2016年08月18日

【99%の社長が知らない銀行とお金の話】小山昇



序 章 借金をしたくないなら、今すぐ社長をやめなさい
第1章 銀行がお金を貸したくなる会社とは?
第2章 赤字の会社でも、融資を引き出す方法がある
第3章 徹底解説!「武蔵野」の「資金運用に関する方針」
第4章 「3点セット」で銀行の信用を勝ち取る
第5章 “実例”銀行交渉術 あの会社はなぜお金に困らなくなったのか?

 著者は、これまで『部下はなぜあなたをそんなに嫌うのか?』『社長はなぜ、あなたを幹部にしないのか?』などの著書を記している株式会社武蔵野の代表取締役社長。今回は、社員教育や掃除や経営のことではなく、銀行交渉術である。色々と多岐にわたる内容で著書がある著者であるが、どれも「会社経営」という根幹は変わらない。銀行からの借り入れも、重要な経営項目である。

 一般的に「借金=悪」というイメージがあるが、これは個人には当てはまっても会社には当てはまらないとする。経営者にとって本当に罪悪なのは、「会社を潰すこと」であり、無借金経営の会社ほど、いざという時に倒産しやすいとする。実はこれ、事実である。無借金の会社は、普段銀行との融資取引がない。そして銀行は初めての貸し出しには慎重になる。いざという時に銀行に飛び込んでも、銀行は警戒し、慎重な態度をとる。余裕のない危機にある時は、危険であるのである。

 銀行は、「儲けている会社」ではなく、「確実に返してくれる会社」にお金を貸す。では、何を持って「確実に返してくれる」と言えるのか。著者はそれを3点セットだとする。3点セットとは、
1. 経営計画書
2. 経営計画発表会
3. 銀行訪問
である。

 さらに、銀行の事情を知り尽くした著者は、そのノウハウを語る。
1. 近くの支店より(支店長の)決済額の大きな支店
2. 資金に余裕があっても、繰上げ返済してはいけない
3. (銀行の)新規の飛び込み営業は、三顧の礼で迎えるのが正しい
4. 手形貸付ではなく、証書貸付で借りる
5. 証書のコピーを取っておく
6. 取引銀行の数は、都市銀行1、地方銀行1、信用金庫1、政府系金融機関1
7. 資産の部はより上位の科目へ、負債の部はより下位の項目へ移すように努力する
こうしたノウハウは、一般の会社はほとんど知らないであろう。

 3点セットの「銀行訪問」も実は重要であるが、「忙しくない時間帯に訪問」、「一行の訪問時間は20分以内」と、これも銀行員の痒いところに手がとどくほどの気配りである。そして話す内容は、「会社の数字」、「会社の現状」、「今後の展望」の三つで、「銀行ごとの温度差を知るには同じ話をすること」とこれもよく知っているなと感心させられる内容である。銀行訪問には、「幹部を帯同させる」と社員教育も忘れない。

 銀行は一行取引だと、生殺与奪権を握られてしまうというところも、単に銀行に迎合するだけではない。押さえるところは押さえている。私のような元銀行員には目新しい内容ではなく、「そうだよなぁ」と一々同意させられる内容だが、一般の会社社長さんにとっては、かなり為になる内容であると思う。今や本業は順調で、他社の経営支援にも手を出している会社だが、これだけのノウハウがあるのなら、立派な収益源としてそれも当然だと言える。

 中小企業の経営者は、常に勉強し続けないといけない。それは本を読んでもいいと、個人的には考えている。そうして、その時読むべき本には、この本も入れておきたいところである。中小企業の経営者なら、読んでおきたい一冊である・・・



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2016年03月06日

【ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学】入山章栄



第1章 なぜビジネススクールでは最先端の経営学が学べないのか
第2章 「経営学は役に立たない」についての二つの誤解
第3章 あなたの会社の戦略がうまくいかない、最も根本的な理由
第4章 成功しやすいビジネスモデルの条件とは何か
第5章 イノベーションの絶対条件!「両利きの経営」を進めるには
第6章 なぜ大企業は革新的イノベーションについていけないのか
第7章 「チャラ男」と「根回しオヤジ」こそが、最強のコンビである
第8章 組織の学習力を高めるには、「タバコ部屋」が欠かせない
第9章 「ブレスト」のアイデア出しは、実は効率が悪い!
第10章 「失敗は成功のもと」は、ビジネスでも言えるのか
第11章 真に「グローバル」な企業は、日本に3社しかない
第12章 「世界がグローバル化した」「フラット化した」を疑え
第13章 日本企業に、ダイバーシティー経営は本当に必要か
第14章 男性中心職場での「できる女」の条件
第15章 これからのリーダーシップに向くのは、どのような人か
第16章 成功するリーダーに共通する「話法」とは
第17章 日本最強の後継社長は「婿養子」である
第18章 CSR活動の思わぬ副次効果とは
第19章 日本の起業活性化に必要なこと(1)簡単なキャリア倒産
第20章 日本の起業活性化に必要なこと(2)サラリーマンの副業天国
第21章 成功した起業家に共通する「精神」とは
第22章 「もうかる理由って結局なに?」を突き詰める学者たち
第23章 「リソース・ベースト・ビューが捉えきれないこと」とは何か
第24章 ハーバードを見て、米国のビジネススクールと思うなかれ
第25章 米国の大学の裏事情は、中国人が一番知っている
第26章 来れ!世界最先端の経営学を語る人材よ

自分自身、これまでのキャリアの中で、できれば海外の大学院でMBAを取りたかったと思っている。
そうした経営の勉強というものをしてみたかったからである。
そういう気持ちが今も残っているせいか、あるいは今の仕事で常に会社の事業の方向性を考えているせいか、この本のタイトルには瞬間的に反応してしまった。

著者は経営学者。
経営学は、個人的にはやはり経済学よりも興味深い。
経営学は、いわゆるMBAとは異なり、PhDという学位になるが、実務よりも「研究」に重きを置いた学問であるということがこの本でよくわかった。

その学問の世界であるが、アカデミー・オブ・マネジメントという世界最大の学会では、大半の学者がアメリカ人であることは不思議でないにしても、日本人の2015年の出席者は33人であったという。
中国・香港が517人、シンガポール162人、韓国154人、台湾134人と聞くと、ちょっと日本の行く末が心配になる。

「世界の経営学者が、同じ学会に参加し、同じ経営理論を使い、同じ分析手法で、英語という世界共通の言語を使って経営学を研究し、発表し、議論を戦わせ、その『知』を膨らませている」という著者の危惧はまったく本当で、「大丈夫か我が国の将来は」と思わされる。

さてその経営学であるが、本当にビジネスに役立つのかと疑問に思う。
それはこの本を通じて著者が答えてくれる。
実は経営学者は、「役に立つかどうか」ではなく、自らの知的好奇心から研究をしているのだという。
では役に立たないかというと、そうではなく、「思考の軸」であり羅針盤であるという。
「羅針盤は方向を示すだけで、どうすれば一番早く安全に目的地に着けるかは教えてくれないが、かといって不要ではない」というたとえは、実にわかりやすい。

実際、
・過去のM&Aに関する論文を分析すれば、M&Aとは一般的に失敗する確率の方が高い
・競争の形が違えば、求められる戦略も異なる
・新しい事業に求められるのは、イノベーティブでかつシンプルなビジネスモデル
などの説明は、実際のビジネスの現場でのいいヒントになると思う。

さらに、「知の探索」と「知の深化」とがキーワードとして語られる。
「知の探求」とは、知の範囲を広げることで、自社にある既存の知と自社の範疇からだいぶ外れたところにある知を組み合わせることとされる。
「知の深化」とは、一定分野の知を深めることで、両者をバランス良く使う「両利きの経営」が説かれる。

例えば新規事業では、そのビジネスに必要な機能を新しい組織にすべて持たせ独立性を保たせる一方、トップレベルでは既存の部署との統合と交流を促すことが大事であるとする。
なかなか示唆に富んでいる。

その他、リーダーシップにおける二つのタイプ、「トランザクティブ・リーダーシップ-アメとムチのリーダーシップ」と「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ-啓蒙型のリーダーシップ」の話や、成功するリーダーに共通する話法としては、情景が浮かぶメタファーが特徴の「イメージ型」の方が「コンセプト型」よりも良いという話は、なかなか興味深い。

個人的には、「日本企業の最強の後継社長は婿養子」という話が興味深かった。
同族経営には、「株主と経営者の利害が一致し、企業=一族の長期的な繁栄を目指す」というメリットがある一方、「資質に劣る経営者が創業家から出てしまう」というデメリットを防げるとする。
「金持ちは三代で潰れる」という話にも通じ、納得してしまった。

起業に際しては、「ハイブリッド副業」という形が良いという話も興味深かった。
副業というとイメージは良くないが、要は勤めながら起業のアイデアを進め、行けそうだったら独立するというもので、アメリカではむしろ普通だという。
決して「安月給の補完手段」ではないとするが、それも一つの方法だろう。

様々なケーススタディを分析し、そこから得られたエッセンスをどうまとめ上げて今後の方針とするかがMBAで学ばれることだという。
経営理論を学んだり、それに基づいた分析ツールや思考法を思考の軸として使うことは、確かに経営の意思決定には有用だろう。
学問もそれなりに意味はあるのだとわかる。
そうなると、やっぱり若いうちにそういう勉強をしておきたかったと、改めて思う。

かくなる上は、日々の業務で思考しながら、せめて研究対象になるような実績を上げようと、意識を高めていきたいと思うのである・・・

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2015年06月28日

【比較ケースから学ぶ経営戦略】松田久一



Prologue 潰れない会社はない
Chapter 1 会社の戦略を読む
Chapter 2 変わる顧客を基軸にする
Chapter 3 シーズを生かして差異づくりをする
Chapter 4 ライバルに競り勝つ
Chapter 5 限られた資源を集中させる
Chapter 6 人づくりに力を注ぐ
Chapter 7 戦略をさらに深く読む

常日頃から、会社の経営戦略には興味を持っている。
自分たちの会社にふさわしい「経営戦略」は何だろうといつも意識しているからである。
そうなると、この本のようなタイトルを見るとついつい手にとってしまうのである。
しかも「比較ケースから学ぶ」とある。
机上の空論よりも、現実の例の方がはるかにわかりやすいと思うこともある。

さて、そうした理由で手に取った本であるが、中味を見ていくと、さっそくコダックの経営破たんの例が挙げられている。
写真フィルム市場が短期間で消えてしまうという大波に転覆したのであるが、同じ状況下でありながら生き残った富士フィルムが対比される。
この例は、昨年読んだ『魂の経営』とかぶるところである。

両社の明暗を分けた理由を、著者は「5つの行動の差」として紹介している。
@ 顧客ニーズのとらえ方の差
A 顧客のイメージングニーズを満たす製品サービスの差
B 写真フィルム市場での競争力の差
C 多角化事業への集中投資の差
D 組織づくりの差

Aは言葉だけだとわかりにくいが、要はデジタルカメラと撮った写真のプリントサービスのことであるが、こうした言い回しが何ともわかりにくい。
ここの部分は、むしろ『魂の経営』の方が参考になる。

持続的に成功するための戦略の原則を、著者は5つ挙げる。
@ 顧客 変わる顧客を基軸にする
A 差異 シーズを生かして差異づくり
B 競争 現場の競争で少しでも競り勝つ
C 集中 限られた社内資源を、集中させる
D 組織 組織作り、人づくりに力を注ぐ

それぞれの具体例として挙げられているのは、
@ エルメスと三越
A 花王とアップル
B アサヒビールとキリンビール
C GEとシャープ、フィリップス
D トヨタ自動車、ファーストリテイリング、グーグル
である。

個人的に今一番参考になったのが、Aの「差異づくり」である。
「差異づくり」とは、具体的に、
「製品革新」:他社が同じようなサービスをまったく提供していないような独占的な差異を生む
「差別化差異」:他社とは差別的な価値や品質を提供する
「コスト優位」:他社と比べて低価格である
となっている。
まさに自分たちが今やっていることだから、よけいしっくりとくる。

「会社とは潰れることを前提に考える」という意見もなかなか新鮮であった。
言われてみれば確かにその通り。
そして、「会社を経営するというのは危機をどう乗り切るかを考えること」という意見もしかり。
どんな参考書を読んでも、これで大丈夫というものなどない。
こうした事例から、エッセンスを学び取るしかない。

参考になった差異づくりでは、「コダックはキーデバイスを製造しなかった」、「エルメスの差異づくりは原料と職人技」である。
よそと同じことをやっていては、特に中小企業は難しいだろう。
こうした具体例に基づく検証は、やっぱり参考になる。
専門的な勉強をしてきたわけではない身としては、読書に頼るしかないが、その時にこうした本は大いに役立つ。

実際の仕事に役立てたいと思わせられる一冊である・・・

posted by HH at 12:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月21日

【日本の経営を創る】三枝匡/伊丹敬之



第1章 アメリカ流経営、九つの弱み
第2章 「日本的経営」も威張れたものではない
第3章 論理化する力・具体化する力
第4章 日本における「経営の原理」
第5章 「創って、作って、売る」サイクルの原理
第6章 人の心を動かす戦略
第7章 事業の再生、大組織の改革
第8章 抵抗勢力との闘い
第9章 失われてきた経営者育成の場
第10章 今、求められる経営者人材

事業再生のプロ三枝匡氏と学問的立場の経営専門家伊丹教授による対談形式の経営論である。
言ってみれば、理論と実践の立場からの対談という事もあり、興味深く読む。
冒頭、アメリカ流経営の弱みが興味を引く。
@ 安易な多角化
A 高過ぎる配当性向
B 短期リターン志向
C 組織の非継続性
D 品質よりも目先の利益追求
E ものつくりの弱さ
F インスタント成金主義
G 社員の低コミットメント(社員の変動費扱い)
H 所得配分の過度の偏り
お二方とも、アメリカで教えたり働いたりした経験があるせいであろう、アメリカ企業の弱みをよくご存知である。
アメリカ流経営は優れたところも多いが、その欠点を知っておく事も重要だと思う。

一方、だから日本的経営が良いというわけでもなく、伊丹教授は3つの弱みを挙げている。
@ 年齢構成
A 悪銭身につかず
B 鍛えられていない人たちが経営者へ
経営者の質の劣化というのも、この本のテーマの一つである。

現場で培った経営のエッセンスを「論理化」する、そして、「論理化」したエッセンスを現場に即して解凍するという事が、まさに現場と大学などで行われている事だろう。
そういう意味で、この二人の対談は面白い。
三枝氏が、持論の「創って、作って、売る」プロセスを小さなサイクルで速く回す(「スモール・イズ・ビューティフル」)という事が、そのあとの紙面を通じて語られる。
経営の立場に立ってみなくても、自分の組織に当てはめてみてもそうだと思う。

そして組織論から、人の心へ。
組織の人たちの心をつないでいく「信頼による納得性」。
組織論になれば、リーダーシップのあり方も必然となる。
変革となれば抵抗勢力も出てくる。
三枝氏の著書 「V字回復の経営」の話もよく登場するが、読んであったので「ああ、あの話だな」というわかりやすさがあった。

最後に経営者人材の発掘の話となる。
自分は「発掘」され得るに足る能力があるだろうか。
やっぱり必要なのは、「熱き心」だというが、これはよく理解できる。
ただ日本の大企業では、この「熱き心」を冷ます仕組みがよく出来ているから要注意だ。
心地良いぬるま湯に慣れ親しむ事のないようにしたい。

三枝氏の企業再建については、興味があって是非とも具体的な話を聞きたいところである。
守秘義務なんかがあって、本で読むのは難しそうなのが残念である。
せめてこういう本ででも、その片鱗を味わいたいと思う。

    
posted by HH at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 経営 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする