2011年08月07日

【こちら葛飾区亀有公園前派出所】石田衣良他



第1章 幼な馴染み 大沢在昌
第2章 池袋⇔亀有エキスプレス 石田衣良
第3章 キング・タイガー
第4章 一杯の賭け蕎麦 柴田よしき
第5章 ぬらりひょんの褌 京極夏彦
第6章 決闘、二対三!の巻 逢坂剛
第7章 目指せ乱歩賞! 東野圭吾

このタイトルを見かけて一瞬あれっと思う。
あまりにも有名な「こち亀」はいいのだが、漫画のコミックではなく、書籍になっているからである。
しかも目次を見ると、ズラリと並んだのは有名ミステリー作家のお歴々。
両さんと有名作家のコラボというものらしいが、もの凄い違和感を覚えつつページをめくった。

中味を見れば、なるほど両さんが登場する。
第1章では新宿鮫の鮫島が登場する。
どうやら有名作家が、それぞれ自分の小説の主人公と両さんを共演させているようである。
正直言って新宿鮫は読んだ事がない。
それだけでなく、石田衣良のIWGPも京極夏彦も逢坂剛も、である。
なので各主人公の事を知らないから、ちょっと損したかもしれない。

それでもこち亀は読んだ事があるので、大原部長や中川や麗子や寺井などのキャラクターもすぐ浮かぶし、作家の先生もみなさん十分に知っているようで、描かれるキャラクターもまったくコミックそのものである。
唯一読んでいる東野圭吾の章では、得意のキャラクターが出てこなかったのが残念。
加賀刑事でも湯川先生でも登場させてほしかったと思うのだ。

それにしてもこち亀ももう30年以上連載されていて、少年誌では断トツの記録なのだという。
素人的にはよくネタが続くなぁと感心するのだが、原作者の秋本治からすると、こち亀は「おもちゃ箱」なのだそうで、「毎回両さんたちを使ってどう遊ぼうか楽しみなのだ」という。
なるほど、そんなものなのかもしれない。
それにしても「継続は力なり」である。
こんな作品まで生まれてしまうのである。

コミック同様、遊び心で読むのがいいかもしれない。
ちなみに、この本は「こち亀」を知らない親父が気まぐれに買ったものであるが、さすがに「こち亀」を知らないとあんまり面白くないようだ。
これは「こち亀」を知っている人たちの「おもちゃ箱」と言えるのだろう・・・

      
   
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2011年06月17日

【娼年】石田衣良




私の好きな作家の一人である石田衣良の作品。
面白いタイトルであるが、「娼」は「娼婦」の「娼」。
「年」は少年の「年」。
字の如く、金で女性と付き合う若い男の物語である。

主人公は20歳の学生リョウ。
大学には真面目に通わず、バーテンのバイトをして日々を過ごしている。
そんな彼の下に、ホストをしている友人が一人の女性を連れてくる。
その女性御堂静香は、実は会員制のボーイズクラブのオーナー。
これと思う男を口説いて自分のクラブに引きこんでいたのである。

リョウはどちらかと言えば覚めた男。
普通の20歳の男のように女の尻を追い回さない。
女性やセックスをつまらないと感じている。
御堂静香に、「女性やセックスがつまらないというのは、問題あると思うな」と言われると、「問題はあるかもしれませんが、それはぼくの問題です」とリョウは答える。
なかなかこのやり取りは趣味が良い。

リョウは御堂静香の誘いを受けて、クラブで働き始めるのだが、リョウを口説く静香の言葉もなかなか味がある。
「ふたりですれば素敵なことを、あなたはいつもひとりでしている。退屈になるのも無理ないな」
「あなたは女性をもっと信じなさい。あなたがつまらないと見下しているものは、もっと素晴らしいものよ」
売春もこのように言い替えると素敵なものになる。

クラブで働き始めたリョウ。
同じクラブで働くアズマや咲良。
ホストをしている友人のシンヤにいつも授業のノートを取ってくれているメグミ。
次第に変わっていくリョウ。

セックスの描写も石田衣良の手にかかると芸術の香りが漂ってくる。
濃密な描写もどこか美的感覚に満ちている。
それはまさに「ふたりですれば素敵なもの」。
リョウのひと夏の成長物語として、読後の余韻にたっぷりと浸る事ができる。
さすが名手、と思わず拍手。


    
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2010年10月09日

【Sex】石田衣良

   
石田衣良という作者名だけで手に取った一冊。
石田衣良の作品はわりと自分の感性にあっているので、まず外れはないように思うのである。
何やら大胆なタイトル。
どんな内容なのか興味をそそられる。

ページを開くと12の短編集である事がわかる。
そしてそのすべてがSEXの話。
いきなり大胆な表現が飛び込んでくる。
最初の短編「夜あるく」は、夜外を歩きながら互いに刺激し合うカップルの話。
どうやら外の方が興奮するらしい。
周囲に人がいないのを確認すると、大胆にも男は女の体に触り、女は甘い吐息をもらす・・・

タイトル通りの濃密な男と女のSEXが描かれる。
一言で言えば官能小説。
しかし、ネットでいくらでも拾える官能小説とは、当然ながらまったく異なる。
「品格が違う」とでも言えるだろう。

大人のSEXのオンパレードかと思えば、「文字に溺れて」はまだそんなSEXの経験もない中学生が登場する。
彼は文学小説の中の性描写に興奮する。
「痴人の愛」「南回帰線」「ボートノイの不満」・・・
誰にでも覚えがあるかもしれない。
そしてそんな彼に同じ趣味の同級生の女の子が声をかける。
SEXまではいかなくとも、やがて二人は実技に向かう・・・

死を間際にした壮年の男、子供の頃からのトラウマで不能の男、異国の地で意気投合した男女、夫のベッドに現れたこの世を去ったはずの妻。
様々な男女が激しく、そして静かに絡み合う。
どれもこれも下品ないやらしさはなく、けれど様々に繰り広げられるSEXに心までも温かく、熱くなる。

ここまで徹底して大胆に表現されるとあっぱれという感じがする。
「文字に溺れて」に登場する中学生ならきっとこの本を「愛読書」にするだろう。
いや、図書館で堂々と借りられるこの本は、中学生あたりには絶好の「入門書」になるかもしれない。
どうやらいずれまた続編が出るようだ。
それもまた読みたいと思う・・・


sex

sex

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/03/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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2010年06月03日

【親指の恋人】石田衣良


親指の恋人〔文庫〕 (小学館文庫)

親指の恋人〔文庫〕 (小学館文庫)

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2009/10/06
  • メディア: 文庫



    
    
石田衣良の長編。
私にとっては石田衣良の長編は2冊目になる。
冒頭でニュースが二人の若者の心中を伝える。
その二人がこの物語の実は主人公である。

主人公の死が始めにわかってしまうと興ざめかというとそうでもない。
この先どうなるのだろうとわくわくして読む小説もあれば、どういう顛末で結末に至るのかを楽しむ小説もある。
この物語は後者の、昔懐かしい「刑事コロンボ」型なのである。

主人公の澄雄は外資系企業の社長を父親に持ち、六本木ヒルズにある月額家賃300万円の家に住む大学生。
実の母親は澄雄が小学生の時に自殺し、今は父親と若い継母と3人で暮らしている。
一方、澄雄と心中する樹利亜は澄雄と同じ20歳ながら、トラック運転手で借金まみれの父親と狭い公営住宅に住み、パン工場と出会い系サイトでサクラのバイトをしている。

二人の育った環境は180度違うものの、母親に死なれているという事と、父親を嫌っているという共通点がある。
気まぐれで澄雄がアクセスした出会い系サイトで二人は出会い、やがて互いに惹かれ合うようになる。

現在日本では年間で3万人以上の自殺者がいる。
これだけ世界でも恵まれた国では驚くほどである。
暮らしていくのは確かに大変かもしれないが、それでも我が国では発展途上国に比べたら天国のような暮らしを送る事ができる。
なのになぜみんな自ら命を絶つのだろうか。

そんな一つの答えがこの小説にはあるような気がする。
自分たちの力ではどうしようもない運命。
次々に訪れる不幸。
生きてさえいれば、という言葉が空しく空回りする世界。

そうか、人はこうして死を選ぶのか。
一つの答えを見せられたような小説である・・・


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2010年05月31日

【眠れぬ真珠】石田衣良

        
  
石田衣良というとこれまで短編集ばかりを読んできたせいか、短編作家という印象が個人的にはしていた。
したがって本書が長編と知った時には、どんな小説なのだろうかと大いに興味をそそられた。

その内容であるが、これが恋愛小説。
しかも45歳、独身、バツイチの版画家である咲世子が主人公。
そして咲世子が心惹かれていく若き映画監督の卵、徳永素樹が28歳。
年齢差17歳である。

たぶん、20代の頃であれば、手にとって読んでみようとは思わなかっただろう。
今になってこそ、こうした設定の小説でも抵抗感なく読める。
40代女性の恋愛小説というと、真っ先に小池真理子を連想する。
そして読み進めるうちに、これは小池真理子の小説ではないかと錯覚を起こしてしまうくらいである。
その小池真理子は、巻末の解説を担当しているから何とも言えない。

小池真理子は解説で、男性作家がこれほど細やかに女性の心理を描ける事は信じ難いと述べている。
それほど違和感なく、女性の視点で小説は描かれている。
石田衣良が小池真理子を意識しているのかどうかはわからない。
二人の作家が、たまたま同じ大学出身という事も意識の中にはあるのかもしれない。
ただ結果として小説の雰囲気はよく似ている。

17歳の年齢差というものが、このストーリーの最大のポイント。
咲世子にも素樹にもベッドをともにする同世代の相手がいる。
不釣り合いだとは分かっているし、今はいいがさらに17年後の二人の年齢を考えると、その関係が長く続くものではないと、咲世子も読む方も考える。
まっすぐに進もうとする素樹と、そうしたいと思いつつもブレーキを踏む咲世子。
それでも堪えきれずに、ただ一時の事でかまわないと咲世子は決意する。

もともとの互いの恋人が絡み合い、事件もおきてストーリーは進んでいく。
そうしてちょっと予想していなかったラスト。
余韻を残しながら本を閉じた時に、読む者に自然とその先を連想させてくれる。
人によって、その先のストーリーは異なるのだろう。

同世代の人間であれば、いろいろと共感できる部分はあるかもしれない。
たまにはこうした恋愛小説を読んで、忘れかけていた感覚を呼び醒ますにはいいかもしれない。
それはいつまでも忘れたくない感覚である・・・



眠れぬ真珠 (新潮文庫)

眠れぬ真珠 (新潮文庫)

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/11/27
  • メディア: 文庫



   
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2010年03月06日

【再生】石田衣良

石田衣良は近年薦められて知った作家である。
例えて言うと「サイダーのような小説を書く作家」というイメージがある。
透明なのだが、飲むと手応えがある・・・

そんな石田衣良の短編集。
「再生」というタイトルにあるように、納められている12の短編はすべて、「再生」の物語である。
幼い子を残して妻が自殺してしまった男。
二人きりの生活もそろそろ限界を感じている。
そんな彼の元に妻の友人がメッセージを持ってくる・・・

障害を持った子供を抱えた妻を残して家を飛び出してしまった男。
同棲相手に突然別れを告げられた女。
定年退職したが、手持ち無沙汰にタクシー運転手に応募した男。
派遣社員に障害児の母。
街中で会ってもみんな人混みに紛れて目立たないような人々たち。
みんなどこかに何かうまくいかない事を抱えている。

そんな人々が最後に小さな幸せを掴むストーリーの数々。
ハッピーエンドというほど大げさなものではない。
感動の涙が溢れるというほどではない。
ただほんのりと暖かい気持ちが、最後に残る。
まさに「再生」なのである。

一流企業に勤めている父と、父の期待に反して派遣社員になった息子。
最後にしっかりとした絆が生まれた「出発」が個人的には一番気に入った。
自分のお気に入りを探してみるのも面白いかもしれない一冊である・・・



再生

再生

  • 作者: 石田 衣良
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2009/04/23
  • メディア: 単行本



posted by HH at 22:57| Comment(0) | TrackBack(1) | 石田衣良 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする