2019年12月11日

【小さな企業が生き残る−地域×技術×デザイン−】金谷 勉 読書日記1102



《目次》
全国で関わった「生き残り」あの手この手
第1章 倒産・廃業のピンチから、生き残りの「手」を見つけた
第2章 会社や家業をつぶさず、生き残るためにとるべき「その手」
第3章 自分を知り、自分の強みを見つける「8ステップ」
第4章 下請けの小さな町工場や職人が未来を切り拓くには?
  
 著者は、セメントプロデュースデザインというデザイン会社の経営者。デザインによって経営不振にあえぐ町工場や工房の立て直しに取り組んでいて、その様子は私もいつも観ているテレビ東京の『ガイアの夜明け』にも採り上げられたそうである。自ら「Happy Face Clip」というクリップを作り、発売から14年で販売累計25万個を超す超ロングセラーになったという。そんな著者が、自ら手がけた企業の経営再建の例を紹介しながら、その方法を語った一冊。

 そんな著者の語るところによると、商品をデザインするとは、単に設計して色や柄を決めるだけではなく、どう見せてどういう売り場でどう売ってもらうか、きちんと出口を見据え、企画から流通までを考えて「考動」することだとする。それを別の言い方では、「コト(技術)、モノ(意匠)、ミチ(販路)の一連を考動していくこと」としている。何れにしても、デザインとは形を考えるだけではないというところがミソなのであろう。

 理屈よりも何よりも、具体的事例は大いに参考になる。ここでは、福井県鯖江市の眼鏡材料商社である株式会社キッソオが「ミミカキ」を開発した事例をはじめとして、陶磁器原型職人 による「手編みセーター柄の器」の開発、熱海の建具製作による「まな板」、竹工芸職人による「竹のバングルとリング」が紹介されている。これらの事例は、どれも窮地に陥っていた会社や職人が、デザインの力で新商品を開発したものである。

 ただし、それらの事例を否定するわげはないのであるが、そのエッセンスを他で利用しようとしても難しい。著者は、例えば鯖江のミミカキの事例の成功要因として、
 1. 眼鏡も作る産地と意識改革を進めた
 2. 眼鏡の製造工程を利用できた
 3. 眼鏡の産地で生まれたことを一目で伝えられた
 4. 関わった人たちの目を輝かすことができた
としているが、参考になるのは「2」ぐらいで、あとはこじつけ感が強い(例えば、この商品は眼鏡の産地で生まれたから売れたわけではないだろう)。

 この手の本を読むのは、他の産業でも参考になるのでないかと思うからである。いわば成功のエッセンスであるが、個人的に参考になったののは、「12の手を駆使する」として例示しているうち、
 1. いい風が吹く市場にブリッジング(新規参入)する
 2. 「とりあえず」ではつくらない
 3. 商品はコト、モノ、ミチの3軸で考える
 4. 商品開発は「あるモノ、できるコト」で取り組む
 5. モノの背景にある誕生ストーリーを伝えていく
というところである。

 ヒット商品を開発するというのが望ましいのは当然であるが、熱海の「まな板」のようにそれ自体はそれほど売れなくても、話題となったことから会社の技術力が認知され、本来の受注に繋がるというのは面白い事例だと思う。「売れるかどうか」という見方だけではないわけである。そして、逆に姿が消えていく商品としては、
 1. 企画の感じられない商品(その商品で何を見せようとしているのか、どんな魅力があるのかよくわからない商品)
 2. 流通を考えていない商品
 3. 生産を考えていない商品
だとしているが、この視点も大事であろう。

 製造業でないとピンとこないところはあるかもしれない。ただ広く事業を再生していこうと考えているところであれば、なんらかのヒントが得られるかもしれない一冊である・・・
  

キッソオミミカキ.jpg















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2019年06月27日

【大戦略論】ジョン・ルイス・ギャディス 読書日記1043



《目次》
第1章 ダーダネルス海峡の橋―グランド・ストラテジーとは
第2章 アテネの長城―ペリクレスとトゥキュディデス
第3章 師と原則―孫子とオクタウィアヌス
第4章 魂と国家―アウグスティヌスとマキアヴェリ
第5章 回転軸としての君主―エリザベス一世とフェリペ二世
第6章 新世界―アメリカ建国の父たち
第7章 最も偉大な戦略家たち―トルストイとクラウゼヴィッツ
第8章 最も偉大な大統領―リンカーン
第9章 最後の最善の希望―ウィルソンとルーズベルト
第10章 アイザイア―ふたたびグランド・ストラテジーについて

 最近、自分の中でキーワードの1つになっているのが「戦略」である。それゆえにタイトルを目にして迷わず手にしたのが本書。ただの戦略であるのではなく、「大戦略(グランドストラテジー)」となっているのも気になるところ。著者自ら「クラウゼヴィッツの『戦争論』と同じテーマ」と語っており、しかも「『戦争論』よりも長い期間をカバーしているが(本の)長さは半分以下」というところにまず惹かれる。

 そして内容は、紀元前480年のギリシャから始まる。ダーダネルス海峡を前にしクセルクセスと指揮官アルバタノスとが対比される。ここで示されるのが「ハリネズミとキツネ」のたとえ。「キツネはたくさんのことを知っているが、ハリネズミは大きいことを1つだけ知っている」というもの。キツネはいくつもの目的を追求し、ハリネズミはすべてのことをたった1つの構想あるいは体系に関連づけていくというもの。この例えは、このあと何かと頭に入れておくとわかりやすい。

 冒頭のペルシャ戦争での一幕からペロポネソス戦争へと続く。中でも「メガラ禁令」というのが採り上げられる。初めて知ったが、メガラという小さな都市国家に対する経済政策としての禁輸令であるが、「些末事だが一歩譲歩してしまうと坂道を転げ落ちるような事態になりかねない」という例である。その例としてベトナム戦争が採り上げられる。「未来は過去の反復ではないにしても未来を理解する手がかりとして過去を知ろうとする」ことに意味はあるという。

 戦略というと、国家や組織のものというイメージがあるが、ここでは個人も数多く登場する。オクタウィアノスとアントニウス、アウグスティヌスとマキャベリ、エリザベス一世、リンカーンにルーズベルト等々。これが本書の特徴の1つでもある。ただ、個人の場合、戦略というよりも「思想」と言える描写が多いように思えるのがちょっと気になるところ。アウグスティヌスとマキャベリなどは特にそうである。

 一方、宗教問題、結婚問題、スペインとの開戦という大問題を抱えていたエリザベス一世の行動やナポレオンの侵攻に対して、退去戦から反撃し相手に逃げ道を用意しておいたロシアの総司令官クトゥーゾフの例などは、「戦略」と言われても納得する(クトゥーゾフの戦略は著者も「グランドストラテジーの黄金律」と称賛する)。

 アメリカは建国に際し、「奴隷制」という爆弾を内包していたが、建国の父たちはまず連邦を選び奴隷制解放を先送りするが、これは弱小な邦の集まりよりは強い単一国家になった時の方がこの難事業はうまくやれると考えたからだという。このあたりの「国家戦略」はなんとなく求めていたものに近い気がするが、リンカーンが選挙に際し、待つことで支持基盤を固めたとか、当初はいきなり全面的な奴隷制度廃止論者になったわけではないという「個人戦略」の部分についてはちょっと違う気がする。

 エリザベス一世もリンカーンやマディソンも微妙なバランスをとったとされるが、それが「大戦略」というのも何か違和感を覚えるところ。著者自身もこの本も評価が高いみたいであり、それ自体否定するつもりはないが、微妙に自分がイメージしていたものとは違ったというところは確かである。ただし、歴史上の読み物としては面白かったのは間違いがない。
 
 あくまでも「戦略」という意味では、ちょっとイメージと違った一冊である・・・






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2017年12月07日

【小さな会社の稼ぐ技術 竹田式ランチェスター経営「弱者の戦略」の徹底活用法】栢野克己 読書日記866



第1章 「頑張る=儲かる」ではない
第2章 弱者の戦略、強者の戦略
第3章 成功する商品の選び方
第4章 成功する地域の選び方
第5章 成功する客層の選び方
第6章 成功するお客の選び方
第7章 成功するファンづくり、顧客対策
第8章 夢の実現

ランチェスター経営については、以前からあちこちで聞きかじっているが、なんとなく「弱者の戦略」と言う程度のことしか知らない。この本は、そのランチェスター経営について実際の中小企業の実例を中心に紹介している本である。著者は、小さな会社や独立起業の事例研究家だそうである。

この本で紹介されるのは、ランチェスター経営(株)の代表者である竹田陽一氏の指導する「竹田式ランチェスター経営」。それを知らない人に届けたいと言う趣旨で書い他のだと言う。その内容は、理論よりも実例中心なのでわかりやすい。最初に紹介されるのは、大阪のお弁当屋さん。すでに中小、それも零細企業に近いと理解できる。

このお弁当屋さんがとった方法は以下の通り。
1. 顧客名簿を作成し、ハガキ作戦
2. 地域を絞る
3. デリバリーでは法人とファミリー層に顧客を絞る
4. チラシの差別化
そのほか、
1. パクリでいいのでとりあえずやってみる
2. 報いを求めない親切
3. 現場はスタッフに任せる。人は誰でも指示されるより任された方がやる気が出る
といった経営方針もある。実例であるだけにわかりやすい。

竹田式ビジネスモデルでは、「経営の8大項目」を以下のように定義している。
1. 商品−弱者は一点集中
2. 地域−自分が小さな1位になれる地域
3. 客層−勝てない層は思い切って捨てる
4. 営業−アナログ・面倒・泥臭いで大手と差別化
5. 顧客−新規顧客をリピーター、ファン、信者に変える
6. 組織−スタッフのモチベーションを高める
7. 資金−資金調達と配分
8. 時間−長時間努力した者が勝つ
当たり前と言えば言えそうであるが、経営の真理はそんなに大きくは変わらないだろうと思う。

弱者の戦略の4大ポイントは以下の通り。
1. 差別化−強い会社と違うことをする
2. 小さな1位−小規模1位、部分1位、何かで1位
3. 一点集中−あれこれやらない
4. 接近戦−エンドユーザーに直接営業
これはかなり参考になる。中小企業に属していると、「どこで勝つか」が大事であるが、そのヒントになる。

こうしたことをいろいろな実例で説明してくれるのでわかりやすい。ただ、著者も注意しているが、「知識があっても実際に行動する人は良くて一割くらい。さらに継続できる人となるとその半分以下」と言う言葉は重みがある。実際の作戦で多く紹介されていたのは、「ハガキ作戦」。実に簡単だが、やるのは難しいだろうと思う。

中小企業にいると、そして経営に近いところにいればなおさら、意識のアンテナを張り巡らせて経営のヒントを求めなければいけない。こういう実例中心の本は実に参考になる。ついつい「我が不動産業界には当てはまらないのでは」と思いたくなるが、それでもヒントにはしたいと思う。経営のヒントを求めている人には良い一冊である・・・


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2016年12月29日

【戦略がすべて】瀧本哲史 読書日記743



I. ヒットコンテンツには仕掛けがある
II. 労働市場でバカは「評価」されない
III. 「革新」なきプロジェクトは報われない
IV. 情報に潜む「企み」を見抜け
V. 人間の「価値」は教育で決まる
VI. 政治は社会を動かす「ゲーム」だ
VII. 「戦略」を持てない日本人のために


 著者の本は、すでに『僕は君たちに武器を配りたい』『君に友だちはいらない』を読んでいるが、両著とも学ぶところが多く、したがってこの本を手に取るにも躊躇はなかった。そんなこの本は、タイトルにある通り「戦略」の本である。

世の中の様々な例を挙げ、そこから得られる戦略的考え方を解説しながら、その考え方を学んでいくというスタイル。最初に採り上げられるのが、「コケるリスクを排除する」という観点で「人を売るビジネス」。

このビジネスでは以下の3つの壁がある。
1. どの人材が売れるかわからない
2. 稼働率の限界(人は24時間365日働けない)
3. 売れれば売れるほど契約の主導権や交渉力がタレント側にシフトしていく

ここから「AKB48の方程式」というべき、複数のタレントを包括するプラットフォームを売るという考えが導かれる。AKB48のほか、弁護士事務所やコンサルティングファームなどがこれに該当する。この中では、(顧客から)「見える仕事」には顔となる人材を使い、「見えない仕事」にはコモディティ化された人材を使うことになる。「コモディティ」は、前著にも登場する著者のキーワードだ。

こういう形で、鉄道会社、オリンピック、RPGなどが解説されていく。特に「働き方」に関する著者の意見は鋭い。
・高い報酬を得るには、ビジネス全体を理解して「資本=儲ける仕組み」に参画しなければダメ
・自分の労働をコモディティ化させない
・どの土俵なら勝てるのかを見極め、勝てる土俵を選ぶ
・トップは異見を取り入れることで質の高い意思決定を生む
こうした考え方は、自分の意識の中にも取り入れたいものである。

そのほかにもハッとする言葉が続く。
・教養とは自分と異なる思想全てをさす
・資本主義は優勝劣敗によってシステムを新陳代謝させて「全体」の効率を高める仕組み。淘汰される企業は・・・社会的資源を無駄にしているのであり、これを保護するのは社会的に有害
・全ての自治体を生き残らせようとして全体を沈ませるのではなく、自治体同士の競争を促し、住民の移動という「足による投票」によって強い自治体への統合を目指すべき
・ある職階の中で、成績の良い者が上位の職階に上がり、成績が悪い者はその職階にとどまる(全ての人はその人が無能と判断される職階まで昇進しそこに長くとどまる)

様々な例を挙げて説明されるのは、「戦略的思考」。戦略を考えるというのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強み弱みを分析して他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をすることだとする。

「日本という国は初期に成功を収めても戦略がないため最終的には失敗する」
「日本人の組織は意思決定のまずさを現場の頑張りでなんとか解決しようとするが、戦略の失敗を戦術で補うことはできない」
「日本のビジネスマンは、大企業に勤めていようと『高級作業員』。テンプレート化された仕事をより早くより効率よく行うルーチンワーカー」
「ぐうの音も出ない」とはこのことだろう。

どうすれば戦略的思考を身につけられるのか。著者はケーススタディを大量にこなす「擬似トレーニング」だという。身の回りに起きている出来事や日々目にするニュースに対して、戦略的に勝つ方法を考える習慣を身につけても良いと言う。果たしてなんの手ほどきも受けずにどこまでできるのかはわからないが、こういう意識を持って試みてみたいと思うところである。必要なのは、否定することではなく、認めて意識することであろうと思う。自分自身にも当てはまるところは多く、それゆえになんとかしたいとも思う。

明日と言わず今日から。自分の意識を奮い立たせてくれる一冊である・・・

    
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2015年12月15日

【ササる戦略】土居義則 読書日記612



Strategy 01 ダイドードリンコ株式会社
Strategy 02 森永乳業株式会社
Strategy 03 ミニストップ株式会社
Strategy 04 江崎グリコ株式会社
Strategy 05 株式会社横浜DeNAベイスターズ
Strategy 06 本田技研工業
Strategy 07 小林製薬株式会社
Strategy 08 ライフネット生命保険株式会社
Strategy 09 小金屋食品株式会社
Strategy 10 株式会社トリドール
Strategy 11 株式会社Gunosy
Strategy 12 キューピー株式会社

「戦略」という言葉は、私が読む本を決める際の1つのキーワードである。
条件反射的に手に取ってしまうと言っても過言ではないかもしれない。
そんな「戦略」を謳った一冊であるが、著者は記者。
知らなかったのであるが、「Business Media誠」というオンラインビジネス誌に寄稿しており、この本はそこから生まれたらしい。

各章に一企業が当てられていて、全部で12の企業が紹介されている。
初めのダイドードリンコは、ご存知飲料メーカー。
自動販売機で缶コーヒーを販売する際、長年左上が「一等地」とされていたらしい。
というのも、消費者は左上から右へ、そして左下から右端へと視線を移動させるので、一番左端が真っ先に目に止まる一等地と信じられてきたという。

ところが、技術が進歩し、アイトラッキングによって実は消費者の視線は「左下」に集まるとわかる。
当然、左下に缶コーヒーを置いたら売り上げが数10%伸びたという。
なるほどと思うも、「それじゃあ他の場所に置かれた飲み物はどうなんだろう」という疑念が湧く。
缶コーヒーだけが売れればいいのか、缶コーヒーが特別利益率が高いとか、もう少し突っ込んで欲しいと思ってしまった。

ミニストップのソフトクリームは以前から何度か食べたことがあって、知ってはいた。
しかし、実はその運営は難しく、なかなか真似できないらしい。
機械の設置スペースや保健所への申請、機械のメンテナンス、アルバイトの技術・・・
それでセブンイレブンなど他のコンビニでは取り扱っていないのかと納得。
どんな商売でも、こうした隠れたニッチがあるかもしれないと思う。

横浜ベイスターズが取り上げられているのに、ちょっと驚く。
球団は最下位近辺をウロウロしているにも関わらず、入場者数は年々増加しているという。
それは20代後半〜40代前半の「アクティブサラリーマン」をメインターゲットとし、イベントなどの催しで、「人を誘いやすい雰囲気」を作っているという。
飲食メニューの改善など組織の違いもあってできないものもあるらしいが、球場の解放などそれまでにない新しい試みも見られる。
こうした取り組みは、自分の仕事でも参考になる。

その他、海外進出した企業の取り組みなど、企業の苦労話はもともと好きなためか、読んでいて面白い。
1つの企業の戦略を深掘りするのもいいが、この本のように「良いとこ取り」も良いかもしれない。
各章は短く、正直もうちょっと深掘りしても良いのではないかと思うが、総じて興味深い内容である。

「戦略」に興味のある人は、一読しても良いと思う一冊である・・・

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2014年05月12日

【ハーバード戦略教室】シンシア・モンゴメリー 読書日記423

    


THE STRATEGIST BE THE LEADER YOUR BUSINESS NEEDS

シラバス:企業のオーナー、経営者だけが受けられる講義
第一講:35の国から164名の経験豊富なリーダーが集まった
第二講:最初の課題「マスコミの異業種参入」をクラス全員で検討
第三講:「スーパーマネージャー」の失敗にどよめく受講生
第四講:イケアの躍進が示す会社の「目標」を実現する戦略の例を見る
第五講:ファッションという意外な業界に目標を実現する戦略の例を見る
第六講:今度は受講生の番だ。独自の戦略を立てるメソッドを明かす
第七講:最後のケーススタディーで戦略決定後も続く戦いを知る
最終講:最後にストラテジスト、そして戦略の本質を語る

著者はハーバードビジネススクールの教授。
著者が教える講座に入学が許されているのは、「年間売上高が10億円から2,000億円の企業のオーナー、あるいは経営者のみ」だと言う。
その条件だけで、俄然興味が湧いてくる。

「戦略教室」と邦題にはあるが、原題にある通りまず出てくるキーワードが、「STRATEGIST」=ストラテジスト(戦略家)。
ストラテジストとは、「戦略を立て同時に企業を導く指揮官」と定義されている。
「戦略とリーダーシップは組織の頂点で一つになるべき」と説かれており、それぞれ別個のものではないという。
それゆえに、著者の講義の対象者が、オーナーあるいは経営者に限定されているのだろう。
当然ながら、この本も読者にストラテジストになる事を求めている。

第二講からは実例解説となる。
最初の例は、アメリカを代表する住宅・商業用建材の総合企業マスコ。
正直言って初めて名前を聞いた。
“日用品の巨人”として知られていたマスコだが、その成功のノウハウを持って家具業界に参入する。
結果としてマスコの参入は失敗に終わるが、そこで「スーパーマネージャー神話」が解説される。
ウォーレン・バフェットも指摘する通り、業界の選択こそが重要であり、どんな業界でもスーパーマネージャーなら成功するという事はない。

次のイケアの事例は、身近にあって親近感のある企業だけに興味深い。
創業者のイングヴァレ・カンプラードは、少年時代にマッチの販売からスタートし、様々な商品を売るうちに通販会社イケア・アグナリッドを創業する。
やがて家具販売に参入するも、閉鎖的な業界ゆえに安売りに対し商品供給を阻まれ、商品見本市からも締め出される。
しかし、そうした困難を克服し、今日の成功を築きあげる。
イケアの成功の鍵は企業の目標だと著者は言う。
それはその企業がなぜ存在し、どのようなニーズを満たそうとしているのか、だと言う。
良い目標は気高いと。

続いて採り上げられるのは、グッチの低迷と復活。
ここではストラテジストの最も重要な仕事は、「考えること」ではなく、それを実現できるよう組織を整えていくことだとする。
そうした内部での調整を経たあと、会社の内部と外部にその理念を伝えるために、戦略を簡潔な文言にまとめるよう勧められる。

優れた戦略の特徴は、
・明快で説得力のある目標が土台になっている
・本物の価値を付加する
・明確な選択
・価値創造システムを創る
・意味のある測定基準
そして情熱
である。

最後のアップル社の例も、よく知っているだけに自然とページをめくる手も早くなる。
ストラテジストとして最も重要な仕事は、まだ存在しないものを創出することであり、そのために必要なことは以下の問いに正面からぶつかることだと言う。
・わたしの会社は世界に何をもたらしているか?
・それは重要で我が社独自のものか?
・その独自性は希少で真似しにくいか?
・明日重要な存在になるために今日何をするべきか?

また、リーダーに対し、「チームの声に耳を傾ける」ことを勧める。
「最高のコミュニケーションは人の話を聞くところから始る」と説かれる。
以上の通り読んでくると、これは言ってみれば「ストラテジスト養成講座」と言うべき内容だとわかる。
実際の講義に参加するのは、自分は要件も満たせず無理であるが、そのエッセンスは十分に味わえる一冊である。


    
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2012年02月28日

【ストーリーとしての競争戦略】楠木建 読書日記222



第1章 戦略はストーリー
第2章 競争戦略の基本理論
第3章 静止画から動画へ
第4章 始りはコンセプト
第5章 「キラーパス」を組み込む
第6章 戦略ストーリーを読解する
第7章 戦略ストーリーの「骨法十カ条」

「優れた戦略の条件とは何か」
著者なりに出した結論は、「戦略がストーリーになっているか」だという。
「優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ」と著者は述べる。
この本は、そんな著者の主張を展開した本である。

戦略をストーリーとして語るという事は、「なぜその事業が競争の中で他社が達成できない価値を生み出すのか」を説明する事だという。
そして具体例が語られていく。
最初の例はマブチモーター。

技術的に成熟した小型モーターを専門に作っている会社であるが、当初は各メーカーの下請けであったモーター製造会社群の一社であった。
繁忙期と閑散期の差が激しい多品種少量生産だったが、「モーターの標準化」に挑戦。
当時は様々な抵抗にあったが、次第にメーカーの評価を得、さらに海外生産によるコストダウンにより低価格化も実現し、メーカーの支持を確たるものにしていく。
そんなマブチの戦略ストーリーが具体的に説明される。

こうしたストーリーは、「会社は誰のものか」という議論にも答えを与えるという。
すなわちそれはそもそも議論の立て方が間違っていて、経営は株主、顧客、従業員、社会すべてを満足させるべきもので、どういう順番で考えればそれが可能になるかが大事。
そしてそれを可能にするのがストーリーだという。
大手アパレルのワールドがその例として挙げられている。

ストーリーにとって大切なのは、まずコンセプト。
スターバックスは自らを、コーヒーの香りの中でリラックスできる「第三の場所」と位置付けた。それゆえに、当時は異例だった店内禁煙を打ち出す。注文を受けてから手間をかけてコーヒーを入れるのも、すべてこのコンセプトが根底にある。

こうしたコンセプトを活かすのはクリティカル・コアと言われる「それだけを見ると一見して非合理なのだが、ストーリー全体の中では強力な合理性を持つ」部分。
他社が追随しにくい、一見非合理的な取り組みが、あとで強力な武器になる。
当初はEコマースとは正反対にあった巨大な物流センターに巨額な投資を行ったアマゾン。
投資家には不評だったこの投資が、あとから振り返ればアマゾンの成功を支える要因となる。

コンセプトが決まれば、あらゆる打ち手はコンセプトと明確な因果関係でつながっていなくてはいけない。つながりを説明できない構成要素はストーリーから排除しなければいけない。こうした理屈は、企業戦略にとどまらず、身の回りの至るところに応用できそうな気がする。

500ページの厚い本ではあるものの、サウスウェスト航空、アスクル、アマゾン、デルなど身近な企業を例に取り上げ、わかりやすく解説しているため読んでいて苦にならない。
読み終えて、一皮むけた気分になれる一冊である・・・


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2011年10月02日

【あたらしい戦略の教科書】酒井穣 読書日記194



第1章 戦略とは何か?
第2章 現在地を把握する〜情報収集と分析の手法〜
第3章 目的地を決定する〜目標設定の方法〜
第4章 ルートを選定する〜戦略立案の方法〜
第5章 戦略の実行を成功させる

著者はオランダ在住で、現地企業で活躍している人物。
同じ著者による「はじめての課長の教科書」は、未読ながらベストセラーになったのでタイトルだけは覚えている。前回 「これからの思考の教科書」 を読んでおり、面白かったために興味を持って手に取った一冊である。

構成もわかりやすく、第1章から「戦略を定義」し、「現状を認識」し、「目標設定」し、「方法」を考え「実行」すると流れに沿って解説されている。
戦略とは旅行の計画であり、時間とともに変化し、そのためバックアッププランも必要と内容もわかりやすい。
よく言われる戦略と戦術の違いも、戦術とは「現場の戦略」という説明をされるとしっかりと理解できる。

第2章では「情報収集」にスポットがあてられる。
情報力は「未来を予測する力」であり、それは「収集力×分析力」によって決まると言う。
そして、戦略は戦争理論ゆえに敵を倒す(競合他社に勝つ)視点になりがちで、顧客視点を忘れるべきではないと釘を刺す。
その顧客視点でも、観察する事が大事で顧客に意見を聞いても必ずしも答えは出てこないと指摘する。フォードの「もしも顧客に何がほしいと聞いていたら、『もっと速い馬がほしい』と言われていただろう」という言葉の引用が巧みである。

ありとあらゆる情報を集め過ぎてパニックに陥るという注意点が最後に挙げられる。
初心者ドライバーは、運転中常に情報収集し続けるから神経をすり減らすが、ベテランドライバーは必要な情報だけを取り入れているから、会話や風景を楽しむゆとりがあるという喩えはなるほどである。
それはそうだが、ここの部分は実際は難しいかもしれない。

各章それぞれわかりやすさがいい。
それは決して、「食べたことのないものの味はいくら本を読み、映像を見てもわからない」といったコンサルタントの本にありがちな、理論本とも違う。
いろいろな場面で戦略を考える時に、骨組として使えそうな気がする一冊である・・・


                      
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2011年01月23日

【フリー<無料>からお金を生み出す新戦略】クリス・アンダーソン 読書日記131

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 [ハードカバー] / クリス・アンダーソン (著); 小林弘人, 小林弘人 (監修); 高橋則明 (翻訳); 日本放送出版協会 (刊)

≪目次≫
プロローグ
第1章 フリーの誕生
第2章 「フリー」入門
第3章 フリーの歴史
第4章 フリーの心理学
第5章 安すぎて気にならない
第6章 「情報はフリーになりたがる」
第7章 フリーと競争する
第8章 非貨幣経済化
第9章 新しいメディアのビジネスモデル
第10章 無料経済はどのくらいの規模なのか?
第11章 ゼロの経済学
第12章 非貨幣経済
第13章 (ときには)ムダもいい
第14章 フリー・ワールド
第15章 潤沢さを想像する
第16章 お金を払わなければ価値のあるものは手に入れられない
結び──経済危機とフリー
巻末付録1 無料のルール──潤沢さに根ざした思考法の10原則
巻末付録2 フリーミアムの戦術
巻末付録3 フリーを利用した50のビジネスモデル

モノを売って対価としてお金を得るというのが商売の基本。
事業というものはそれによって成立し、そこに働くものはそれによって生活が成り立つ。
その対価であるはずのお金をもらわない、つまりタダ(Free)にすればそれらは成り立たないはずである。ところが昨今のネット社会の出現によりそう言えなくなってきた。ネットは基本的にFreeだからである。

冒頭でアメリカの伝説的なコメディーユニット、モンティパイソンの例が挙げられる。
自分たちのビデオが不正コピーされ、大々的な著作権侵害に遭っていたが、Youtubeにすべての映像を無料で公開。しかも不正コピーモノとは違って高画質ときている。一見無謀なこの試みは、彼らのDVDがアマゾンのベストセラーリストで2位になり、売上はなんと230倍になるという結末に結び付く。

現代におけるFreeは過去におけるFreeとはまったく違う。
それをここではアトム(原子)からビット(情報)へという言葉で紹介している。
アトムとは物質の事、ビットとはネットで飛び交う情報のことである。
もともと20世紀の社会でもFreeの萌芽はあった。
ジレットが安全カミソリをタダで配り、替え刃を売ったビジネスモデルで、似たような例はある。それが21世紀型ではどうなっているか、それが語られる。

歴史を踏まえ理論と事例が紹介され、読み進むうちに整理と理解が促される。
面白いのは海賊版(不正コピー)の利用についてだ。
中国では特に防ぎようにない規模にあるが、アーティストはそれを利用しつつあるという。
海賊版が出回る事によってそのアーティストの認知度が上がり、逆にそれはコンサートへの集客、グッズ販売へと結びつくというのである。

オンラインゲームもユーザーが無料で参加できるが、そのゲームの中で利用するアイテムが販売されるようになっている。
お金が惜しいユーザーは地道にプレーしてアイテムを集めるが、お金のあるユーザーはそれを買って早く次の段階へとすすむ。
そうしたゲームの例は数多い。

大学の講義もオンラインで無料公開されている。
そうすると大学自体の価値がなくなってしまうように思える。
しかし、授業料を払う事は、教授の話を直接聞き質問し単位を得られるという事が可能になる事を意味する。逆に無料で公開された授業は、それを直接受けたいというインセンティブになる。

世の中は変化している。
これまでの常識にしがみついているだけでなく、その変化に気付き対応していかねばならない。そうした動きの一つをうまくまとめて紹介してある本書は、押さえておきたい一冊である・・・






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2010年07月10日

【史上最強の人生戦略マニュアル】フィリップ・マグロー 読書日記83


史上最強の人生戦略マニュアル

史上最強の人生戦略マニュアル

  • 作者: フィリップ・マグロー
  • 出版社/メーカー: きこ書房
  • 発売日: 2008/09/27
  • メディア: 単行本




原題:Life strategies: Doing What Works,Doing What Matters
第1章 問題がひとりでに解決することは、絶対にない
第2章 本当に生きるということ
 人生の法則1 《ものがわかっているか、いないか》
第3章 自分の選択と態度に焦点をあてる
 人生の法則2 《あなたの人生体験を作るのは、あなた自身である》
第4章 「見返り」が行動を支配している
 人生の法則3 《人はうまくいくことをする》
第5章 問題は、あなたが認めるまで悪化していく
 人生の法則4 《自分が認めていないことは変えられない》
第6章 違うことを「する」
 人生の法則5 《人生は行動に報いる》
第7章 過去の出来事を言い訳にしない
 人生の法則6 《事実なんてない。あるのは認識だけ》
第8章 今すぐに人生計画を立てる
 人生の法則7 《人生は管理するもの。癒すものではない》
第9章 「見返り」を断つ
 人生の法則8 《私たちは自分の扱い方を人に教えている》
第10章 憎しみはあなたの心を変えてしまう
 人生の法則9 《許しには力がある》
第11章 あなたのゴールラインはどこか?
 人生の法則10 《自分が求めているものを明確に知る》
第12章 ガイドつき人生の旅
第13章 目標設定の七つのステップ
第14章 自分の公式を見つけよう

 あの勝間和代さんが9年前に手に取り、大いに影響されたという自己啓発書である。
著者は訴訟コンサルタントのフィリップ・マグロー。
アメリカらしい職業と言えるが、そんな人物の手による一冊。
原題は「Life strategies: Doing What Works,Doing What Matters」。

 第1章ではいきなり「問題がひとりでに解決することは、絶対にない」というタイトル。
要は何かしなければならないと言う事だ。
多くの人が陥りがちな罠をずばりと言い切っているところがいい。

第2章からは人生の法則が語られる。
「本当に生きるということ=ものがわかっているか、いないか」
「自分の選択と態度に焦点をあてる=人生の責任は自分にある」
「“見返り”が行動を支配している=人はうまくいくことをする」
「問題はあなたが認めるまで悪化していく=自分が認めていないことは変えられない」
「違うことを“する”=人生は行動に報いる」
「過去の出来事を言い訳にしない=事実なんてない、あるのは認識だけ」
「今すぐに人生計画を立てる=人生は管理するもの、癒すものではない」
「見返りを断つ=私たちは自分の扱い方を人に教えている」
「憎しみはあなたの心を変えてしまう=許しには力がある」
「あなたのゴールラインはどこか?=自分が求めているものを知り、要求する」
タイトルだけ読んで行ってもいいくらいである。

 読み進むとハッとするような言葉に出あう。
「ものがわかっているか、いないか」のところでは、なぜ離婚が多いのかについて、「誰も結婚生活の送り方を教えられていないから」とある。
確かに、それは言えている。
「人を動かすには相手の自尊心を傷つけない」とは、まさに自分自身に戒めたい言葉だ。

 他人を責めるのが人間の本質
・人は人生の中で得ている見返りによって自分の行動を形成する、見返りを見つけてコントロールしよう
・問題が何かわかれば半分解決したも同然、そしてその問題は自分が作り出したもの
・自分には変化を起こすという選択肢がある
・問題を我慢するのではなく、解決する事に全力を注ぐ
・人生を変えるためには自分を変える
・人生で手に入れられるものは、最高でも自分の望むものが限度

 チェックしているときりがないくらい重要な言葉が続いていく。
人間を観察してきた人ならではの言葉だ。
最後に目標設定の7つのステップが紹介されている。
なるほど、教科書としては勝間氏が絶賛するだけのことはある。
タイトルにも偽りはない。

 読んでも実践しなければ意味はない。
これから少しは意識して実践していきたい、そんな気分にさせられた一冊である・・・





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