2017年10月13日

【「歴史×経済」で読み解く世界と日本の未来】中原圭介/井沢元彦



第1章 歴史×経済で「世界激変」を読み解く
第2章 アベノミクスを歴史×経済で検証する
第3章 中国は限界に近づいている
第4章 朱子学と経済不況が韓国を苦しめる
第5章 揺れるヨーロッパ、日本に接近するロシア
第6章 エネルギーが常に紛争の種になる
第7章 日本が発展するにはどうしたらいいのか


著者はそれぞれ私が日頃から愛読している経済と歴史の専門家。この2人をコラボさせたところに、出版社のセンスを感じてしまう。やはり日頃から「アンテナを立てている」人はいるのだと改めて思わされる。

とはいえ、前半部分はそれぞれ自著で主張していることが改めて語られていて、目新しさと言うものは感じられない。
・2000年に中国がWTOに加盟し、世界は真のグローバル化を迎えた
・デフレが不況を呼ぶと言う考えは誤り
・権威の意見を鵜呑みにする愚
・小さな政府にするほど格差は拡大する
・中間層が疲弊する国は衰退する

それでも随所に目が止まる言葉が出てくる。
・人が言っていることを鵜呑みにしてはいけない。必ず自分の目で確かめ、真実かどうか裏を取る必要がある
・ある事象の背景には、当時の文化、人々の価値観、生活スタイルなど様々な要素が絡んでいる。それを考慮しないと本当のことはわからない。
これらは普遍的な真理でもある。

なぜ日本の企業は膨大なおカネを貯めこむのか。今、共産党や希望の党がこれに税金をかけて取ろうとしているが、それは日本の銀行がいざという時アテにならず、かと言って従業員をクビにもできないからだと言う。非正規雇用が拡大し、それゆえに企業が儲かっても給料が上がりにくいと言う要因もある。みんなのためにおカネを貯めておこうと言う意識も働くとしている。言われてみればその通りなのかもしれないが、そういうことを考えてみようという発想が自分の中ではなかったところである。

・世界が1つのオープンマーケットになれば日本の良さはもっと強みになる
・アラブの春や天安門事件や明治維新すら含む多くの暴動・革命の原因はインフレ
・規制緩和は、観光・医療・農業をセットで(病院の外国人対応、民間企業による農業経営)
・すべてアラーの思うままと考えるイスラム教は、契約を重視する資本主義とは相容れない
・シベリア開発の日露協力は双方に利益がある
・国際紛争の原因は石油
タイトルにある通り、歴史と経済の観点からの意見は自分自身の新たなと知識となる。

・日本人は生涯働いた方が幸せ
・江戸時代より前は女性は自由奔放だった
・学校教育に足りないのは、歴史・宗教・語学
特に「性善説の教育ではダメ」「知識がなければ思考もできない。知識を詰め込むことはある意味大事」「日本の大学をトップレベルに引き上げる必要がある」という指摘は、個人的にもなるほどと思うところがある。

知は力なりとはよく言われるが、まさにその通りだと思うが、その中でもやはり歴史と経済の観点からの知識は大事だと改めて思う。日本が、だけではなく、大事なのは「自分がこれからどうするのか」。それを考えていく上でも、いろいろな知見に触れていきたいと思う。
そのためには、2人の著者にはこれからも注目していこうと改めて思わされた一冊である・・・



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2017年07月11日

【国のために死ねるか−自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動−】伊藤祐靖



第1章 海上警備行動発令
第2章 特殊部隊創設
第3章 戦いの本質
第4章 この国のかたち

著者は、元海上自衛隊2等海佐。能登半島不審船事件を現場で体験し、それが元となって創設されることになった「特別警備隊(SBU)」、つまり「特殊部隊」の創設に携わることになった方。そんな著者が、特殊部隊創設の経緯を含め自らの体験談、考えを語ったのが本書である。

冒頭では、その能登半島不審船事件の様子が語られる。著者は、イージス艦「みょうこう」の航海長として不審船を追う。日本の腰抜け政治家に発令できるわけがないとタカをくくっていた「海上警備行動」。自衛隊発足以来一度も発令されたことがないこの「海上警備行動」が発令される。この緊迫した追撃戦の迫力がすごい。自衛隊始まって以来の出来事が、まるで眼前で行われているようである。

結果として不審船を停船させたものの、今度は立入検査の問題が出てくる。高度な軍事訓練を受けていると考えられる北朝鮮工作員が待ち構えている中に入って行くということは、かなりの確率で死を意味する。隊員たちが防弾チョッキがわりに少年マガジンを体に巻いて「お世話になりました、言って参ります」と挨拶する。この緊迫感はすごいと思う。

そしてこの経験の反省から特殊部隊の創設となる。と言っても手順が決まっているわけではなく、手探りで進めて行く。普通に考えると、米軍に教えてもらうとなるのだろうが、米軍には断られてしまう。しかし、実は特殊戦の世界では米軍の評価は低いのだという。装備品は高価で最新のものであるが、個人の技量は信じられないくらい低いのだとか。映画の世界とは大違いのようである。

また、以前から個人的に気になっていたのが、「自衛隊は強いのか」ということ。これに関しての説明が興味深い。曰く、日本人はトップのレベルに傑出したものはないが、ボトムのレベルが他国に比べて非常に高いのだそうである。そして軍隊はその国のボトムの集まりであり、従って自衛隊の隊員のレベルは他国の軍隊と共同訓練をするとその優秀さに驚かれるレベルなのだとか。「最強の軍隊はアメリカの将軍、ドイツの将校、日本の下士官」というジョークが紹介されるが、さもありなんと思う。

そして著者は、自衛隊を退官すると、フィリピンのミンダナオ島に行く。目的は戦闘行動について、必要な技術、知識を習得しそれを必要とする後輩に伝えること。治安の悪いその地で著者が得た死生観は、普通の日本人には触れることのできないものだろう。「戦いの本質」と著者は表現しているが、今の平和な日本では忘れ去られているもの。その内容には言葉も出ない。

一方、防衛大学内での訓練での「想定外」の話も面白い。非常事態を想定し、学生を伝令に向かわせるが、走って行く。伝令の任務はと問われ、学生は「早く正確に」と答える。だが、早くならバイクを使う方が走るより早い。なのに学生の頭の中には「防衛大生はバイクに乗るのは禁止」というルールで固まっている。非常時ならルールから逸脱することもありだが、平時と非常時の意識、常識を捨てられない問題として説明されているが、似たような問題は身の回りでもあると思う。

そして最後に出てくる自然の生物の摂理。
・殺し殺されながら共存している
・そのためのルールがある
・全部を生き残らせようとしたら全滅する
・必要以上に殺してしまえば自分が飢える
日本人がバブルを契機に、経済力の勢いを衰えさせたことと絡めた哲学は、深く考えさせられるものがある。

憲法9条死守を叫ぶ人たちには、絶対に受け入れられることのない本だと思うが、人間の本質のところで理解しておかないといけないことが書かれている。軽い気持ちで手に取ったが、実に重みのある内容であった。信条的にどうとかいうことでなく、是非とも読んでおくべき価値ある一冊である・・・


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2017年02月08日

【日本共産党と中韓】筆坂秀世



序 章 離党から10年-日本共産党とは何だったのか
第1章 コミンテルンと日本帝国主義との戦争
第2章 日本に武力闘争路線を押し付けた毛沢東
第3章 中国と日本共産党
第4章 韓国と日本共産党
第5章 東京裁判と日本共産党
第6章 靖国神社参拝問題と日本共産党
終 章 二転三転し続ける日本共産党
付 録 中国の膨張主義と沖縄

 著者は、元共産党衆議院議員。18歳の時に入党し、以来57歳で離党するまで共産党で准中央委員、中央委員、幹部会委員、常任幹部会委員、政策委員長、書記局長代行等を歴任し、No.4まで勤めた人物なのだとか。それが今や離党し、共産党を批判する立場に回っているという。そんな著者の経歴に興味を持ち、手にした一冊。

 私自身、若い頃は共産主義に共鳴するところもあったためか、「私的利益を一切求めず、革命のために自己犠牲を厭わないというストイックな生き方は世間知らずな私を惹きつけるに十分だった」と著者が語るところはすごくよく理解できる。誰かが言っていたが、「共産主義は麻疹みたいなもの」だとか。言い得て妙である。そんな著者はしかし、どっぷりと共産主義思考に染まる。

 そんな著者が離党したのは、「共産主義は所詮ユートピア思想」だと気付いたところだとか。「現実の共産主義体制は人類解放どころか専制主義的一党独裁の人類抑圧社会でしかない」と語るが、それを理解するのに40年もかかったのと思わなくもない。元アサヒビール名誉顧問で、『おじいちゃん戦争のこと教えて』の著者である中條高徳氏の薫陶を得たことも大きいようである。

 著者は、この本で共産党の歴史を語る。戦前の日本共産党の最大目標は、中国革命の成功とソ連擁護。戦争を内乱に転化し、革命成功に導くのが最終目標であったとする。当時のソ連は労働者の祖国で、日本共産党員にとっては憧れの存在であった。著者が入党した頃は、毛沢東の文化大革命を巡って日中両国の共産党は大げんかの真っ最中だったらしい。

 今は関係改善が図られているが、逆にそれゆえに南シナ海のベトナム沖の中国の石油採掘という領海侵犯に対し、日本共産党はベトナムの正義の戦いを支持していないと著者は批判する。ベトナムが領海を維持するには防衛能力の向上が急務であるが、中国共産党と関係を改善した現在、「日本共産党は口をつぐんでいる」と批判する。

 朝鮮戦争はアメリカが仕掛けたものと規定し、韓国も朴正煕大統領時代はまともな国として認めいなかったようである。現在では、朝鮮戦争の評価は180度変換して「まとも」になっている。河野談話については、平成5年の発表時には批判していたという。今は天まで持ち上げて安倍政権批判に利用している。「いつまでたっても“これでは駄目だ”と言っているだけ」とそのスタンスを批判する。

 韓国に対しては、「ベトナムで何をやったか」とわが国に対する従軍慰安婦問題を批判するスタンスに対して批判する。戦地での市民虐殺、強姦、為替偽造、物資の横流し、麻薬密売と同盟国のアメリカでさえ手を焼く有様だったことを述べる。韓国軍の韓国兵のための慰安所もあり、国連で日本を批判する立場にはないとする。このあたり、溜飲が下がる思いがする。

 共産党は、東京裁判を絶対的に肯定している。それはそのまま靖国批判につながるが、著者自身がその考えを改めるに至ったのは、共産党時代、支持者の人たちの中に身内が靖国神社に眠っている人たちがいたからだという。かつては日本共産党も中国の靖国批判に対し、「内政干渉だ」とこれを批判していたとする。

 さらに興味深いのは、日本共産党が現在の憲法制定時に、「唯一反対した政党」であったという事実。「わが国の自衛権を放棄して民族の独立を危うくする危険がある」というのがその反対理由。この頃はまともだったのかと思わなくもない。現在も自衛権自体は認めており、一方で自衛隊は憲法違反としており、この矛盾も著者は指摘する。

 中国の膨張主義等現在の情勢を述べているところもあって、このあたりは著者の意見を披露している部分であり、その主張は至極もっとも。こうして著者の説明を読むと、日本共産党がいかにその時々の政権批判に終始してきているのかというのがよくわかる。そこには一貫したポリシーというものがない(もっとも「なんでも反対」というポリシーなのかもしれない)。何より元共産党員(それもキャリア40年)という方の意見だけに重みがある。

 著者の境地は、普通に考えていけば、当然至る帰結なのだろうと思う。改めてそれがわかったからどうだということもないが、そういうまともな意見を「元共産党員」が語るがゆえに、極めて意味のある一冊である・・・



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2016年05月06日

【シフト−2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来−】マシュー・バロウズ



原題:THE FUTURE,DECLASSIFIED

序 章 分裂する「21世紀」の世界 
第1章 「個人」へのパワーシフト
第2章 台頭する新興国と多極化する世界
第3章 人類は神を越えるのか
第4章 人口爆発と気候変動
第5章 もし中国の「成長」が止まったら
第6章 テクノロジーの進歩が人類の制御を越える
第7章 第3次世界大戦を誘発するいくつかの不安要因
第8章 さまようアメリカ
第9章 「核」の未来
第10章 生物兵器テロの恐怖
第11章 シリコンバレーを占拠しろ
終 章 新たな世界は目前に迫っている

著者は、アメリカの国家情報会議(NIC)に10年間にわたって関わり、時の政権に多くの報告書を提出してきた実績の持ち主であるらしい。本書は、4年に一度大統領に提出する長期予測「グローバル・トレンド」を基にしているといい、将来を考えるという意味でも素人にも役立ちそうに感じて手に取った一冊である。

まず語られるのが、「個人へのパワーシフト」。経済的な豊かさとテクノロジーの進展により、これから個人にパワーシフトしていくとする。その中心は「中間層」の台頭で、今10億人の中間層が2030年には20億人、あるいは予測によっては世界人口の半分という説もあるらしい。この中間層の増加は、厳しいチェックの目で政府に対するプレッシャーにもなるが、先進国でも途上国でも不安定化要因にもなるという。

そしてアメリカの力が衰える世界は、新興国が台頭し、多極化する。気候変動やテロ、戦争の脅威があり、グローバル化した世界は一国の危機が世界に波及する。2030年までにアジアが世界のパワーの中心になり、インドが台頭し日本は過去の国になる。日本についての描写は少ないが、「大規模な構造改革を実行すれば」という条件付きで、「中の上」程度のパワーを維持できるとする。わかるような部分もあり、だからこそ不安になるところである。

テクノロジーの進化は、甲乙両材である。高齢者の生活の質が改善されるのは好ましいが、遺伝子技術の進化により、親は子供に欲しい遺伝子を選んで体外受精させるようになるという部分は、SFパニック映画のネタになりそうな不安がある。そして合成生物学は、バイオテロのリスクもはらんでいる。

異常気象はもっと増え、2100年には世界人口は110億に達し、大規模な食糧不足は必至だとする。食糧供給のインフラが整う前に人口爆発が起こるとされ、自分が生きている時代ではないとはいえ、心配なところである。それ以外に、大きな波乱要因として次の点が挙げられている。
1. 中国経済が新たな成長段階に移れない
2. 戦争の可能性が高まる
3. テクノロジーの暴走が起こる
4. アメリカが複雑化した世界のトップから転落する

中国については、日本に比べはるかに多くのページが割かれている。しかし、「金持ちになる前に老いる」、「中国からiPhoneは生まれない」との厳しい指摘をする。経済成長が民主化を迫り、共産党も人民の要求は抑えきれないとし、強い中国は軍事予算も増やすだろうが政治改革がスムーズに進むため、好ましいとする。この考え方は新鮮である。

興味深いのは、「アメリカの世界の警察官としての役割」である。著者は、「アメリカが世界の警察官の役割を嫌がるかその役割を担う能力が低下すれば世界の安定は揺らぐ」とするが、この部分はどうだろうかと思う。日本人としてみれば、本当に警察官なのか怪しい部分もある。米中2強の新たな世界秩序が生まれるとしたら、日本も相当上手く立ち回らないといけないだろう。

基本的にアメリカから見た未来予想であるが、やはり日本人としては日本に関する部分が気になる。米中関係の中で、「アメリカは日本を守らない」とする。「アメリカは自国の利益と中国の利益との間に折り合いをつけ紛争を回避しようとする可能性が高い」という部分は、やはりと素直に頷ける。問題は我々日本人がそれを想定して今から手を打てるか、であるが、その部分はかなりの不安がある。素人が考えても分かりそうな予測であり、国のリーダーたちにはしっかりやってもらいたいと思うし、国民も目先のことよりこうしたことについて深く考えるべきであろう。

最後の方には、フィクションの物語が挿入されている。そんな未来が本当に来るのかどうかはわからないが、素人でもこれから来るべき未来を想像してみることは大事かもしれない。著者は最後に「今努力すれば今後必ず起きる変化をチャンスとプラスに変えることができる」とする。そう信じて自分も行動したいと、思うのである・・・


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2014年08月21日

【100%得をするふるさと納税生活】金森重樹




Chapter 1 僕がふるさと納税をするようになったきっかけ
Chapter 2 ふるさと納税の手続きの流れ
Chapter 3 収入別のふるさと納税プラン
Chapter 4 ふるさと納税おすすめガイド

最近あちこちで、「ふるさと納税」なる言葉を聞く。
随分とお得だと言う。
ならば一体どんなものか。
面倒臭いと思って放置するのはよくないと、勉強のために買った一冊。

「納税」という言葉を使っているが、正確に言えば「寄付」である。
各地方自治体に対し寄付をすると、それに応じて特典(各地の特産品など)が送られてくる。
それだけだと、産地直送の買い物と何ら変わりがない。
ここで、その寄付について、税務上の還元が得られるというところがポイントとなる。

寄付をしたあと、寄付の証明書を添付して確定申告すると、一定金額の税金が控除される。
さらにそれに基づき翌年の住民税が控除され、加えて特別控除が適用されるため、結果として寄付した金額のうち、2,000円を除いた金額が戻ってくる。
すなわち、2,000円で寄付に応じた特典がもらえるという制度なのである。
著者は何と300万円もの納税額があり、これをすべてふるさと納税に当てているらしい。
つまり、2,000円で「300万円分の特典」をもらっているそうで、これは確かにお得だと言える。

この本では、ちょっとわかりにくい「寄付金控除」という制度の仕組みの説明と手続き方法、それに特典の内容が詳しく書かれている。
ここに書かれている事はごく基本中の基本。
あとは自分の所得税と住民税の金額を確認し、いくら寄付するかを決め、金額と特典とを見比べて選ぶという部分が残るわけである。

そこは最低限自分でやらないといけないが、それくらいの手間暇を惜しんでいては、何も得られない事は確かである。
基本的な事は学べたので、あとは実践。
薄い本ですぐ読めてしまうし、内容も理解しやすい。
取りあえずやってみようと思う人には有益な一冊である・・・


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2014年03月21日

【誰も戦争を教えてくれなかった】古市憲寿



序 章 誰も戦争を教えてくれなかった
第1章 戦争を知らない若者たち
第2章 アウシュビッツの青空の下で
第3章 中国の旅2011-2012
第4章 戦争の国から届くK−POP
第5章 たとえ国家が戦争を忘れても
第6章 僕たちは戦争を知らない
終 章 SEKAI no OwarI
補 章 ももいろクローバーZとの対話

もともと歴史好きという資質があるのだが、歴史に関する本にはついつい目がとまる。
特に「戦争」というのは、歴史における一つの大きなキーワードだと思う。
そんなキーワードが目について手に取った一冊。
青い表紙が印象的でもあり、ひょっとしたらそれは中で出てくる“8月15日”をイメージしているのかな、とも思う。

読み始めると、タイトルからくるイメージとは違う事に気がつく。
「戦争」と言えば、特に日本人は第二次世界大戦を真っ先にイメージするだろう。
これはそのイメージ通りではあるが、ただし、「戦争博物館」というものをその中心においている事が、当初のタイトルから得たイメージとは違うところであり、そしてこの本の試みの面白いところである。

冒頭、ハワイのアリゾナ・メモリアルを訪れるところからこの本ははじまる。
そこは日本の真珠湾攻撃で沈没した戦艦アリゾナの残骸をベースにした博物館。
そこが「爽やか」で「勝利」を祝う「楽しい」場所であるのは、戦勝国ゆえなのであろう。
多くのアメリカ人にとって、第二次世界大戦は「良い戦争」だった。
そこから「戦争の残し方」の違いに、著者は心を惹かれたようである。

そして著者はアウシュビッツへ向かう。
第一収容所のアウシュビッツと第二収容所のビルケナウ。
広大な博物館は、「当時の実物をそのまま残す」という基本方針が貫かれているらしい。
「1955年(開館時)のまま、時が止まってしまった博物館」なのだと言う。
同じ敗戦国であるドイツ。
ベルリンには至るところに戦跡があるという。

我々日本人に関係深いのは、中国と韓国。
中国では、有名な南京大虐殺記念館を訪れる。
「30万人」という数字が強調される展示。
されど「つまらないよ」という地元の大学生の言葉が印象的。
そして、上海、瀋陽、北京・長春、大連、旅順と旅は続く。

韓国では、独立記念館。
著者が「本書比では世界最大」と語るそこは、7つのミュージアムから成り立っている巨大な施設らしい。
アトラクションもあって、エンタメ性が高いらしい。
博物館ではないが、板門店も紹介されている。
韓国には行きたくもないが、板門店はちょっと行ってみたい気がする。

さらに日本に戻って、沖縄、靖国神社(遊就館)、広島、京都・舞鶴、東京・深川と続く。
興味深いのは、「大きな記憶」と「小さな記憶」という喩え。
国家によって博物館や教科書という形で残される「大きな記憶」。
そして数多くの戦争体験者によって語られる「小さな記憶」。
「小さな記憶」は、目を凝らせば回りに溢れている。

博物館巡りから、著者の思考は様々に巡る。
韓国嫌いでも、K−POPは若者の心に届く。
軍隊がなくなっても平和にはならない。
国家も、そして戦争もその姿が変わって行く。
今や国家同士の総力戦戦争は起こりにくい。
それはアメリカでも、無人機や民間軍事会社などという形で新しい戦争の姿が現れている。

最後に補章として、ももいろクローバーZとの対談が納められている。
ここでは歴史を知らない若者の姿を知ることができて、意外に新鮮。
「嘆かわしい」と見る事もできるが、こうした世代が中心になっていくと、また歴史観も変わってくるのかもしれない。

この本は、「歴史を学ぶ」本ではない。
言うなれば、「歴史から考える」本と言える。
様々な戦争博物館を偏見を持たずに見学して帰ってきて、そこから著者なりに感じた事。
それから一緒に考えてみる事ができる。
読み方次第で、深いところに行ける一冊である・・・
   
   
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2013年06月18日

【社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!】きちりん



第1章 お金から見える世界
第2章 異国で働く人々
第3章 人生観が変わる場所
第4章 共産主義国への旅
第5章 ビーチリゾートの旅
第6章 世界の美術館
第7章 古代遺跡の旅
第8章 恵まれすぎの南欧諸国
第9章 変貌するアジア
第10章 豊かであるという実感
さいごに 旅をより楽しむために

著者は、 「自分のアタマで考えよう」のちきりん。
ブログの方もちょくちょく拝見しているが、著書を見つけたので手にとってみた。

実はきちりんさん、旅行好きらしい。
すでに約50か国を訪問しているというから凄い。
そして旅をしていても、見るもの聞くものからやっぱり自分のアタマでいろいろと考えている。
そんなあれこれを記した一冊。

初めにセブ島のレストランで紅茶を頼んだ時のエピソードが語られている。
お湯の入ったカップにリプトンのティーバッグが添えられて出されてびっくりしたと言う。
日本のレストランではあり得ないが、その背景を知れば日本の常識との違いがわかる。
我々はやはり一面からしか見ていない。
なかなか期待できそうな出足。

お金から見える世界では、自国通貨が強いという事がいかにありがたい事かがわかる。
デノミに遭遇した例や、自国通貨ではなく米ドルや金価格表示の例など、日本にいるとわからない世界がある。
輸出に有利というだけで、円安を好む理由がわからないという指摘はまったく同感である。
千円札から伊東博文が消えた理由はなかなか面白いとともに、少々腹立たしい気分もする。

さすがに50か国ともなると、様々である。
ウイグル、イースター島、サファリでは人生観が変わったといい、共産圏への旅はかつてのソビエトなど興味深い。
現地文化から切り離される地上の楽園モルジブなど、このあたりは旅行記としても面白い。

世界の美術館では、先進国の美術館には世界各地の文化遺産が本国を離れて展示されていたりする。
何となく帝国主義時代の略奪感があって、批判的になりがちであるが、現地にあったら財政難で十分保護されていなかったかもしれないとなると、また違った印象を受ける。

第10章では豊かさについてのエピソードが紹介される。
ビルマで現地の大金持ちに会い、そこでの会話が紹介される。
植民地時代に建てられた家に住み、ポンコツながら車を持ち、鞄いっぱいに詰め込まれた現金があるが、いずれも持たない著者は自分の方が何一つないけど豊かだと感じる。
日本にいたら到底気がつかない感覚だろう。

旅先でトラブルにあった時、
@笑顔で、はっきりと、リクエストする
A問題の解決方法は自分で考える
のが良いのだと言う。
なぜなら相手は日本と違って、「問題を解決しよう」という気がないからだと言う。
数多く旅していると、そうしたノウハウも身につくのだろう。

例によって「自分のアタマで考える」参考にしても良いし、また旅行記としても楽しめる。
なかなか旅行に行けない家族持ちにとっては、旅行気分で楽しむのもいいかもしれない一冊である。


    
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2011年02月07日

【知らないと恥をかく世界の大問題】池上彰

私は見ていないのだが、同名タイトルのTV番組が人気らしい。
新聞やテレビで流れるニュース。
なんとなく見てはいるものの、その背景などはわかっていないというケースは多い。
そのなところをわかりやすく解説してくれるので、なるほどと納得する人たちが多く、それが人気の理由らしい。

それではと思い、さっそく手に取る。
さらっと読めてしまう手軽な厚さである。
内容も世界の問題から日本の問題まで多岐にわたっている。
日常ニュースで多く目にしている問題ばかりである。

第1章は「新しい『世界の勢力地図』を占うキーワード」として、現在世界で起こっている事の基本的な背景説明。
「世界のお金の重心は西から東へと動いている」として、リーマン・ショック以降世界各国が景気刺激策のために量的緩和でばらまいているお金の事が触れられている。
重要なキーワードだ。

第2章は「覇権国家アメリカを転落させたもの」。
FRBは知っていても、その成り立ちなどは知りもしなかったから、こうした部分はあらためて知る事となった。
それ以外の部分はよくわかっている事が続く。
そうした既知の部分も自分の理解が正しいという事がわかっていい。

第4章では、「待ったなし!世界全体が抱える問題点」。
ここでは資源に投機資金が流れている事が指摘されている。
個人的に関心をもっていたところだ。
今でも各国政府がばら撒いているお金が原油・穀物・金などの資源に向かい、軒並み価格が上昇している。
その影響はやがて我々の生活に波及する。
もっとみんなそういう事情を知るべきだと思うから、こういう解説は好ましいと思う。

なるほど人気の理由がわかった気がする。
それほど特別な事は書いてないと思う人は、それだけよく理解しているという事の確認になる。
タイトルは少々大げさな気もするが、間違ってはいない。
もっと関心を持つべきなので、これからという人はまずこの本から始めてみるのもいいと思う・・・

知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書) [新書] / 池上 彰 (著); 角川SSコミュニケーションズ (刊)
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