにでもなると、最後は真面目な提言で締めくくられる。期待したいと言いたいところもあるが、今後もあまりテレビを見ることはないだろうから微妙である。

 それにしても、やっぱり大御所3人のエピソードが面白い一冊である・・・



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2019年09月25日

【アウトルック最速仕事術−年間100時間の時短を実現した32のテクニック−】森 新 読書日記1076



《目次》
1章 一番大切なPCのスキルは「Outlookスキル」
2章 時間のロスになる「画面の切り替え」を減らすテクニック
3章 「脱マウス」に近づくための10の基本ショートカット
4章 仕事にスピードが生まれるメールの整理法
5章 もっと時短したい人のためのスーパーテクニック
6章 もっと時短したい人のためのショートカットキー上級編
7章 よくある質問

 著者はショートカット・Outlook研究家。そんなものがあるのかと思うが、何にせよその道を極めれば自分で名乗れるわけである。元々はサラリーマンであるが、アウトルックスキルの獲得による生産性の大幅向上の余地を発見して独自に研究を重ねたそうである。それを情報発信したところ、個人ばかりか法人まで講演のオファーを受ける大人気講座になったと言う。それが書物化もされているわけで、内容よりもそうした経緯の方が興味深い。

 内容はといえば、もうタイトルにある通りのOutlookのスキルである。これまで仕事でOutlookを使っていたが、「なんとなく」使いこなしているだけであったというのが本書を一読しての結果。著者はこうしたスキルを「時短」に活かすべしとしている。もちろん、仕事の効率化になることは間違いないのであるが、単純に「便利」であるというのが個人的な感想である。

 Outlookの効率的な使い方のポイントは、「キーボードで操作すること」だとする。これはすなわちショートカットキーに他ならない。普段、マウス操作中心の人は戸惑うかもしれないが、私自身はExcelやWordはすでにショートカットキーを使っており、違和感はないし不便もない。それよりも「機能」を覚える方が先だと感じる。ただ、普段使っていることでも「ファィルは先に添付する」なんてことは、メールを送った後うっかり添付し忘れて再送するなんてちょくちょくやっている人にはいい気付きだと思う(自分にもよく当てはまる)。

 個人的にすぐに取り入れたのは、「メールの表示」「タスクの表示」「アーカイブフォルダーに移動」「差出人別検索」「クイック操作」である。使ってみればなかなか便利な機能であり、これを知っただけでもこの本を読んだ価値はあるというもの。メール以外にも会議機能などがあり、これは普段使用していない。個人だけで利用する機能でもないので仕方ないところはあるが、メール機能だけでも十分である。

 薄い本であるので、読むのに時間はかからない。もっとも「読む本」というより、覚えるまでは手元に置いて何度も参照するのに使う本だと言える。そういう意味で、職場のデスクに立て掛けておきたい一冊である・・・






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2019年09月13日

【変革のアイスクリーム 「V字回復」を生んだ13社のブランドストーリーに学ぶ】新井範子 読書日記1072



《目次》
第1章 新しいスタイルとイメージの創出
第2章 日本独特「和風」アイスの確立
第3章 成熟市場で「贅沢さ」を追求
第4章 「面白い!」が広げるアイスへの導線
第5章 BIGサイズでストレートに訴求

 アイスクリームの販売額が年々増えているという。普段、食べないことはないが、取り立てて意識したすることもない。しかし、実は10年前から右肩上がりで伸びているらしい。その理由は何なのか。主要アイスクリーム・メーカー各社が展開した商品開発マーケティング戦略をブランドストーリーで分かりやすく紹介したのが本書。著者は上智大学経済学部経営学科の教授ということで、まさに御専門領域を記した一冊である。

 V時回復の要因としては、まず外部環境から説明される。コンビニが増加し、店と家(の冷蔵庫)が近くなったこと、家庭用冷蔵庫の冷凍庫の大型化、オープンショーケースの技術の進化等によりアイスクリームの保管能力が格段に向上。その上にメーカー各社の製品開発努力が加わる。こうした要因により縮小していた市場から脱却し、拡大路線に乗ってくる。

 まず初めに紹介されるのは、森永乳業のパルム。もう店頭ではお馴染みであるが、考えてみると実は食べたことがない。コモディティ化を打開する必要があり、「大人が満足できるシンプルで上品なアイスクリーム」を目指して開発される。その結果、価格競争を脱して市場の成熟化、コモディティ化を打破する新商品となる。

 アイスクリームという成熟市場で勝負する新商品は、明らかな差別化要素を持つ必要があると著者は語る。それを満たす製品が順を追って説明される。
1. 森永乳業「パルム」:手の届くプレミアム
2. ロッテ「クーリッシュ」:「飲むアイス」による「いつでもどこでも」
3. 井村屋「あずきバー」:小豆へのこだわり
4. 丸永製菓「あいすまんじゅう」:和風アイスクリームではなく、「冷たい和菓子」
5. オハヨー乳業「ジャージー牛乳バー」:ジャージー乳というこだわり
6. 赤城乳業「ガリガリ君」:売り場に人を集める

 個人的にいつも食べている「ジャンボモナカ」も「パリパリ」に対するこだわりとして紹介されている。事実、いつも食べるとチョコレートがパリパリしてバニラとの混じり具合がなんとも言えない味わいである。個人的な好みはあるものの、総じてこの本で採り上げられているアイスクリームはどれも美味しそうである。開発する方もいろいろ考えているのだと改めて思わされる。

 結局のところ、アイスクリームが売れる要因は何と言っても「味」であり、その部分で何にこだわり、どう他の製品と差別化するかである。それを各社の取り組みとして丁寧に解説している。なるほど、成熟市場でも十分開発の可能性はあるのだと思わされる。「成熟市場だから」とこれまでのものにこだわるのではなく、それなりに工夫を重ねてみるべきなのかもしれない。今度はこの本に書かれた開発ストーリーを思い浮かべながら、ジャンボモナカ以外にも試してみたいと思わされる一冊である・・・

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2019年07月09日

【世界のセレブが夢中になる究極の瞑想−超越瞑想の力−】ボブ・ロス 読書日記1047



原題:STRENGTH in STILLNESS The POWER of TRANSCENDENTAL MEDITAION

《目次》
INTRODUCTION 1日2回の瞑想で心身をリセット
Part1 超越瞑想を知る
 第1章 瞑想の準備――超越瞑想とは何か
Part2 超越瞑想を実践する
 第2章 瞑想1日目──最初の一歩
 第3章 瞑想2日目──正しい瞑想のポイント
 第4章 瞑想3日目──ストレスなく成功する
 第5章 瞑想4日目──瞑想の効果を大きく育てる
Part3 超越瞑想を自分のものにする
 第6章 超越瞑想を体感──変化は内側から始まる
 第7章 超越瞑想が起こした奇跡──「私の物語」ボブ・ロス

 著者は本書のテーマである「超越瞑想」なる瞑想方法の教師だということ。瞑想もただ目を瞑ればいいというものではないらしい。冒頭からヒュー・ジャックマン、マイケル・J・フォックス、オプラ・ウィンフリー、グウィネス・バルトロウら著名人の感想が並ぶ。なかなか興味をそそられるところである。

 超越瞑想自体は古くからあるもののようで、著者はマハリシ・マヘーシュ・コーギーなる瞑想教師から直接指導を受けたという。超越瞑想自体は難しいものではなく、非常にシンプルでどんな人でも努力することなく体験できるのだという。瞑想も実は3つに分類されるのだという。「フォーカス・アテンション瞑想」「オープン・モニタリング瞑想」「自動的な自己超越瞑想」がそれで、超越瞑想はそのうち「自動的な自己超越瞑想」に該当するという。

 この本では、超越瞑想とはどのように働き、どんな効果があるのかがまず説明され、それを行うと心身にどんな変化・影響があるのか、そして始めるにはどうしたら良いかが続いて語られる。いわば超越瞑想のためのガイド本といったところであろう。超越瞑想を行うと心身ともにリラックスすると同時に意識は極めて鋭敏になるという。目を閉じてじっとしいるだけなので、場所はどこでもいいし、これだけの効果があるならやってみたいと思わされる。

 瞑想の真似事をやってみたことがあるが、いつの間にかいろいろと思考が巡らされてとても集中できなかった記憶がある。日本で言えば坐禅のイメージであるが、じっとしているのも大変である。どうやってそれらを克服するのだろうかと思うが、しかし超越瞑想は思考も動いても眠ってさえも良いとする。そんなのでいいのかという気もするが、マントラというある言葉や音のようなものを使うと思考を極限まで小さくでき、それが秘訣のようである。

 パーキンソン病を患うマイケル・J・フォックスの震えが止まったとか、いろいろと各著名人の効果を聞くとやってみたくなる。人それぞれに異なるマントラを授けてもらう必要があるらしく、この本を読んでも超越瞑想はできない。1日90分、4日間のコースを受講する必要があるということで、この本を読んで興味を持ったらどうぞということのようである。さらにご丁寧に日本国内の施設の案内もついているし、勧誘本としても役割もあるようである。

 本を読んでも実践できないのはしかないが、本物の「瞑想」そのものをいつか体験してみたいと思わせてくれる一冊である・・・

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2019年04月02日

【サブスクリプション「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル】ティエン・ツォ/ゲイブ・ワイザート 読書日記1012



原題:Subscribed
《目次》
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第 I 部 サブスクリプション・エコノミーの到来
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第1章 製品中心から顧客中心へ――すべては顧客を知ることから始まる
第2章 小売業にまつわる誤解――古い「筋書き」を逆転させる
第3章 メディアの隆盛――新たな黄金時代の幕開け
第4章 飛行機、電車、自動車――サービスとしてのモビリティ
第5章 新聞・出版――かつて新聞を出していた会社
第6章 テクノロジー産業の復活――魚≠飲み込め!
第7章 IoTと製造業の興亡――モノを売る時代は終わった
第8章 所有から利用へ――あらゆるビジネスに広がる成長機会
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第 II 部 サブスクリプション・モデルで成功をつかむ
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第9章 企業がサブスクリプション・モデルを選択するとき
第10章 イノベーション――永遠のベータ版にとどまれ
第11章 マーケティング――4つのPが変わった
第12章 営業――8つの新しい成長戦略
第13章 ファイナンス――新しいビジネスモデルの構造
第14章 IT――製品ではなくサブスクライバーを中心に置く
第15章 組織にサブスクリプション文化を根づかせる

 「サブスクリプション」とは、最近よく耳にする言葉であるが、どんなものかと思って手にした一冊。一応、ビジネスマンとしては最低限の知識ぐらいないといけない。そんな経緯で読み始めるが、「サブスクリプション」とは、要は顧客の「利用」に焦点を当てたサービスの提供ということである。ネットフリックスやDropboxなどが例として挙げられているが、単なる「月額課金モデル」と捉えるとそれは違うらしい。

 著者は、自らサブスクリプション・モデルへのビジネス変革と収益向上を支援するSaaS(Software as a Service)プロバイダ企業のCEO。世界の中心はいま製品からサービスへ移行しつつあるというのが著者の主張。「製品」から「利用」への移行、「製品の時代」から「顧客の時代」への移行ということがこの本では盛んに主張される。そんな流れにあっては、あらゆる消費者ブランドに絶対必要なのは「顧客を知る」ということであるとする。

 例として出て来る企業は、日本でも馴染みのある企業もあれば初めて聞いた企業もある。ネットフリックスやDropbox、ウーバーは前者であり、Spotifyやムービーパス、パトレオン、リフトなどは後者である。ライドシェアサービスも車や自転車は日本でも広がり始めているが、サーフエアというのは、空のサブスクリプションで、メンバーになると月額定額制で無制限乗り放題らしい。

 著者によると、「サブスクリプション化できないものはない」とする。新聞も従来の広告モデルから購読料モデルへとシフトしているし、その例を見ていくと様々である。コマツやキャタピラーの機械については、どこにあろうとオンラインで監視していてメンテナンスのタイミングをタイムリーに知らせる仕組みを構築しているという。IoTとしても聞いている例であるが、著者の主張も大げさではないとわかる。

 ヘルスケア業界、政府・自治体機関、教育産業、さらには我らが不動産業界などあらゆる業界が対象となっている。「所有という概念は死んだ」という著者のニーチェばりの言葉が印象的である。サブスクリプション・モデルの損益計算書も説明されているが、これはイマイチである。「年間定期収益(ARR)」や「解約(Churn)」なる概念はそれらしいが、結局損益計算書は損益計算書であり、何か特別なものという感じは見受けられず、よく理解できないところであった。

 こうした1つの流れをきちんと理解しておくという意味では、ビジネスマンの基礎知識として必要だろうと思う。その入門編としてはなかなか面白い一冊かもしれない。考えてみれば、我らが不動産賃貸も、「利用」という点にスポットを当てて、月額利用料金をいただくという意味ではサブスクリプション・モデルなのかもしれないと思ってみたりする。
 何か新しいことを考えようとする時には、ちょっと頭の体操として参考になるかもしれない一冊である・・・




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2018年07月25日

【高田明と読む世阿弥−昨日の自分を超えていく−】高田 明/増田 正造  読書日記940



第1章 〈積み重ねる〉自己更新
第2章 〈伝える〉プレゼンテーション
第3章 〈変える〉革新
第4章 〈つなぐ〉永続

著者は、ジャパネットたかたの創業者。ある時、社員から「社長がいつも社内で語っていることがそのまま書かれている」と手渡されたのが、世阿弥について書かれた本であったという。著者も素直にそれを読んで共感し、本書に至っているようである。真理というものは、時を経ても変わらないものだと思うが、その見本みたいなものであろう。

著者は、世阿弥に共鳴できる点として以下を挙げる。
1. 仕事や日常生活に役立つプレゼンテーション論やコミュニケーション論
2. 不遇の時代をいかに過ごし、絶頂の時にいかに慢心を抑えるか
3. 他人の評価に一喜一憂することなく、自分の夢を追い続けるための心構え
個人的には、「昨日の自分を超えていく」という自己更新の考え方だろうか。「自分史上最高を常に目指していく生き方」という言葉は、とても良い響きがする。

「タイミング」という点で、世阿弥の「男時、女時」という言葉が紹介される。「男時」とは、勝負事において自分の方に勢いがあり果敢に攻める時とされる。「女時」は逆にじっと耐えてやがてくる男時に飛躍する英気を養う時とされる。これは自分も共感する。外部環境に変化が起きたら、自分ではどうすることもできない部分は諦めて自分でどうにかできることに集中するということは心しておきたいことである。

「悩みの99%は悩んでもどうにもならないこと」という考えは、その通りだと思う。こういう何気ないが、「そうだよなぁ」と思わされることがさり気なく語られるのが良い。世阿弥は能楽師ゆえにプレゼンテーションという部分で特に著者は、共鳴するところが多かったようである。そういう部分に関心がない自分としてはスルーしそうになったが、「自分の言い分だけ連呼していたら相手の心には届かない」という部分は、自分も感じるところがあった。

「我見、離見、離見の見」という考え方も然り。「我見」とは「役者(自分)の見方」、「離見」とは「観客(相手)の見方」、「離見の見」とは「役者が観客の立場になって自分を見ること」。相手の立場に立つということは簡単ではないが、いつの時代も真実なのだろう。
1. すべての独創は模倣から始まる
2. その時の正解が正解(一度うまくいった方法を惰性で続けてもダメ)
これらも共感できる真実である。

その昔、学生時代に『風姿花伝』を読んだことがある。今も本棚の奥深くで眠っているが、また引っ張り出してきて埃を叩いて読んでみようか。そんな気にさせられる一冊である・・・



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2018年07月20日

【遅刻してくれて、ありがとう−常識が通じない時代の生き方−】トーマス・フリードマン 読書日記938



原題:Thank You for Being Late:An Optimist’s Guide to Thriving in the Age of Accelerations Version 2.0

Part 1 熟考 REFLECTING
Part 2 加速 ACCELERATING
Part 3 イノベーティング INOVATING
Part 4 根を下ろす

著者は、ピューリッツァー賞受賞の著名なジャーナリスト。ニューヨークタイムズで週2回コラムを書いていたらしいが、その「回転木馬を降りて歴史の根本的な転換点にいることの意味をもっと深く考えよう」として記したのが本書。しばし、待ち合わせで相手が遅れて来ると、思いもかけず自分の時間を作ることができて感謝の気持ちが湧くらしいが、それがこの本の奇妙なタイトルの所以。何事もポジティブに捉えたいものだと思わされる。

全体は4部構成。Part1については、「心から出たことは心に入る。自分の心から出なかったことは他人の心に入らない」という言葉が端的に表している。Part2は、「現在のマシーンの働きについてどう考えるか」。Part3は、「テクノロジーやグローバリゼーションや気候変動などの加速する力が人々や文化にどう影響しているか」。Part4は、「すべてから導き出した結論」としている。全2巻の分厚い本だが、全米ベストセラーというもので、アメリカ人もこういう本を読む人が多いと知って無関心ではいられない。

まずは「ムーアの法則」について語られるが、もう生まれてから50年経つらしいが、この法則は今だに有効だとする。テクノロジーが幾何級数的な速さで加速し続けている。特に2007年はスティーブ・ジョブズがiPhoneを世に発表した年であるが、そのほかにも様々な技術、企業、サービスが誕生していて、エポックメイキングな年であるようである。著者はクラウドを「スーパーノバ(超新星)」と称してその進化のすごさを述べる。これらに母なる自然が加えたものが、2007年以降の加速の時代の原動力となる。

そのうちスーパーノバが最も目に見える形で現れていると思う。
1. 医療への応用では、画像診断や症例検索等により医師をサポートし、医師は患者への対応に専念できる。
2. 中国の物乞いはスマホでQRコードをスキャンするモバイルペイメントで施しに応じる
3. Airbnb、ウーバーらのシェアリングエコノミー
挙げればきりがないほどであるが、個人的にはそうした「進化」にワクワク感を感じる。しかし、一方で環境への4つの大きな問題には背筋が寒くなる。それは、「地球温暖化」、「森林破壊」、「海水の酸性化」、「生物多様性の消滅」である。

さらに2050年に97億人に達すると言われている人口増加は、少子化問題を抱える我が国とは対照的で、「女性が20人の子供を産んでその20人がすべて生きて子供を20人産めば孫が400人になる」という喩えは笑い話では済まない。そんな発展途上国と対照的に、先進国では労働者がほとんどいない工場での製造が可能になる。ISISを産んだ要因の1つは、間違いなく北アフリカと中東においてこの50年で人口が3倍になったことであるということも、暗澹とした気持ちにさせてくれる。

さらにポスト冷戦後、何が従来と異なるのか、著者は思考を巡らせていく。「ムーアの法則」「市場」「母なる自然」は国際関係を作り直していく。アメリカと国際社会は地政学的な安定をどうやってもたらすか。ソ連が崩壊したとは言え、跡を継いだロシアは国家としての安定が何よりも求められており、中国の崩壊は世界経済に深刻な打撃を与えうる。そこには「高度な相互依存関係」がある。

変化する現在の環境で、レジリエンスを創出する上でかつてなく必要不可欠となっているのは、「多様性」だと著者は説く。その例を母なる自然に求め、単一栽培よりも混合栽培のほうが自然の抵抗力が増すとする。当事者意識の文化の促進も重要で、それは「レンタカーを洗車する者はいない」と喩える。当事者意識による自力推進こそが、レジリエンスの重要な構成要素だとする。

相互依存関係の強まる世界で何が必要となるのか。それは破壊力ではなく、建設力。人類という1つの集団の仲間であると捉え、コミュニティが大切であるとする。そのコミュニティの見本として挙げるのが、著者が育ったミネソタ州のセントルイスパーク。モンデール副大統領をはじめとして様々な著名人を生み、多様性が育まれたところだとして紹介する。強力なコミュニティのみがアメリカを再び偉大にするという。多様性という部分では、我が国はちょっと心もとないかもしれない。

上下巻に渡る著者の長い思考の旅は、現代の様々な問題を採り上げていて、読んでいて考えさせられるところ大である。みんなが考えなければならないことだとも思う。分厚い本であるが、頑張って読む価値はある。自分でも世の中の問題について、もっともっと関心を持って眺め、考えていきたいと思わされる一冊である・・・




posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする