2020年02月29日

【「おもろい」働き方で社員も会社も急上昇するPeachのやりくり】井上慎一 読書日記1127



《目次》
第1章 みんなから「それいい!」と思われる発想のやりくり
第2章 仕事の効率がぐーんとアップする習慣のやりくり
第3章 相手を自分のファンにさせるサービスのやりくり
第4章 自分も仲間も活躍できる働き方のやりくり
第5章 これだけは絶対に譲れない信頼のやりくり
第6章 社員も会社も羽ばたかせるリーダーのやりくり

 著者はLLCの代表格Peach Aviation(株)の代表取締役CEO。そんな著者が、実例を挙げながらピーチの経営について語った一冊。

 LLCは日本では格安航空会社と訳されているが、正確に言えば「低コスト航空会社」だと言う。Low Cost Carrierであるから、「格安」よりは「低コスト」の方がより正確な訳であることは間違いないが、ここで著者がわざわざ説明するところにその真意が現れている。基本的には、「仕組み、やり方を変え、生産性を上げて低コストで運営することで結果的に低運賃を実現する」航空会社としている。

 低コストで生産性を上げることについて、ネガティブ思考で始めるのではなく、どうせやるなら「これおもろい」と明るくポジティブに楽しみながらやりたいとする。このスタンスは全編で説明され、他にはないことにつながっている。機内食に神戸牛が出たり、チェックイン機はダンボール製だったり、会議室はもともと百貨店の授乳室だったところを案内板そのままに使ったりとユニークな取り組みが紹介される。

 大切にし、共有している言葉が「やりくり」。お金をかけずにいかに面白く楽しくできるか。ただケチケチするより社員のモチベーションは上がるかもしれない。「働き方を変えたい、自分がおもろいと思えるような仕事をしたい、アイデアで勝負したい、企画で人々を驚かせ喜ばせたい、自分の仕掛けで会社の雰囲気やまわりの社員の士気を高めたい」。こんな雰囲気の職場なら働き甲斐もあるだろう。

 企画は「やってみたらおもろいんちゃう」をベースにアイデアを出すと言う。その際、大事なのは「他の会社でやっていないこと」と言うが、これは大事なことだと思う。また、「コストをかけない」のは企画を出す手段だとする。だからこそアイデアが問われるわけである。「企画は100のうち1つ成功すればいい」と言うが、企画とはそんなものだと思う。

 おもろいことをコストをかけずに考えるのも良いが、絶対に優先すべきことにはコストをかけると言う。それが「安全」と「ブランド」。車の両輪と言えるものである。こうした考え方をはじめとして、随所に共感できることが書かれている。
 1. 資料や書類での体裁は二の次
 2. 切り崩してお客を得るのではなく、潜在需要を掘り起こして得る
 3. 仕事は厳しく面白く
 4. 仕事の失敗はラグビーで受けるタックルのようなもの
 5. 会社は社員のバリューを高める場
 6. 自分のバリューを提供するのは「会社」ではなく「社会」

 LCCとはどうしても日航や全日空らに対峙して行かなければならない。同じことをやるわけにもいかず、創意工夫が必要になる。野村監督が語っていた「弱者の戦略」だろうか。ピーチが目指すのは「空飛ぶ電車」と言うコンセプトもわかりやすい。弱者である世の中小企業には参考になる考え方がいろいろと出てくる。中小企業の経営者には参考になる一冊である・・・




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2020年01月27日

【売上を、減らそう。−たどりついたのは業績至上主義からの解放−】中村 朱美 読書日記1116



《目次》
第1章 超ホワイト企業「佰食屋」はどのようにして生まれたのか
第2章 「100食限定」が生んだ5つのすごいメリット
第3章 佰食屋の労働とお金のリアルな実態
第4章 売上を目標にしない企業は、社員になにを課しているのか?
第5章 佰食屋1/2働き方のフランチャイズへ

 著者は、いつも観ている『ガイアの夜明け』で紹介されていて興味を持った佰食屋の経営者。
 1. ランチのみの国産ステーキ丼専門店
 2. 1日100食限定
 3. 営業わずか3時間半
 4. 飲食店でも残業ゼロ
 5. 従業員の給料は百貨店並み
こんな謳い文句だから、必然的に興味を持ってしまう。
「働き方を究極まで絞ることで売上を上げている」
「働き方は自分の人生に照らし合わせて決めることができる」
どうしたらこんなことができるのか。経営に携わる者なら、当然興味を持つだろう。そんなわけで手にした一冊。

 もともとご主人が料理をする人で、定年後にレストランをやりたいという夢を持っていたのだとか。それを28歳の時に一念発起してはじめる。しかし、子供が脳性麻痺で、手が掛かる。そんな自分でも働ける会社ということで、100食限定を打ち出す。ビジネスプランコンテストでは、審査員から「そんなのうまくいくわけがない」と一蹴されたという。いざ始めたはいいが、最初は20食すら売れない。誰も来ない夜とゼロになっていく通帳のお金を見ている心境はいかばかりかと思う。

 それが、ある個人のブログをキッカケに風向きが変わる。オープンして3か月後、はじめての100食完売。そして創業から3年ついに夜の営業を完全に廃止する。ご主人自慢のレシピのステーキ丼という商品だけは妥協しなかったというところが良かったのだと思う。「割り醤油」を作って常備するところにもこだわったというが、やはり飲食店は味である。評判が評判を呼び、最長4時間待ちになる程繁盛し、混雑回避の苦肉の策として整理券を配り始める。今や「すき焼き専科」「肉寿司専科」と3店舗体制となる。

 ビジネスプランコンテストでは否定されたものの、蓋を開けてみれば5つのメリットが生まれている。
 1. 「早く帰れる」→ 退勤時間は夕方17時台
 2. 「フードロスほぼゼロ化 」→ 経費削減
 3. 「経営が究極に簡単になる」
 4. 「どんな人も即戦力になる」→ 他では働きにくい人でも戦力になる
 5. 「売上至上主義からの解放」→ 誰にとってもやさしい働き方
面白いのは、お客様の多い日は忙しい日ではないというところ。整理券も早く配れて、その分早く準備ができて早く終わるのだとか。だからお客様の多い週末は、みんな働きたがるらしい。

 経営者として、こだわる要件は下記の通りだとする。
 1. 月に1回、自分がその金額を出してでも行きたいお店かどうか
 2. 家庭で再現できないもの
 3. 大手チェーンに参入できないもの
 4. みんなのご馳走であること
原価を高くしているから、お値打ち感たっぷりなのだろう。

 みんなが楽しく、ストレスなく働くために、目の前のお客様に喜んでもらうために売上目標は邪魔と言い切る。しかし、理想はいいが経営は現実。ご本人も「儲からない」と認めているし、2018年8月の決算は経常利益でギリギリの赤字だったとか。地震や台風などの天災の影響だったらしいが、ご主人がやっている不動産部門が支えていたから「ギリギリ」だったわけで、佰食屋部門は営業赤字とのこと。この期だけならいいが、せっかくの理想も赤字では意味がない。

 大阪府北部地震と西日本豪雨の時は、50人しかお客さんが来なかったというが、この経験をヒントに「1日限定100食」を「2分の1」の50食にするモデルを考え、それをフランチャイズ化しようと考えているという。夫婦2人なら十分やっていけるというが、そういう働き方で経営を維持できれば理想的だろう。「会社は明日の責任をみんなは今日の責任を」という言葉が紹介されていたが、いい言葉だと思う。

 身近なところにないのが残念だが、京都に行ったら是非とも食べてみたいと思わせてくれる一冊である・・・




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2019年12月24日

【町工場の全社員が残業ゼロで年収600万円以上もらえる理由】吉原 博 読書日記1107



《目次》
序章 吉原精工はなぜ生まれたのか
第1章 その昔、吉原精工は「ブラック企業」だった
第2章 3度の倒産危機を乗り越え「残業ゼロ」へ
第3章 年3回の10連休とボーナス手取り100万円
第4章 吉原流「経営改革とリストラ」
第5章 「自分が嫌なことは、社員にもさせない」吉原流経営
第6章 頭の中の99%を占めている「営業」の面白さ

 著者は、ワイヤーカット加工を専門とする株式会社吉原精工の会長。聞きなれないワイヤーカット加工とは、「電気を通した真鍮製のワイヤーで金属を精密に加工する方法」だそうである。著者は高校を卒業後、3つの会社に勤務し、ワイヤーカット加工と出会い、その後縁あって支援者がいて、1人で会社を創業したそうである。「残業ゼロで年収600万円以上」というのはすごいと思うが、その内容を明かしてくれるのが本書である。

 株式会社吉原精工は社員数7名ながら、タイトルにある通り「残業ゼロ」「年収600万円以上(ボーナス100万円支給)」「年3回の10連休」を実現しているという。ネットで紹介された途端、履歴書を送ってきた人が15人もいたというのもよくわかる(ただ、そういう就職希望者についてはあまり質は良くないように個人的には思う)。なぜ、そんな好条件なのか、そしてなぜそれで成り立っているのか。大いに興味のあるところである。

 もともと吉原精工も、バブル期には次々と仕事が舞い込み、残業の連続でブラック企業だったという。それを改めようと考えたのは、著者自身のサラリーマン時代の経験。残業自体には不満はなかったが、「あらかじめ決めてくれたらいいのに」と思っていたという。そこであらかじめ「22時まで残業」「19時まで残業」「定時に退勤」と週2日ずつ分けることにしたと言う。それが効果を生む。

 さらに事務の合理化を進める中、残業代の計算が面倒だからと固定給に切り替える。残業代を支給する代わりに概ねの金額を織り込む。社員からは不満が出ることもなく、さらに週休二日制を導入する。これで「工夫すればできる」という感覚をつかむ。この結果、仕事が効率化し、ミスも減ったという。社員の立場からすれば、残業してもしなくても給料が同じなら早く帰りたいと思うだろう。それが仕事の創意工夫を産むことは想像に難くない。

 社員が自ら工夫し始めると、「指示待ち」もどんどん減る。「クリエイティブな発想は会社のデスクだけで生まれるものではない」というのはその通りである。過去にはリストラ経験もあるらしいが、その基準は「自分から率先して仕事をするかどうか」。この考え方には深く同意する。総じて、著者は「試してダメならやめる」という考え方の持ち主で、工場の機械の稼働率を下げずに社員の労働時間を減らしていく。その中で生まれた夜間専門社員(週休3日)というのも面白い。

 社員の待遇以外にも、面白いと思う取り組みは、
 1. 名人・達人をなくし全社員をプロにする
 2. 事業は本業一本に絞り、生き残りをかける
 3. 返済が苦しい時は今借りているところに頼む
 4. 会議・朝礼なし
 5. お客様を差別しない
というところ。付け加えて社員に対する待遇面では、
 1. 社員がする仕事に対しては十分な報酬で返すこと、休日などの待遇を良くすること
 2. 定年なし
 3. 社員全員に「部長」の肩書
である。

 総じて感じるのは、実践を通じて得てきた考え方といったところであろうか。経営指南書に書いてあることではなく、自らの経験で得てきたこと。それゆえに感じるところが大である。自社ですでに実践していることもあるが、参考にしたいことも多々ある。「十分な報酬」はすぐには実践できないが、なるべく意識していきたいと思う。
 中小企業の経営者なら、一読の価値ある一冊である・・・
 



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2019年09月24日

【実験思考 世の中、すべては実験】光本勇介 読書日記1075



《目次》
はじめに すべてのビジネスは「実験」だ
CHAPTER 1 僕はこんな「実験」をしてきた STORES.jp、CASHの誕生
CHAPTER 2 僕の「実験思考」のすべて 狂ったビジネスはこうして作る
CHAPTER 3 こんな「実験」がやりたい ぼくが考える未来予想図
おわりに まだまだお金が足りない

 著者は、株式会社バンクという会社の代表取締役。といっても数々の事業や会社に携わってきており、いわば「起業家」というべき人物のようである。この本は、著者が日頃こだわっているその名の通り「実験思考」について語った一冊である。

 冒頭で著者が立ち上げたCASHというアプリについて語られる。仕組みはメルカリなどと同じ中古品売買なのであるが、なんと売りたいモノを写真に撮ってアプリに載せた途端に現金が振り込まれるのだという。いきなり度肝を抜かれる。「そんなことして大丈夫なのか」と思わざるを得ない。なぜなら、写真をアップしてモノを送らなければいくらでも現金を搾取できてしまう。それで24時間で3.6億円をばら撒いたという。とても普通の感覚ではついて行けない。

 なぜこんなことをやるのか。「1億円をばら撒いたらどうなるのかを知りたかった」と著者は語る(私も知りたいが、その前にそれだけのお金があったら、まず自分で使ってみてどうなるかを知りたい)。「失敗は自分だけの価値」、「マスのサービスを作りたい一方で、実験家みたいな存在でいたい」、「誰がやっても成功するようなビジネスには興味がない」という言葉が続く。なるほど、この人は真に起業家だなと感じさせられる。

 そんな人物は、いったいどんな人生を送ってきたのか。海外生活の経験を生かし(いわゆる帰国子女である)、学生時代から既に翻訳のクラウドソーシング、留学の斡旋等を手掛けていたという。青山学院大学を卒業後、外資系の広告会社に就職。これと選んだその会社では、実は新卒採用がなかったらしい。しかし、著者は社長に直接売り込みをかけ、採用を獲得する。社長に連絡を取るために推測した20通りのアドレスにメールを送ったというから、このあたりからして並みの人物ではない。

 著者はそこでもやっぱり活躍し、やがて自分で起業する。「企業のネタに困ったことはない」というのは、サラリーマンの身からするとやっぱり違うと思わざるを得ない。カーシェアリングも実はいち早く始めたらしいが、これは時代が早すぎて失敗したという。「すべての人を信じるビジネスをやりたい」と言うが、それが冒頭のCASHアプリ事業につながっている。「悪いことをする人はほんの何パーセントだから、その人を警戒するより大多数を信じたい」。普通はそんな発想できないだろう。

1. 社長は暇なほうがいい
2. 違和感をスルーしない
3. 不得意なことは任せて得意なことに集中する
4. クリエイティブなことだけを考える
5. 事業は「タイミング」が命
6. 無駄に見えるものも視点を変えれば売り物になる
著者の語る言葉は、簡単だが実行するのは難しい。

 そんな著者はとどまるところを知らない。今後は、「覗き見市場」に需要があるとする。また、ガン検査をもっとカジュアルにしたり、飲食・小売業界は金融事業化すればさらに儲かるとする。実現したら面白そうだと凡人は思うだけである。「いらないモノは極限まで削る」と言うのは、凡人でも真似できるだろう。

 「自分とは違う」と言ってため息をつくのではなく、エッセンスを少しでも学び取りたいと思う。少し元気が出る一冊である・・・



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2019年08月12日

【仕事と心の流儀】丹羽 宇一郎 読書日記1058



《目次》
はじめに―努力に終わりはない
第1章 逆境が心を成長させる
第2章 仕事と人生
第3章 上司と部下
第4章 組織と個人
第5章 努力とチャンス
第6章 おわりに―一歩前へ!

 著者の本はこれまでも『負けてたまるか!若者のための仕事論』『新・ニッポン開国論』を読んできた。商社の社長経験者は数多いるであろうが、中国大使に任命されたり、著作をたくさん出していたりとその中でも著者は抜きん出ていると思う。それもそのはずだと本書を読んで思う。

 この本は、働いているすべての人に送るエールだという。自らの経験をもとにした一言は心に響くものがある。
1. 絶体絶命の状況でも努力を続けることで、人は鍛えられ、強くなっていく
2. 勝者と敗者を分けるのは心の強さと平常心
3. 常識力と理解力があれば理不尽な命令にも冷静に耐えられる
4. 若い人たちが学ぶべきは「人間力」
特に「4」については、部下を持った人に対して、「心の教育が最も重要」とも説く。昨今の企業不祥事なども結局は一人一人の心のあり方に行き着くのであり、「清く正しく美しく」と表現している。

1. 失敗のない優等生ほど怖いものはない。小さな失敗をたくさんせよ。
2. 悲観的に考えて楽観的に行動する。最悪の事態を想定して準備をしたらあとはうまく行くと思って明るくいく方がいい。
3. 問題が多いことを喜べ、それは懸命に行きている証だ
4. やりがいになる仕事になるかどうかは自分の取り組み方次第
5. 夢を持ちたいなら自分の頭で考え、自分で行動しろ
6. 能力や適性に大差はない、開花するかどうかは「どれだけ努力しているか」の違いだけ
このあたりは若者向けにいい言葉である。特に「人と同じように努力しているってどうしてわかる?」「今の仕事が向いているかどうかよりも自分は本当に努力しているのか」という言葉は、本当に大事だと思う。

 そのほかにも、部下を育てる三原則「認めて、任せて、要所で褒める」は、それなりの立場の人なら膝を打つだろう。「嘘をつくと毎日が暗くなる」は、自分でも経験があるから素直に入ってくる。「空気は読んでも顔色は読むな」は、簡単なようでいて難しいのではないかと思う。著者は以前から読書の効用を説いている。その理由として、「論理的思考が身につく」「世の中を洞察する力が養われる」「自分の無知を知る」としている。人は読書で磨かれるというのは本当にその通りである。

 読書しながら書き写しノートを取っているのだとか。さらりと読んだだけではなかなか身につかない。
1. 情報は考えるという作業を経ないと知識にならない
2. 誰にだってチャンスはある、でも勉強しないとチャンスは掴めない
3. 利益の根源はどこにあるかを常に考えよ
4. 守りと攻めを同時にやれ
5. AIは壮大なる前例主義である
読書を通じて得られたであろう言葉に、やはり重みを感じる。ただ読むだけでなく、良く読むことを意識したいと改めて思わされる。

 すべての働いている人に対するエールというのはその通りだと思う。このエールを自分のためにうまく生かしたいと思わずにはいられない一冊である・・・

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2019年03月25日

【破天荒フェニックス−オンデーズ再生物語−】田中 修治 読書日記1010



《目次》
トラックのハンドルを握るのは誰だ!?
新社長は救世主なるか?
目指すはメガネ界の「ZARA」
突きつけられた「死刑宣告」
全国店舗視察ツアー
スローガンに不満爆発
「利益は百難隠す」を信じて
絶対にコケられない新店舗
血みどろの買収劇
悪意は悪意をよぶ〔ほか〕

 その昔、格安でメガネが作れるとあって初めて格安メガネを作ったが、それがオンデーズのものであった。今でも家にあるが、2本目を作ろうとは思っていなかった。もうずいぶん前だが、その間、知らないところでオンデーズは劇的に変化していたようである。その立役者となったのが、本作の著者。時に2008年、乱脈経営から経営難に陥っていたオンデーズの創業者から株式の70%を著者が買い取り、経営に参画する。この本は実話をベースにしてそんなところから描かれていく。

 経営権を取得した著者であるが、いきなりの波乱万丈。なにせ20億円の売り上げに対して14億円の赤字を抱えてのスタート。金融の常識的には、年商の半分を上回る負債は危険水準。知人のベンチャーキャピタルから派遣されて来ていて、この後著者と二人三脚でオンデーズを切り盛りする奥野氏が無謀だと止めるのも道理である。しかし、著者はこのアドバイスを(そしてこの後のアドバイスもことごとく)聞きながらも強行する。そしてことごとく地獄の淵を覗くことになる。

 買収していきなりの資金繰り危機。実は企業では資金繰りがとても重要。黒字が出ていても資金繰りで破綻するケースだってある。ましてやオンデーズは赤字である。銀行は当然ながら一銭も貸してくれない。あれこれと苦心して最初の危機は乗り切るが、現金残高はわずか20万円。著者は、この後すべての銀行借入に個人の連帯保証を仕入れ(これは失敗したら自己破産を意味する)、人生をオンデーズの再生に賭けていく。

 その後も次々と遅い来る資金繰り危機。銀行との返済交渉。そんな状態なのに無謀にも雑貨チェーンをM&Aで買収する。なんとかこれで売り上げの相乗効果を狙うが、旧経営陣の裏切りで両者とも資金繰りの危機を迎えてしまう。メガネ業界は格安勢が大攻勢を賭けて既存勢力を駆逐して行くが、そのトップを行くのはライバルのジェイムズ(JINSのことだろうか)で、その差は圧倒的。

 素人的に考えても、やはり商品力が大事だと思うが、著者は鯖江の業者を猛烈なアタックで口説き落とし、目指す「ファッションメガネ」の布石を打つ。前社長時代にはノルマ達成のために社員に無理やり自社商品を買わせていたのに、これを売り出す初日に社員が自ら欲しくてどんどん買って行くシーンはちょっと目頭が熱くなる。全支店を周り、社員と飲み会を繰り返し、著者はそのチャラい外見とは裏腹に、地道な努力を続けて行く。

 自分などすぐに安定を考えてしまうが、著者は次々と大胆な手を打って行く。それは無謀と紙一重。上手く行ったから良いものの、破綻とは背中合わせの連続。エンターテイメント小説としては誠に面白いが、実際にこんな事業展開の中に身を置いていたら神経が何本あっても足りない気がする。そしてシンガポール、台湾と海外進出を成功させるが、この決断を実際にできる人は少ない気がする(少なくとも金融機関出身者には難しいだろう)。

 物語としても面白いが、実際の起業話(これは買収して経営参加したのだが実質的には起業と考えても同じだろう)としても参考になると思う。起業家にとって必要なのは、度胸と冷静な判断と決断、そして仲間たちというのが実によくわかる。そういう志のある人にとっては、必見と断言できる一冊である・・・


 
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2018年11月19日

【日本一小さな航空会社の大きな奇跡の物語 業界の常識を破った天草エアラインの「復活」】奥島透 読書日記975



《目次》
プロローグ
第1章 どん底からの挑戦
第2章 経営を苦しめた事情と理由
第3章 試行錯誤の1年目
第4章 苦難と逆風の2年目
第5章 予想を超えた3年目からの飛躍
第6章 会社再建で学んだこと
あとがきにかえて――天草への誘い

「保有する機材一機」
「社員数54名という日本一小さな航空会社天草エアライン」
「航空業界の常識では成り立たないと見られ、経営危機に陥いり、その再建を託され陣頭指揮を取り、崩壊寸前の会社を復活させた」
そんな華々しい謳い文句に迷わず手に取った一冊。企業の再建モノはそれだけで今の自分の仕事にも参考になる部分が多く、積極的に読むようにしている。

 著者はもともと日本航空で整備関連の畑を歩み、熊本支店長まで歴任した方だとか。天草エアラインは、第三セクターとして設立されたものの、著者が就任する直前の2009年3月期決算では、9,500万円の赤字を計上し、累積赤字は4億8,000万円に及ぶ惨状だったという。この本を手に取るまでその存在すら正直言って知らなかった地域航空会社である。そんな弱小地域航空会社をどうやって再生させたのか。大いに興味を惹かれるところである。

 着任してまず社長室の壁を取り払ったという。これによって社員を見渡す形で執務ができるようになったようで、パイロットや客室乗務員の健康状態も自ら席でチェックできるようになったのだとか。さらに砂浜でバーベキュー大会を催すなど、社員間のコミュニケーションを積極的に取ったようである。

 さらには人材育成に力を入れ、それまで株主である大手航空会社からのOBや出向者が占めていた管理職のポストにプロパー社員を大胆に登用するなどしたようである。また、採算の厳しい神戸〜熊本路線から撤退し、代わりに需要の見込める熊本〜大阪路線に参入。非常勤取締役として招いた小山薫堂氏とパラダイス山元氏などの協力により、新デザインの新機体を導入するなどしたという。

 これらのことを著者は、5年間の社長在籍期間中に行ったとのこと。なるほどであるが、どうも何となくしっくりこない。何がどれだけ貢献したかという具体的な数字が開示されていないのでよくわからないが、こうした内容で業績のV字回復ができるものだろうか(2010年3月期に一気に1億5,000万円近い黒字)と疑問に思う。しかし、よく読んでいくと何となくそのあたりのヒントは書かれている。
 1. 熊本県が天草エアラインの支援を積極的に開始
 2. 固定資産税の減免
 3. 航空援助施設利用料減額
 4. 1億円の補助金で新予約システムの導入と営業強化

 著者の尽力も当然あると思うが、こうした行政による底支えがあったからこそである事は否めないであろう。だからダメだと言うつもりはないが、当初期待したほど参考になる部分がなかったのは事実である。
 とりあえず、一度くらいは天草エアラインに乗ってみたいなと思わせてはくれる一冊である・・・



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2018年08月13日

【スーさんの「ガリガリ君」ヒット術】鈴木 政次 読書日記944



第1章 自分らしく働く
第2章 ヒット商品の本質
第3章 仕事を楽しくする極意
第4章 どんな時も折れない心の持ち方
第5章 真のリーダーといわれるための心構え

著者は、「ガリガリ君」で有名な赤城乳業(株)の監査役。1970年に入社以来、同社一筋。そして「ガリガリ君」を生み出したご本人だと言う。そんな著者が、長い経験から悟った「仕事の本質」「ヒット商品の本質」などを語った一冊である。

その言葉は、叩き上げだからこそだと感じられるものが多い。
1. 理不尽な評価はいちいち気にしない
2. 笑顔でYES心でBUT
3. 愚痴はどんどんこぼしていい。頭が切り替わり新しいアイデアが湧いてくる
4. 「時間」と「約束」は守る
なるほどと思う反面、「いちいち気にしない」でいられたのも、最終的には評価されているからだという気もしなくもない。

「社会で求められるのは問題発見能力と問題解決能力」というのはよく理解できる。自分自身意識していたいと思うことと一致する。さらにヒット商品の本質のところでは、「企画を通したい時に相手に伝えるべき6つのポイント」が語られる。
1. なぜその商品を作ったのか。その理由と背景。
2. その商品の特徴
3. どんなお客様をイメージしているのか
4. 原料はどんな点にこだわっているのか
5. デザインのポイントはどこか
6. セールスポイントはどこか
ちょうど新しいサービスを研究している時だからこそ、参考になる。

そのほかにもなるほどと思える言葉が続く。
1. 失敗しても前向きに明るく進む
2. 大切なのは思い
3. 情報が集まる人になるには「何かあった?」と耳を傾ける
4. 毎日1つでいいから仕事から何かを学ぼうとすること(クレームからも何かを学べる)
5. 相手に関心を持つこと
6. 失敗した時に自分で自分をかばう

「みんなの合意で商品開発をすると100%失敗する」ということは真実だと思う。こういう頷けることも多い。「部下を育てる時の任せるポイント」にも大いに共感できる。
1. 任せる幅を「すべて」にする
2. 選択権・決定権は部下に委ねる
3. 結果責任を上司が取る
4. ポジションを与える
5. 経営する仕組みを作っておく
特に3と5は個人的にも大事だと常日頃考えているところである。

「人前で自分の夢を語れる上司が会社の成長を早める」というのはその通りだと思う。それなりに実績を残した人の言葉は実績の裏打ちがあるだけに力強い。大いに参考にしたいと思わされる一冊である・・・





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2018年03月30日

【多動力 全産業の“タテの壁”が溶けたこの時代の必須スキル】堀江貴文 読書日記907



第1章 一つの仕事をコツコツとやる時代は終わった
第2章 バカ真面目の洗脳を解け
第3章 サルのようにハマり、鳩のように飽きよ
第4章 「自分の時間」を取り戻そう
第5章 自分の分身に働かせる裏技
第6章 世界最速仕事術
第7章 最強メンタルの育て方
第8章 人生に目的なんていらない

 ホリエモンの新刊をまた一冊。この方の考え方はちょっと普通と変わっている。良い悪いではなく、そういう変わった考え方に触れるのは自分自身にとっていい刺激になると考えて毎回手に取っている。今回はタイトルを「多動力」としているが、「多動力」とは「いくつもの異なることを同時にこなす力」だとする。ホリエモンが語るにはピッタリの力だと思う。

 この多動力だが、実は多動力のある人というものは、次から次へと興味が移ってしまい、全くもって落ち着きがないのだという。イーロン・マスクは着替えができない(着替えている途中でやりたいことが出てきてしまい着替えが続けられない)というエピソードを交え、それが説明される。これまでは間違いなく悪いこととされてきた資質である。小学生の通信簿にはおきまりのように書かれる言葉だ。だが、これからの時代はそれが必要なのだとする。

 これからの時代に多動力が求められるのは、インターネットが水平分業モデルを可能にし、あらゆる産業の壁が溶けていくからだとする。あらゆるものが、(テレビ番組ですら)スマホアプリの1つになるだろうし、「これからはフジテレビのライバルは日本テレビではなく恋人からのLINEになる」という喩えはなるほどである。紹介されるホリエモンの一週間のスケジュールは凄まじい。

 寿司屋で10年も修行することはもはや何の意味もないとホリエモンは断言する。これまで修行してきた人たちにはショックだろう。だが、現実に専門学校を出て開店して11ヶ月でミシュランの星を取った飲食店の話をされると黙るしかない。そういう現実を直視し、考えないといけない。そしてホリエモンの言葉はそのヒントになる。

 1. とにかく始めてしまえば必要な知識やノウハウは自ずと身につく
 2. 自分の肩書きが3つ以上ない人は反省
 3. 全部自分でやらなければならないという思い込みをしていては、多くの仕事を手掛けることはできない。思いっきり任せる。
 4. 仕事を選ぶ勇気
 5. ヒマな人ほど(メールの)返信が遅く、忙しい人ほど返信が早い
 6. みっともない失敗をしても3日も経てば誰も覚えていない
 7. 「○○をしたい→○○が必要」というのが筋。「○○を持っている→○○をしないともったいない」というのはうまくいかない

 一方で、やっぱり「如何なものか」と疑問に思うことも少なくない。
1. 経費精算を自分でやるサラリーマンは出世しない
2. 電話をかけてくる (一方的に人の時間を奪う) 人間とは仕事をするな
3. 会議中でも生放送中でもスマホはいじる
こういうところが、ホリエモンの言動に顔をしかめる人が少なくない理由なのかもしれない。その主張にはなるほどと思うも、自分でそうしたいとはやっぱり思えない。

 人間は新しいものに興味がなくなった瞬間に老いが始まるというが、これはその通りだろう。そしてホリエモンはその興味の塊のような人物である。良い悪いではなくとにかく刺激的であるのはこの本でも変わらず。そういう刺激が自分には必要だと思うし、そういう刺激を求めて今後もこの人の著書を読んでいきたいと思わされる一冊である・・・




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2018年02月07日

【なぜか、人とお金がついてくる50の習慣】たかの友梨 読書日記889



第1章 優秀であるより面白くあれ〜人間関係がうまくいく10の習慣〜
第2章 「オール・イン」せよ〜お金に悩まない9の習慣〜
第3章 会社にしがみつかない働き方〜仕事で稼ぐ13の習慣〜
第4章 一生初体験≠オ続ける〜思考で現状を変える9の習慣〜
第5章 苦しい時をどう生きるかで人生は変わる〜挫折で人生を飛躍させる9の習慣〜

 著者は、たかの友梨ビューティークリニックで有名なたかの友梨氏。かねてから苦労された方と聞いていたので、著書に興味を持っていた次第。内容としては、自らの半生を綴りつつ、そこで得た考え方を紹介する内容。まさに読みたいと思うものである。

 著者はその出処をサラリと触れる。私生児として生まれ、すぐに養子に出されるも、出された家が崩壊し親戚中をタライ回しだったという。中学を卒業し、定時制の高校に通いながら理容師を目指す。心の安らぎとお金がいつも欠乏していたと言う。そこだけでもいろいろあったと思うのだが、サラリと流す理由は、「自分の恵まれない部分を嘆いているとそれが増幅していくだけ。成功するにはそんな感情はどんどん捨てていくだけ」と言う考えがある。見事である。

 ビジネスで成功するために絶対欠かせない要素を1つだけ挙げろと言われたら、それは「感謝」だと語る。「どんな仕事でも1人だけではなし得ない。あらゆる成功の根底には周囲の人々の尽力がある。」と力強く語るが、普段自分もそう思っているだけにこういう経営者が同じことを言っていると心強く思う。

 タイトルに50の習慣とある通り、著者がいいと思う事柄(習慣)が書き連ねられる。
 ・相手を喜ばせようとゴマをすることは、一種のビジネスマナー
 ・ビジネスで成功したいなら、まずは好かれる人になること
 ・わかりやすい説明ができると言うことは、仕事ができる人の証明
 ・お金が足りなければ働けばいい。稼いだ以上のお金は使わなければいい。
  そうすれば貧乏にはならない。
 ・お金は貯めるものではなく使うもの。潔く使ってこそ最大限の効果を発揮する。
 ・金が出てくるかどうかは、掘ってみなければわからない。
 ・いいと思ったことはすぐにやって走りながら考える
 ・10年先と今日の夕食を一緒に考える
 ・あなたの顔は周囲の人のためにある
 ・中途半端が勝つことはない
思わず唸ってしまう言葉の数々である。

 メモを取っているとキリがないくらいどれもこれも示唆に富んでいる。さすが、だと思う。特に「人より多くの時間を働いたから成功した」と言う言葉にシンプルに感動する。世の中こうでなくてはいけない。この人の生き方・考え方を見せられると、言い訳できる人はいないと思う。今日からでも人より働けばいいのである(もっとも最近は「働き方改革」でままならないかもしれないが・・・)。

 やはり苦労している人の言葉には重みがある。経験に裏打ちされた力強さである。すぐにできることから真似してみたいと思う。そして何より努力を惜しまないことだろう。著者のようにとは言わないけれど、いくつかは心したいと思う一冊である・・・




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