2017年04月20日

【ブロックチェーン・レボリューション】ドン・タプスコット/アレックス・タプスコット



原題:BLOCKCHAIN REVOLUTION
第1章 信頼のプロトコル
第2章 未来への果敢な挑戦
第3章 金融を再起動する
第4章 企業を再設計する
第5章 ビジネスモデルをハックする
第6章 モノの世界が動きだす
第7章 豊かさのパラドックス
第8章 民主主義はまだ死んでいない
第9章 僕らの音楽を取りもどせ
第10章 革命に立ちはだかる高い壁
第11章 未来を創造するリーダーシップ

最近、ビットコインとかブロックチェーンとかの言葉をよく耳にするようになった。そのままにしておいても良かったのであるが、何となく放置しておくのが嫌で、その内容を知るべく手に取った一冊。

ビットコインとは、暗号通貨のこと。何となく「コイン」と言う言葉にゲームセンターの硬貨を想像してしまうが、立派な通貨である。それが従来の通貨と違うところは、発行にも管理にも国が関与しないというところ。となると何やら怪しげ、不安といったイメージがつきまとうが、その信頼を保証するシステムが「ブロックチェーン」と言うことらしい。

「ブロックチェーン」とは、一連のルールに従った分散型コンピューティングによって信頼された第3者を介することなく、端末間でやりとりされるデータに嘘がないことを保証するものらしい。あらゆる取引が記録された世界規模の取引帳簿のようなものだと言う。一定時間内の取引が1つの塊になったものが「ブロック」で、約10分で次々に追加されていくため、分散され乗っ取りが不可能だと言うことらしい。

はっきり言って言葉で説明されてもよくわからない。それはたぶん、車や冷蔵庫やスマホもモノを見ずに言葉だけで機能を説明されてもよくわからないのと同じことなのかもしれない。ただ、世界中のみんなが監視することで、不正を防ぎ高度なセキュリティもあって、資産を守ったり様々な可能性が広がるものらしい。この本は、そんな「可能性」を論じている。

ブロックチェーンから見えてくる未来には下記のようなものがあるとする。
1. 本物のシェアリングエコリミーの到来
2. 金融業界に競争とイノベーションが生まれる
3. 財産権が確実にデータ化される
4. 送金が安く早く簡単になる
5. 支援金が必要な人に確実に届く
6. クリエイターが作品の対価を受け取れる
7. 会社の形態が変化する
8. モノが自分で動くようになる
9. 小さな企業がどんどん生まれる
10. 政治が人々のものになる

「プルーフ・オブ・ワーク」「ノード」「ハッシュ関数」「ハッシュ値」「ハッシュレート」「プルーフ・オブ・ステーク」など専門的な言葉を説明されてもやっぱりよくわからない。それよりも様々な問題に関して、ブロックチェーンがそれをどう解決し、世の中がどう変わるのかの説明は理解できる。素人はそのレベルでいいように思う。例えば金融業界のイノベーションなどは面白いと思う。

発展途上国の人が海外に出稼ぎに行き、母国に送金する。その手続きのためにわざわざ何時間もかけている様子が紹介され、それがスマホの操作で簡単にできてしまう。金融サービスから取り残されて人たちが現在でも大勢いて、スマホがATMに変わることによって暮らしが変わる。音楽の世界では、クリエイターが自分の音楽を自分で管理し、透明性の高い形で収益を受け取ることができる。

可能性は企業の形すら変える。スマートコントラクトで契約の取引リスクが軽減され、分散ネットワークで仕事を完結できれば、「企業」と言う形で集まって仕事をする意味が薄れていく。にわかに想像し難いが、可能性としてはありうるわけである。IoTが発達し、交通インフラの管理とか、医療ヘルスケア、書類記録の管理、不動産管理、スマートホームなどが格段に便利になる。

一方で、そんなメリットばかりでなく、未成熟な技術、エネルギーの過剰な消費、政府による規制・妨害、人間の雇用を奪い犯罪に利用され、そして何よりも監視社会の可能性などのデメリットも指摘する。中央銀行の役割喪失と言う部分も重要かもしれない。ブロックチェーンを手放しで礼賛するだけの本とは違う。

これから起こる未来がどう言うものなのか。それは誰もわからないが、変化の兆しはあるだろう。そう言う兆しに触れておくのも悪くはないと思う。
そんな意味合いのある一冊である・・・




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2017年01月31日

【さらば価格競争】坂本光司



第1章 価格競争型企業の終焉
第2章 非価格経営に挑む中小企業21社
第3章 非価格経営実現のための8つのポイント

 著者は、法政大学の教授。『日本で一番大切にしたい会社』『ちっちゃいけど世界一誇りにしたい会社』などの企業紹介シリーズを手がけている方。今回はちょっと趣向を変え、「非価格経営」に取り組んでいる企業を紹介する一冊。

「非価格経営」とは、「価格が安いことを唯一の存立基盤とする経営」ということである。著者が、「非価格経営に関する実態調査」なるものを行なったところ、実に81%の企業が「価格経営型」の企業であったという。「他社より安い」はもはや続かない。ベトナムや中国の技術も高まってきており、人件費を抑える企業はもはや限界であり、消費者も価格より本物を求めている。生き残る道は価格競争からの脱却しかないと著者は訴える。

そんな非価格経営の代表的な企業が21社紹介されている。ビニール傘を初めて考案したホワイトローズは、美智子皇后も使用する宮内庁御用達企業。刀鍛冶で培った技術で包丁を作る盛高鍛治刃物、オンリーワン万年筆の万年筆博士、天体望遠鏡・双眼鏡製造のビクセン等は、ニッチの世界を開拓している。特にビクセンは、新たなターゲットを女性とし、カラフルな双眼鏡を開発し、「宙ガール」のブームを仕掛ける。こういう取り組みは、何か自分たちの仕事でもヒントが得られそうな気がする。

人形作りという衰退産業と思われる業界でも伝統は伝統としつつ、本当のお客様を見極め、そのニーズに応えることでふらここは1年先までの予約を抱えるまでになっている。古い職人には作ってもらえなかった新しい人形を苦心して作ってという経緯は、自分たちの業界は頭打ちだと思っているところにはいいヒントになると思う。

食品工場の建設に特化し、徹底的に研究し、顧客視点によるオーダーメイド志向で成功する三和建設。お茶屋のかき氷で成功しているしもきた茶宛大山、高品質な手仕上げ、24時間365日営業、社員の65%が障害者というプラスアルファ。テレビでも紹介されているパンの缶詰を製造するパン・アキモト。どの企業も一直線で成功したわけではなく、苦難の道を経ているようである。それを支えたのは経営者の信念だろうか。

非価格経営実現のための8つのポイントは下記の通り。
1. 企業経営の真の目的、使命を果たす
2. 価格は需給のバランスで決定する
3. 価格競争型経営からの段階的決別
4. 非価格経営の創造
5. 創造型人材の確保・育成
6. 外部有用経営資源の内部化経営
7. 適正価格経営
8. 先進企業に学ぶ

思うに、漫然と日々の業務に追われていたら、とてもできないであろう。非価格経営への転換を意識し、先進企業の事例から自分たちにも応用となるヒントはないだろうかと志向を重ね、考えて努力していくことが必要であろう。自分たちにもできると考え、大いにヒントにしたいと思う一冊である・・・


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2017年01月20日

【組織サバイバルの教科書韓非子】守屋淳



第1章 人は成長できるし、堕落もする-「徳治」の光と影
第2章 『韓非子』は性悪説ではなかった?
第3章 筋肉質の組織を作るための「法」
第4章 二千年以上も歴史に先んじた「法」のノウハウ
第5章 「権力」は虎の爪
第6章 暗闇の中に隠れて家臣を操る「術」
第7章 改革者はいつの時代も割に合わない
第8章 人を信じても信じなくても行きづまる組織のまわし方
第9章 使える権力の身につけ方

ここのところ中国の古典に興味を持っているのだが、そんなところに飛び込んできたタイトルに迷わず手を出した一冊。韓非子の名前は知っていたが、正直言ってその思想はよくわからなかった。改めてその内容を学びがてらの読書となる。

中国古典といえば、何と言っても日本では論語であろう。なんとこの韓非子はその論語と対極的なものらしい。論語的な組織観は、いわばムラ社会のような組織観で、それを成果の出せる目的を持った引き締まった組織に変えるのが韓非子だという。喩えれば日本型経営システムに対する成果主義の導入のようなものらしい。実にわかりやすい喩えである。

論語と韓非子の組織観は水と油。例えば、
1. 人のあり方
(論)人間志が重要だ↔(韓)しょせん人間は利益に目がくらむ
2. 政治において重視するもの
(論)上下の信用↔(韓)信用などあてにしていたら裏切られる
といった具合である。

韓非子は、国土は狭く、人口は少なく、国力では戦国の七雄国家の一つながら最弱国であった韓の国にあったという。国の生き残りという目的を掲げ、国中すべてがそこにベクトルを合わせた筋肉質の国家体制を作るという命題があり、それを背景にしていた。人の本性は弱さにあり、人は信用できないという考え方をベースにしているという。法の公平な適用、そして「恩賞」「厳罰」「名誉」という3要素によって共通の価値観というレールを敷き、組織を一つにまとめようとする思想である。

その中にあって名君は、「刑」と「徳」という「2本の操縦桿」によって臣下を統制する。国を富ませるのは農民、敵を防ぐのは兵士、利益を出すという目的のために全員が一つにまとまった組織を目指す。そこでは「恩賞」「報酬」を素直に欲しがり、「厳罰・不名誉」には心底怯えるという人間以外は不要とされる。そして完全成果主義の組織となる。論語の価値観と異なる様がよくわかる。そして論語の価値観を良しとする人からすれば、居心地の悪さを感じるものである。

法による統治を徹底することを主張するその思想は、「人はハカリやマスに文句はつけない」として、官吏がハカリやマスのように法を曲げず私益を求めなければ賄賂も横行しないとする。法と権力で組織をまとめ、それを「術」を駆使して維持する。今の中国社会も韓非子の思想が取り入れられていたら、汚職追放キャンペーンなども不要だっただろうと思えてならない。

中でも面白かったのは、「相手のためにやっているんだという気持ちがはさまれると、人は相手を責めたり恨んだりしたくなる。自分のためにやっているんだと思えばうまくいく」という考え方。なんとなく韓非子の思想から外れる気がするが、これは素直に同意できる言葉である。そこから「雇用関係とは、お互いに自分の利益だけを考えた結びつきだからこそ逆にうまくいく」とする。なるほどと思うところである。

昨今、日本の大企業で不祥事が続くが、その根底には論語的価値観の「世話になった先輩だから逆らいにくい」という考えがあるという。だからと言って、ガチガチの成果主義も居心地が悪い。著者も上に立つ人間には「覚悟」と「二重人格性」が必要と説く。論語的価値観と韓非子的価値観の療法を兼ね備えたものだが、そのバランスがいいように思う。最後に君子への説得の難しさをして、「意見を聞いてもらう難しさとは相手の心の内を知って自分の意見をうまくそこに当てはめていくことにある」とするところも心に残ったところである。

それにしても中国古典は、現代にも十分通じるところがある。他にも折を見て読んでみたいと思わされる。改めてそう感じさせてくれた一冊である・・・


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2016年12月30日

【魔法のコンパス】西野 亮廣 



1章 向かい風はボーナスチャンス!
2章 お金の話をしよう
3章 革命の起こし方
4章 未来の話をしよう

著者は、キングコングという漫才コンビをしている芸人。もともとテレビを見ない口だが、それでも家族が見ているテレビをチラ見しているから、ある程度の芸人さんは知っている。そんな私も知らない芸人だと思っていたら、なんとテレビに出ないのだという。芸人がテレビに出ないなんてと驚かされ、そしてやっていることを知って俄然著者に興味を抱かされた内容である。

著者も人並みの芸人らしい努力はしたそうである。しかし、やるだけやった結果、スターになるという成果が出せなくて、それで考えたのは「種の変更」。そのために一番便利な部分としてテレビのひな壇に出ることをやめたのだという。「お笑い芸人がひな壇に参加せずに生きて行くためにはどうすればいいだろう」という「問い」を持ち、「皆がいるような整地された場所にはあまり(「問い」が)落ちていないから、誰も踏み入れていないような足場の悪い場所に行く」としたという。このあたりは、ビジネスにも通じる考え方である。

そして著者の視点には、気付かされるところが多い。
例えばアート活動について、それは何をするにも「活動資金」が必要だが、学校の先生はお金のことを知らず、したがって学校で教えないから生徒も「資金調達=アルバイト」の発想しかないと。著者は1日50円のバイトで生活するホームレス小谷の話を紹介し、様々な可能性を説く。実際、クラウドファウンディングは小谷氏ならずとも、著者も様々な機会で利用し、その成果を実証する。ホームレス小谷氏は、1日50円で「信用」を積み重ねているという話は実に深い。

ビジネス的には「差別化」と言えるのだろうが、著者は絵本を出すことにする。しかし、プロの作家に対し、素人はまともにやっても勝てない。勝てる条件として「時間」を上げ、著者は徹底して時間をかけて絵本を作る。最初の絵本は4年半かかったそうである。さらにその考え、実践していることは、ビジネスマンにとっても見習うべき点が多々ある。

1. 通知表で言えばオール3がもっともマズい状況。他の教科が1でもいいからその時間を使って4を5にする作業をしたほうがいい
2. SNSでは「拡散希望」などとせず、こちらから自分をツイートしている人にアプローチ。「会いに行けるアイドル」ならぬ「会いに来る芸人」になる(これがクラウドファンディングに威力を発揮する)
3. DVDは3,000枚売れないとペイできないと聞き、実際にその価格構造を調べ、流通に乗せなければ90枚でペイすることを発見。流通に乗せずに1,500枚売ってNY公演をタダにする
4. 勉強は面白い。ただそれを教える先生が面白くないだけとして、世界一面白い学校「サーカス!」を作る
5. アイデアを掘り当てるまではやれることをコツコツコツコツ。近道なんてない。「本が売れてない」と嘆く作家に、「売ろうとしてねーじゃねぇか!」
6. 学校の先生は、スマホ禁止なんかしている暇があったら、スマホと共存できるスキルを身につけといた方がいいんじゃないか

そんな著者は、「町を作る」構想に向かう。毎回毎回集客に苦労していることを鑑み、お客さんをリリースするのではなく、循環させて再び戻ってくる仕組みである。また、「一日をコーディネート」するという発想で、「一度行ってみたいなぁ」と思っている場所でライブをすることも考える。例えば温泉町でのライブであり、これなら行ってみようかという気になるかもしれない。さらに、これからは「好きなことでしか生きていけない時代になる」として、親は子供に「仕事になるまで遊びなさい!」というべきかもしれないと説く。内容はともかくとして、その発想は素晴らしい。

今は著者が「分業」で製作した絵本が発売になっている。新聞の読書欄によれば、ベスト10入りしている。ぜひ買ってみたいと思うし、これから著者の活動にも注目して生きたいと思う一冊である。




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2016年12月23日

【ザ・会社改造−340人からグローバル1万人企業へ 実話をもとにした企業変革ドラマ−】三枝匡



第1章 会社改造1 「謎解き」で会社の強み・弱みを見抜く
第2章 会社改造2 事業部組織に「戦略志向」を吹き込む
第3章 会社改造3 戦略の誤判断を生む「原価システム」を正す
第4章 会社改造4 成長を求めて「国際戦略」の勝負に出る
第5章 会社改造5 「買収」を仕掛けて「業態革新」を図る
第6章 会社改造6 「生産改革」でブレークスルーを起こす
第7章 会社改造7 時間と戦う「オペレーション改革」に挑む
第8章 会社改造8 「元気な組織」をどう設計するか

著者は、現在ミスミグループの取締役会議長を務める方。以前、著書の『V字回復の経営』を読んでおり、何より「実話を基にした企業変革ドラマ」というサブタイトルに惹かれて手にした一冊である。『V字回復の経営』は、実例を基に創作された話であったが、今回は著者がミスミで実際にやったことが中心ということで、余計に興味をそそられたところがある。

事業再生専門家として活動していた著者は、ミスミの社外取締役を務めていたが、ある日創業社長から社長を引き受けてくれと頼まれる。当時ミスミは売上高500億円、営業利益49億円であったが、13年後には売上高2,085億円、営業利益237億円になっている。従業員も340人から9,628人というからものすごい成長と言える。その実践課程を著者自身が、第三者的な立場で追っていく形になっている。

まず手始めに著者は事業モデルの掌握から取り掛かる。「事業モデルの理解が足りないまま社長に就任すれば打ち手を間違える可能性が高まる」とするが、それはそうであろうと思う。そして著者はそれを「ミスミQCTモデル」としてまとめる。さらに経営の優劣はフレームワークの有無で決まるとする。フレームワークとは、物事の本質や構造を理解しわかりやすく説明するための枠組みであるという。なんとなく、わかったような気になるが、「何か異常を見た時、『違う』と感じたりする考え方やものの見方」と言われるとわかるような気がする。

このフレームワークだが、初めはパクリでもいいとする。大いにパクっておいて、目の前の問題に適用できるように工夫・修正を加えれば、もはやそれはパクリではなく、「自論フレームワーク」になるのだとする。このあたりは、理論的には理解できるのだが、具体的なイメージが湧きにくく、どうも隔靴掻痒の感がある。

著者は、当時主流となっていた多角化事業からの撤退を決める。どれもシナジーが効かずバラバラ症状だったという。全体戦略の欠如が原因であり、著者は「切断力」を駆使して7つの多角化事業から撤退する。そしてミスミ8つの弱みをまとめ、3枚セットのシナリオで臨む。3枚セットのシナリオとは、下記の通り。
1枚目 現実直視、問題の本質、強烈な反省論
2枚目 改革シナリオ 戦略計画 対策
3枚目 アクションプラン

そして「本業回帰」「国際進出」を方針として決め、業績悪化していた3つの主要事業部の1つを改革のモデルケースとする。すべてにしないのは、すべてで失敗すると大混乱に陥ることになるからである。そういうことからFA事業部を対象とし、改革のモデルケースとする。ここで成功したら他の事業部に広げるということで、こうした手法は参考になる。

著者は、全編を通して「戦略」を強調する。何よりも「戦略」と「熱き心」が改革の要諦ということである。そして改めて「戦略」とは、という問いに、以下のように答えている。
@「戦場・敵」の動きをA俯瞰しB自分の「強み弱み」からC「勝負のカギ」とD「選択肢」を見極めE「リスクバランス」を図りつつF「絞りと集中」によってG所定の「時間軸」内で勝ち戦を収めるためのH「ロジック」である。そして、Iその戦略の「実行手順」をJ「長期シナリオ」としてK組織内に示すものである。
何度か読み返すと、大体のイメージはつかめてくる。なるほどと思わされる。
優れた戦略の要諦とは、「絞りと集中」、「シンプルな目標の設定」、「ストーリー性」という話も納得である。

改革については、カスタマーセンターの集約の例が印象深いところであった。それが一番イメージしやすかったというところもある。中国への進出については、どうも概論的で、具体的な行動まで詳述されず、学校の講義的なところがあった。この方の作品は、『V字回復の経営』もそうであったが、具体例をぼやかしてあって、私のような素人にはわかりにくいのである。

それでも分業の弊害として「椅子職人の悲劇」の話は面白かったし、それゆえにミスミチーム制の採用は理にかなっている。新しい上位のポジションにふさわしい意識や行動が取れず、下位の仕事のスケール感で対応してしまうという「ポジション矮小化」の話も参考になった。身の丈にあったジャンプが必要というのは、まさにその通りであろう。さすがは日本を代表するプロ経営者と思うが、本によって理解できるのはほんの一部。詳細な具体例があるともっとわかりやすかったと素人的には思うし、理解しきれないところが残念なところでもある。すべて理解できるようになれば、自分自身のスキルもアップするのかもしれない。

自分も小さな中小企業では、戦略を担う立場でもあるし、少しでもエッセンスを汲み取りたいと思うところがある。難しいところではあるが、直接教えを請えるわけでもなく、せめて著書からなるべく多くを吸収したいところである。そういう意味で、しばらくしたら読み返してみたいと思わされる一冊である・・・

   
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2016年11月17日

【USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?-V字回復をもたらしたヒットの法則】森岡毅



プロローグ 私は奇跡という言葉が好きではありません
第1章 窮地に立たされたユニバーサル・スタジオ・ジャパン
第2章 金がない、さあどうする?アイデアを捻り出せ!
第3章 万策尽きたか!いやまだ情熱という武器がある
第4章 ターゲットを疑え!取りこぼしていた大きな客層
第5章 アイデアは必ずどこかに埋まっている
第6章 アイデアの神様を呼ぶ方法
第7章 新たな挑戦を恐れるな!ハリー・ポッターとUSJの未来
エピローグ ユニバーサル・スタジオ・ジャパンはなぜ攻め続けるのか?

 著者は、ユニバーサル・ジャパンのCMO。以前、『USJを劇的に変えた、たった一つの考え方』を読んでこの本の存在を知り、読んでみたくなって手に取った次第。この手の企業改革系の話は、個人的に大好きなのである。

 著者が転職してきた時、USJは一時1,100万人を集客していたのが700〜800万人に落ち込んでいたという。その理由を社内で聞いてみると、開業翌年に起こったいくつかの不祥事の影響だという。直感的に「違う」と判断した著者は、データを分析し、パーク内をくまなく歩き回り考える。そして方向性を間違えたこだわりを正し、限られた経営資源を消費者価値の向上に正しくシフトさせることにする。そして三段ロケット構想を立てる。

 三段ロケット構想とは、一段目でファミリー層を取り込み、二段目で関西依存の集客構造から脱却し、三段目で蓄えた会社のノウハウを複数展開するというもの。そして著者の苦闘が始まる。まず、「映画だけのテーマパーク」からの脱却を図る。社内には反対の声が渦巻いたらしいが、著者は「世界最高のエンターテイメントを集めた『セレクトショップ』」というコンセプトを推し進める。

 と言っても、とにかくお金がない。アイデアをひねりだし、フラッシュ・バンド・ビートというストリートパフォーマンスを取り入れ、ひっそりとやっていた「ONE PIECE」のショーにスポットライトを当て、とやり始める。しかし、震災による自粛ムードが出端を折る。普通なら「仕方がない」と諦めるかもしれないが、著者は考え抜き、大阪の橋下知事の言葉にヒントを得てキッズフリーを打ち出す。これが功を奏し、GWには客足が戻る。

 さらにお金のかからない「ハロウィーン・ホラー・ナイト」、続くクリスマスには「世界一の光のツリー」で集客をV字回復させる。さらにモンスター・ハンターを導入するが、これは自身でプレイしていたことがヒントになっていたという。著者は、「マーケティングをやる人間はなんでも自分自身でやってみることを習慣にすべき」と語るが、こういう「実践」が大事なのであろう。

・目的が正しいと判断したのなら、できない理由をあれこれ考えて目的自体を無理だと嘆くことに時間を使わない
・日本人は何でも自分でゼロから始めようとする悪い癖があるが、もっと外に目を向けて積極的にアイデアを盗みに行った方が良い
・答えは必ず現場にある
・絶対に我慢ならなかったのは、挑戦する前に、実際に全力を尽くす前に諦めること
要所要所で語られる言葉には説得力がある。

 タイトルにもなったハリウッド・ドリーム・ザ・ライドを後ろ向きに走らせるアイデアも、考えに考えていたら夜中の2:34に思い浮かんだという。ここまで考え続けろということなのだろう。普通はお客さんを勝たせるものだが、バイオ・ハザード・ザ・リアルはお客さんの生存率が極めて低いのだとか。これも自身のプレイ経験をヒントにしている。

 満を持して投入して大成功している「The Wizarding World of Harry Potter」であるが、最初はオーランドに出来た施設に対し、立派だが金をかけ過ぎてビジネス的に失敗するのではという空気の中で、一人導入を主張したという。渋る社長を数学的分析を交え熱い議論を交わし、説得して行ったという。単なるモノマネではなかったようである。

 「中小企業が生き残るには勝ち続けるしかない」(USJが中小企業だったらそれ以下の会社はどうなるんだと言いたいが)と著者は語るが、そのための著者の奮闘は並大抵ではない。ここまでやったからこその成功なのだろうし、ここまでやらなければダメなのであろう。お金がないからとか、人材がいないからとか、とかく中小企業は言い訳をして納得しがちである。だが、それではいけないと改めて思わされる。

 自分に何ができるか、そして夜中に夢見るほど悩んで考えているだろうか。自問自答してみたい。著者に負けないように自分も頑張ってみたいと思わせられる一冊である・・・

   
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2016年09月10日

【USJを劇的に変えた、たった一つの考え方】森岡毅



第1章 USJの成功の秘密はマーケティングにあり
第2章 日本のほとんどの企業はマーケティングができていない
第3章 マーケティングの本質とは何か?
第4章 「戦略」を学ぼう
第5章 マーケティング・フレームワークを学ぼう
第6章 マーケティングが日本を救う!
第7章 私はどうやってマーケターになったのか?
第8章 マーケターに向いている人、いない人
第9章 キャリアはどうやって作るのか?

著者は、USJのCMOを務める人物。USJには行ったことがないのでわからないのであるが、USJは開業以降業績が低迷していたが、様々な施策が奏効しここ数年は爆発的な成功を収めているのだとか。なんとなく『ハリー・ポッター』が話題になっていたことくらいしか知らなかったのであるが、どうやらその業績回復の立役者となった方のようである。

そんなUSJの変化のあれこれがわかるのかと思って手に取ったこの本であるが、内容はマーケティングである。マーケティングこそビジネスを成功させるための方法論であり、マーケターでない人が読んでもわかる本を、ビジネスで成功したいすべての人に向けてわかりやすく書いたものであるという。本書の目的は、「マーケティング思考」を伝えることと著者が体得してきた「キャリアアップの秘訣」を伝えることとされている。

著者はもともとP&Gで実践を通じてマーケティングを身につけ、USJに転職。まず最初に集客低迷の原因を多くの幹部に確認したところ、過去の不祥事や映画のテーマパークとしての軸がずれたことなどが挙げられたという。直感的に違うと感じた著者は、USJを「消費者視点」の会社に変えていく。

「ゲストが喜ぶもの」と「ゲストが喜ぶだろうと作る側が思っているもの」は必ずしも一致せず、自然と離れていくものだという。まず著者の所属するマーケティング部が、エンターテイメント部や技術部が製作するアトラクションやイベントにダメ出しする権限をもらったという。何事も民主的なのが一番ではなく、何かを決めて動かしていくには、そうした権限があってこそであると思う。

書かれてはいないが、当然衝突もあっただろう。だが、「自分起点で周囲を説得し人を動かすことが重要」だと語る。確かにその通り。「人というものは、できるだけ他人との衝突を回避したがる性質を持ち、その結果皆の意見という利害を足し合わせて頭数で割ったような妥協案を求めがち」になるのは道理。このあたりは、「外資系」育ちの良さが出ているのかもしれない。

そうした妥協のせいかもしれないが、日本企業ではマーケティングが発達せず、技術志向に陥り、費用対効果の検証がなされない巨額広告がされたりしているという。それも日本企業の規制や終身雇用、年功序列が原因だとする。マーケティングとは「売る」より「売れるようにする」ことだとするが、本質は「売れる仕組みを作ること」という意見は、改めて重要だと気付かされる。

「消費者を大きく落胆させる商品ならば世の中に出さないほうがマシ」という考え方も、当たり前のようであるが大事なことなのだろう。USJは転売されたチケットは利用させないらしいが、一部の者が大量に買い占めて転売益を得ることを排除しているというが、聞けばそれはかなり困難を伴うことのようで、そうした取り組みも盛況を支えているのだろう。

戦略とは「目的を達成するために資源を配分する選択」としているが、たとえとして、上司から10球飛んできたとしたら、そのうち最も重要な3球を選んで打つようにしているという著者の話は参考になる。ついついすべて打ち返そうとしがちだが、それは無意味に資源を分散させているだけで、結局どの球もそこそこしか打てないで終わるというのは、確かに言えることだろう。

戦略の大きなミスは戦術ではリカバリーできず、従って企業にとって「どう戦うか」という戦術よりも「どこで戦うか」という戦略が何よりも重要とする。日本の企業は、そもそも「戦略がない」ことが多いというが、我が社のような中小企業であっても意識したいことだと思う。最後にキャリアアップについて語られる。

マーケターは「マーケティングのスペシャリスト」であり、「ビジネスのゼネラリスト」だという。これはなかなか示唆に富んでいる。今から「マーケター」になろうと思っても慣れるものではないかもしれないが、意識したいところである。そんなマーケターに向いているのは、
・リーダーシップの強い人
・考える力(戦略的思考の素養)が強い人
・EQの高い人
・精神的にタフな人
だという。自分にも一部適性はあるかもしれない。

 当初思っていたのとは異なる内容だったものの、内容は大変参考になるもの。できる限り応用してみたいと思わされる。USJの回復については、別の著書で語っているらしいので、次はそちらを読んでみたいと思う。持って他山の石としたい一冊である・・・


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2016年06月29日

【ハーバードでいちばん人気の国・日本−なぜ世界最高の知性はこの国に魅了されるのか−】佐藤智恵



序 章 なぜハーバードはいま日本に学ぶのか 
第1章 オペレーション-世界が絶賛した奇跡のマネジメント
第2章 歴史-最古の国に金融と企業の本質を学ぶ
第3章 政治・経済-「東洋の奇跡」はなぜ起きたのか
第4章 戦略・マーケティング-日本を代表する製造業からIT企業まで
第5章 リーダーシップ-日本人リーダーのすごさに世界が驚いた
終 章  日本人が気づかない「日本の強み」を自覚せよ

著者は、元NHKのディレクターで、現在は作家兼コンサルタントで、テレビのコメンテーターもされている方のようである。そんな著者が、ハーバード大学の経営大学院で、日本に関連したテーマが多数採り上げられていることを紹介した一冊である。近年、「世界から見たら日本はこんなに素晴らしい」といった類の本がたくさん出ているが、ちょっと匂いの違いを感じて手に取った次第である。

著者は、ハーバードで取材をしていて、日本が世界に大きな影響を与えてきた国であることを実感したという。世界初の先物取引は日本で発生し、戦後の経済成長は新興国の希望となっている。日本のオペレーションシステムは、世界の人々の道徳規範となっている。そしてハーバードでは、毎年研修旅行があり、その行く先としてインド、イスラエル、イタリアなど10カ国の中で、一番人気なのだという。わずか数分で定員の100名が埋まってしまうというから、まんざら大げさでもないようである。

では、どんなケースが教えられているかというと、
トヨタ自動車(テクノロジーとオペレーションマネジメント)、楽天(リーダーシップと組織行動)、全日空(マーケティング)、本田技研工業(経営戦略)、日本航空(ファイナンス)などである。変わったところでは、アベノミクスも対象となっているらしい。著者が強調するには、「重要なのはいま教えられているか」だという。講座の数ではどうやら他の国でももっと多いところがありそうなのであるが、学生にとって「忘れられない事例」、「私の人生に影響を与えた事例」とされる「質」の部分で特徴的だという。(「量より質」ということらしい)

最初に「新幹線お掃除劇場」としてテッセイが紹介されているが、個人的にも『新幹線お掃除の天使たち』を読んでいるから、すぐに様子が頭に浮かぶ。日本企業で最も売れた教材は、本田技研工業で、アメリカでバイクを売っていった様子が評価されている。また、ANAはグローバル戦略が評価されている。これらは、企業の知名度ではなく、どんな課題に直面しているかに注目されてのことだという。さすがにMBAである。

日本企業の最近のヒットは楽天の社内英語公用語化だというが、何より講座のテーマが多岐にわたっていることに驚かされる。企業以外でも「トルーマンと原爆投下の是非」「福島第二原発の危機を救ったチーム増田」などが採り上げられている。福島第二原発が、実は爆発した第一原発と同様かなり危険な状態だったらしいとは、改めて知ったが、何でもテーマにしてしまうところがやはり素晴らしいと感じる。

そんな中で、日本のテーマは、
1. グローバル化
2. イノベーションの創出
3. 若者と女性の活用
だとするが、なるほどと思わせられる。

何年も同じノートを使う大学の授業の例の話をよく耳にするが、さすが世界の最先端は、何にでも学ぼうとしていて、しかもそのテーマが常時アップデートされている。こういうところで日々切磋琢磨するから、素晴らしい人材を輩出するのであろう。そこで学ぶ学生たちがつくづく羨ましいと思う。

「日本が採り上げられている」のも誇らしい気がするが、かの地の学問のスタンスこそが素晴らしいと感じさせてくれる。今からハーバードで学ぶことは叶わないが、テーマとして採り上げられるようにはなれるかもしれない。そんな夢を見ながら、仕事に邁進したいと思わせられる一冊である・・・

   
   
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2016年06月04日

【電車をデザインする仕事】水戸岡鋭



第1章 総合的で創造的なデザインをめざす
第2章 デザインの基本、デザイナーの原点
第3章 日本の良さを活かすデザイン
第4章 鉄道デザインの裏側
第5章 公共デザインの裏側

著者は本のタイトルでもわかる通りデザイナー。デザイナーと言っても得意分野はいろいろあるが、著者の場合は鉄道を中心とした「公共デザイン」のようである。もともとその道を目指したのか、それともいろいろとこなしているうちに鉄道のデザインへとたどり着いたのかは定かではない。おそらくこの分野では「第一人者」であろう著者が、デザインについて語った一冊である。

「デザイン」は最近様々な分野で注目を浴びている。そんな注目のキーワードなのであるが、著者は「人が生きるということはデザイン作業に似ている」と語る。「一人一人がデザイナーになり、自分の環境をデザインしていき、最も可能性を持った最も難しいデザイン、そして何より最も面白いデザインをしていくべき」だという。言い得て妙だと思う。

「デザイナーとアーティストの違い」という意見は面白い。そんなこと考えてもみなかったが、「アーティストは一人の作品」、「デザイナーはみんなの作品」ということらしい。それは著者も後半で現場の職人さんとの関係について語っているが、デザインを仕上げていく過程では様々な人たちとの連携が必要になるということである。

デザイナーは好き嫌いを言わないのが良いとする。好き嫌いがあると多様性が失われ、心や視野が狭くなるそうで、好き嫌いを捨てて挑戦することで、「デザインのボキャブラリーが増えて行く」とする。これはデザインのみならず、広く応用ができる考え方であるように思う。

デザイナーの仕事における重要な3つの要素は、「予算」、「スケジュール」、「技術」だそうで、これもアーティストとの違いを浮き上がらせる要素である。この3つを円滑に進めていくためにも必要なことは、「比較しない」、「不都合を受け入れる」、「対立構造を作らない」ことだという。特に「デザインというのは不都合の連続」という言葉が印象的。なんとなくデザイナーは独善的なイメージがあったが、やはり「アーティストと違う」という意味がよくわかる。

そんな不都合の連続でも、相手の要望を受け入れながら、自分の得意分野に少しでも持ち込むことが大事だという。自分の持ち味や得意技を50%以上の形で展開できる仕事をするというのが著者の信条で、これを「51対49のデザイン法則」としている。
デザインとは、
「アイデアを出す」→「その実現がコスト的に可能か」→「無理ならどうすれば実現可能かを考える」というプロセスだとするが、こうして「みんなの作品」になるのであろう。

著者の言葉では、
「米仕事」=企業人としての稼ぎ仕事
「花仕事」=社会人としての勤め仕事
という二つが印象的であった。何事も「米仕事」だけではダメだし、「花仕事」もできるようにしたいものである。

著者は、こんな考え方を持ち、JR九州を中心に活躍。タイトルにある「ななつ星in九州」のほか、「800系新幹線つばめ」、「787系特急つばめ」、「883系特急ソニック」「72系気動車ゆふいんの森(三世)」などの列車のデザインを手がけ、他にも「高速船ビートル」、「JR九州熊本駅」、「商業施設クイーンズスクウェア横浜」など多数手がけているらしい。東京から遠く、なかなかその「作品」に乗ることはできないが、乗り歩いてみたくなったのは事実である。

自分にはデザイナーの才能はないが、デザイナーの考え方は参考にさせてもらいたいと思える一冊である・・・


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2016年05月28日

【BOLD突き抜ける力−超ド級の成長と富を手に入れ、世界を変える方法−】ピーター・H.ディアマンディス/スティーヴン・コトラー



原題:BOLD/HOW TO GO BIG,CREATE WEALTH,AND IMPACT THE WORLD
第1章 さらばリニア思考
第2章 エクスポネンシャル・テクノロジー
第3章 世界を変える五つの選択肢
第4章 高みを目指す
第5章 突き抜ける秘訣
第6章 大富豪の知恵
第7章 クラウドソーシング
第8章 クラウドファンディング
第9章 コミュニティーをつくる
第10章 賞金付きコンテスト

著者は米シンギュラリティ大学の創立者であり、今はXプライズ財団のCEOであり、2014年のフォーチュン誌「世界の偉大なリーダー50人」に選ばれたという人物と、ジャーナリストのコンビである。そんなコンビが、「超ド級の成長と富を手に入れ、世界を変える方法」について語った一冊である。

そんな世界を変える方法は大きく分けて3つ。
1. テクノロジー
2. マインドセット(モノの考え方)
3. クラウドの力
である。

テクノロジーについては、「エクスポネンシャル(指数関数的)・テクノロジー」と称される。これは、少しずつ順を追って進化していく(本の中では「リニア思考」と呼ばれているものであろう)ものではなく、飛躍的に進化するそれという意味のようである。例として、写真技術を確立したコダックの例が語られる。コダックは写真技術を進化させ、一時代を築いたものの、デジタル技術を開発しながらこれをボツとし、結果としてデジタル技術の急速の進化についていけず破綻した。

今日のスマホには、世の中に出た時には現在の貨幣価値で90万ドル相当の技術(GPS、カメラ、音楽プレーヤー、百科事典等々)が普通に搭載されている。3Dプリンティングの進化もすごく、今や「メイドインスペース」の時代を迎えつつあり、世界初の地球外3Dプリンティング会社であるメイドインスペース社が設立されている。これは重力の軛から解き放たれ、製造の概念を変える可能性を秘めている。

そんな「エクスポネンシャル」な技術には、以下の分野がある。
1. ネットワークとセンサー
2. 無限コンピューティング
3. 人工知能
4. ロボティクス
5. 合成生物学

このうちネットワークとセンサーについては、銃声感知技術が目新しかった。街中で銃声を感知すると半径3メートルの範囲で場所を特定し、警察に通報するのだとか。治安維持には効果が期待できるかもしれない。人工知能は2029年にはあらゆることにおいて人間を上回り、合成生物学において、人間は100歳が60歳になるのだとか。何れにしても未来は今よりさらに暮らしやすそうに感じる。

テクノロジーと合わせて、考え方も重要。特にピーターの法則が印象的である。
1. ノーと言われたら一段階上に行け(権限はえてして上が持っている)
2. どちらか選べと言われたら両方取れ
3. 教科書通りにやろう ただし筆者は自分だ
4. 勝てなければルールを変えよ
5. 走れるときには歩くな
6. 未来を予測する最良の方法は自分で未来をつくることだ
7. 簡単なことならばすでに他人がやっている
8. 的を決めなければ絶対に当たらない
物事をなすにあたって、「どう考えるか」はやっぱり重要。心に響く言葉を持っている者は有利ではないだろうか。

最後にクラウドの威力が語られる。「クラウドソーシング」「クラウドファンディング」の力は、現代ならでは。「賞金付きコンテスト」は予想外の周知を結集する。「ゴールラインを超えるために必要なすべてのソースを調達するためのもの」という説明は大げさでもないと感じる。やる気のある者にとっては、今はものすごく恵まれているように思える。これから何かを成し遂げようとする志を持つ者にとって、必読の一冊であると思う・・・


posted by HH at 15:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする