2013年12月17日

【禁断の魔術 ガリレオ8】東野圭吾



第1章 透視す−みとおす
第2章 曲球る−まがる
第3章 念派る−おくる
第4章 猛射つ−うつ

東野圭吾の代表作ガリレオシリーズの第8弾。
登場人物は、主役の湯川学にお馴染みの刑事草薙と内海。
この第8弾は、第7弾同様、4話からなる短編集である。
されどこのガリレオシリーズ、短編集でも実に内容は濃い。

第1章は、透視術が使えるとでも言えるホステスが登場する。
草薙に連れられて湯川はある銀座の店を訪れる。
そこのホステスであるアイは、封筒に入れた名刺の内容を透視するという特技を売り物にしていた。
そしてそのアイが殺される。

アイがなぜ殺されたのか。
犯人と事件の背景。
そしてホステスをしていたアイの事情。
読み進むうちにドラマは濃さを増していく・・・

第2章ではプロ野球選手柳沢の妻が殺される。
プロとしてキャリアの終わりを迎えようとしていた柳沢。
犯人はあっさりと捕まる。
されど湯川が紐解く事件の、というより妻の行動。
ちょっとウルッとするラストが良い。

第3章では双子の姉妹が登場する。
双子同士にテレパシーがあると言われる事があるが、この姉妹もそんな不思議な感覚で通じ合っている。
胸騒ぎを覚えた春菜が、若菜に連絡をしたところ、若菜は何者かに襲われて瀕死の重傷を負っていた。
湯川がこの姉妹間のテレパシーに科学的に挑む。

第4章は、湯川の高校の後輩古芝伸吾が登場する。
湯川の教える帝都大学に入学するも、姉の死を機に大学を辞めてしまう伸吾。
一方フリーライターが殺害される事件が起こり、その背後に大物政治家の影がちらつく。
そしてまたあちこちで、壁に穴があき、バイクが突然炎上しと不思議な事件が続発する。
すべての糸が絡み合い、そして最後に見事に収斂されていく。

単なる推理で犯人を挙げていくというスタイルだけではなく、各章さまざまな変化球が投げ込まれる。
そしてそれぞれ根底に流れる人間ドラマ。
時としてウルウルしてしまう。
そんな温かさが、この本の特徴。

さすが東野圭吾と唸らされる。
これだから、読むのをやめられない。
次回作を待ち焦がれたいと思う・・・


posted by HH at 23:05| Comment(0) | TrackBack(1) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月04日

【歪笑小説】東野圭吾



伝説の男
夢の映像化
序ノ口
罪な女
最終候補者
小説誌
天敵
文学賞創設
ミステリ特集
引退発表
戦略
職業、小説家

東野圭吾と言えば、ミステリー。
だがこれは、ミステリー路線からは大きく外れる。
と言って、 「ナミヤ雑貨店の奇蹟」とか「手紙」のような“不思議感動系”とも違う。
ちょっと皮肉の利いた軽い読み物といったものである。

物語舞台となるのは、灸英社という出版社。
登場人物は、編集長の獅子取を始めとした編集委員や作家やその周辺の人々。
各章それぞれ順番に主人公となって物語が進むパターンである。

物語を通じて描かれるのは、出版業界の内側。
出版不況と言われるこのご時世、出版社は“売れる作家”の原稿が喉から手が出るほど欲しい。
プライドもへちまもなく、徹底したごますりで原稿を確保する伝説の編集長獅子取(『伝説の男』)。
作家が偉いのかというと、出版した本の映画化の話が来て、舞い上がる駆け出しの作家(『夢の映像化』)を見ていると、実に滑稽。
大作家との“お付き合い”に気が重い新人作家(『序ノ口』)。
美人の編集者に我を忘れる作家(『罪な女』)。

それぞれ様々な切り口で物語が積み重ねられる。
それによって、自然と出版業界の内幕も理解できてしまう。
売れる作家はほんの一握り。
どうやら、ちょっと文才があるくらいでは、食べていくのも難しそうである。

会社で不遇を囲う男が、周りを見返そうと会社での冷遇の屈辱に耐えながら、新人賞を目指して執筆に励む。(『最終候補』)
されど現実はあまりにもシビアである。
そんな厳しい世界を、コメディータッチのオブラートにくるみ、さり気なく垣間見せてくれる。

ホームランバッターはバントもうまい。
そんな感想を抱かせられる一冊である・・・


  
posted by HH at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月27日

【虚像の道化師】東野圭吾



第1章 幻惑す まどわす
第2章 心聴く きこえる
第3章 偽装う よそおう
第4章 演技る えんじる

最近映画化された 「真夏の方程式」も記憶に新しい東野圭吾のガリレオシリーズ第7弾である。

今回の第7弾は短編集。
短編集だと気軽に読めるという長所がある。
長編だとどうしても期待先行で、途中で読みやめるのが苦痛に感じられるからである。
そんな短編は全部で4作。

第1章は、ある宗教法人が舞台。
取材に訪れた里山奈美の目の前で、教祖から罪を指摘された信者が飛び降り自殺する。
その教祖から念を送られた奈美は、自ら不思議な体験をした事ですっかり教祖の力を信じてしまう。
捜査にあたるのが、草薙と内海のコンビ。
そしてガリレオ湯川が登場する。

第2章は、職場で耳鳴りに悩む女性が登場。
そして職場の上司が自殺し、営業部の同僚が病院で草薙を刺すという事件が起きる。
ここでは草薙の同期でもある所轄の北原刑事が登場。
内海とともに湯川の下を訪れる。
湯川と北原刑事のやり取りが、ちょっとぐっとくるものがある。

第3章は、同級生の結婚式に呼ばれて故郷に戻った草薙と湯川の物語。
途中で車がパンクし、雨の中タイヤ交換をする草薙と湯川に赤いアウディに乗った女性が傘を貸す。
ホテルに着いた二人だが、やがて殺人事件の報が入る。

第4章は、ある殺人事件。
殺されたのは劇団の主宰者。
以前その主宰者と付き合っていた同じ劇団の女性が、ある思いを秘めて行動に出る・・・

どれも短いものの、物理学者湯川がその才能を如何なく発揮して事件解決に当たる。
第4章以外は、いずれもスマートな事件解決が心地良い。
長編はもちろん一番面白いが、間にジャブが入った方が必殺のストレートも生きてくるというもの。
そういう意味で、短編も欠かせない魅力だと思う。

次の第8弾も楽しみにしたいところである・・・
   
   
posted by HH at 23:26| Comment(0) | TrackBack(1) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月30日

【マスカレード・ホテル】東野圭吾



東野圭吾の推理小説である。
最近では ガリレオ・シリーズや刑事 加賀恭一郎シリーズに目が行ってしまうが、これはまた別の刑事モノ。

タイトルとは異なるが、舞台となるのは高級ホテル・コルテシア東京。
都内で連続して起こった3つの殺人事件。
そこに残された謎の数字。
警視庁ではその数字に隠された暗号を解読し、次の殺人事件の現場がホテル・コルテシア東京だと推測する。

事件を未然に防ぐべく、警視庁の刑事がホテルマンに扮してホテルに潜入する。
潜入するのは捜査一課の捜査員新田。
ホテルクラークに扮した彼をサポートするのは、ベテランのフロントクラーク山岸尚美。
そして外から新田に協力する品川警察の刑事能勢。

例によって、誰が、なぜ、どんな目的で、と言った読者の興味にお預けをしつつ、物語は進む。
慣れないフロント業務に戸惑いつつ、捜査の駒でしかない事に不満を隠せない新田。
警察に対する協力の必要性はわかるものの、およそホテルのサービスとは程遠い武骨な刑事たちが客の前に立つ事に不安といら立ちを感じつつ、対応する山岸。
そしてなぜか新田に好意的に協力する能勢。

一日に様々な客が訪れるホテル。
時に理不尽な客の振舞いに、見事に対応してみせるホテルマンの仕事振りを紹介しながら、物語は興味深い展開で進む。
いつもの事だが、ページをめくるのがもどかしく思う事、しばしばである。

単純に進むかと思われたストーリーは、途中で二転三転とする。
単なる場つなぎのエピソードだと思っていた事が、あとで犯人に繋がっていく。
こうした鮮やかな展開は相変わらずである。
湯川博士や加賀刑事がでなくとも、これはこれで改めて面白いと思う。

ハズレのない作家として、これからも東野圭吾は読み続けようと思うところである・・・
   
   
posted by HH at 21:00| Comment(0) | TrackBack(1) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月11日

【真夏の方程式】東野圭吾



最近映画化も決定し、話題になっているガリレオシリーズ第6弾。
物語は小学生の恭平が親戚の家に一人遊びに来るところから始る。
舞台となるのは玻璃ヶ浦。
何もない、きれいな海だけが名物の田舎の村。
緑岩荘という旅館を経営するおじ夫婦とその娘の成美が、恭平を迎えてくれる。

折しも海洋資源開発の話が持ち上がり、玻璃ヶ浦で説明会が開催される。
地元の海を愛する成美は、反対派の中に混じって説明会に参加。
開発側の参加者として招かれた湯川は、列車の中で恭平と知り合った事がきっかけで、緑岩荘に宿泊する。
寂しい旅館に客は湯川ともう一人。

やはり説明会に参加していたその客が、海岸の岩場で死体となって発見された事から事件は始る。
自殺か事故かと思われていたが、被害者が定年退職した元捜査一課の刑事とわかって、警察の調べが本格化する。

一見、地味な事件。
初めは事件か事故か自殺かもわからない。
しかし、例によってガリレオ湯川の注意が少しずつ引きつけられていく。
シリーズモノというのは、安心感がある。
湯川の性格もよくわかっているし、お馴染み草薙と内海のコンビもきちんと登場する。
そして期待に違わず、見事な推理を重ねていく湯川。

事件は警察の地道な捜査によって次第に全貌が表れてくる。
そしてそれにともなって明らかになっていく登場人物たちの素顔。
それぞれに歴史があり、思いがある。
そんな登場人物たちのドラマが、この本がミステリーであるという事を忘れさせてしまう。

湯川の推理も見事なのだが、そうした人間ドラマの深い味わいが読後に残る。
本を閉じた時、あとに残るのは湯川の推理よりも登場人物たちへの思い。
「容疑者Xの献身」も 「聖女の救済」もそうであったが、根底に流れる人間ドラマもこのシリーズの魅力と言えよう。
まだまだ続くこのシリーズ、楽しみは当分尽きそうもない・・・

    
posted by HH at 22:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月30日

【天空の蜂】東野圭吾



東野圭吾のサスペンス。
読み始めて思わず初出版の日時を確認してしまった。
1998年11月と書いてあってちょっと驚く。
この本で書かれている原発危機は、まるで福島の予言のようであったからである。

物語は、架空の企業錦重工業から新型ヘリコプターが盗み出されるところから始る。
錦重工業で製造した大型ヘリコプターCH−5XEが、防衛庁関係者を前にした領収飛行の直前に勝手に倉庫から出て飛んで行ってしまう。
ヘリは無人で操られており、しかも中にはいたずらで潜り込んだ子供を乗せている。

ヘリは高速増殖原型炉『新陽』の真上でホバリングに入る。
そして届けられた脅迫状。
「日本にあるすべての原発を破壊しなければ、ヘリを原発に墜落させる。」
誰が、なぜ、一体どうやって。
警察と自衛隊、そして錦重工のヘリ開発担当者湯原らが必死に対応に当たる。

ヘリが原発に墜落したらどうなるのか。
議論が交わされる。
そこで出てくるのは、原発安全神話。
関係者の話を聞きながら、福島の例が脳裏を蘇る。

日本にある原発をすべて破壊しなければヘリは落ちる。
何もしなくても、燃料が切れていずれヘリは落ちる。
そして子供が一人乗っている。
過酷な条件下、必死の捜査が続いていく。

子供を救出する条件として犯人が出してきたのは、日本にある原発すべての一時停止。
政府はこれに応じ、原発すべての運転を停止する。
日本の電力の30%を賄う原発を止めるに当たり、政府は各企業、家庭に節電を呼び掛ける。
夏場の一番電力重要が上がる時期の節電騒動。
2011年3月が脳裏に蘇る。

ストーリーもさることながら、原発事故以来にわか専門家になったものだから、至るところでの原発の解説がよくわかる。
関係者の説く安全神話が白々しく聞こえる。
最後には使用済み燃料棒の貯蔵プールの脆弱性まで指摘されている。
ここまでわかっていたのなら、福島だってもっといろいろ“想定”できたのではないかと思えてしまう。

改めて、原発はテロに弱いという事がわかる。
さらにはもっとすごい危険性まで紹介されている。
つい先日も北朝鮮で原発テロを目論んでいたというニュースをやっていたが、東野圭吾作品だからと言って、ワクワクしながら読んでいていいのかという気になってしまった。
原発問題を考えるなら、一度は読んでおかないといけない作品かもしれない。

「お話の世界」で終わってほしいとつくづく感じた一冊である・・・

  
posted by HH at 22:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月17日

【ナミヤ雑貨店の奇蹟】東野圭吾



第1章 回答は牛乳箱に
第2章 夜更けにハーモニカを
第3章 シビックで朝まで
第4章 黙祷はビートルズで
第5章 空の上から祈りを

東野圭吾と言えば、ガリレオや加賀恭一郎シリーズを中心としたミステリー作家というイメージが強いが、その一方で 「手紙」や「秘密」といった心に残るドラマもあって、どちらも甲乙つけがたいものがある。
この本は、後者に含まれる一冊である。

物語は盗みを働いた3人の若者が、ある一軒の家に隠れるところから始る。
長い間空き家であった事が明らかなその家は、かつて雑貨店を営んでいた店舗兼住宅。
まだ残る看板には「ナミヤ雑貨店」の文字がかろうじて読み取れる。
主は33年前に他界しており、生前は雑貨店のほかに主が悩み事相談に応じていて、雑誌にも取り上げられたりとちょっと近所では知られた店だった。

明るくなるまで隠れていようとした3人だが、店のシャッターから一通の手紙が差し入れられた事に気付く。
恐る恐る中を開けてみると、それは何と悩み事相談の手紙であった。
誰が、何の目的で。
戸惑いながらも返事を書いてしまう3人。
そして不思議な事が起こる。

物語は5章に分かれ、ナミヤ雑貨店と孤児院の「丸光園」とを中心に、時間を移動しながら物語は紡がれていく。
ちんけなコソ泥3人が、他人の悩みに触れて伺い知れない世界を垣間見る。
シャッターと牛乳箱での不思議な手紙の往復。
読みながらも、何となくそんな事もあるかもしれないと思えてくる。
いろいろな事情を抱えて生きる人たち。
そして、知らず知らずのうちに関わり合う事になる人たち。

各章に散りばめられたプロットが、最後に見事なハーモニーを奏でてくれるところは、さすがミステリー作家と言えるだろう。
読みながら随所で胸の中が温かくなってくる。
タイトルからは予想できない深い物語。
ミステリーでない東野圭吾も実にいいと思う。
これからも折に触れ、こうした物語を読ませてもらいたいと思うのである・・・

    
posted by HH at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月07日

【あの頃の誰か】東野圭吾



シャレードがいっぱい
レイコと玲子
再生魔女の女
さよなら『お父さん』
名探偵退場
女も虎も
眠りたい死にたくない
二十年目の約束

東野圭吾の短編集である。
この中のいくつかは最近ドラマ化されていて、偶然少しだけ観ているが、それを意識して手に取ったわけではない。

タイトルは、いくつかの作品がバブル期を背景としていて、「あなただったかもしれない」誰かの物語という意味が込められているようである。
「シャレードがいっぱい」はある男の死を巡るサスペンス。
ある金持ちの遺言状を持ちだした可能性がある事から、さまざまな登場人物がエゴむき出しでそれを探す。
あくまでも軽いタッチのサスペンス。

「レイコと玲子」は多重人格の女性の物語。
ほっとした最後にドキッとするラストを用意するのはよくあるパターン。
「再生魔女の女」は、妹を殺された姉が執念で相手の男を追いつめる話。
ただ、自分が男の立場だったら、しっかりと姉の追撃をかわせると思う。
男の弱さが目についてしまったが、そもそも逃げ切れるようであれば、犯罪を犯さないと思う。

「さよならお父さん」は名作「秘密」の原型だという。
交通事故にあった妻と娘。
妻は死に、娘が生き残るが、実は娘の中味は死んだはずの妻だったという話。
妻と娘で良かったなどと思ってしまう。
息子だったら大変だっただろう。

「名探偵退場」はがらりと趣向が変わる。
東野圭吾もこんな物語を書くんだなと思わせられる。
それぞれ短編集だから、気軽に完結する。
長編のように構えなくてもいいと言う気楽さはある。

ちょっとしたすきま時間に手軽に読める一冊である・・・

posted by HH at 00:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月12日

【時生】東野圭吾 



東野圭吾作品はたくさんあって、なかなかすべて読むのは大変であるが、折にふれては読むようにしている。
これは2005年の作品。

タイトルにある「時生」とは主人公の名前。
主人公の名前には、ストーリーに関わる大きな意味も込められている。
宮本拓実と麗子の夫妻には難病の息子がいる。
その息子時生は、治療の手立てもなく、今病院のベッドでまさに最後の時を迎えようとしている。
そしてその時、拓実は麗子に語りかける。
「実は20年以上前に時生に会っている」と。
それは拓実が麗子と知り合う前の1979年の事だった。

こんなイントロでストーリーは始る。
また最初から引き込んでくれるものである。
そして舞台は1979年へと飛ぶ。
当時拓実は23歳。
定職も持たずブラブラしていて、それで将来はでっかい事をやるという夢を見ている。
そんなある日、拓実の前に一人の青年が現れ、トキオと名乗る。

当時の拓実には千鶴という恋人がいるが、ある日突然姿を消してしまう。
事件に巻き込まれた可能性がある事から拓実とトキオは千鶴の行方を追う。
ストーリーはこの事件を中心に、現代とはおよそ別人のような拓実の姿を追っていく。
トキオとの関係、拓実と千鶴の関係、そしてやがてやってくる時。

あれこれと想像を働かせながらストーリーを追っていくと、いつのまにか時間は経過してしまう。
これも読み始めると止められない東野作品の特徴だ。
最近はガリレオや加賀恭一郎モノが人気だが、こうした人気シリーズ以外の作品ももちろん面白い。

最後に心を温かくさせてくれるところもまた良いところである。
東野圭吾ファンでなくても読んで面白い一冊だと思う・・・

   
posted by HH at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月25日

【麒麟の翼】東野圭吾


     
東野圭吾の作品の代表的人物である加賀恭一郎シリーズの最新作である。
前作 「新参者」で、練馬署から日本橋署に異動になった加賀。
事件はその日本橋署管内の、まさに日本橋の橋そのものの上で起こる。

一人の男が、日本橋の中程にある二体の麒麟像が置かれた装飾柱の前で胸を刺されて倒れていた。
男はそのまま息絶え、殺人事件として捜査が行われる事になる。
事件を担当することなったのは警視庁捜査一課。
そのメンバーである松宮が、上司の指示で組む事になったのは、所轄の加賀刑事。

実はこの二人は従兄弟同士であり、 「赤い指」でもコンビを組んでいる。
加賀刑事モノはそれぞれ独立していて、どれから読んでも良さそうであるが、この流れからすると、 「赤い指」 「新参者」→本書という流れで読むと背景が一致して面白いだろう。

そして間もなく容疑者と思われる男が発見されるが、事故で意識不明の重体となる。
当事者に事情聴取ができないという状況下、刑事達の捜査は始る。
そして被害者と容疑者の家族。
それぞれの事情。

「新参者」でみせた加賀の地道な捜査が、同じ日本橋を舞台にしてここでも展開される。
地元を知り尽くした、まさに所轄のデカの仕事振りと見事な推理。
やがて浮かび上がる真実。
単なる推理モノに終わらず、登場人物たちの心情も細かく描き、人間ドラマとしても深みがある。

「顔をそむけたくなるような事件モノでないから、読んでいて面白い」とは今年75歳になる母の感想だ。
老若男女が気楽に楽しめる刑事モノと言える。
映画化もされているが、それはそれ。
加賀刑事モノは活字で楽しみたいと、個人的には思うのである・・・

     
      
posted by HH at 00:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 東野圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする