2015年11月29日

【世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠】ジョセフ・E・スティグリッツ



原題 : The Great Divide

第1章 アメリカの“偽りの資本主義”
第2章 成長の黄金期をふり返る
第3章 巨大格差社会の深い闇
第4章 アメリカを最悪の不平等国にしたもの
第5章 信頼の失われた社会
第6章 繁栄を共有するための経済政策
第7章 世界は変えられる
第8章 成長のための構造変革

著者は、ノーベル経済学賞を受賞しているエコノミストであり現コロンビア大学教授。
その名前は、よく目にしている。
そんな著名人が、アメリカ社会の問題について語った一冊。
中心となっているのが、著者の過去に発表した論文。
それが解説と共に各章を構成している形をとっている。

原題にある通り、この本で扱われているテーマは「不平等(巨大格差)」である。
経済学者は、「パイの増やし方」を扱うのが仕事であるとし、「パイの分配」は政治の仕事としてきたが、そのスタンスを批判=反省している。
そんな反省に基づいて、ここで扱われているのは、「不平等の経済学」である。

あらゆるセクターの中でも金融セクターについては、その破綻が経済全体に及ぶことから、最も重視すべきとしているが、リーマン・ショック時には、数千億ドルが銀行業界に流れ込む一方、差し押さえにあった多くの人が家を失うがままにしたと批判。
銀行に対する著者の批判は厳しい。

アメリカでは1%の人々が国民所得のおよそ1/4以上を懐に入れ、総資産の40%を支配している。
この状況を著者は、「1%の1%による1%のための政治」と呼ぶ。
「独占利益(独占状態を管理するだけで転がり込んでくる収入)」または「所有権から生じる利得」を「レント(地代)」と称し、それを求める活動を「レントシーキング」と名付け、これがアメリカの元凶であるとする。

こうした状況の改善のためには、
・キャピタルゲイン税と相続税の引き上げ
・教育を受ける権利を拡大するための巨額投資
・独占禁止法の厳格な運用
・企業幹部の報酬を制限するための企業統治改革
・銀行の搾取能力を制限するための金融規制
などを行う必要があると主張する。

また、税制改革案としては、
・良いもの(労働や貯蓄)ではなく、悪いもの(公害や投機)に課税
・課税しても消えないもの(土地・石油・天然資源)に課税
・恩恵が広く行き渡るような活動を推奨し、社会に犠牲を強いるような活動を抑制する
などを挙げている。

アメリカの不平等は決して必然のものではなく、それは「政治と政策の結果」として、世界各国の事例をその証拠に挙げる。
日本についても、「手本にすべし」と主張しているが、「貧困児童の割合」、「平均余命」、「人口に占める大卒者の割合」、「定失業率」などは確かにアメリカよりも良いが、鵜呑みにして良いのかどうかは不安に思うところである。
また、東欧三カ国やモーリシャスなど、アメリカよりも経済力のない国々が実現できていることが、「お金がない」という理由でアメリカではできていないことも挙げられる。

読めば読むほど、アメリカの深い問題が明らかになる。
「アメリカの問題だから関係ない」というのは、あまりよろしくないだろう。
もしかしたら我が国も同じ轍を踏むかもしれない。
アメリカの問題ではあるが、我が国も陥るかもしれないとして、著者が提言する解決法を頭に置いておきたいと思う。

こうした本も、考える良い材料になる。
そういう意味で、読んでおいて損はない一冊である・・・
    
    
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2015年09月04日

【格差大国アメリカを追う日本のゆくえ】中原圭介



第1章 中間層が没落するアメリカ
第2章 格差はなぜ拡大したのか
第3章 経済学は何のためにあるのか
第4章 中間層と国家の盛衰
第5章 21世紀のインフレ政策は間違っている
第6章 世界の模範となる日本

常時出る本をウォッチしている中原圭介氏の著作をまた手に取る。
著者はずっとアベノミクスに警鐘を鳴らしている。
安倍総理に反対と言えば、もっぱら集団的自衛権を中心とした安全保障関連法案に反対するものが多いが、エコノミストである著者の批判対象はもっぱらアベノミクス。
正直言って、個人的にはアベノミクスはうまくいっていると考えている。
だから、著者の批判には懐疑的であるのだが、実はその提言には納得させられるものが多い。

アベノミクスが目指すのは、アメリカのインフレ志向の金融政策であるが、そのアメリカの現状を見ると、目指す方向性は確かに恐ろしいものがある。
アメリカは現在空前の株高好況にある。
しかし、巷で言われているように、格差が拡大し、いまや国民の1/3が貧困層またはその一歩手前なのだという。
そのあたりは、『ルポ貧困大国アメリカU』でも読んだところである。

アメリカでは株主の力が強く、雇われた経営者は株高を演出するために従業員の首を切り、自社株買いで株価を吊り上げている。
また、多国籍企業は複雑な租税回避行為をとっており、たとえばアマゾンなどは日本では税金を払っていない。
政治も近年金権化してきており、大企業とそのバックにいる株主の影響力が大きくなっている。

そんな現状を知ると、何とも言えない気分になる。
そしてその結果、一部の者だけが裕福になり、格差が拡大する。
著者は中間層の没落が、国家の衰退につながるとの説を古代ギリシヤやローマ帝国、唐などの例を挙げて説明して行く。
事例は古いが、だからといって当てはまらないとは限りらない。

・デフレは必ずしも悪ではない
・「円安=製造業にプラス」は時代遅れ
などは、当初政府が言っていたことと逆であるが、著者の論証は納得せざるを得ない。
アメリカ自身が苦しんでいる金融緩和と株主資本主義を、日本が目指すのはいかがなものかという著者の問いは、確かにその通りであると思う。

失われた20年と言っても、日本はその間雇用を守り、生活保護に代表されるセイフティネットが治安の良さを下支えしているとして、著者は評価している。
格差をつけない人事体系が、働く人のモチベーションを支え、日本企業の強さの原動力となってきたと説く。
ROE重視の経営は、それを破壊すると警鐘を鳴らす。

著者はエコノミストであり、こうした分析をするのが仕事。
一般の我々とは比べるべくもなく、我々がこうした事実がわからないのも仕方がないと思う。
ただ、関心があればこうした主張も目に留まるわけだし、そういう意味で、アンテナは常に張っておきたいものである。

できればこのままうまくいって欲しいが、好調に思われるアベノミクスも危うい要素を秘めているという事実は、知っておくべきことだろう。
またしても勉強させてもらったが、まだまだ著者の著書からは目が離せないと思うのである・・・

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2015年08月07日

【投資は「きれいごと」で成功する】新井和宏



第1章 「きれいごと」で成功した非常識すぎる「8つの投資法則」
第2章 「投資は科学」から「投資はまごころ」へ−「リターン」を再定義する
第3章 「経営効率の悪い小型株」で、「リスク」はチャンスに変わる
第4章 「安く買って高く売る」に必要なのは金融工学ではなく「信頼」
第5章 「格付け」よりも大切な「8つの会社の見方」−「経済指標」を再定義する
第6章 企業価値は、過去の成功ではなく「ずるい仕組み」を持っているかどうかで判断する−「ビジネス」を再定義する
第7章 金融機関の役割は、お金に眠る「つなぐ力」で社会を動かすこと−「金融」を再定義する

著者は鎌倉投信の運用責任者。
鎌倉投信のことは、少し前から世の中に貢献度が大きい会社のみに投資する投資信託として、その存在を知っていた。
投資信託は、いかにリターンを大きくするかが、鍵と思われている中で、株式の成長性よりも事業の社会性を問うやり方は異質だ。
そんな鎌倉投信の本ということで、手に取った一冊。

鎌倉にある古民家を本社とし、3つの「わ」を志とする。
3つの「わ」とは、日本の心を伝える「和」、心温まる言葉を大切にする「話」、社会や人とのつながりを現す「輪」である。
その「わ」を奏でる「場づくり」が運用会社の仕事だとしている。

「目標は勝つことではなく応援すること」とする。
投資先には、林業再生を目指すトビムシ(聞いたこともない会社である)や民事再生法によって再生に向かっている池内タオルなどがあるという。
普通の投資信託は、お金を出さないだろう。
そしてすべての投資先をホームページで紹介しているというが、これも普通は手の内を明かすことになるからやらないらしい。

著者はもともと外資系ファンドでファンドマネージャーをやっていたという。
かなり稼いでいたようである。
それが体を壊したこともあり、仲間とともに鎌倉投信を設立する。
投資先は、「いい会社」。
そのきっかけは、私も読んだことがある『日本で一番大切にしたい会社』だという。
そういう会社を、誰もが支援したいと思うだろう。

「いい会社」を見つけて投資しているから、当然外資系の投資信託などよりも運用成績は落ちる。
それでも4%のリターンを目標にし、2013年度には鎌倉投信の運用する「結い2101」は、その投資効率の良さが評価されて、「R&Iファンド大賞」に選ばれたという。
投資家も一度投資すると、やたらに解約しないらしい。

年に1回の「受益者総会」には、通常1%くらいのところ、約10%もの投資家が出席するという。
そして投資先の社長なども登壇し、投資家との交流が持たれているという。
確かに、こういう投資ファンドなら利回りよりも「温かさ」を求めて投資したくなるというものである。

金融の世界と言うと、ついついギスギスしたものになりがち。
「経済的合理性」という「効率第一」の理屈の世界であるが、そんな世界を居心地悪いと感じる人もいるだろう。
自分の投資したお金が、利益を生むと同時に世の中の役に立っていると感じるのは心地よい。
鎌倉投信の成功の理由もそんなところにあるのだろう。

すぐにでも投資したくなったが、残念ながらそんなゆとりはまだない。
いずれ受益者に加わりたい。
そんな思いになれる一冊である・・・

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2015年06月20日

【これから日本で起こること】中原圭介



第1章 アベノミクスの失敗は最初からわかっていた
第2章 アメリカ型資本主義が国民生活を疲弊させる理由
第3章 インフレ経済が日本の中間層と地方経済を苦しめる
第4章 なぜ円安でも日本経済は回復しないのか
第5章 これから何が起こるの〜2017年、日本の試練がやってくる

個人的に注目しているエコノミストである中原圭介氏の一冊。
ビジネス界で生きている以上、これから日本経済がどうなっていくかについては、興味を持たざるを得ない。
タイトルからして無視できない一冊だと感じて手に取った次第。

著者は2013年の一年間に7冊の本を書いたという。
通常は2〜3冊だというが、それだけアベノミクスに対する警鐘を鳴らしたかったらしい。
著者は、経済学者による「権威盲信」を戒める。
歴史や現実の企業の動きを考えれば、経済の予測は難しくないが、多くの経済学者たちは「ポール・クルーグマンがそう言ったから」という理由で、それまでの「常識」を疑わないと言う。
それはまるで、中世のキリスト教絶対主義のようであるとする。

経済政策とは誰のためのものか?
この問いに、著者は「普通の暮らしをしている国民のため」と答える。
一見当たり前のような問い掛けがなされ、答えが示されているのは、「今の経済政策が普通の暮らしをしている国民のためになっていない」という著者の思いがあるのだろう。

アベノミクスがうまくいかない理由を著者は2つ挙げる。
アベノミクスの目的は、
@「量的緩和で低金利を促すことにより企業の設備投資が大幅に増える」
A「量的緩和がもたらす円安により、輸出が大幅に増えて国民の所得が上がる」
であるが、これに対し、きっちりと反論する。

すなわち、
@需要が見込めない中では、企業は設備投資を増やさない
A海外の需要が減少しているため、輸出は増えず、円安が進んでも価格は下げず、賃金にも転嫁しないため国民の所得は上がらない
とする。
「Jカーブ効果」も今の日本には当てはまらないと、経済学の理論を真っ向から否定する。
もっと現実をよく見ろというのが、著者のメッセージである。

また、景気が回復しているアメリカの“成功事例”も中身の検証が必要とする。
今は株主がCEOに短期的な株価対策を求め、CEOは安易な人件費削減と自社株買いに走る。
その結果、株価は上昇して株主は潤うが、解雇された従業員は所得が減少し、結果、格差の拡大につながっている。
確かに、言われてみれば、それがアメリカでおこっている現象である。

消費税増税によって、ぐらついたアベノミクスであるが、著者は消費税が原因ではないと言う。
日本でもアメリカのように一般国民の所得が富裕層と大企業に移転しているからという。
GDP成長率よりもその中身が大事という意見は、もっともである。
そして日本人の価値観を反映した日本企業の経営姿勢は、日本が世界に誇るべきもので、アメリカ型に追随する必要はないと語る。

著者の本を次々と読み漁るのは、そのわかりやすさに他ならない。
難しい経済理論を振り回すではなく、実に簡単な理屈で理論展開する。
クルーグマンの理論についていける人は少ないと思うが、著者の理論にはみんなついていけると思わせられる。
ちなみに、今後の見通しとしては、2017年には日本経済が混迷し始めるという。
2016年中には株を手放した方がいいらしい。
今後注目していきたいと思う。

まだまだ次々に著書が出るだろう。
しっかりフォローして日本経済をウォッチする目を養っていきたいと思うのである・・・

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2015年06月15日

【会社勤めでお金持ちになる人の考え方・投資のやり方】中桐啓貴



第1章 会社勤めでもできる7つの投資
第2章 株式会社のしくみがわかれば、株は怖くない
第3章 あたりまえだけどなかなかできない株式投資のルール
第4章 投資をする前に知るべき法則
第5章 この基本を知らずに投資信託を買うな
第6章 NISA徹底活用法
第7章 積立投資で着実に1億円をつくる方法

著者は元証券マンで、現在はコンサルタント兼FP業界の専門家としてご活躍の方らしい。
この本は、サブタイトルに『「投資」と「給料」で着実にお金を増やす方法』とある通り、普通のサラリーマンでもお金を貯められると説いた本である。
日頃から資産形成には興味があり、必然的に手に取った次第。

初めに投資の基本が語られる。
株式から不動産、投資信託にギャンブルなどである。
そして株について、実はきちんと基本が理解できればこわいものではないとの説明が続く。
株式の仕組みは初心者向けで、わかっている者からすると眠くなる。

そして実際の株式投資の考え方。
といっても、デイトレードは儲けられないとする。
もともとサラリーマン向けであれば、デイトレードはまず無理な話。
さらに株式投資では、「儲けることより損をしないことが重要」だとする。
実際の経験から、その通りだと思うし、このあたりは著者に対する信頼感もわいてくる。
その説明は、オーソドックスで堅実である。

肝心の投資については、「仕事がメイン、投資は補助輪」とその基本を説く。
そして、「短気で儲けたお金は短期で出て行く。長期で儲けたお金は長期で出て行く」とする。
お金が出て行くスピードはそのお金を稼ぐのに使った時間、労力に比例するという「ガイアの法則」なのだそうである。

また、お金の使い方として、「自己投資」と「見栄投資」とが説明される。
他人から見えるのが「見栄投資」で、著者はこれを戒める。
さらに「一度膨張した支出は収入が減っても下がらない」というパーキンソンの法則が取り上げられる。
儲けるばかりではなく、支出の話があるところも、さすがお金の専門家である。

そして基本的な投資としては、投資信託が勧められている。
投資信託は、売れているものが良いということはないとのこと。
市場平均を上回る運用成績が良い投資信託であり、決して運用額の大きさではないこと。
NISAを活用し、「値幅が大きい株式投信で毎月積立」、「絶対収益型に一括投資」、「絶対分配型投信」の3つのパターンが勧められる。

巻末には具体的なファンドも掲載されていて、サラリーマン向け投資指南の本としては、良心的な本だと感じる。
投資信託にはあまり関心がなかったが、積立型をやってみようかという気になった。
投資に興味のある人は、一読の価値ある一冊である・・・

【著者お勧め投資信託】
積立用:
「スパークス・ジャパン・スモール・キャップ・ファンド」
「朝日Nvestグローバル・バリュー株オープン」
「JPMエマージング株式ファンド」
長期熟成用:
「トレンド・アロケーション・オープン」
「野村グローバル・ロング・ショート」
一括投資:
「テンプルトン世界債券ファンド(限定為替ヘッジコース)」
「米国変動好金利ファンド」

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2015年05月27日

【黄金の拘束衣を着た首相】三橋貴明



1 黄金の拘束衣を着た男
2 政府を誤らせる「経済のドグマ」
3 安倍政権の根本的な誤解
4 株価に縛られた政治家
5 今すぐできる「国民を豊かにする」政策転換
6 黄金の拘束衣の「黄金律」をこえて

著者は最近ネットでよく目にする経済評論家。
政治経済に興味を持って、日頃からニュースを見たりしているが、どうもよくわからないところが多い。
経済政策などはその一つで、アベノミクスと言われる安倍政権の経済政策が果たして正しいのか危険をはらんでいるのか。
そんなところに興味を持って、手に取った一冊。

タイトルにある「黄金の拘束衣」であるが、これは「世界中で進められている自国民貧困化政策」であるらしい。
と言っても、わざと貧困化させようとしているわけではない。
「インフレ率を低く抑え物価を安定させる」
「可能な限り健全財政に近い状態を維持する」
という二つの黄金律に沿って展開される政策で、一見正しそうだが、結果的に国民の貧困化につながる政策というらしい。

著者によれば、「財政健全化」は間違った政策で、日本経済の浮上を目指すなら、「公共投資による総需要拡大策と労働規制強化を同時に行い、日本国民の実質賃金をもっとも短期間に引き上げるべし」ということである。
そのためには、財政健全化など目指すべきではないとする。

一瞬、「え〜っ!」とおののいてしまう意見である。
GDP比200%を軽く超える借金を減らすどころか、増えるのも厭うなというのであるから当然である。
著者はそもそもGDPとは、から初めて経済の基礎を丁寧に解説してくれる。
そうは言っても、「潜在GDP=完全雇用下で達成される名目GDP」などと言われても、ちょっとピンとこない。
されど解説は丁寧なゆえに、ポイントは理解できる。

世界各国がグローバル化しているが、それは外国資本と外国人労働者への依存度を高め、やがて法人税減税要求などの要求に政府がさらされ、世界各国が発展途上国化していくのだという。
そういう現象はよくニュースで目にするところであり、こうした要求こそが「黄金の拘束衣」の具体例のようである。

しかし、「公共投資を行って借金を積み重ねてどうするのだ」との疑問は真っ先に出てくる。
それに対しては、日銀が国債を買うということは、「日銀=日本国の子会社」と考えれば、「自分が自分にお金を貸した」という事だから問題ないのだと言う。
自分の借金をお札を刷って返すというわけだが、これは禁じ手とされている事なのではないかと思う。
だが、デフレ下だからこそ使える妙手なのだと著者は主張する。

果たして、この説が正しいのかどうか。
残念ながら私にはわからない。
ただ何となく問題があるような気がする。
そこに至る説明は丁寧だし、理論的に筋が通っているとは思う。
「どこが」、とは言えないが、「何となく」おかしい気がするだけである。
公共投資だって過去やってダメだったからこそ、減らせとなったのではないかと思うし、借金を自ら棒引きにすることに感覚的に違和感を覚えるのである。

著者は最後に「常識に基づく考え方に戻れ」と主張する。
それに従うなら、著者の主張する政策にはNOというしかない。
ただ、意見は面白いし、いい思考のトレーニングになる。
こういう本は、素直に読んで自分なりに考えてみるのに有効だと思う。
そういう意味で、いい本だと言いたい一冊である・・・


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2014年12月03日

【2025年の世界予測】中原圭介



序章  資本主義の終焉−成長神話の終わりは近い
第1章 これから物価は上がるのか下がるのか?
第2章 先進国の国民は豊かになる
第3章 日本で始まる水素社会
第4章 日本の電気代は半分になる
第5章 日本で正社員が増える3つの理由
第6章 未来の自動車はどうなるか
第7章 日本の産業はどこが勝ち残るか
第8章 負担は大きいが、意外に明るい少子高齢化社会
終章  2025年に生き残れる人材の条件

常にその言動・著書をマークしている中原圭介氏の新刊を手に取る。
サブタイトルに「歴史から読み解く日本人の未来」とあるが、その未来予測が記されている。
その通りになるかどうかは重要ではなく、現在の状況から来るべき社会に対する予測として、今回も非常に為になる内容である。

今の経済学が役に立たないのは、意外なことに「経済合理性の視点」が欠けている事だと言う。
今後デフレになるかインフレになるかは、エネルギー価格に左右されるのは歴史から見て明らか。
2025年には、我が国はエネルギーコストが下がり、所得格差も縮小し、暮らしは楽になるとする。
明るい見通しに、先を読むのが楽しみになる。

物価を決めるのは、エネルギー価格。
そのエネルギー価格だが、「シェールガスの発見」「自動車の省エネ技術の進歩」により、石油消費が減り天然ガスの価格が下がる。
すると燃料コストが下がり、農産物の生産コストが減り、食料品価格が下がる。
そうした動きから「良いデフレ」が起こり、所得格差も縮小していく。
その通りになれば、明るい未来である。

日本では水素を原料とする燃料電池車がこれから出てくるとのこと。
水素は実は既に身近で生産されており、今のガソリンスタンドで簡単に供給体制が整うらしい。
これは自動車に限らず発電にも利用でき、それによって電気代も半分になるという。
「発送電分離」も既に決まっており、ソフトバンクグループの参入による価格破壊も期待できるとか。

また、新興国の人件費が高騰し、海外との生産コストの差が縮小、法人税減税の流れは日本に有利に働き、日本の雇用も増えていく。
ただ、高齢化も進んでいき、退職年齢も70〜75歳へと引き上げられていく。
そうした高齢者間では、ワークシェアリングも有効であり、そうした社会への取り組みが今後の課題となる。

あくまでも予測とはいえ、水素技術のことなど知らなかったし、水素自動車の可能性は現実的で、電気自動車よりもはるかに実用的だという。
そうした一般的に知らない情報を知ることもでき、またそれに基づく未来予測も参考になる。
やはり、この人の著作からは目が離せないと改めて思う。
常にウォッチしておきたいと再確認させられる一冊である・・・

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2014年04月10日

【「自分年金」はこの3つの銘柄で作りなさい】北浜流一郎



PART 1 アベノミクス相場で儲けられなければ株はやめた方がよい
PART 2 株で儲かるかどうかはタイミング次第
PART 3 株式投資は資金管理が命だ

著者は株式投資の指南家(株プロセレクターと名乗っているようである)。
「株で自分年金作り」をテーマにメルマガも発行しているが、これは同じテーマで書かれた一冊である。

まず冒頭で、「自分は株式投資というセカンドビジネスを運営している」という姿勢で取り組めと主張する。
その考え方には大いに共感する。
初めに、株ジャパン100として有望銘柄リスト作りを勧めている。
銘柄選びは、誰でもまずそこから入る。

会社四季報を見て、コメント、未来予測を重視。
未来予測は、「@売上、A営業利益、B1株利益」に重点を置く。
特に1株利益=EPSが重要であり、これは日本市場で大きな影響力を持つ外国人投資家たちが最も重視する指標である。

銘柄を選んだら、次はタイミング。
「上昇途上の押し目狙いが最上」
「順張りのイヌ型投資より静かに待ち伏せるネコ型投資」
「出来高が増えてこそ株価も上がる」
「ストキャストを使って買い場を求める」
このあたりの考え方は、頷けるものがある。
なんとなくわかってはいたものの、頭を整理するのにちょうどいい感じだ。

そして買ったら売る番。
「上がったら満足原理で売れ」とあるが、これは難しい。
「嬉しくなったら売る」というのがその内容であるが、それもわからなくもないが、大抵嬉しくなるより「どこまで引っ張れるか」とドキドキしてしまう身としては、どうしたらいいのだろう。

それに比べ、
「吹き値は即刻売り」
「利益の20%が消えそうだったら売る」
「東証1部の大出来高は最大警戒が必要」
「ボリンジヤーバンドを使って売れ」
このあたりはわかりやすい。

内容的には、ある程度わかっている人向けだと思う。
タイトルからすると、3銘柄を教えてくれそうな感じがするが、一応お勧め銘柄は載っているものの、鵜呑みにするのはやはり良くないだろう。
しっかり勉強しようと思っている人には、それなりに参考になる一冊だと思う・・・

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2014年03月19日

【小さな会社がお金を借りるなら銀行はおやめなさい】加藤康弘



序章 間違いだらけの借金常識 7つのケース
第1章 ビジネスにおける「借金」とは何か
第2章 誰も教えてくれなかった「金融機関・公的資金」の活用法
第3章 企業するときに知っておきたいお金の話
第4章 借りられる事業計画書のポイント
第5章 銀行との上手な付き合い方

著者は、「資金調達コンサルタント」の行政書士。
そんな著者が語る、「借金」に対する考え方の本である。

普通お金を借りるなら、まず銀行と考える。
一見、矛盾するかのようなタイトル。
敢えて逆説的な表現を使って、読者に本を手にとってもらおうという魂胆なのだろうか。
だが、内容とずれたタイトルはいかがなものかと思う。

タイトルとマッチしているのは、第2章。
その要諦は、要は“日本政策金融公庫”の公的資金を使いなさいという事に尽きる。
あとは、“考え方”だ。
借金を「怖いもの」とだけしか考えていないと、事業を大きくできない。
消費者としてなら、「借金は怖い」と考える事はむしろ好ましい。
借金に頼る生活など良いわけがない。
されど、事業となったら話は違う。

・起業したてでも、日本政策金融公庫なら借りられる。
・借金は「早く返せばいい」というものではない。
・利息は「金額で考える」と良い。
・多少金利が高くても、金額に直すと大した差が無い事がある。
・事業は「借金で」潰れるのではなく、「お金がなくて」潰れる。
・無借金経営が、必ずしも良いとは限らない。

これらの主張は、多少強引な理由づけが見られるところがあるが、まぁ真実である。
借金=悪という固定観念に凝り固まらないようにしないといけない。
借入期間を長くすれば、月々の返済額は小さくなる。
事業はどこでどうなるかわからないし、できるだけ「借りておく」のも、現金の確保という意味で経営の安定につながる。
余れば、繰り上げ返済はすれば良いし、途中で「期間を延ばしてもらう」方がハードルは高い。

どちらかと言えば、金融初心者向けの指南書と言える内容。
知らない人には、考え方の点で参考になるかもしれない。
タイトルに惑わされる事なく、金融素人を自任する経営者は、一読しておく価値はあると思う一冊である・・・

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2013年12月15日

【日本人は「経済学」にだまされるな!】中原圭介



Chapter1 日本人は「経済学」を信じてはいけない
Chapter2 インフレ経済学が日本経済を襲う!
Chapter3 インフレ経済学が日本人を貧乏にする!
Chapter4 インフレ経済学が日本企業を苦しめる!
Chapter5 インフレ経済学がまき散らす「世界経済」のウソ
Chapter6 インフレ経済のウソからあなたの資産を守れ!

個人的にずっとその意見をウォッチしている中原圭介氏の著作。
現在アベノミクスで好調に回復している日本経済。
しかし、経済学に裏打ちされたその政策を著者は危ないと言う。
正当とされている経済学がいかに現状にあっていないか。
それを説いた一冊。

経済学が実は実用的ではない、と言われても普通の人にはわからない。
しかし、返済能力のない人たちに住宅ローンを組ませ、それを証券化し、「金融工学を駆使すれば価格変動リスクを抑えられる」という定説で世界中にばらまいて大問題となったサブプライムローン問題を考えると、それは素直に理解できる。

アベノミクスが目指す緩やかなインフレも、ノーベル賞受賞経済学者のクルーグマンの主張を取り入れているが、ノーベル賞すら「金を生む道具になる」として、否定する。
「リフレを進めたアメリカが、その結果格差が拡大している」と主張している著者。
結果としては、否定しようがない。
金融緩和で余った資金が、商品先物市場等に流れ、それによって商品の値段が上がり、庶民の生活を圧迫する。
だとすると、我々庶民の生活は実に危うい。

市場はもはやコントロールできず、金融当局が物価をコントロールする事など不可能と言い切る。
その根拠はシンプル。
「高騰した住宅価格を下げようとすれば、金融の引き締めをしなければならないが、そうすると景気が悪くなって失業者が増える。だからと言って金融緩和をすればお金が住宅市場に流れ込んで価格が高騰する。
中国の例を取っての説明はしっくりくる。

「バブルの時でも日本のインフレ率は2%」という事実には驚く。
今政府がやろうとしているのが2%のインフレ政策だからだ。
著者は「デフレには良いデフレと悪いデフレがある。悪いデフレは悪いインフレよりずっといい」と主張する。
デフレが悪とされてきた日本経済だが、諸外国の事例からすると、それでもまだマシなのだと言う。

「実は日本経済は円安に弱く、もう円安のメリットはない」という主張も今の世の中の動きと逆行している。
「円安によって競争力が確保されても、海外需要が弱ければ輸出は増えない」という当たり前の理屈には、ショックすら覚える。
逆にエネルギーコストの上昇によって収益は悪化してしまう。

著者の主張は具体的で、素直に理解できる。
「サラリーマンがランチに500円しか使えない」も、むしろデフレによって「500円できちんとした食事ができる」と言えるというのも納得。
「給料が上がらなくてもクビよりマシ」
海外の事例を見ればその通りと言える。
日本は、アメリカよりもドイツを目指すべきらしい。

そうした間違い指摘だけでなく、最後に今後の提言もあるところが良いところ。
批判だけの意見は傾聴に値しない。
官僚は規制緩和だけ考えれば良い
病院の株式会社化が医療を成長させる
農地の集約化
観光予算を手厚く
法人税を半分に
税制・社会保険制度の簡素化

今回の一冊も実に為になる。
経済の事はよくわからないと逃げるべきではないだろう。
なぜなら、それは直接我々の生活に影響してくるからである。
肝に銘じつつ、常に知識の吸収にどん欲でありたいと思う。
中原氏の著書は、これからも必読書としたいと思う・・・

    
posted by HH at 21:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・経済・株式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする