2020年03月16日

【ぼく、街金やってます 悲しくもおかしい多重債務者の現実】テツクル 読書日記1132



《目次》
テツクル半生記 ぼくと街金
ぼく、埋められそうになりました
他人の不動産を担保にする男
5万円で反社の看板を外させた債務者
トンデモブローカーさん列伝
未熟な地面師
怖い人がやってきた!
完全無欠の詐欺会社
悪い人にだまされた善人の末路
6000万円を肩代わりする鬼嫁
テツクル半世記 ぼくと街金(主任編)
街金百裂拳
テツクル、債務者と語る

 どんな仕事にも内側に入ってみなければわからないものがある。働いてみてはじめてわかるということである。なんの面白みもない事務仕事もあれば、興味津々の職業というのはあるだろう。特に「非日常」の仕事であればなおさらである。金融業でもそれは当てはまるが、特にお上品な銀行融資よりも、少しアンダーグラウンドに近いサラ金、街金の方が面白いだろうし、ヤミ金はもっとかもしれない。ヤミ金は違法だから仕事とは言えないが、街金は立派に合法であり、ゆえに金貸しの話としては、銀行融資よりも面白そうである。著者はそんな街金で働いている方である。

 似たような仕事としては、以前『督促OL修行日記』というのを読んだことがある。そちらはコールセンターにお勤めの方であったので、会話はすべて電話。しかし、こちらは実際に相対しての交渉ゆえにまた独自の面白さがある。著者はもともと「借りる方」だったらしいが、借金が返せなくなって直談判に行き、そのままそこで働くことになったという。ガラの悪い人たちに囲まれ、ゴミのように扱われての街金人生のスタート。

 そもそもであるが、金貸しの中でも銀行や信用金庫はトップに君臨するお上品な世界。その下にアコムやレイクなどの消費者金融などがあって、街金はさらにその下となる。当然、お客は上から下へと降りていく。下へ行くほど顧客の属性も下がっていく。そんな人たちを相手にするのだから街金も大変である。下手をすれば回収不能となって倒産となる。そうすると綺麗事も言っていられなくなる。著者も駆け出しの頃は、ガラの悪い同業者に捕まり埋められそうになったこともあるという。

 下へ行けば行くほど反社勢力が頭をもたげてくる。しかしそんな反社勢力と付き合えば金融業社としての免許を取り消されてしまう。しかし、借りる人はそういう人たちとも(望まなくとも)付き合いがあったりする。著者も否応なしに遭遇する。姿を表す怪しげなブローカー。地面師も登場するが、一歩間違えれば貸した金は戻ってこない。幸いにしてうまく地面師をやり過ごして事なきを得たから本が書けたということもある。

 詐欺に引っ掛かって金が返ってこない。著者は相手の事務所に籠城する。まさに『ナニワ金融道』の世界である。籠城した事務所内の机や椅子や諸々を買取業者に売って回収代金に当てる。銀行員にはとても経験できない世界だろう(したいとも思わないかもしれない)。騙されて財産を失った地主。夫の債務を完済する鬼嫁。車にGPSを付けたり付けられたり。この手の本は、世間の人には窺い知れない裏側見せてくれるところが魅力であるが、その好奇心は十分に満たしてくれる。

 残念なのは、数々あるであろうエピソードが(書かないのか書けないのかはわからない)少なく、本も薄っぺらいことか。さらっと読めてしまうが、後に残るものはない。本棚に残しておくような本ではない。一時の好奇心を満たすにはいいが、それ以上にはなれない一冊である・・・





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2020年01月31日

【ウケる人、スベる人の話し方−あの人が話すとなぜ面白いのか? スピーチ 雑談 自己紹介−】渡辺 龍太 読書日記1117



《目次》
はじめに
第1章 ウケる人の「会話の公式」7カ条
第2章 ウケる人の考え方、スベる人の考え方
第3章 ウケる人のコミュニケーション、スベる人のコミュニケーション
第4章 ウケる人の話し方、スベる人の話し方
第5章 ウケる人の対応力、スベる人の対応力
おわりに

 個人的に文章を書くのは好きだし、人前で喋るのも好きである。その時にはどうしてもウケをとりたいという欲も湧くというもの。そんな自分にとっては、ちょっと素通りできないタイトルの本である。著者は放送作家。なんでもアメリカに留学して、「インプロ(即興力)」と呼ばれるアドリブトーク術と出会い、これを学んで身につけたのだとか。「即興力養成講師」という肩書きもあるようだし、その内容に期待が募る。

 まず最初に「ウケる人の会話の公式7カ条」なるものが紹介される。
 1. ウケる人はヒトを気にする-ウケる人は目の前にいる人の反応を見る、スベる人はネタを気にしている
 2. ウケる人は打席を作る-ダメ元でチャレンジ
 3. ウケる人は対立関係を作る
 4. ツッコミの「間」を重視する-「え?」「何ですか?」などのシンプルな一言
 5. 他人と自分のネタを区別しない-相手の話題を受け入れる、「YES AND 自分の意見」
 6. 常にギャップを出す-聞き手に想像する時間を与える
 7. 正直である-自分の話に嘘を混ぜない

 なる程、言われてみればそうだなと思い当たること、しばしばである。「スベる人はフリ(話)が長い」というのはその通りだと思う。「屁理屈は涼しい顔で言う」とするが、なかなか言えるものではないかもしれない。「話を聞くと映像が浮かぶ」というのは、何もウケ狙いだけではなくて、一般のコミュニケーションでもそうだろう。「一般社会においてウケる人であるためにはまず一緒にいて楽しい人と思われること」というのは正論だろう。「自分が話す番を待つ」というのも、そもそもコミュニケーションにおいては大切だろう。

 ちょっとした工夫で簡単にできそうなのは、「ありえないくらいに話を大きくする」、「絶対に無理な方向へ話をズラす」というところだろうか。「ウケる人とは自分に合ったキャラクターを見つけられた人」というのは、意外だが嬉しい気もする。というのも、お笑い芸人のような明るいキャラクターは自分には向かないからである。そういう人も多いと思う。「自分の笑いのツボを浅くしてどんな事柄にも笑えるようにしておく」というのも他者との関係では大事だろう。

 毒舌は社会や自分に向けて吐くというのも意識したいところ。さらに笑いは共同作業だという。そのために心がけることは、
 1. 発言を会話全体の半分程度に抑える(喋りすぎない)
 2. 相手の話に興味を持って聞き、なるべくリアクションを大きくして笑ってあげる
 3. 相手から質問を投げかけられたら必ず脱線せずに答える
要は、笑いはテクニックだけではないということだろう。

 総じて感じるのは、笑いはコミュニケーションだということ。これを読んですぐにウケる人になれるかはわからないが、コミュニケーションを円滑にはできると思う。心したい一冊である。





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2019年12月19日

【文芸オタクの私が教えるバズる文章教室】三宅香帆 読書日記1105



《目次》
CHAPTER1 バズるつかみ
CHAPTER2 バズる文体
CHAPTER3 バズる組み立て
CHAPTER4 バズる言葉選び

 つい先日、『読みたいことを、書けばいい。−人生が変わるシンプルな文章術−』という本を読んだばかりだが、ブログをやっているような書くことに対する意識のある人間としては、どうしても「文章術」系の本を手に取ってしまうものなのではないかという気がする。著者は、文筆家・書評家だとのことで、「バズる」という言葉自体が、ネット文筆家を表している。

 そんな著者が語る文章術であるが、各章それぞれ「つかみ」「文体」「組み立て」「言葉選び」と分けて、丁寧に解説してくれる。有名作家の文章を例にしているので、実例付きの理屈でありわかりやすい。そもそも「うまく書く」という視点でなく、「文章で楽しんでもらう」という目線を意識しているもので、素人にはわかりやすいことこの上ない。この本の目的も、
 1. 文章の終わりまで読もうかなと思ってもらう
 2. この人いいなと思ってもらう
 3. 広めたいなと思ってもらう
ということとしていて、気軽に入っていける。

 初めの「つかみ」では、まずしいたけの文章が紹介される(個人的には知らない作家だ)。「合宿ってポロリが多いんですよね」という文章を捉え、それが確かに「つかみ」としては面白いことはわかるが、問題はそれをどう応用するか。著者は文末で、
 1. 伝えたいことを一文にしてみる
 2. その中で一番伝えたい部分を伏せ字にする
 3. その伏せ字をいろいろ言い換える
 4. 一番インパクトのある言葉をチョイス
という具合に解説してくれる。これならなんか書けそうだと思えてくる。

 こんな具合にいろいろな作家の文章を例題にして説明がなされる。
「いい書き出しが見つからない時、ごく日常的な習慣から書き出す」
これはいつも引っ掛かるところであり、なるほどである。「文章とはリズム感」というのは納得であるが、具体的には「同じ語尾を3回繰り返す」とされると、これもストンと落ちてくる。

 「長い文章を二文、三文に切ってみる」「確信ではなく、推量・願望・確認に換える」「語尾をぶった切る(体言止め)」「漢字をひらがなで書く」などは、どれも参考になる。さらに、「漢字をひらがなで書く」のは、「強調したい時」「漢字と漢字が連続する時」「手書きはあまりしないような漢字」とくる。これも具体的でわかりやすい。「何があったのか」→「それについてどう感じたのか」→「どう感じたのかに出来事をくっつける」とくれば、なるほどすぐに応用ができそうに思えてくる。

 「気づいてもらうためには気づいてもらう努力が必要」という言葉はもっともである。「偉人の名言」を引用するも良し、「ひとりごとモード」から「突然問いかける」というのも良し。これだと確かに読んでいてギクッとする。「最後の一文を情景描写で締める」と余韻が残る。「メタファーで表現できる」ようになれば、個人的にはかなり満足感の高い文章になりそうな気がする。突き詰めていくと、自分でどんな文章を書きたいかというと、やっぱり「自分で満足できる文章」となる。他人に高評価されればそれも気分がいいと思うが、まずは自分だろう。そんな文章が書けそうな気がしてくる。

 書くことに興味を持っている人であれば、「バズるか否か」は別として、一読しておきたい一冊である・・・


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2019年12月04日

【夫のトリセツ】黒川伊保子 読書日記1099



《目次》
第1章 神は、夫婦を別れさせようとしている
第2章 使えない夫を「気の利く夫」に変える方法
第3章 ひどい夫を「優しい夫」に変える方法
第4章 脳とは、かくも厄介なものである

 前作『妻のトリセツ』があまりにも的を射すぎていて、迷わずこの本も手に取ってしまった。妻のトリセツがあるなら、当然夫版があってもおかしくない。そして、男の目から見ても、その主張はやっぱり的を射ていると思うところである。

 夫に対し、「思いやりがない」「話が通じない」「わかってくれない」「とにかく苛立つ」「一緒にいる意味がない」「子供が巣立った後、夫婦二人になるのが怖い」と三日以内にどれか1つでも感じた人は、この本を今すぐ読んだほうがいいと著者は語る。いい感じのスタートである。そして「夫への怒りは大半は濡れ衣である」という何とも嬉しくなる言葉。著者によれば、男性脳は知れば知るほど不器用で一途で愛おしいのだそうである。

 子供が生まれると、それまでラブラブだった妻が一転して他人みたいになる。私もそう感じた一人であるが、「子供には徹底して優しいが、夫には厳しい」、これこそが母性本能そのものだという。それに加え、脳の違いもある。「経緯を語りたがる女性脳に結論を急ぐ男性脳」というのは、前著でも語られていたが、それもさらに詳しく語られる。

・夫は、夫になり父になり責任をひしひしと感じているからこそ冷たい口を利く
・妻となった方は、子どもの生存可能性を上げるために夫に恋人時代よりいっそう共感を求めている
こんな違いがそもそも存在しているという。これが「夫はひどい」と妻が愚痴る原因だとする。
 
 妻に対しては、トリセツとして提言がある。
1. 言って欲しいことはルール化する
2. 愛を測ると自滅する
3. 男は沈黙でストレスを解消する
4. 男は女が共感で生きていることを知らない
5. 夫の言葉は深読みしない
6. 「夫は気が利かない」は濡れ衣である
 思わず膝を強く打ってしまう。

 個人的には「言って欲しいことはルール化する」はとてもいい提言だと思う。また、「定番」については深く共感してしまった。夫にとって「定番が気持ちいい」のは実感できる。夫は「定番の繰り返しが愛の証」だとし、妻は「非定番こそが愛の証」と考える。このすれ違い。「欲しい言葉も欲しいものもあっさり言葉にして頼めばいい」というのもその通り。気が利かないのではない。「今日ゴミの日だよね、雨が降るかも」なんてなぞかけをしていないで、「雨降りそうだから早く捨てて来て」とキッパリ言えばいいと著者が語る通りなのである。

 夫の方にも定年後に「家事を分担してやろう」という意識を戒めている。「分担」ではなく、「歯を磨くように皿も洗い、お尻を拭くように床も拭く、それは生きる営み」と釘を刺す。「夫のトリセツ」ではなかったのかと思わなくもないが、ここは素直に受け入れないといけない。結局、「妻のトリセツ」だから夫が読み、「夫のトリセツ」だから妻が読むというものではなく、2冊セットでそれぞれ読むのがいいのかもしれない。新婚の夫婦が二人で読んでから結婚生活をスタートさせれば、いい夫婦になれるかもしれないと思う。

 この本を我が妻にも是非とも読ませたい、と強く思う一冊である・・・


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2019年09月20日

【妻のトリセツ】黒川 伊保子 読書日記1074



《目次》
第1章 辛い記憶「ネガティブトリガー」を作らない―妻に嫌な思いをさせる発言と行動を知っておこう
第2章 ポジティブトリガーの作り方―笑顔の妻が戻ってくる、意外に簡単な方法

 著者は人工知能研究者にして脳科学コメンテイター、感性アナリストなのだとか。よくわからないが、そんな著者が、脳科学の立場から女性の脳の仕組みを前提に妻の不機嫌や怒りの理由を解説し、夫側からの対策をまとめた「妻の取扱説明書」だとするのがこの本。大いなる期待を込めて手にした一冊。

 実は、「妻が怖い」という夫が増えているという。夫側から申し立てた離婚の動機として、「妻からの精神的虐待」という理由が急増しているらしい。我が身を振り返ってみると痛いほどよくわかる。「夫にはひどく厳しく、子供やペットにはベタ甘い」というのが母性の本能であり、妻の望む夫の対応と夫が提案する解決策が根本からズレているという。「夫という役割をどうこなすかはビジネス戦略」だとし、妻から放たれる弾を10発から5発に減らそうというのが本書の目的だとする。そのあたりは大いに興味をそそられる。

 「女の会話は共感」というのは、『ベスト・パートナーになるために−男は火星から、女は金星からやってきた−』でも説明されていたが、「男性脳は問題解決型」ということからしても噛み合わないのは仕方がない。「大切なのは夫が共感してくれたという記憶」なのだという。女とはつくづく厄介な生き物だと実感する。こんな調子で著者の説明は続く。

1. 意見が違ったらゲイン(メリット)を提示
2. 妻をえこひいきすると、実家ストレスが解消する
3. 妻と子供が対立する原因のほとんどは妻が正論。夫はあくまでも妻の味方をする
4. 「名もなき家事」が妻を追い詰めている。妻が求めているのは夫の労い
5. 一般的に女性は目的の売り場にまっすぐ行かない
こうしたことを知っていると確かに男女関係はうまくいきそうである。

 妻が理不尽なことを言って夫をなじるのは、心の通信線を開通させようとする切ない努力なのだとか。心と裏腹な妻の言葉は、以下のように翻訳するらしい。
1. 「あっちへ行って!」→「あなたのせいでめちゃめちゃ傷ついたの、ちゃんと謝って」
2. 「勝手にすれば」→「勝手になんてしたら許さないよ」
3. 「自分でやるからいい」→「察してやってよ。察する気がないのは愛がないってことだね」
4. 「どうしてそうなの?」→「理由なんて聞いてない。あなたの言動で私は傷ついているの」
英語を学ぶ方がはるかに楽しいし優しい。

 後半は夫に対する指南書になっている。
1. 記念日は記憶を引き出す日
2. 楽しみには予告と反復、サプライズは逆効果
3. 返信に困ったらとりあえずおうむ返しで乗り切る
4. 褒め言葉はマイナスの状況をプラスに変える方法としては使わない
 こういうことを妻が読んだらどう思うのだろうか、とふと思う。自分だったらバカにされているように思うかもしれない。実際、これでは間抜けを相手にしているようなものだと思う。

 「口うるさいのは一緒に暮らす気があるから」だと言うが、こちらとしてはたまったものではない。「理不尽な愛もまた愛」だと言われても素直には頷けない。妻にはストレスの放電が必要であるが、一番近い「避雷針」が夫なのだという。あえて妻の放電の相手となれば家庭の平和が保たれるらしい。それ自体否定しないが、それは避雷針の立場に立ったことがないから言えることでもある。

 この本に書かれていることは実に素晴らしいと思う。思い当たることばかりであり、なんでもっと早く出ていなかったのかと思わざるを得ない。もっと早くこの本に書かれていることを理解できていたならば、動物園の飼育係になったと思ってうまく飼育できたのではないかと思う。でも、個人的にはもう遅い。つくづく、それが残念に思うところであるが、まだ結婚生活の浅い人や、改善努力意向のある人にとっては有意義な一冊である。

 それにしても、これがベストセラーになるのが、いいのか悪いのかとふと考えてしまうのである・・・


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2019年08月29日

【日本共産党の正体】福冨健一 読書日記1065



《目次》
はじめに
第一章 共産主義とは、独裁政治である
第二章 そもそも共産主義とはどういうものか
第三章 日本共産党の歴史
第四章 革命家たちの物語
第五章 二〇〇四年綱領を読む
第六章 闘う民主主義への道
おわりに 参考文献

 個人的に共産党は好きではない。耳に心地よい政策などは確かに魅力的だと思うが、主張するところの大企業批判や中国・韓国寄りの過度な考え方などはどうにも受け入れ難いものがある。だが、では例えば選挙権を手にしたばかりの我が子にどう説明するかと言われると、少々言葉に詰まるところがある。そんなところに目にしたのが本書。その正体を理解すれば、説明もしやすくなるかもしれないとの思いで手にした次第である。

 内容はといえば、現在日本最古の政党と言われる共産党の歴史、位置付け、そもそも共産主義とはから現在の姿まで解説されている。欧米ではそもそも共産主義は拒否されており、旧西ドイツでは共産党は違憲判決を受けている。共産主義とは独裁政治でもあり、それに対し我が国では戦後、共産党非合法化も検討されたが、時の首相吉田茂はこれを拒否し、現在も思想・信条の自由は常に正しいと言う考えの下、その存在を認められている。

 共産主義といえば、マルクスによって唱えられた考え方であるが、「剰余価値説」等の考え方は、学問として興味深い。独特の「民主集中制」と言う考え方(方針はみんなで民主的に討議して決め、決定したらみんなで実行する)は、共産党の組織のあり方を示すもので、一見、民主的に思えるが、実は「決定されたら反対でも実行を求められる」という点で、独裁国家への道に繋がりやすいのだとか。独裁国家と言えるかどうかは分からないが、「中央委員会は中央集権型」と言うのは旧ソ連や中国をみればよくわかる。このあたりは知識として面白いと思う。

 共産党には綱領があり、1951年、1961年、2004年と改訂されてきている。51年綱領では、正式決定されていないが暴力革命論が主張され、61年綱領では「日本はアメリカ帝国の従属国」、「日本の当面する革命は人民の民主主義革命・多数者革命」などが謳われる。2004年綱領では、天皇制を否定し、自衛隊の解消を主張し、資本主義を否定している。アメリカ帝国主義と日本独占資本を倒して民主主義革命を行うとする主張であり、社会主義・共産主義への前進をはかる社会主義的変革が課題とする。そしてその変革の中心は、生産手段の社会化である。これらは現在も生きていて、ホームページにも掲載されている。

 なるほど確かに共産党の歴史を中心にしてわかりやすく解説されている。独特の革命理論などは、やはり時代がかった香りが漂う。ただ、個人的には現在の姿ももう少しページを割いてもらいたかったと思うところである。歴史的な推移も大事かもしれないが、「現在はどうなのか」が知りたかったのであり、その点ではこの本の趣旨には合わない。今もまだマルクスの考え方を信奉しているのか。ホームページはなんとなくソフトに書かれているが、それは今も変わらぬ考え方とみていいのだろうか。

 2016年時点で共産党は破壊活動防止法に基づく調査対象団体なのだという。30万人の党員、113万部の機関紙読者、2万の支部、政党への個人寄付金額では80億円を集め、これは2位の自民党の倍額以上であり、何がそこまで惹きつけるのだろうか。悪口よりもそのあたりを掘り下げて欲しかったと思う。アメリカの属国というところは確かにその通り。それを脱却しようという主張はいいと思うが、自衛隊の廃止、天皇制の廃止などはやはり受け入れ難いものがある。そのあたり、考え方はよく整理できたのかもしれない。

 一度、共産党自体がどう考えているのか、改めて知りたいと思う。いわゆる「革命」をまだ狙っているのだろうか。志位委員長のインタヴューなんかがあったらもっと面白かったのにと思わざるを得ない一冊である・・・






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2019年04月17日

【このゴミは収集できません−ゴミ清掃員が見たあり得ない光景−】滝沢 秀一 読書日記1019



《目次》
1章 ゴミ清掃員はつぶやく
2章 ゴミ清掃員プロファイラー
3章 嘘に翻弄されるゴミ清掃員
4章 事件です!!ゴミ清掃員
5章 ゴミ清掃員、格差を斬る
6章 ゴミ清掃員のおすすめ物件
7章 ゴミ清掃員の花鳥風月!?
8章 ゴミ清掃員の一日
9章 ゴミ清掃員とゆかいな仲間たち
10章 ゴミ清掃員、無法者を取り締まる
11章 私、ゴミ清掃員が日本の未来に物申します

 著者はマシンガンズというお笑いコンビの1人。まったく知らない芸人なのは、普段あまりテレビを観ないせいなのか、それともそもそも売れていない芸人だからなのか。おそらく両方なのであろう。お笑いの世界も甘くはなく、売れなければ収入もない。著者は極貧生活の中、妻の妊娠を機に36歳で仕事探しに入る。そして芸人仲間のツテをたどり、清掃職員になる。年齢制限もなく、当面雇ってくれるとあって選んだ仕事である。

 この本は、そうして著者が清掃業務に携わる中で気づいたことをTwitterで発信。それが人気となり書籍化となったようである。初めはそのTwitterからのつぶやきが紹介される。なるほど、これならフォロアーも増えそうだと思えるちょっと面白い話が綴られる。慣れてくれば、ゴミを観察するうちに気づくことも増えてくる。そんな著者のゴミのプロファイリングが面白い。

 ゴミにも人生を感じられると著者は語る。カップルの写真が大量に捨てられていたりすると、「別れたんだなぁ」と思うそうである(まぁ誰でも思うだろう)。男のゴミと女のゴミは当然のように違っていて、内容もそうだが、女のゴミは袋一杯きっちり詰まっているという指摘も面白い。中には大量のえのきバターが捨てられていたり、20本ものバイブが捨てられていたりと、どんな背景があるのか興味深いものもある。

 個人的に興味を持ったのは、金持ちのゴミと貧乏人のゴミの違い。貧乏人のゴミには酒とタバコが圧倒的に多いという。それに大量のCD(握手券狙いのもの)とかゴミを一気に出すのも特徴だとか。それに対して金持ちのゴミは分別もなされていて、大量に出てくるものと言えばテニスボールだったり、粗大ゴミでは健康器具があるという。総じて自己投資の結果のゴミが金持ちゴミらしい。ゴミ集積所が汚い所は治安も良くないという指摘は傾聴に値する。

 現場で働く人もいろいろ。著者のように本業で食えていない人も多いようである。お笑い芸人、俳優、バンドマン、DJ、ボクサーetc。みんな明日を夢見ているのだろう。朝にはアルコールチェックがあって、規定値を超えると怒られて勤務させてもらえないらしい。
 現場の面白い話ばかりではなく、最後には日本社会への提言もある。実は日本は一人当たりの年間ゴミ排出量はダントツの世界一なのだという。知らなかったが、由々しき問題である。

 そんな日本社会への著者の提言は下記の通り。
 1. ゴミのリサイクル
 2. 買う前に本当に必要か考える
 3. 生ゴミの水分をなるべく切る
 最後は何かと思ったら、生ゴミの80%は水分であり、このまま焼却すると余計に燃やすためのエネルギーを使うという。「買いすぎない」「作りすぎない」「食べ残さない」は改めて意識したいところである。

 それにしても、個人的にいつも思っているのは、己の仕事については本一冊書けるぐらい一生懸命やるべきということ。そういう意味では、著者も清掃人としての仕事を一生懸命やっていることのこれが成果なのであろう。それにしても日本のゴミ問題は大変なものなのだと改めて思う。ゴミ処理先進国スウェーデンを見習って欲しいものだと思う。そして一人一人の意識。さすがお笑い芸人だけあって、クスリと笑わせられる文章も面白い。
 笑いとゴミ問題に関する自覚を提供してくれる面白い一冊である・・・



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2019年01月23日

【リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ 聞く者の魂を揺さぶるスピーチテクニック21】ジェームズ・ヒュームズ 読書日記992



原題:Speak Like Churchill,Stand Like Lincoln 21Powerful Secrets of History’s Greatest Speakers

《目次》
「クモ」が「ライオン」になる日
テクニック1 まずは「沈黙」
テクニック2 強烈な「第一声」
テクニック3 正しい「外見」
テクニック4 先に「結論」
テクニック5 思い切って「短く」
テクニック6 差がつく「引用」
テクニック7 信頼を勝ちとる「数字」
テクニック8 スパイスとしての「視覚資料」
テクニック9 本物の「ウィット」
テクニック10 うならせる「たとえ話」
テクニック11 魅せる「ジェスチャー」
テクニック12 失敗知らずの「原稿の読み方」
テクニック13「詩」を語る
テクニック14 胸に刺さる「決め台詞」
テクニック15 流れを変える「質問」
テクニック16 絶妙な「強調」
テクニック17 威厳が増す「能動態」
テクニック18「資金調達」のための語り
テクニック19「スイッチ」を入れる
テクニック20 万雷の拍手を呼ぶ「締めくくり」
テクニック21 堂々とわが道を

 もともと人前で話すのは嫌いではない。というよりも、機会があれば積極的に話したいと思うほどである。結婚式などでスピーチを頼まれようものなら、躍り上がって喜びたくなるクチである。とは言え、一方で「気の利いたこと」を言えるかというプレッシャーがあるのも事実である。そんな自分にとって、「スピーチの本」となれば、興味が湧くというものである。そんなことから手にした一冊。
 
 著者は、アメリカの歴代の大統領4人のスピーチライターを務め、フォーチュン500社のCEOのスピーチアドバイザーを務めたという方。もうスピーチの専門家である。そんな著者がこの本で「存在感が増し、身のこなしが変わり、力強さが身につき、しびれるようなスピーチができるようになる」21のテクニックを披露してくれる。
 
 まず最初のテクニックとして紹介されるのは、「沈黙」。これはなんとなくよくわかる。スピーチをする際に一番嫌なのは、ざわついた会場である。「みんな聞けよ」と怒りたくなる。そんな時、効果があるのは「沈黙」だったりする。ナポレオンもヒトラーも著者が「パワーポーズ」と呼ぶ「沈黙」の名手だったらしい。

 そして一番重要なのは、「第一声」。「沈黙」の後の強烈な「第一声」は、聞き手の眠気を覚ますのだという。もしも結婚式のスピーチのように事前に準備をすることができるのなら、第一声で何を喋るのか熟考するのも良さそうである。これは内容がうまく考えられるかという不安があるが、「結論を先にする」ということについては、日頃から心がけていることもあって容易い。

 相手に話を印象付けるということになると、「ストーリー」が大事だとする。ストーリーは人間がその情景を頭に描いて記憶するものであり、その通りだと思う。また数字を使うというのも参考になる。数字を利用する場合の秘訣は、
 1. 引用する数字を減らす-聞き手の大多数は1つしか数字を覚えていない
 2. 大まかにする-10人に6人など
 3. ストーリーに結びつける
というもの。これも意識してみたいと思う。
 
 ウィットに富んだ話、ユーモアを交えた話をするのは理想である。ウィットでお勧めなのは著名人の笑える逸話だとするが、これは知っていないとなかなか難しい。ユーモアを取り入れる秘訣は、自分自身の経験の一部を織り込むことだとする。これも普段からの意識が大事な気がする。例え話は実話を活用すべしというのもなるほどである。

 話の内容もさることながら、それ以外の要素についても語られる。外見やジェスチャーといったことがその例。下を向いている時は絶対に話さないというのも参考になる。「見て」「停止して」「話す」というテンポは心したい。話し方も「受動態」より「能動態」にすべしという話は、スピーチに限らずビジネスの現場でのプレゼンなどに有効かもしれない。こうしたことも意識したいものである。

 本を読んですぐスピーチが上手くなるというものでもないだろう。何かいい例を見つけてパクっても迫力がないに違いない。ここに示されているテクニックを参考にして、日頃から意識していることが大事だろう。やっぱり人前で話のは好きだし、そんな時には気の利いたことの1つも言いたいし、ここに紹介されているテクニックを参考にしてみたいと思わされる一冊である・・・



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2017年10月20日

【損する結婚儲かる離婚】藤沢数希 読書日記849



第1章 金融商品の取引としての結婚
第2章 離婚裁判の実際
第3章 有名人の結婚と離婚に関するケーススタディ
第4章 結婚相手の選び方は株式投資と同じ
第5章 時代遅れの法律と社会規範
第6章 古くて新しい家族のあり方を考える


最近は日本でも離婚件数が増加しつつあるようで、かく言う自分も考えるようになってきているわけである。そんなところにこんなタイトルの本が目につけば、自然と手が出ると言うものである。著者は理論物理学研究者だと言うが、肩書きと本の内容はマッチしない。しかし、何はともあれ、この本は、「実際の結婚と離婚とでどうやって金が動くのか」の正確な情報を提供するために書いたのだと言う。

まず離婚となると、初めに出て来るのが「婚姻費用=コンピ」と呼ばれる費用。要は、奥さんの生活維持費である。これは夫婦双方の収入、子供の数と年齢から家裁でほぼ機械的に決まり、正式に離婚が認められるまで支払いを続ける必要があるもの。夫の収入が多額であれば、その金額も膨大となる。しかも決まるまでエンドレス。実はこのコンピが重要な役割を持つと言う。

「結婚とは所得連動型の債権」と著者は語る。金額面だけを見ればそのように定義できる。そして離婚に際し話題となる慰謝料は、実は「広義の」慰謝料で、その内訳は
離婚成立までの婚姻費用総額+離婚時の財産分与+「狭義の」慰謝料
なのだとする。「狭義の」慰謝料は実はそんなに大きな金額にはならないのだとか。

裁判所では、奥さん以外の関係者がなんとかみんなで和解にしようとするインセンティブが働く。このあたりの内幕は面白い。そして有名人の離婚にまつわる金銭面での説明も、考え方として参考になる。こうやってお金が動くのかとわかるのである。フェイスブックのザッカーバーグが株式上場の翌日に籍を入れた狙いなども大変興味深い。

結婚はゼロサムゲームと言うが、確かにそれも見方。離婚の面から考えると、ストックよりもフローがある方が有利だとする。親が億万長者だが無職のボンボンと結婚した年収300万円のOLは、離婚となると下手をするとOLの方が財産分与とコンピを取られることになりかねないと言う。大企業の正社員か医者か弁護士が「優良銘柄」で、起業家はハイリスクハイリターンだとか。

離婚という観点からは、結婚届に判を押すのは「借金の連帯保証人になるより怖い」とする。ここまで読んでくればそれも納得。そして話はそこから少子化の話へと飛び、一夫一婦制にまで及ぶ。本の最初の趣旨から外れていくが、これはこれで興味深い。現代の自由恋愛市場では、男の上位3割が勝ち組であり、一夫一婦制とはそれ以外のモテない男性6〜7割のための制度だという。

理論的には母系社会の方が幸福であり、女性の社会進出が進み男女平等が進むと婚外子は増えていくとする。結婚制度については規制緩和し、子供の養育については規制強化することが、少子化対策にもなるとする。このあたりの意見はユニークで面白い。
ともあれ、興味深いのはやはり前半の本論部分。結婚の時にお金のことなど男は意識しないものだろう。だが、離婚にまつわるお金のことを知れば、そして薔薇色に見えた結婚生活も色褪せることを知った今となっては、とても大事な内容が書かれている。
一読の価値ある一冊である・・・




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2017年08月23日

【眠れなくなるほど面白い物理の話】長澤光晴 読書日記826



第1章 生活と物理
第2章 自然と物理
第3章 スポーツと物理
第4章 乗り物と物理
第5章 光と音と物理

高校時代、物理と化学が苦手で迷わず文系を選んだ私だが、最近やたらと数学や物理を学びたいという気持ちが起きている。苦手意識が消えたわけではないのであるが、抑えきれない好奇心とでもいうべきものかもしれない。そしてそんな時に目に留まったのがこの本。難しい数式ではなく、身近なところのものを物理的に考えてみようというものである。

第1章は生活の中での物理の話。最初に出てくるのは、「コップの水はなぜせり上がっているのか?」であり、「味噌汁のお椀がテーブルの上を滑るのはナゼ?」である。正直、これまで物理の話として考えて見たことなどなかったことである。しかし、それをしっかり「物理的」に説明してくれる。

個人的に興味深かったのは、
1. 水洗トイレが流れるのはどんなしくみ?
2. マホービンが熱を逃さないワケは?
3. 電磁調理器(IH調理器)が過熱するしくみは?
4. コピー機はどうしてコピーできるのか?
5. リモコンでチャンネルが切り替わるしくみ、自動ドアの仕組みは?
であった。どれも物理の話として考えたことのないものである。

個々の説明の中では、例えば「トリチェリの定理」だとか「ペルティエ効果」、「コロナ放電」などという言葉も出てくるし、難しい数式も出てくる。まともに理解しようとすると、かなり勉強しないといけないが、自然に流してもなんとなく理解できる。別に試験を受けるわけではないので、それで十分だろうと思うのである。そうすると、気軽に物理の難しい話を聞くことができる。

短距離走者がクラウチングスタートなワケは、それが効果的だと長年の経験で身につけてきたことだろうが、それは「摩擦力」という考え方から理にかなっている。
野球の変化球も、それを発見したのは偶然か創意工夫なのだろうが、マグヌス力という揚力、ベルヌーイの定理という空気の圧力から説明できる。そういう「理屈」も面白いと思う。

この本を読んでも難しい物理の理論はやっぱりわからないが、物理の話として説明できるということは興味深いところである。読み終えて少しだけ物理アレルギーが解消された気がする。
文系人間にも気軽に楽しめる物理の本である・・・


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