2014年03月19日

【小さな会社がお金を借りるなら銀行はおやめなさい】加藤康弘



序章 間違いだらけの借金常識 7つのケース
第1章 ビジネスにおける「借金」とは何か
第2章 誰も教えてくれなかった「金融機関・公的資金」の活用法
第3章 企業するときに知っておきたいお金の話
第4章 借りられる事業計画書のポイント
第5章 銀行との上手な付き合い方

著者は、「資金調達コンサルタント」の行政書士。
そんな著者が語る、「借金」に対する考え方の本である。

普通お金を借りるなら、まず銀行と考える。
一見、矛盾するかのようなタイトル。
敢えて逆説的な表現を使って、読者に本を手にとってもらおうという魂胆なのだろうか。
だが、内容とずれたタイトルはいかがなものかと思う。

タイトルとマッチしているのは、第2章。
その要諦は、要は“日本政策金融公庫”の公的資金を使いなさいという事に尽きる。
あとは、“考え方”だ。
借金を「怖いもの」とだけしか考えていないと、事業を大きくできない。
消費者としてなら、「借金は怖い」と考える事はむしろ好ましい。
借金に頼る生活など良いわけがない。
されど、事業となったら話は違う。

・起業したてでも、日本政策金融公庫なら借りられる。
・借金は「早く返せばいい」というものではない。
・利息は「金額で考える」と良い。
・多少金利が高くても、金額に直すと大した差が無い事がある。
・事業は「借金で」潰れるのではなく、「お金がなくて」潰れる。
・無借金経営が、必ずしも良いとは限らない。

これらの主張は、多少強引な理由づけが見られるところがあるが、まぁ真実である。
借金=悪という固定観念に凝り固まらないようにしないといけない。
借入期間を長くすれば、月々の返済額は小さくなる。
事業はどこでどうなるかわからないし、できるだけ「借りておく」のも、現金の確保という意味で経営の安定につながる。
余れば、繰り上げ返済はすれば良いし、途中で「期間を延ばしてもらう」方がハードルは高い。

どちらかと言えば、金融初心者向けの指南書と言える内容。
知らない人には、考え方の点で参考になるかもしれない。
タイトルに惑わされる事なく、金融素人を自任する経営者は、一読しておく価値はあると思う一冊である・・・

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2013年12月15日

【日本人は「経済学」にだまされるな!】中原圭介



Chapter1 日本人は「経済学」を信じてはいけない
Chapter2 インフレ経済学が日本経済を襲う!
Chapter3 インフレ経済学が日本人を貧乏にする!
Chapter4 インフレ経済学が日本企業を苦しめる!
Chapter5 インフレ経済学がまき散らす「世界経済」のウソ
Chapter6 インフレ経済のウソからあなたの資産を守れ!

個人的にずっとその意見をウォッチしている中原圭介氏の著作。
現在アベノミクスで好調に回復している日本経済。
しかし、経済学に裏打ちされたその政策を著者は危ないと言う。
正当とされている経済学がいかに現状にあっていないか。
それを説いた一冊。

経済学が実は実用的ではない、と言われても普通の人にはわからない。
しかし、返済能力のない人たちに住宅ローンを組ませ、それを証券化し、「金融工学を駆使すれば価格変動リスクを抑えられる」という定説で世界中にばらまいて大問題となったサブプライムローン問題を考えると、それは素直に理解できる。

アベノミクスが目指す緩やかなインフレも、ノーベル賞受賞経済学者のクルーグマンの主張を取り入れているが、ノーベル賞すら「金を生む道具になる」として、否定する。
「リフレを進めたアメリカが、その結果格差が拡大している」と主張している著者。
結果としては、否定しようがない。
金融緩和で余った資金が、商品先物市場等に流れ、それによって商品の値段が上がり、庶民の生活を圧迫する。
だとすると、我々庶民の生活は実に危うい。

市場はもはやコントロールできず、金融当局が物価をコントロールする事など不可能と言い切る。
その根拠はシンプル。
「高騰した住宅価格を下げようとすれば、金融の引き締めをしなければならないが、そうすると景気が悪くなって失業者が増える。だからと言って金融緩和をすればお金が住宅市場に流れ込んで価格が高騰する。
中国の例を取っての説明はしっくりくる。

「バブルの時でも日本のインフレ率は2%」という事実には驚く。
今政府がやろうとしているのが2%のインフレ政策だからだ。
著者は「デフレには良いデフレと悪いデフレがある。悪いデフレは悪いインフレよりずっといい」と主張する。
デフレが悪とされてきた日本経済だが、諸外国の事例からすると、それでもまだマシなのだと言う。

「実は日本経済は円安に弱く、もう円安のメリットはない」という主張も今の世の中の動きと逆行している。
「円安によって競争力が確保されても、海外需要が弱ければ輸出は増えない」という当たり前の理屈には、ショックすら覚える。
逆にエネルギーコストの上昇によって収益は悪化してしまう。

著者の主張は具体的で、素直に理解できる。
「サラリーマンがランチに500円しか使えない」も、むしろデフレによって「500円できちんとした食事ができる」と言えるというのも納得。
「給料が上がらなくてもクビよりマシ」
海外の事例を見ればその通りと言える。
日本は、アメリカよりもドイツを目指すべきらしい。

そうした間違い指摘だけでなく、最後に今後の提言もあるところが良いところ。
批判だけの意見は傾聴に値しない。
官僚は規制緩和だけ考えれば良い
病院の株式会社化が医療を成長させる
農地の集約化
観光予算を手厚く
法人税を半分に
税制・社会保険制度の簡素化

今回の一冊も実に為になる。
経済の事はよくわからないと逃げるべきではないだろう。
なぜなら、それは直接我々の生活に影響してくるからである。
肝に銘じつつ、常に知識の吸収にどん欲でありたいと思う。
中原氏の著書は、これからも必読書としたいと思う・・・

    
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2013年10月01日

【投資で一番大切な20の教え】ハワード・マークス



1 二次的思考をめぐらす
2 市場の効率性(とその限界)を理解する
3 バリュー投資を行う
4 価格と価値の関係性に目を向ける
5 リスクを理解する
6 リスクを認識する
7 リスクをコントロールする
8 サイクルに注意を向ける
9 振り子を意識する
10 心理的要因の悪影響をかわす
11 逆張りをする
12 掘り出し物を見つける
13 我慢強くチャンスを待つ
14 無知を知る
15 今どこにいるのかを感じ取る
16 運の影響力を認識する
17 ディフェンシブに投資する
18 落とし穴を避ける
19 付加価値を生み出す
20 すべての極意をまとめて実践する

著者は、ロサンゼルスを拠点とする投資会社オークツリー・キャピタル・マネジメントの会長兼共同創業者。
その著者が、過去20年にわたって顧客向けレターを発信しており、そのエッセンスを一冊にまとめたのが本書である。
世界一の投資家ウォーレン・バフェットも推奨という事で、興味を持って手に取った次第・・・

読み始めると、すぐに核心に触れてくる。
「一次思考より二次思考」
一次思考とは、「この企業は減益になると思うから売りだ」と考える事。
二次思考とは、「減益幅は周りが予想しているより小さい。予想より良い業績が発表されて株価は上昇するだろうから買いだ」と考える事。
人の行く裏を行かなければ、手にする利益も人並みとなる。

タイトルに「20の教え」とあるが、大上段に構えた金言が並ぶ訳ではない。
時として、それは非常にわかりやすい喩えで説明される。
「どのゲームにもカモはいる。45分経っても誰かわからなければ自分こそがカモだ」
「あそこに落ちているのは10ドル札では?」という学生に教授は答える。
「いや、そんなわけはない。もし10ドル札なら誰かが拾ってしまっているはずだ」
笑いそうになって、ふと気をつけてみたくなる。

投資につきもののリスク。
それに対する説明も多い。
「投資家が強気になるほど懸念すべき材料は増える。反対に投資家が不安を募らせリスク回避姿勢を強めれば〜リスクは低下する」
「すぐれた投資家は、リターンを生みだす能力と少なくとも同じくらいリスクをコントロールする能力を持っている」

大衆心理にも長けている。
「まず先見の明ある一握りの人が状況がよくなると考え始める。
次に多くの人が実際に状況が良くなっている事に気づく。
最後にすべての人が状況が永遠に良くなり続けると思い込む」
こうして、逃げ遅れた多数の人が骸を晒すと言うわけである。

リスクを恐れてばかりでもいけないが、盲信もいけない。
それは金融危機の時に、かつては安全の代名詞のようであった住宅ローンが、住宅ローン担保証券の登場で、やがて崩壊へと繋がった例で説明される。
「恐怖心を持って投資せよ」との言葉は、しっかりと意識したいと思うところである。

固い事は固いのであるが、大事なエッセンスが詰まっている。
一度読んで終わりというわけではなく、(投資をする人なら)手元に置いて何度でも眺めたいところである。
バフェットが推奨する訳を、しっかりと認識したいと思う一冊である・・・

     
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2013年08月30日

【シェール革命後の世界勢力図】中原圭介



第1章 ひとり勝ちするアメリカ経済
第2章 これからの産業はがらりと変わる
第3章 復活のカギはデフレにある
第4章 デフレと不況はまったく関係ない
第5章 シェール革命で苦境に立つ資源国
第6章 世界経済はシェール革命で二極化する
第7章 日本はデフレでも景気回復できる

その主張するところは、ちょっと普通の経済学者なんかと違っていて、それでいて論旨がはっきりしていてわかりやすい。
いつのまか、私のウォッチしている一人になった中原圭介氏。
また新しい一冊を手にした。

現在、アメリカで進んでいるシェール革命。
これでアメリカは、住宅バブル崩壊後10年はかかると見られていた経済の復活が、早ければ2014年にも達成できると言う。
そんなシェール革命の影響を描いた一冊。

日本ではアベノミクスがもてはやされているが、日銀の史上空前の量的緩和は間違いなく失敗すると、氏は断言する。
「量的緩和→金利低下→設備投資増加」を狙った金融緩和だが、「経営者は需要が見込めるときに設備投資をするのであって、低金利だから設備投資をするわけではない」とバッサリ。
銀行員としての皮膚感覚からすると、氏の主張の方が説得力がある。
これが氏の魅力である。

シェール革命によって完全復活が見込まれるアメリカ経済。
製造業の国内回帰が進み、中国は世界の工場の地位を失う。
安いエネルギーが世界中の企業をアメリカに引きつける。
特に天然ガスは原子力よりも安くなるという主張は要注目だ。
無理なく脱原発ができるではないか。
そしてエネルギー価格の下落は、食料価格に連鎖し、「良いデフレ経済」がもたらされる。

日本では、「デフレは悪」とされているが、氏は「デフレは不況の原因ではない!」と断言。
「所得よりも物価の下落率が大きい良いデフレ」が人々の生活を向上させると言う。
確かに物価を2%上げると頑張っている政府と日銀だが、我々の皮膚感覚からすると、給料もそれに合わせて上がるかと言われたら、まず否定的だ。
「悪いインフレ」になる危険性は高いと、素人でも感じられる。
そんな素人の感覚を力強く裏付けてくれるところが、頼もしい。

シェール革命の進展によって世の中にどんな変化が起こるのか。
日本は、アメリカは、中国は、ヨーロッパやロシアはどんな風になるのか。
決して難しくない平易な語り口で教えてくれる。
一読すれば、誰でも経済通になった気分になれるし、実際になれると思う。
「新聞に書いてあるから、何となくそうなんだろうか」と多くの国民が騙されている。
こういう本を読んで勉強すれば、簡単に騙されなくなる。
やっぱり、これからも氏の著作からは目が離せないと思うのである・・・

    
  
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2013年06月08日

【日本経済大消失】中原圭介



第1章 日本家電メーカー、大敗北の理由
第2章 自動車敗戦という悲劇は起こるのか?
第3章 日本はデフレを克服できるのか?
第4章 成長産業で日本経済大復活

いつも注目しているアナリスト中原圭介氏の一冊。
冒頭で自ら語っている通り、これは著者が初めて書いた「日本経済の分析に特化した本」。
センセーショナルなタイトルは誰がなぜつけたのかはわからないが、本の内容はサブタイトルにある「生き残りと復活の新戦略」である。

家電の敗北は痛々しいほど。
韓国のサムスン一社の世界シェアに、ソニー、パナソニック、シャープが束になっても届かない。
その理由として6重苦(円高・高い法人税・過剰な雇用規制・厳しい温室効果ガス規制・自由貿易協定の遅れ・電力供給不安)が挙げられるが、著者は3つの誤り(設備投資・生産方式・マーケティング)が原因と主張する。
その是非はともかく、考え方、モノの見方は素人にはとても勉強になる。

日本の基幹産業である自動車も家電のようになるのかについては、著者は楽観的。
もてはやされている電気自動車には限界があり、方向性はハイブリッドだと述べる。
そしてこの分野でのトヨタの技術革新は優れており、当面優位は動かないと。
日本の「擦り合わせ」技術と、今後起きるシェールガス革命、そして標準化の動きがその理由として説明される。
余談としてシェールガスによるガス価格定価により、ガス発電は原子力より安価になるため、原発賛成反対自体が無意味になるというから、これは期待したいところだ。

そして現在日本を苦しめているデフレスパイラル。
これを克服するには「所得向上」しかないと説く。
そもそもデフレスパイラルは、「所得の減少」→「消費の減少」→「物価の下落」が正しい順番で、これ以外にはないという。
だから「所得の向上」こそが正しい処方箋だと。
アベノミクスによる金融緩和は、悪性のインフレ(所得が上がらず物価だけが上がる)をもたらすリスクがあるらしい。
個人の感覚的にはしっくりくる説明だ。

最後に日本経済復活の鍵を握る3つの成長分野。
それは、「農業」「医療」「観光」。
いずれも規制でがんじがらめとなっているが、例えばオランダが農業で大成功している例を聞くと、日本にも十分可能性があると思う。
ネックになるのはやはり農協だろうか。

世界の最先端を行く日本の医療。
世界に誇れる観光資源。
日本人でありながら、知らない日本の底力に誇らしい気もしてくる。
まずはこうした事実を知るだけでも、意味は大きい。

こういう本は多くの人が読むべきだろう。
誰かが何とかしてくれるだけではなく、こういう本を読んで、正しい処方箋を示せる人を支持できるようにならないといけないだろう。
中原圭介氏の著書の中でも、読む価値の高い一冊であると思う・・・
    
   
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2013年06月01日

【これから世界で起こること】中原圭介



はじめに マネー経済が再び膨張し始めた
第1章  米国経済はこれから5年が正念場
第2章  欧州経済は「大停滞の時代」に突入する
第3章  なぜわたしたちはお金に縛られるのか
第4章  お金の奴隷にならず豊かに生きる方法とは?
第5章  これから20年、お金に困らない生き方と考え方

目につけば手に取るようにしているエコノミスト中原圭介氏の一冊。
サブタイトルに「正しく時代を読むためのヒント」とある部分に興味を引かれる。
先々の事は「神のみぞ知る」世界であるが、それでもある程度は予測ができるかもしれない。
少なくとも考える事は無駄にはならない。
そんな事を考えて手に取った本である。

書かれたのは2012年7月。
日本も安倍政権誕生前で、多少の古さはあるが、それでもその後の展開とあわせて読むと著者の予測力がわかるというもの。
モノの見方という部分でも参考になる。

前半は世界経済の現状。
ニューヨークは株高に沸く。
これは今も史上最高値を更新して続いている。
QE3の実施が最後の金融相場を作り出すという指摘は、その通りに動いている。
財政の壁、家計のバランスシート不況、そしてシェールガス革命。

欧州については、その脆い仕組みがわかりやすい。
解決策として提示されている「ユーロ共同債」とその理由。
それでも統合が必要な理由。
中国経済の現状。

日本についても当然語られるが、一番興味をそそられたのが消費税増税の影響である。
よく消費税増税が過去経済の停滞を招いたと指摘されているが、著者はこれを否定する。
さまざまな経済指標を見る限り、増税そのものより海外の経済状況の影響の方が大きいと言う。
欧米の情勢が良ければ、増税の影響は軽微になるだろうし、悪ければさらなる景気悪化要因になると。
そして今の情勢からすると、「失われた30年」になる可能性が高いのだと。

第3章からは少し嗜好が変わる。
資本主義の中で、我々はいかにして生きるかが説かれる。
「なぜ経済成長が求められるのか」という問いに対し、その最大の理由は、「国や企業が銀行から借り入れた借金の利子を返済しなければならないから」だという。
理由の説明を読むとなるほどと思うが、やはりGDPの2倍を超える借金の意味を考えざるを得ない。

「足るを知る」という考え方。
生産拠点を安い地域を求めて移って行っても、いずれ残るはアフリカのみとなる。
帝国の版図が限界に達して崩壊したローマ帝国の例を上げ、今のような成長を続けるのは限界があると指摘。
投資に頼る危うさ。
若者ならば、自分自身に投資すべしと説く。

新聞を読み、読書をし、生命保険は熟慮を重ねるべし、住宅は買うより借りろ、と著者の意見が続く。
何だか何の本だったのかと思えてくるが、現在の世界経済を見て考えていくと、必然的に「個人防衛」というところに行きつくのかもしれない。

やっぱり著者の本は一読の価値ありと思うのである・・・
   
    
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2012年09月23日

【東大生が本気で考えた!勝ち抜くための株の本】東京大学株式投資クラブAgents



第1部 勝ち続けるための株式投資のキホン
 第1章 マクロな視点でジャンルを選択する!
 第2章 ミクロな視点で個別銘柄を分析する!
 第3章 株価の動きでタイミングを決定する!
第2部 東大Agents流株式投資の実際

著者は東大生のみからなる株式投資クラブ、東京大学株式投資クラブAgents。
そこのメンバーが、株式投資の基本解説をし、さらに実際の銘柄研究例を解説したのが本書。

第1部は初心者向けとも言える株式投資の基本。
情報ソースの種類、業種や銘柄ごとの特性、経済指標、為替と株価の関係、決算書の見方、EPS・PER・PBR・ROEやROAといった株式投資指標、そしてチャート。
初心者であれば、よく整理されていてちょうど良いかもしれない。

第2部では実際の研究事例となる。
日頃彼らがどうやって銘柄研究をしているのか。
仲間内での発表と質疑応答形式で、ここは非常に参考になる。

最初に取り上げられているのは鳥越製粉。
製粉業界の現状、部門別の売上構成、財務内容分析、そして株価の予想ストーリー。
次の古河電池では、それに加えて株価推移のシナリオを作り、ターゲットプライスとロスカットプライスを設定する。
事後の検証結果と踏まえ、こういう投資が王道なのだろうと思わせられる。

このやり方を続けてそれで必ず勝てるというものではないだろうが、少なくとも王道であるだけに、こういうやり方もよく知っておく必要はあるだろう。
株式投資の基本として、押さえておきたい一冊である・・・
    
     
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2012年09月01日

【2015年までは通貨と株で資産を守れ!】中原圭介



第1章 世界経済はどうなる?
第2章 欧州経済はどうなる?
第3章 米国経済はどうなる?
第4章 新興国経済はどうなる?
第5章 2015年までの資産運用

著者は私も日頃からウォッチしているエコノミスト。
解説もわかりやすいので、経済問題をフォローするには最適な方だと考えている。
本書が書かれたのは2012年の年頭。
8ヶ月経過していて、例えばフランスの大統領選などは終わっていたりするが、それでも内容的には十分現状に即している。
それにタイトルからすると資産運用の本に思えるが、実はそれは第5章のみで、第1章から第4章までは現在の経済情勢である。
この本の有益なところは、そこの部分だと思う。

しばらく前まで欧州の財政危機がアメリカや日本などの株安をもたらせていたが、それは「不均衡」と「連鎖」というキーワードで説明される。
最大の要因が、「マネー経済と実体経済の不均衡」。
マネー経済とは金融政策によって生み出されたもので、それは現在実体経済を大きく上回っている。
それは例えば米国が巨額の赤字を生み、国債を発行する事でそれを埋めている事に象徴される。

米国は中国から安い商品を大量に買い、中国はそれで得たドルで米国債を買う。
他国とも同様で、米国の巨額の貿易赤字が世界の成長を支えており、その世界の成長が米国の赤字を支えるという循環。
その連鎖が危機を募らせる。
2012年の世界経済を取り巻く3つのリスクは、「欧州の財政危機とそれに伴う財政再建」「米国の雇用回復の遅れと住宅価格の低迷」「インフレが定着した新興国の成長減速」だと言う。

欧州問題と言えばギリシャ問題が話題となっていたが、そもそも欧州の経済はどういう仕組みになっているのか。
ドイツは、そしてECBはどういうポジションにあって、どういう動きをしているのか。
ニュースだけを見ていてもなかなか本質は理解できない。

そしてやはり影響力の大きな米国経済。
QE3とは何なのか。
オバマ大統領のやっている事、そして再選はあるのか、共和党大統領が誕生するとどうなるのか。
実はアメリカ国内にはTPPに反対するグループがあって、それはなぜか。
バブルによって救われ、そしてそれによってまた危機を招く実情。

新興国は、中国・ロシア・ブラジル・韓国と米国や欧州の経済復活に大きな役割を担うも、あわせて抱えるインフレという爆弾。
資本主義と言うシステムが限界に近付いていると著者は指摘する。
国家と企業が分離し、成長率が低下するなかで、その指摘はなんとなくぼんやりと感じてきた疑問をクリアーにする。

今後は円安に向かうと著者は予見する。
それによって恩恵を被るのは海外売上比率の高い企業だと言う。
それはそれで参考になるが、やはりメインは第1〜4章の部分だ。
ここがわかれば、経済ニュースを見てもその本質が理解できる。

どうやら目の前に開けているのはバラ色の未来というわけではないようだ。
それはそれで仕方ないが、せめてそれに対してどう対処していくか。
それについての基礎知識をこういう本で補っておきたいものである。
今後も著者の発言は ブログ等で注目していきたいと思う・・・

     
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2012年08月13日

【日本人はなぜ株で損するのか?】藤原敬之



第1章 ファンド・マネージャーとは何か?
第2章 株式運用の基本とは?そして独自の運用とは?
第3章 情報をどう処理すべきか?
第4章 株価とは何か?
第5章 日本人はなぜ投資が下手か?
第6章 日本人とは何か?

著者は長年ファンド・マネージャーとして実績を積んで来られた方。
サブタイトルに「5000億円ファンド・マネージャーの京大講義」とあるように、この本は
京都大学で著者が行った講義に、当日時間の関係で割愛した部分とさらに補足説明を加えたものとなっている。

単なる株の解説本というものではなく、投資全般にわたる主として考え方の解説とも言える内容。
広く哲学にまで内容はおよび、一つの道を極めるという事はこういう事なのかと思わせられる。
著者は農林中金に就職し、そこで国内・米国株式の運用に携わった事からこの世界に入り、やがて野村アセットマネジメント、クレディスイス投資顧問、日興アセットマネジメントと渡り歩いている。
プロ野球選手くらいの年俸を稼ぐらしいが、それもなるほどと頷ける内容である。

株式運用の限界として、「株式を運用対象から外せない」という事が語られる。
つまり相対的に見て株での運用が不利ならば、株の運用をやめれば良いわけであるが、それは自己否定になってしまうのでできない。
そうすると、株式全体が下がっている時にも、一緒に下がる事も自分の常識になると。
「金魚鉢が落下していても中の金魚はそれに気がつかない」という喩はわかりやすい。

具体的な運用手法は専門的になるので、詳しくない人には眠くなるばかりである。
ただ情報整理の仕方については参考になる。
コツは細分化と集中化だと言うが、毎朝日経新聞を切り抜き、それを149の項目に分けてバインダーに保存しているという。
独自のスクエア・ブロック・ルーズリーフと言うノートを作り、大事だと思うことはすべて手書きで書き写しているという。
こうした工夫は何の世界であれ、為になるものである。

日本人はなぜ投資が下手か。
それは「今」に最高の価値を置くからだという。
将来の具体的ビジョンを持ち、それに向けて努力していくという事を欧米人は自然にしているそうである。
翻ってみれば、確かに政治から会社の仕事などにおいても、「いずれ何とかなる」「とりあえず」という言葉は身の周りに氾濫している。

投資の話のはずが、話は思想にまで及ぶ。
されど投資とはそういうものだとも思う。
本格的に投資を始めるという事は、政治・経済・哲学・心理学とあらゆる事柄を学ばないといけない。
著者もたくさんの本を読み、勉強しているようであるが、「学問は最高の道楽だ」という最後の言葉が印象的である。

学ぶところの多い一冊と言える。

    
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2011年08月17日

【フォールト・ラインズ 「大断層」が金融危機を再び招く】ラグラム・ラジャン


                    

第1章 金がなければ借りればいい
第2章 輸出による経済成長
第3章 逃げ足の速い外国資本
第4章 脆弱なセーフティネット
第5章 バブルからバブルへ
第6章 金が万物の尺度になったとき
第7章 銀行を賭ける
第8章 金融改革
第9章 アクセスの格差是正
第10章 蜂の寓話ふたたび

著者はIMFにおいて史上最年少でチーフエコノミストに就任したという実績を持つエコノミスト。
サブプライムローン問題に代表される金融危機を事前に警告した少数のエコノミストである。
そのエコノミストが、サブプライム・ローンを主因とする金融危機はどうして起きてしまったのか、今後くり返さないためにはどうしたらよいのか、をわかりやすく解説したのが本書の内容となっている。

教育の機会不均等から所得格差が生じ、その不公平感を解消するために持ち家を取得しやすくする政策が行われた事。
それには低所得者でも利用しやすいローン制度が必要であった事。
つまり借金による消費拡大を支持する政治的環境が整っていた事。
日本・ドイツそして中国と輸出によって国力を伸ばしてきた国は、アメリカの消費が頼りであった事。

そうしたものに加え、「逃げ足の速い外国資本」、「脆弱なセーフティネット」といった問題が加わる。
さらに利益を出した場合はたくさんの報酬が得られ、損失を出した時にはほとんど罰を受けないという金融機関のあり方が、「犬でも審査を通りそうなほどだ」とまで言われた審査基準に繋がる・・・

内容的にはかなりお堅い内容なのであるが、読み進んでいってもそれを感じさせない。
金融危機と一言で言っても、その原因は決して一つではないという事がわかる。
様々な要因が、そこには組み合わされている。
第10章で紹介されている「蜂の寓話」という本を書いたバーナード・マンデビルというオランダ人の本の一節は、実に意味深い。

「奢侈は貧者を百万人雇い
 唾棄すべき見栄がさらに百万人を雇う
 そねみや虚飾は産業界の手先
 食べ物も家具も服もおろかしくきまぐれ
 そんな馬鹿げた奇妙な悪徳が商業の車輪を動かしている」
まさに資本主義の本質を表している。

現代の経済問題を整理して理解するには、良い本であると言える・・・

      
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