2017年10月13日

【超一流の雑談力】安田正



第1章 「超一流の雑談」の始め方
第2章 何を話題にすれば、雑談は盛り上がるのか?
第3章 思わず心を許してしまう聞き方
第4章 出会ってすぐに距離を縮める方法
第5章 さらに距離を縮める二度目の雑談
第6章 相手によって話し方や話題を変える
第7章 雑談から本題への移り方
第8章 今日から始める雑談トレーニング

仕事でいろいろな人と会う機会があるが、その時、雑談の重要性を強く感じる。いきなり本題に入るのも味気ないし、かと言ってダラダラと雑談が続くとイライラする。日頃難しいなと感じていたからこそ、タイトルを見て飛びついた次第である。

著者が説く雑談は、誰でも同じようにトレーニングできるという。なかなか心強い。中身はコンパクトに各々がまとまっている。
・自慢話はしない
・軽い失敗談を話す
・オノマトペ(雨が「ザバーッ」と降るというような擬音)
・何のための話かゴールを見失わない

私は個人的に人見知りだと思っているが、「人見知りだからこそ」それを解消するアクションに打って出よとする。その通りなのだろう。
・最初の話題は天気やニュースなど当たり障りのないもの
・実益のあることを教えてもらえればイヤでも会話は盛り上がっていく
早速、今日の銀行担当者との会話で意識してみたところである。

あいづちの「さしすせそ」はなるほどである。
さ:さすがですね
し:知らなかったです
す:素敵ですね
せ:センスがいいですね
そ:それはすごいですね
何だかはが浮きそうであるが、相手をいい気分にさせるのは基本だろう。

・会話が終わったらすぐメモ
・家を出た時から口角を上げる(爽やかな笑顔)
・話をちょいモリして盛り上げる
・意見が食い違う時は「うかつでした」
いずれもちょっとした心遣いである。

相手のタイプにも合わせる必要がある。
・プライドが高い人は上手に褒める
・言いたいことをはっきり言うボスタイプは基本的に無駄話を嫌う傾向
・マイルドな「いい人」タイプには、強すぎず、弱すぎずギリギリの押しで
・賢い話し方をする分析タイプには、数字や根拠、事実などを示しながら
・あまり主張しない「控え目」タイプには、焦らず相手の言葉を待つ
思い返せば、当てはまる人がそれぞれ脳裏に浮かぶ。

・会話の流れを止めない
・どんな球でも拾って繋げる
・間で緩急をつける
このあたり、理屈はわかるが、言うは易しの感がある。

最後の雑談トレーニングは、なかなか参考になった。
・エレベーターの中で、「何階ですか?」と聞く
・お会計の時に店員さんとひと言話す
・社内の苦手な人、嫌いな人と軽く雑談をする
何より、「話す」と言う意識と実践だと言うことなのだろう。

何事であれ、極めれば本が一冊書けてしまう。雑談ですらそうである。このあたりはやはり心掛けだろう。苦手意識を持つことなく、とにかく実践。明日からやってみようと思わされる一冊である・・・



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2017年10月11日

【未来の年表−人口減少日本でこれから起きること−】河合雅司



第1部 人口減少カレンダー
第2部 日本を救う10の処方箋-次世代のために、いま取り組むこと

日本が少子高齢化と言う問題を抱えているのは、もはや周知の事実。ただし、その「誰もが知る常識」について、「その実態を知る人がいったいどのくらいいるのか」。著者は冒頭でそう投げかける。そしてそれに対し、カレンダーのように一覧できるものは書けないかと言う問い掛けから生まれたのが本書だと言う。

今の我が国が目前としている少子高齢化は、急激な人口減をもたらすもので、それは「世界史において類例がない」と著者は言う。100年も経たぬうちに人口は5,000万人になると予想され、それを「静かなる有事」とする。これに対する対策としては、「戦略的に縮むこと」だと言う。そういう問題をカレンダーとして表示する。

2019年 世帯数が5,307万世帯とピークを迎える
2020年 女性の半数が50歳以上
2025年 東京都の人口が1,398万人とピーク
2039年 死亡者数がピークを迎え、火葬場不足が深刻になる
2045年 東京都民の3人に1人が高齢者
2050年 世界人口が97億3,000万人、世界的な食料争奪戦が始まる
2053年 総人口が9,924万人となり1億人割れ
2055年 4人に1人が75歳以上
2059年 5人に1人が80歳以上
2115年 総人口が50,555,000人

こうして見ると、なかなか刺激的である。高齢者の高齢化の主体は女性で、「おばあちゃん大国」になると言う指摘は、考えてみればその通り。その他にもそれに伴う深刻な問題が出てくる。
・女性の2人に1人が50歳以上で出産できる女性が激減
・要介護者の増加に施設整備が追いつかず、介護離職が増加
・輸血用血液の不足
・3戸に1戸が空き家

「高齢化」と「少子化」は一緒に語られるが、実はそれぞれ独立した別々の問題だと言う指摘はもっとも。「出生数の減少」「高齢者の増加」「社会の担い手としての勤労世帯の減少」が、これから様々な問題を巻き起こしていく。読んでいくうちに絶望的な気分になって来る。さらに悪いことに、それらが遠い未来の話ではなく、間違いなく自分が高齢者となっている未来の話だということである。

それに対し、著者は独自に10の処方箋を提示する。個人的に面白いと思ったのは、「高齢者の再定義」で、これは現在の65歳以上を75歳以上にしようと言うもので、一見意味のなさそうなことだが、定年の問題など「現役」世代を拡大すると言う意味では意味があるかもしれないと言う気がする。

その他、「居住エリアを明確化」と言うのも面白いと思う。いわゆるコンパクトシティと同じ考え方だと思うが、分散より集中というのは確かにいいかもしれない。第三子以降に補助金を1,000万円交付という意見も面白いと思う。この問題は人口という確実に予測できる問題であるだけに余計深刻だと思う。自助努力としては健康年齢を伸ばすことしかないが、個人的に関心を持っていきたい問題である。

大きな問題だけに、我が事として一読しておきたい一冊である・・・

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2017年10月10日

【再起動 リブート−波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語−】斉藤徹



第一話 ブレイクスルー 自由への始動
第二話 リアリティ 起業の現実
第三話 ブレイクアウェイ 依存心との決別
第四話 ベンチャーバブル 狂乱の宴 
第五話 ロックボトム 失意と戦いの日々
第六話 パラダイムシフト 再挑戦、そして覚醒
第七話 リブート 再起動

著者は、本の肩書きに「起業家」としている通り、これまで起業家としての人生を歩んできた方のようである。大学を卒業して日本IBMに入社するも20代で退職し、それからの起業家人生を綴ったのが本書である。私のようにサラリーマン人生を歩んできた者にはわからない世界の話が興味深い。

日本IBMに入社した時は、プログラムのことなどまるでわからなかったという著者は、入社後猛勉強して詳しくなる。そして学生時代からの仲間たちとの会話から、当時流行りつつあったダイヤルQ2の関連事業で創業することになる。理想として念頭にあったのは、当時大ヒットしていたドラマ『俺たちの旅』の「なんとかする会社」だというから、同世代の香りが漂ってきていい。「フレックスファーム」と名付けたその会社では、「プロレス道場」という番組を始めると、たちまち注目を集め、お金が唸るように入ってくる。

ダイヤルQ2のことは覚えているが、当時はよくわからないまま手を出さなかったものである。その後課金が問題となって、手を出さなくてよかったと思ったものである。その後、フレックスファームはサーバー提供会社へと転身し、成長の波に乗る。しかし、様々な問題が生じ、資金繰りに窮していく。背後にオウム真理教のパソコン事業などがチラつき、自分自身の記憶も刺激される。

起業はうまくいけば華やかであるが、そう簡単にうまくいかないのが世の中というもの。自転車創業の資金繰りを両親と住む家を担保に入れて銀行から資金調達して凌ぐ。一歩間違えれば、両親共々財産を失いかねない。胃がキリキリと痛むような毎日だったに違いない。背に腹は変えられず頼ったコンサルタントに救われるが、今度はそのコンサルタントへの支払いで首が回らなくなっていく。

そんな苦境にあって、著者は「社員の給料だけは払う」と決めて行動する。安易に給料を下げて社員にしわ寄せをする経営者も多い中、このスタンスは立派だと思う。そして資金調達先に翻弄する日々。時にベンチャーブームが起こり資金調達に成功するも、この時自社株購入資金として銀行から借りたお金がまた苦境へのきっかけとなる。

安定したサラリーマン生活とは程遠い著者の起業家人生は大波の中を進みゆく小舟の如し。とてもではないが、精神的なタフさが要求される。1つを乗り越えればまた次の困難。やがて会社を手放し、また創業。そしてまた次の大波が来る。しかし、困難の乗り越え方を習得した著者は強く、呆れて去っていくベンチャーキャピタルの人間との違いが際立つ。

自分では、味わいたいと思わないが、こうして人様の経験を疑似体験できるのは、読書のいいところだと思う。今は大学で起業についての講座も持っているようであるが、貴重な経験談を聞ける学生が羨ましい気もする。一方で、こういう著者の経験が果たして若い学生にわかるのだろうかという疑問も持つ。思い切ってリスクを取るには、ある意味若者ならではの「えいやぁ」の度胸も必要ではないかと思うからである。ベテランサラリーマンにはなかなか難しいことかもしれない。

単なる読み物としても面白いし、起業の真実としても面白い。起業を考えている若者向けでもあり、サラリーマンの身でも十分面白い一冊である・・・



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2017年10月05日

【超AI時代の生存戦略<2040年代>シンギュラリティに備える34のリスト】落合陽一



プロローグ インターネットの身体化から、シンギュラリティ前夜へ
第1章 超AI時代の「生き方」
第2章 超AI時代の「働き方」
第3章 超AI時代の「生活習慣」
エピローグ ユビキタス社会からデジタルネイチャーへ

「AI時代の到来」ということは、至る所で語られている。そんな中、「超AI時代を生き抜いていくために時代性を読み解き、必要なスキルやマインドセットなどについて解説」してくれるのが本書の位置付け。大変興味を持って手にした次第。

スマホの普及により、人はデジタル空間にもう一度生まれたと言える状況になっているという。確かに、SNSの世界はその最たるものだと思う。「ワンクリックでお急ぎ便が届き、いつでもどこでもUberが呼べて、手のひらの上で音楽が買える」現代は便利である一方、将来AIに仕事を奪われ、人はベーシックインカムで暮らすようになるという未来像もある。しかし、そうした「コンピュータ時代の思考法」もあるとするのが著者の主張。

まず出てくるのが、ワークライフバランスならぬ「ワークアズライフ」。報酬とストレスとをキーワードに「ストレスのかかることかからないことのバランス」を考えるのだという。やってて楽しいこと、すなわちストレスのかからぬことを仕事にするという考え方だが、「好きなことを仕事にする」とは以前から言われていることでもある。これは今自分でも「仕事を楽しんで」おり、よく実感できる。「好きなこと仕事にする」か「ストレスのかからぬことを仕事にする」か「仕事を楽しむか」どれもストレスフリーという点では共通している。これができれば一番である。

ネットで人間関係は無限に広がる気もするが、「コミュニティの限界は30人」だとする。「世界を狭めれば自分らしさが定義できる」という考え方は新鮮である。グローバルとローカルに優劣はなく、多様化した社会では「1個のパイを奪い合うのではなく、パイをどうやって広げようかという超AI時代の戦略」が必要という主張は素直に同意できる。

さらに全員が全員違う方向に向かってやっていくことを当たり前に思うこと、1人1人がブルーオーシャンな考え方をしていかなければいけないという点も然り。サーベイ(調査・測量)をして、自分がやっていることと同様の事例があれば、そこから先に自分がどういう価値を足せるのかを考えるというマインドセットが大事だというが、その通りだろうと思う。

そのほか、なるほどと思えたのは以下の通り。
・インターネットに管理される生活と管理する生活に上下関係はない(領域ごとに成立する役割分担)
・人とテクノロジーの組み合わせが時代を作る
・時代の速度より遅い進歩はいくらやってもゼロ
・締め切りに追われないためには、「ツールを使うこと」「中間の工程を気にしないこと」「機械にできることを極力やらないこと」が大事
・人間をコミュニケーションのチャンネルとして捉える
・データ量ではなく、「特徴量」を記憶に埋め込む。おぼろげな記憶があれば、「ググればわかる」

これから確実にやってくるのはどういう時代なのか。それに対し自分はどうすべきなのか。人間は歳をとるとだんだん何をするにも億劫になりがちだろう。高齢化社会の中で、いつか確実に高齢者の仲間入りをするわけだし、その時になって流されて終わるのではなく、常に自分のあり方をしっかりと意識しておきたい。本の内容もさることながら、そんな意識を改めて持たせてくれた一冊である・・・




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2017年10月04日

【見えない糸−物乞いの少年とキャリアウーマンの小さな奇跡の物語−】ローラ・シュロフ



原題:an INVISIVLE THREAD
1. 物乞い
2. 出会い
3. 一度だけ、チャンスをください
4. 誕生日プレゼント
5. 切り刻まれたグローブ
6. 友だちの約束
7. 母の歌
8. 悪い夢
9. 茶色の紙袋
10. 大きな食卓
11. 大人になった日
12. はじめてのクリスマス
13. ほろ苦い奇跡
14. レシピが教えてくれること
15. 新しい自転車
16. 予想外のひとこと
17. 暗い森
18. 最後の試験
19. 人生最高の贈り物
エピローグ モーリスより愛を込めて

これはある白人の女性と貧しい黒人の子供との交流を描いた物語。小説なのかと思っていたら、実話を描いたものだと言う。

主人公の女性はUSAトゥデイの広告営業担当重役を務めるローラ・シュロフ。ある日、ニューヨークはマンハッタンの街角で1人の黒人の少年から声をかけられる。
「すみません、小銭ありますか?」
それは決して釣り銭に困っていたわけではなく、小銭でもいいからもらおうと言う物乞いの言葉。ローラは一旦は無視して歩き去るが、何かがローラの足を止め引き返させる。そしてローラはモーリスと名乗ったその少年にマクドナルドのハンバーガーを奢る。

なんとなく別れがたく、ローラはさらにハーゲンダッツを奢り、モーリスのリクエストに答えてゲームセンターで遊ばせる。こうして不思議な出会いをしたローラと11歳のモーリス。その後、なんとなくモーリスが気になったローラは、再びモーリスと出会った場所へ行き、そしてモーリスと再会する。またハンバーガーを食べ、そしてそれから毎週月曜日に会う約束をする。こうしてローラとモーリスの奇妙な関係は毎週続くことになる。

合間に語られるのは、ローラとモーリスの境遇。ローラも決して裕福な家庭で育ったわけではなく、むしろ中流だが、しかし父親が酒乱という問題を抱えたところであった。父親の暴力に怯えて母と兄弟姉妹と少女時代を過ごす。そして航空会社に勤めたいという希望を持ちながら、努力して現在の地位を築いている。なかなかの苦労人である。

一方のモーリスは悲惨な生い立ち。祖母と母とがいるが、周りの人間は皆薬物中毒。定職についている者は皆無。狭いアパートに何人もの人々が生活している。まともな食べ物などなく、物乞いをして食いつないでいる。とりあえず学校へは行っているが、そうしないと行政からの支援が受けられないからである。抜け出すことのできない負の連鎖がそこにはある。

2人が出会った1980年代のニューヨークは、「ホームレスと物乞いは自転車に乗った子供や乳母車を押す母親と同じくらい見慣れた風景だった」状態だという。今でも格差が問題になっているが、当時既にそういう格差がありふれていたということなのだろう。薬物依存症でアルコール依存症の父親は、モーリスに暴力を振るおうとして制止に入った母親に刺されて家を出て行く、一緒に殴られた妹は鼓膜が破れるという壮絶な生活環境でモーリスは育っている。

そんな環境下にあって、モーリスは薬物とも犯罪ともギリギリのところで関わり合うことなく成長し、まともな仕事につき、結婚して家族をつくる。それもこれもローラとの出会いの結果である。それがなければ間違いなく、薬物をやり犯罪にも手を染めていたであろう。ローラがなぜモーリスと関わり、手を差し伸べたのか。それは慈悲ではなく、自分自身の育った環境の影響もあったのかもしれない。

モーリスとの関係は、モーリスだけではなくローラ自身にもまた必要なものだったと本人は語る。多分、そうなのだろう。そのほんのささやかな出会いが、これほど人の人生を変えるものなのだということがよくわかる。単に「良いことをした」ということに止まらない物語である。ストーリーとともに、いろいろと考えさせてくれる一冊である・・・



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2017年10月03日

【東芝解体 電機メーカーが消える日】大西康之



序 章 日本の電機が負け続ける「本当の理由」 
1. 東芝 「電力ファミリーの正妻」は解体へ
2. NEC 「電力ファミリーの長兄」も墜落寸前
3. シャープ 台湾・ホンハイ傘下で再浮上
4. ソニー 平井改革の正念場
5. パナソニック 立ちすくむ巨人
6. 日立製作所 エリートの武士集団の死角
7. 三菱電機 実は構造改革の優等生?
8. コンピューターの雄も今は昔

原発の次は米ウエスチングハウスの問題が噴出し、東芝が揺れ動いて久しいが、そんな時期にタイムリーなタイトルを見て手にした一冊。「東芝解体」とあるが、東芝を含めた電機メーカー各社に付いて現状を開設した一冊である。電機メーカー各社も安泰ではなく、そんな凋落にある日本の電機メーカーの現状に触れていて、実に興味深い。

作者は日経新聞出身の作家で、実はこれまでも『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』『ファースト・ペンギン 楽天三木谷浩史の挑戦』『ロケットササキ』といずれもビジネス系の実録を出版していて、いずれも興味深く拝読させていただいている。この本も読む前から興味をそそられた。

東芝は、事業立て直しのために、すでにメディカル事業はキャノンに売却し、白物家電は中国の美的集団、そして半導体事業は売却の相手先をめぐって新聞紙上を賑わしており、米WHが倒産した現在満身創痍の状況にある。日曜日のサザエさんのCMなどでおなじみだった白物家電も、いつの間にか売却。白物家電も携帯と同様、「ガラパゴス化」してアジアの新興企業に抜かれてしまったらしい。

半導体や家電、携帯電話で日本の各社が負けたのは、それが「本業」でなかったからだと著者は言う。日本の電機産業を支えてきたのは、「電力ファミリー」と「電電ファミリー」であり、この2つのピラミッドの瓦解が電機全滅の原因だとする。電力ファミリーとは東京電力をはじめとする電力会社であり、電電ファミリーとはNTTを筆頭とする通信会社で、これらの安定した設備投資が電機各社を支えてきたのだと言う。

東芝の3社長による粉飾への道はすでにあちこちで見聞きしているが、西田社長が経団連会長の椅子に意欲を見せて人事抗争に発展したとか、WHの買収価格6,000億円が身の丈を超えた買収であったとか、著者は遠慮がない。ただ、東芝には軍事産業としての顔があり、原発とミサイルを造っていることから国内では「核ミサイルを作れる会社」なのだと言う。確かに知り合いに聞くと、軍需産業部門は安定しているのだとか。ただし、原発の廃炉は国策であり、これがある限りは国もこの会社を潰せず、最悪は水俣病のチッソのようになるのかもしれないとする。

NECは「電電ファミリーの長兄」とされているが、ノキアやフィリップスが大胆に事業構造を変革したのに比べて動きが遅く、M&Aなど実施しているがその規模はあまりにも小さいとする。既にパソコン、半導体、ビッグローブ、携帯事業となりふり構わず売却し、「売れるものは売り尽くした」状態だとする。NECもパソコン事業を売ってしまったのかと今更ながら思う。

シャープは液晶技術で世界のテレビ市場を席巻し、世界の亀山モデルで話題になったのもまだ記憶に新しい。しかし、世界最大のパネル工場を作り上げた時、既に世界はスマホの時代に突入しており、さらに国策会社ジャパンディスプレイにトドメを刺されて、台湾ホンハイの傘下になったのも最近である。

その他、ソニー、パナソニック、日立製作所、三菱電機、富士通と採り上げられるが、三菱電機以外は皆苦境に陥っている。そんな現状をこうしてまとめあげてくれているのはわかりやすくてありがたい。それにしても、日本を代表する世界に冠たる電機メーカーが大変なことになっているものである。そしてそこから抜け出せずにいるのも、日本的経営の特徴なのかもしれない。

例えば、ノキアやフィリップスは早々に大胆な構造改革で既に成長軌道に戻っているし、グーグルやIBMはAI関連に年間数千億円の研究開発費を投じていると言う。これに対し、日本勢は富士通にしろ日立にしろ「3年間で1,000億円」と言う規模だと言う。優秀なインドの学生をグーグルやIBMは年俸2,000万円でスカウトするのに日本勢は500万円。追い掛ける方がこれでは勝負にならないと著者は指摘する。

著者によれば、この本はかつての名著『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』モチーフなのだと言う。確かに、日本軍の敗北したパターンと相通じるものがあるように感じる。我が国は大丈夫なのかと、他人事ではない気がする。ただ、著者には電機各社に対して復活を期待するところが根底にはあるようであり、私も別業界ではあるものの、大いに頑張って欲しいと思う。

普段なんとなく目にしていたはずのことでも、こうして整理されると理解しやすく、また問題点もわかりやすい。ビジネスマンであれば、一読して問題認識を持つのもいいだろうと思う。他人事ではなく、自分も自分の業界で二の轍を踏まないようにしたいと思う一冊である・・・



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2017年09月27日

【失われた時を求めて 1】プルースト



第一篇 スワン家のほうへ
コンブレー

マルセル・プルーストの名前と『失われた時を求めて』という小説のタイトルについては以前より知ってはいたが、読んだこともなく、またその内容についても概要すら知りもしなかったが、そういう「読まずに来た名作」を少しずつ減らしていきたいと考えている。そんなこともあって、ついに手を伸ばした一冊。手にしてわかったことは、本編は長大でこの第1巻は全編のプロローグに当たるものだという。この後を読み続けるかどうかは、第1巻の感触次第と覚悟を決めて読み始める。

物語の主人公は、語り部となる「私」自身。物語は、「私」が眠りについて語るところから始まる。長いこと早めに休むことにしていて、すぐに寝入ってしまうこともあれば、途中で目覚めてしまうこともある。そんなことをあれこれと語るうちに、ベッドの中でまどろみつつ、昔のことを思い出すと語っていく。そうして語られるのが、「私」が子供の頃を過ごしたコンブレーという土地の話。「失われた時」とは過去のこと。そんな過去の追想がこの物語そのものという形になっている。

子供の頃の「私」はお母さんが大好きで、それが故にお母さんと離れ離れになる時間が嫌いで、特に夕食後にお母さんが他の人たちとおしゅべりに興じる時間であった。そしてその後の唯一の慰めは、寝る時にベッドまで来ておやすみのキスをしてくれることであったとする。子供らしい感情であるが、お母さんはキスをすると階下に降りていってしまい、結局「私」は1人で寝る羽目になる。そんな感情の名残が、冒頭の回想のきっかけとなっているのかもしれない。

「私」の周りには、両親をはじめとして祖父母がいて、レオニ大叔母がいて、その大叔母に使える女中フランソワーズがいる。タイトルにある通りスワン家の人々もいる。それらの登場人物たちが、次々と回想の中に登場してくる。「私」の家は、ブルジョワ階級に属しており、そうした回想の生活の隅々から当時のブルジョワ階級の生活ぶりが伺えて興味深い。夕食時にはそれにふさわしい服に着替えたりするのである。

「私」はそんな日常を子供らしい視点から眺める。スワン家の人たちが夕食に来て帰りが遅くなると、母親がお休みのキスにベッドまで来てくれない。それが「私」には寂しくてたまらない。かと思うと、ある時は父の許しが出て母親が一晩そばにいてくれるが、「私」はこの時の喜びを長々と綴る。この晩、「私」は母に本を読んでもらって過ごす。

こうした出来事に加え、「私」の住むコンブレー(これは架空の町だという)の描写にもかなり字数が割かれている。コンブレー自体、「ひとつの教会」と称されるほど、ステンドグラスと鐘塔が特徴的なサン=チレール教会がその中心をなしている。特に鐘塔に関する描写は随所に登場する。「長い散歩の後に、広々とした高原に出ると四方の水平線はノコギリ歯状の森に囲まれて、その上方にサン=チレールの鐘塔の尖った先端がぽつんと飛び出している」といった具合である。

ただ、読んでいるだけだと、時として眠気を催すところもあるが、随所に挿入された絵画や挿絵や写真などが、物語をビジュアルにイメージさせてくれる。当時はちょうどパリ万国博のあとで、日本ブームが起きたとされる様子を反映してか、日本に関する描写もあったりする。そうしたアクセントが、長い回想に伴走する支えの一つとなっている。

この小説は、「20世紀フランス文学の最高傑作」として評価が高まっているという。そう言われても、フランス文学に詳しくない身としては、何か違いがわかるでもない。原文で読むことができるわけでもないので、翻訳者の方は随分と苦労して訳しているらしいが、文章を読んでそれがわかるわけでもない。ただ、当時の社会の様子と、登場人物たちの行動から当時の世相がわかって興味深いのと、そして様々な描写が名作の雰囲気を醸し出しているのを味わうのみである。

読み終えて続きを読んでみたいかと問われるならば、YESと答えたい。時間はかかると思うが、ゆっくりと続きを読んでいきたいと思わされる最初の一冊である・・・

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2017年09月26日

【一流の魅せ方−会う人すべてがあなたのファンになる−】鈴鹿久美子



第1章 誰に、どう魅せたいのか
第2章 「体型と顔」は、こう魅せる
第3章 一流は毎日「同じ服」を着る
第4章 相手を瞬時に魅了する作法
第5章 人生は選挙である


著者は、政治家のためのブランディング戦略家出、魅せ方コンサルタント。いろいろなコンサルタントがいるものだと改めて思うが、そんな魅せ方コンサルタントが、「出会った人を一瞬であなたのファンにする方法」を記したのが本書だという。十分魅力的なうたい文句で、人気があるのもよくわかるというものである。

「人は魅せ方が100%」だとし、「一瞬の印象」が成否を左右するとする。まぁ普段、営業などに来られた人とあったりしているが、だいたい初対面の印象は最初で決まるというのは実感として理解できるところである。それでも「49歳でリストラされた普通の主婦が、6週間で政治家になってしまった」などという話を読むと、ついつい警戒心が強くなってしまう。

選挙で落ちる人の特徴は共通していて、ポスター用の写真に使う服装や笑顔、キャッチフレーズ、演説の内容、身の回りの小物等をなんとなく選んでしまうことだと言う。当選する人は政党への「風」がどちらに吹いていても確実に当選するものであるし、そういう人を目指すには「魅せ方」が重要だというのが著者の主張である。

オシャレにはとことん苦手な私であるが、「流行に敏感」は自分を客観視できていないと残念な結果になるということにはちょっと救われる気がする。「流行に敏感」≠「オシャレ」ということらしい。オシャレであるためには、自分のスペックを棚卸し、どんな自分を魅せたいかを明確にし、その第一歩として自分のコアカラーを決めるという。やっぱりついていけそうもないと感じる。

「体型」「笑顔」をこうすべしと言われても自分には難しい。「服装」「小物使い」「話し方」の3つを「同時に同じ方向に向かって足したり引いたりして100点になるようにする」のが人生の戦略と戦術だとするが、苦手意識は払拭できない。その他作法については、小泉進次郎などの実例を挙げて説明してくれるが、このあたりは話のネタ的に聞き置く。

「相手の目を見るのが怖かったら、相手の口元を見る」という話は新鮮であった。こちらは口元を見ていても、相手は「自分の目を見ている」と感じるという。こういう話は面白い。どんなに厳しい仕事でも「誰かが見ていてくれる」「しっかり評価してもらっている」と思えるだけで人は頑張れるというのは、部下を持つ人には参考になる話である。

・「やりたい」と思わせることが上に立つ者の仕事
・自分がどうしたいか、たった1人の自分がどう思うのかを大切に考える
・他人は自分が思うほど自分のことばかり見ていない
バツイチアラフォーで失職し、選挙の手伝いから議員秘書になり、半年間で十二指腸潰瘍を2回、円形脱毛症22箇所という経験をした筆者ならではの、「魅せ方」以外の部分も見逃せない。

オシャレは無理でも、だからと言ってまるで敬遠してしまうのもよくないだろう。この本を読んですぐにどうこうとはいかないが、自分なりに意識してみたいと前向きに思う。そんな気持ちにさせられた1冊である・・・




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2017年09月22日

【自分を鍛える! 「知的トレーニング」生活の方法】ジョン・トッド



原題:TODO’S SELF-IMPROVEMENT MANUAL
プロローグ ものを「考える頭」には限界がない 
第1章  いい習慣≠作れば疲れないで生きられる!
第2章  集中力・記憶力が格段にアップする「短期決戦」法!
第3章  緻密な頭を作るための読書法!
第4章  こうすれば自分の「持ち時間」が最大限に生きてくる!
第5章  一目置かれる人の「話し方・交際術」
第6章  頭・体・気力を鍛える一番の方法
エピローグ あなたも自分の壁≠破れる!

著者は約200年前のアメリカの牧師・著作家であるという。そして当時、アメリカで大ベストセラーとなった自己啓発書が本書であるという。そんな昔の自己啓発書が今も再販され続けているというのは、それだけ中身も濃いと言えることなのかもしれない。そんな興味から手にした一冊。

この本は、新しい希望に満ちた国として進取の気分と宗教的・道徳的な信念が1番支配的だった時代のアメリカで書かれたという背景があると解説はいう。「先人のいいところを学ぶ、それが一番簡単な自己実現法」とするが、それは事実だろう。

中身を読んでいくと、なるほどその通りという言葉が続く。
1. ひたすら努力することをせずして、決して人より抜きんでることはできない
2. 人間の偉大な業績というのは、ささやかな、しかし継続した努力の賜物
3. 謙虚な人の方が、生意気な人間よりも同胞からはるかに思いやりや善意を受けやすい
「努力」も「謙虚」も現代でも重要ワードである。

習慣については力を入れて説明されている。
1. 習慣は第二の天性なり
2. 同じこと、同じ仕事を毎日同じ時間に繰り返すようにする
3. ただひたすら毎日、例外なく規則的に繰り返して入れば楽しいものになる
4. 今日できることを明日に延ばすのが習慣になると、将来性ある優れた計画を台無しにしてしまう
聖書を完訳したマルティン・ルターは、「毎日一節も訳さない日は1日もない」と語ったが、その偉業はこの勤勉な習慣によってなされたものである。

その他にも自分で大事にしたいと思うような教えが続く。
1. 時間厳守
2. 早寝早起き
3. 「速く行う」より「入念に行う」
4. 自分置かれている境遇に満足するようにする
5. 相手の欠点を注意するのが友情と思ったら大間違い
6. 10冊のななめ読みより1冊の本を徹底的にマスターする
7. 復習の積み重ねは信じられないほど効果的な進歩を生み出す

特に読書については入念である。
1. 読書は充実した人間をつくり、会話は機転の利く人間をつくり、執筆は緻密な人間をつくる(ベーコン)
2. 読書は精神の糧
3. 読書によって成長しようと考えているなら、まず丁寧に読む。量より質
4. 読みながら考え、読み終えてからも考える。読書にかけた時間の1/4を考察に充てる
5. 人に語ることで、その本のエッセンスは確実にものにできる

まだまだ続く。
1. 時間に強欲になることは一番の善徳
2. 毎日少しずつやることが大切
3. 中傷は必ず自分の元へ返ってくる
4. 妬みを買うような話は避ける
5. 人と話をする時は明るく振舞うこと
6. 冷たい刃ほど切れる(冷静な議論ほど効果的)
7. たとえ少しでも繰り返し≠ノ優る自己鍛錬法はない

一見、当たり前のように言われていることが多いが、考えてみればそれはこの本が歴史の評価に耐えてきたからこそなのかもしれない。当時は新鮮で、その後広まって今では当たり前のようになってしまったということなのかもしれない。自分自身、今心掛けていることも入っており、それはそれでこれからも続けたいと思う。改めて意識するには、いいきっかけとなった一冊である・・・



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2017年09月20日

【謙虚なコンサルティング クライアントにとって「本当の支援」とは何か】エドガー・H.シャイン



原題:Humble Consultibg How to Provide Real Help Faster

1. コンサルタントなのに、どうしたらいいのかわからない
2. 謙虚なコンサルティングはどのように新しいのか
3. 互いを信頼し、率直に話しのできるレベル2の関係の必要性
4. 謙虚なコンサルティングは最初の会話から始まる
5. パーソナライゼーション-レベル2の関係を深める
6. 謙虚なコンサルティングはプロセスに集中する
7. 新しいタイプのアダプティブ・ムーブ

もともとコンサルティング系の仕事には興味を持っているのだが、それは読む本を選ぶ時にも自然と現れてくる。この本もそんな傾向の中で手にした一冊。
「謙虚なコンサルティング」とは一体何なのか。それは「クライアント自身が納得感のある解を自ら探っていけるよう支援する」ものだという。コンサルタントというと、どうしても教え導く「先生」というイメージがあるから、言わんとしているところはよくわかる。

謙虚なコンサルティングで重視するのは、「プロセス・コンサルテーション」。結論だけを教えるというのではなく、結論に自ら至れるようにするということであろう。「クライアントが主語」という言葉にそれはよく現れている。そうしたコンサルティングが求められるようになった背景として、「かつてない複雑な問題」、「かつてない種類のクライアント組織」、そして「クライアントが感じているかつてない切迫感」を挙げている。

「謙虚なコンサルティング」の特徴は、「クライアントとの間のこれまでにない個人的な関係が必要」な点だとする。それには「謙虚な姿勢」、「支援したいという積極的な気持ち」、そして「好奇心」が必要となる。さらに新しいタイプの聴くスキルと対応するスキルが必要とする。聴くスキルの具体的内容は下記の通り。

1. 自己中心的に聴く:自分が最初に何に注意を引かれたか
2. 内容に共感しながら聴く:クライアントが伝えたい問題の要素は何か
3. 人に共感しながら聴く:クライアントが実際にどのように経験し、感じているか

こうした理論だけだと何となくわかったような気になってしまうが、著者が例示する具体的事案がその理解を助けてくれる。特にあるプロジェクトで、タスクフォースのメンバーとどのようにスタートを切るかが問題になった事例で、著者はパーソナライズ(打ち解けた)された関係を築くために「チェックイン」と呼ばれる手法を導入した例が印象的であった。これは要は自己紹介なのであるが、そのプロジェクトに対する思い入れを語ってもらうことで、メンバーの共感を集めたというもの。特に同じ会社でも話をしたことがないメンバーなどでは効果的に思う。

クライアントとは師弟の関係に立つのではなく、あくまでも寄り添うことを目指す。クライアントと支援者が信頼し合い、率直に話ができることが大切であり、「レベル2の関係」と呼ぶパーソナライズされた関係を重視する。これはコンサルタントのみならず、上司と部下でも親子でもできそうである。よくよく考えてみれば、これこそコンサルタントが必要とするスキルのような気がするが、こうした本が出されるということは、そうでなかったということかと改めて思わされる。

本を読んだだけでどの程度身につくかはわからないが、自分自身の対人関係のスキルとして、意識してみたいと思わされるものである・・・


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