2017年04月12日

【恋のゴンドラ】東野圭吾



ゴンドラ
リフト
プロポーズ大作戦
ゲレコン
スキー一家
プロポーズ大作戦 リベンジ
ゴンドラ リプレイ

東野圭吾の「ゲレンデ」シリーズとでも言える一作。というのも、舞台となっているのが『雪煙チェイス』で舞台となった里沢温泉スキー場であり、『白銀ジャック』と合わせて両作品で登場したパトロールの根津が出てくる(といってもこの作品では脇役である)からである。

しかし、両作品とちょっと雰囲気が異なるのは、この作品は東野圭吾得意のミステリーではないのである。「誰も殺されない」のである。その代わりに展開されるのは男女8人の恋模様。今までの東野圭吾とは一味違うものである。

最初の「ゴンドラ」は、里沢温泉スキー場のゴンドラが舞台。広太は美雪と同棲していて、結婚の話も出ているが、知り合った桃実と二人で一泊のスキー旅行に来ている。美雪との付き合いが描かれる一方で、広太の思いは早くもその夜におよぶ。そして2人で乗り込んだゴンドラに女性4人のグループが乗り込んでくる。そして広太は、そのうちの1人に気がつき愕然とする・・・これはなかなか男の心理としては恐ろしいシチュエーションで、読みながら背筋が寒くなった。

「リフト」は、ゲレンデにやって来たホテルの同僚5人の物語。水城直也は密かに木元秋菜と付き合っている。そして日田栄介は、土屋麻穂に好意を抱いている。女性の扱いがうまい水城は下手な日田のためにひと肌脱ごうとするが、肝心の麻穂は・・・水城も日田もこういうタイプいるよなぁと思わせられる。

「プロポーズ大作戦」は、日田がようやく付き合い始めた美雪に、わずか3ヶ月で早くもプロポーズしようとする。それにふさわしいシチュエーションを水城に相談し、水城はゲレンデを舞台に一計を案じるが・・・
「ゲレコン」は、水城と日田が「ゲレンデでの合コン」に参加する。そこで知り合ったのは、高校時代の友人同士である弥生と桃実。4人はゲレコンのイベントの中で知り合い、ゲレンデで楽しいひと時を一緒に過ごすが・・・

「スキー一家」は、結婚した月村春紀と麻穂が、麻穂の両親とスキー旅行に参加する。麻穂の父親は大のボーダー嫌い。自らボーダーであることを隠して春紀は慣れないスキーをする・・・「プロポーズ大作戦リベンジ」は、日田と桃実を「くっつけ」ようと企む水城と弥生。しかし計画は思わぬ展開をみせる・・・

「ゴンドラリプレイ」は、日田と桃実の関係が接近していく様子が描かれ、そして冒頭と同じように広太らと一緒になる。そしてまた同じようなシチュエーションとなっていく・・・どれもこれもがゲレンデを背景に爽やかな若者たちの有様が描かれる。死者は出ないものの、やはり先を読ませず意外な展開を見せてくれるのは、どこか東野圭吾的である。こういうのもいいかもしれない。

それにしても、東野圭吾はスノーボードが好きなんだろうなと感じさせる。それが何より証拠の「ゲレンデ・シリーズ」であり、描写の1つをとってみてもそう感じさせる。こういうのもアリではないかと思う。今後、こういうテイストの作品が増えるのかどうかはわからないが、これはこれで読んでみたいと思う。

いずれにせよ、これからも東野圭吾作品の感想が増えていくことは間違いないと思うところである・・・



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2017年04月11日

【大前研一 アイドルエコノミーで稼げ!】大前研一



第1章 アイドルエコノミーで、新しいビジネスを想像せよ 大前研一
第2章 ネスレ日本のイノベーション 高岡浩三
第3章 日本交通のスマホアプリ戦略 川鍋一朗
第4章 印刷業界を変えるアイドルエコノミー

 大前研一の本となれば、ほぼ無条件で読んでいる。内容はいろいろだったとしても、共通しているのは、どれも読んで損はないからである。そう思って手にした一冊だが、何と内容は4章に分かれていて、肝心の大前研一の担当は第1章のみ。ちょっと騙された感が漂うが、どうも「ATAMIせかいえ」という勉強会をベースにしているようだが、この本のどこにもそんなことは書かれていないのでわからない。実に不親切、不正直な本と言わざるを得ない。

 それはそれとして、タイトルのアイドルエコノミーであるが、近時あちこちで取り上げられていて、ちょっとしたブームになっている。アイドルエコノミーとは、自分ではリソースを持たず空きリソースを見つけ必要としている人とマッチングするビジネスで、AirbnbやUberがその代表として、これもあちこちで紹介されている。

気がつけばその方にもいろいろと登場しているようである。自宅のトイレを貸すAirpnp、自宅をリフォームしたい人と建築士、設計士、業者をマッチングするHouzz、システム開発のUpwork。Airpnpなんて真面目に考えているのだろうか、商売として成り立つのだろうかと思わざるを得ないが、考えるものである。

 こうした空きリソースを利用した新しいシェアリングサービスは確実に拡大して来ていて、現状5つに分けて説明されている。
1. 場所−家、部屋、土地、駐車場、オフィススペース、結婚式場、イベント会場・・・
2. 稼働−倉庫、印刷所、クリーニング、料理教室、トイレ・・・
3. 専門家の空いた時間−フリーランサー、ガイド、医者、子守、ドッグシッター・・・
4. 物−ファッショングッズ、道具、カメラ・・・
5. 乗り物−タクシー、自転車、自動車、プライベートジェット、プレジャーボート・・・
確かにいろいろある。

 個人的に面白いと思ったのは、空いているオフィスの貸し借りであるShareDesk、駐車場の空きを利用したakippa、個人の空き時間を利用したプライベートレッスンの「サイタ」、宅配クリーニングのリネットなどである。第4章で紹介されるラクスルも面白い。そのほかにも高額な工作機械など、購入した後に自社だけでなく近隣の企業にも使ってもらい稼ぐことで、固定費に対する限界利益を上げることなどその発想が参考になる。

 こうしたアイドルエコノミーの台頭をただ礼賛するだけではなく、「その脅威に既存のプレーヤーはどういう対策を講じるべきか」を大前研一は論じる。
1. 自らがアイドルエコノミーの領域に乗り出す
2. アイドルエコノミーのプレーヤーをうまく活用する
3. 圧倒的な製品・サービスの魅力を提供することで顧客に常に選ばれる立場に立つ
(リッツ・カールトン、日本交通、ロイヤルホスト、ライザップetc)
反対の立場からのものの見方も大いに参考になる。

 第2章からは、論者が変わる。ネスレジャパンはネスカフェアンバサダーの成功を中心に語られるが、我が家にもあるそれはあまりコーヒーとしては美味しくなく、「成功」と語られるのには抵抗感がある。日本交通はスマホアプリだが、これはまだ利用したことがないため、便利なら普及してほしいと思う。ラクスルは最近ネット広告が目につくが、これはなかなか面白いアイディアだと思う。

 それなりに悪くはないと思うが、こちらは「大前研一の本」だと思って読んでいるだけにちょっと裏切られ感が強く、素直に読めないところがあった。「羊頭狗肉」と言ったら言い過ぎであろうか。次は事前によく中身を確認しようと思わされた一冊である・・・ 


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2017年04月10日

【伝えることから始めよう】田明



第1章 今を生きる
第2章 どんなこともつながっている
第3章 できる理由を考える
第4章 伝わるコミュニケーション
第5章 自己更新

 もともと何かを成し遂げた人の話は好きである。それもその人ご本人の言葉であればなおさらである。そんなわけで経営者の本は好きなジャンルの本と言える。この本は、ジャパネットたかたの創業者であり、今は引退してしまったがテレビショッピングの名物MCでもあった方の自叙伝でもあり、見た瞬間に読んでみたいと思った一冊。

 はじめに著者の信念でもある「今を生きる」という言葉が紹介される。「過去にとらわれず、未来に翻弄されないで今を生きる」という生き方が、全編を通して流れている。生まれは長崎県の平戸。大阪の大学を出て就職し、それを辞めて故郷に帰り、言われるまま稼業のカメラ店を手伝う。1974年の5月のこと。

 当時は観光地やホテルで、観光に来たお客さんの写真を撮って現像して売っていたという。カラー写真が普及し始めた頃で、著者の実家が平戸で初めてカラー現像所を作ったのだという。平戸のホテルすべてと契約していて、毎晩いくつもの宴会に出かけて行って撮影し、家族総出で現像して販売する。毎日2〜3時間の睡眠時間だったというが、例え手伝えと言われて始めたことでも目の前にあることに夢中になって全力投球できるところが自分のいいところと著者は語る。確かに、何であれこういうスタンスは大事である。

 そうして一生懸命取り組んでいると、課題が見えてくる。ホテルで宴会の翌朝写真を売りにいくが、売れ残りが出る。それを観光地に持って行って売るとまた売れる。朝は買う余裕のない人もいるわけで、課題が出ると不思議なことにそれを達成するためのアイデアが生まれてくると著者は語る。

 どんなことでも一生懸命にやっていれば、その時は何の役に立たなくてもいつか役に立つ時が来る。どんなことでもいつかどこかでつながっていると著者は語る。スティーブ・ジョブズも同じようなことを語っていたが、真実なのだろう。特に著者の生き方から伝わって来るのは「一生懸命」という姿勢。そして失敗してもめげない。「やらなかった失敗はあっても一生懸命にやった失敗はない」と語るが、胸に手を当ててみたくなる。

 結婚して支店を任され、建設現場を回ってフィルムを集め、団体旅行に写真添乗員として参加する。55万円の年商を1年で300万円にできたのは偶然ではないだろう。やがてラジオで宣伝を行い、ラジオショッピングにつながる。これが好評だったが、長崎では放送は年に2回。そこで九州を飛び出て鳥取や岡山でラジオショッピングをやる。佐世保のカメラ店がこんな取り組みをするなど誰も考えなかっただろうし、常識にとらわれず売れるものは何でも売るというスタンスが、今日の成功につながっているわけである。

 何かを人に伝えるときに大切なのは、スキルとマインドとミッションだという。マインドとはパッション(著者の場合は一生懸命だろう)である。大事なことは「伝えること」ではなく「伝わること」。伝えたつもりではダメ、上手くではなく分かりやすく。そして面白く。何を伝えたいのかを明確にし、最初の1分間がとにかく大事。そして伝える相手を意識する。

 ビデオを売る時、テレビにそれを写したという。○○画素だとか性能だとかを説明するよりも、テレビに映った孫の姿を見てみんな買ってくれたという。ボイスレコーダーはビジネスパーソンや学生向けと考えられていたのを、シニアに忘れ物メモと紹介する。ジャパネットたかたのテレビショッピングを見ていても、それは大きく感じるところである。

 逆境にあって守りに入らず、攻めの姿勢で今できる最高の努力をする。自社スタジオの建設など大胆な戦略もその結果なのだろう。社員の満足がなければ顧客満足は得られないと、社員旅行で海外に行ったりしているのは羨ましい限りである。
「夢や目標は途中で変えていい」
「人生何を始めるにも遅すぎることはない」
要所要所で語られる言葉は深い味わいがある。やはり手に取ったのは大正解であった。

 ビジネスパーソンであれば、生き方のヒントになることが大量に詰まっている。読み物としても面白いし、得られるものも多いし、是非とも読むべきだろう。
 ジャパネットたかたで何か買い物がしたくなってしまった一冊である。・・・


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2017年04月07日

【セブン-イレブン1号店繁盛する商い】山本憲司



第1章 十六坪の出発
第2章 日々是発見
第3章 コンビニ商いの鉄則
第4章 接客の心得
第5章 一所懸命

 タイトルにある通り、著者はセブンイレブン1号店の経営者。すでにいろいろなところでこの1号店(日本のコンビニ1号店でもある)の話は取り上げられているが、改めてご本人の書を手に取る。なんでも事あるごとに書き溜めていたメモを元にしたもので、著者なりの商売心得帖が小冊子になり、本書になったという。一読してわかるが、そういうメモをとるところからも商売熱心さが伝わってくる一冊である。

 1号店のオープンは、1974年5月15日。最初の売り上げは、開店前の午前6時半過ぎに来たお客さんで、当時アメリカのセブンイレブンで売れ筋だったサングラスだったという。初日の来客の中にはダイエーの中内社長の姿もあり、ダイエーは翌年大阪にローソン1号店をオープンさせている。そんなエピソードが面白い。

 著者はもともと酒屋の長男で、明治大学経営学部の2年時に父親の健康状態が悪くなり、店を手伝うようになる。そしてそのまま父は帰らぬ人となり、著者は大学を辞めて経営に専念する。しかし、不慣れな若者の経営であり、また事業の将来性に対する不安もあり、様々なセミナーに参加するうちにコンビニの存在を知り興味を持つ。そしてイトーヨーカ堂がセブンイレブンをスタートさせると知ると、手紙を書いてフランチャイズに手をあげる。

 経営学部という素地があったのかも知れないが、こうしてアンテナを張っていた事がその後に繋がった訳で、日々目の前の仕事をただこなしているだけだったら現在はなかっただろう。そしてその熱意が認められフランチャイズ候補となるが、「結婚をしていないとダメ」と言われて親友に頼み急遽相手を探して結婚する。このエピソードにはちょっと驚きを感じる。そして母の後押しを受け、当時大金であった2,200万円の借金を背負ってスタートする。かなりのリスクテイクである。

 最初の研修では、1日3万円の費用を払って研修を受ける。質問責めで2時間も時間オーバーしたというから、その熱意たるや凄いと思う。そしてオープン後は、1日の睡眠時間が3〜4時間だったという。それでも苦痛に感じることはなく、むしろ不安だったのはいくら売り上げ、適正経費はどのくらいで利益はどのくらいがいいのかわからないことだったという。全く手探りな中で、24歳の若者が奮闘努力する様に胸が熱くなる。

 当時は夜開いている店などなかったわけで、それでも風呂の帰りにビールとつまみを買っていく客がいて、それがセブンイレブンのフランチャイズ戦略を変える発見だったり、ロックアイスやプルトップ缶の需要を発見したり、本部と一体になって新しい事業を進めていくが、このあたりは創業物語特有の面白さがある。特に欠品に対する意識は強く、「コンビニ経営の成否は(欠品を出さない)発注にあり」とまで言い切る。「少数だけど売れる商品を買うのは常連、期待を裏切って他店に行かれたら大きな損失」という意見はなるほどと思わされる。

「日々が仮説と検証の繰り返し」という努力の姿勢は志の4原則に現れている。
1. 情熱(この仕事が好きだと感じているか)
2. 努力(店で日々創意工夫をしているか)
3. 継続(お客様にとって良いことだと思ったらたとえコストがかかっても続けることができるか)
4. 勇気

 何事も一番最初というのはリスクがあるものの、うまくいけばずっと語り継がれることになる。これからも「日本のコンビニ1号店」「セブンイレブン1号店」の称号は永久に残るだろう。そしてそれは「たまたま」、「偶然」というものではなく、著者の努力がもたらしたものだということがわかる。それはその後の「日々が仮説と検証の繰り返し」という姿勢にも現れている。何かを成し遂げた人には何かがある。その思いを補強させてくれる。

 立場に関係なく、何かを成し遂げたいと思う人なら、読んでおきたい一冊である。



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2017年04月05日

【ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方−富裕層だけが知っているマネー戦略−】加谷珪一



序 章 アベノミクスとは何だったのか?
第1章 日本経済の新しい常識
第2章 世界経済の新しい常識
第3章 投資戦略の新しい常識
第4章 資産形成の新しい常識
第5章 情報整理の新しい常識
第6章 「働く」「生きる」の新しい常識

著者は、ジャーナリスト、投資ファンドを経てコンサルティング業を行なっている方だという。ご自身でも億単位の資産を運用する投資家であるとのことで、そんな著者がアベノミクス後にお金や経済とどう向き合えば良いのかについて分野ごとにまとめた一冊。

まずそもそもアベノミクスとは、金融政策でデフレからの脱却を試み、財政出動で当面の景気を維持し、その間に痛みを伴う構造改革を実施するという政策である。しかし、日銀が掲げてきた2%という物価目標を実現することは現時点では難しそうであり円安と物価上昇を基本としてきたアベノミクスは逆回転し始めているとする。このあたり、ずっとアベノミクスの効果を疑問視してきた中原圭介氏の指摘(『中原圭介の経済はこう動く 2016年版』など)が現実化してきていると感じる。

アベノミクスは、スタート時点では構造改革が経済成長を実現するための本丸という認識であったが、ほとんど進まず現在はほぼ消滅したという。だらだらとした現状維持の動きが続き、再び財政出動頼みへと逆戻りする可能性があるという。物価上昇がストップし、消費者心理も冷え込む傾向が当分続く可能性が大だとする。

安倍総理は何とか賃金を上げようと躍起になっているが、日本の労働人口はここ10年総数は変わらぬまま25〜35歳の労働人口が2割も減るという状況。現状の人手不足は好景気によるものではなく、若年労働力人口の減少(正社員として働く若者の減少分を低賃金の高齢者が補っている)だとする。

一つ一つ丁寧に解説されていて、なかなかわかりやすい。
1. 諸外国の格差は上方向への格差だが、日本の格差は下方向
2. 日本の消費はさらに引き締まる可能性が高く、節約より不必要な支出をなくすべき
3. 財政再建はほぼ実現不可能であり、金利上昇リスクはかなり高い
4. 英国のEU離脱によりむしろEU側の企業が打撃を受ける
5. 中国は内需中心経済へと転換し、人民元経済圏が出現する
6. アベノミクスの限界が見え、外国人投資家がほぼ撤退、株価下落を止める手立ては残されていない

一般の認識と異なる部分がいろいろとあり、その可否はわからないが、一つの見方として参考になる。我が不動産業界に関しては、「人口減少から優良物件以外の不動産は不利になる」とする。長期的にはインフレであり、住宅ローンは繰上げ返済すべきではなく、マイホームも収益性の高い物件に限り購入すべしとする。このあたりは頭の片隅に置いておきたいと思う。

日本の世論は労働市場改革には消極的で、生産性は今後も上昇しないため残業は無くならないと語る。介護施設は増えず、家族の負担は増えるということはあまり想像したくない。実際にどうなるか、ではなく、あくまでも一つの考え方として覚えておきたいところである。
正直言って、こうした考え方はなかなか自分だけでは困難であり、折に触れて触れていきたいところである。そういう意味で、為になる一冊である・・・


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2017年04月04日

【日輪の遺産】浅田次郎



 かつて映画版を観ており、なんとなく原作も読まねばと思っていた作品。ここに来てようやく手にした次第。やっぱり原作を読んでみると、映画版とは差異があるようである。

 物語は昭和二十年八月にさかのぼる。冒頭、ある女学生たちの姿が描かれる。担任の野口先生は生徒たちに慕われているが、その平和主義的思想から憲兵に連行されてしまう。まもなく野口先生は戻ってくるが、1クラス35名は、軍から重要任務に就くことを命ぜられ、トラックに乗せられてある場所へと向かう・・・

 翻って現代、不動産会社社長の丹羽明人は、商売も傾き半ばどうでもよくなって競馬で一攫千金を狙う。そしてそこで真柴と名乗る老人と出会う。ひょんなことから真柴老人に付き合い飲みに行く丹羽。そこで老人に一冊の手帳を手渡されるが、老人はそこで急に亡くなってしまう。成り行きで病院に付き添った丹羽は、霊安室で真柴老人から預かった手帳を読み始める。そこには、終戦間際に真柴老人が関わった指令のことが書かれていた・・・

 終戦間際、陸軍少佐の真柴司郎は、突如師団長から呼び出される。降伏か徹底抗戦かで不穏な空気が自らが属する近衛師団内に漂う中、真柴少佐は同時に呼び出された小泉主計中尉とともに大臣室へと案内され戸惑う。阿南陸軍大臣、杉山元帥、梅津参謀総長、森師団長、田中軍司令官と並み居る面々から直々に密命を受ける。それはマツカーサーから摂取した900億円分の財宝。敗戦後の祖国復興資金とすべく、国内に秘匿せよというのがその内容。

 物語は、現代と終戦直前とを往復しながら進んでいく。小泉中尉とともに財宝秘匿の任務に就いた真柴少佐は、指令に従ってそれを多摩の火工廠へと運ぶ。それを洞窟に運び込むのに使役されたのが野口先生の引率する女学生35名。何も知らない女学生は、黙々と指示に従って作業にあたる・・・

 過去と現在を往復する物語。終戦間際に隠された日本の復興資金。現代に生きる丹羽は、ボランティアの海老沢と地元の有力者である金原と隠された財宝を密かに手に入れようと考える。しかし、果たして財宝は今だ火工廠跡にあるのか。手帳を読む丹羽も、この本を読む立場からもそれは大いに気になるところ。そして終戦間際の真柴少佐には最後に過酷な命令が下される。

 様々な登場人物たちが、過去と現在とで登場するが、過去と現在は意外な形で結びつく。その結末は、深い味わいとともに円団を迎える。ある程度は読む者も結末を予想すると思うが、この結末はなかなか予想はできないのではないかと思う。そこが浅田次郎らしいところかもしれない。映画版は正直言ってあまり心に響かなかったが、原作小説はさすが浅田次郎と思わされる。この物語は、映画ではなく原作で味わうべきだろう。

 解説によれば、デビュー以来の路線を変更する一作だったとのこと。映画は観たが、原作はまだという作品はまだある。それもぜひ読んでみたいと改めて思う。急がず、折を見てと思わされる一作である・・・



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2017年03月31日

【デービッド・アトキンソン新・所得倍増論 潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋】デービッド・アトキンソン



第1章 日本はほとんど「潜在能力」を発揮できていない
第2章 「追いつき追い越せ幻想」にとらわれてしまった日本経済
第3章 「失われた20年」の恐ろしさ
第4章 戦後の成長要因は「生産性」か「人口」か
第5章 日本人の生産性が低いのはなぜか
第6章 日本人は「自信」をなくしたのか
第7章 日本型資本主義は人口激増時代の「副産物」
第8章 日本型資本主義の大転換期
第9章 日本の「潜在能力」をフルに活用するには

著者は、国宝・重要文化財の補修を手がける創立300年余りの小西美術工藝社社長。しかし、元はと言えばイギリス生まれのオックスフォード大学出身、ゴールドマン・サックス証券でエコノミストをしていた変わり種で、以前カンブリア宮殿でも取り上げられていた方である。私も知らなかったのであるが、これまでにも日本経済に対する提言として何冊か上梓しているようである。この本もその一冊である。

日本は、GDP世界3位、製造業生産高同3位、輸出額同4位、ノーベル賞受賞者数同6位等々の堂々たる経済大国である、と我々は認識している。しかし、著者によるとそれは決してそうではないという。というのも、「一人当たり」で見ると、例えばGDPは世界27位、輸出額44位、ノーベル賞受賞者数39位とランクが大幅にダウンする。これは、「人口ボーナス」のなせる技であり、日本のランクが高いのはただ単に「人口が多いから」だという。

日本の人口は、イギリスの2倍、ドイツの1.6倍であり、技術力や国民の教育などベースの部分ではほぼ変わらないので、日本がイギリスやドイツよりランクが上なのは、単に人口が多いからだとする。それが証拠に、GDPでは中国に抜かれたが、それは中国が人口が日本の10倍もあるからだとする。なるほど、わかっていたつもりでも、改めてそう指摘されればその通りである。そしてこれが日本人の認識を曇らせているとする。

日本に必要なのは、とにかく「生産性を上げること」。そうでなければ、今後2050年までに日本はベスト10から転がり落ちるという。そして生産性を上げるのは、経営者の仕事と著者は語る。日本とアメリカの生産格差の45%は日本人女性の年収の低さというのは頷ける。さらに日本政府に対し、経営者にプレッシャーをかけることが必要だと主張する。

日本の生産性が低いのは、「経営者の経営ミス」と著者は手厳しい。農業に至っては一人当たりの総生産が異常に低く、これは行き過ぎた保護政策にもよるのだろうが、改善の余地は大きすぎるくらいありそうである。「移民政策はやるべきことから目を背けるための言い訳」という主張は、別の理由で移民に反対な私も大いに溜飲を下げる部分である。

人口激増時代に誤った意識を持ったことが、現在の問題につながっているという。それは下記の通り。
1. 責任を曖昧にする文化
2. 新発売キャンペーン癖
3. 計画性のなさ
4. 検証しない文化
5. マニュアル化
6. 融通がきかない
7. 縦割り行政

ここの是非はともかくとして、個人的に一番納得したのが、「現状維持が至上命題になっている」とまで著者が言う「改革アレルギー」。「制度を変えたくないと言う意識がまずあって、それを正当化するために様々な屁理屈を出しているようにしか思えない」とまで言う。一例として、コンビニでバーコード1つでできる公共料金の支払いが、銀行では名前と金額を書かされると言う例。その銀行が3時に閉まるのも前近代の名残とする。言われてみれば、であるが普段当たり前だと思っていて気にもしなかったが、確かにその通りである。

「アベノミクスの足を引っ張っているのは経営者であり、政策目標は企業の時価評価を上げること」と著者は主張する。株式市場を通じたプレッシャーにより経営者の意識を変えることが大切とする。外国人ゆえに、客観的に見られる部分もあるのだろうが、大いに考えさせられる提言である。良い悪いは別として、己の考えを熟成するのに、実に示唆に富む一冊である・・・



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2017年03月28日

【危険なビーナス】東野圭吾



東野圭吾の作品をまた一つ。今回の主人公は、獣医の手島伯朗。町の医院の雇われ先生で、助手の蔭山元美と二人で細々と診療を行なっている。そこへある日突然、若い女性から連絡がある。女性は矢神楓と名乗り、弟の明人と結婚したと告げる。そこから、伯朗と明人は異父兄弟であること、伯朗の父一清は画家であったが病死し、母禎子が明人の父矢神康治と結婚し明人が生まれたという事情が語られる。

さらに伯朗は、楓から明人が失踪したと告げられる。そしてその失踪には矢神家の人間が関与している可能性があり、まだ結婚の事実も告げていない楓の身では探ることも難しく、したがって伯朗に協力してほしいと求めてくる。実際に会った楓は、カーリーヘアの魅力的な女性で、伯朗は疎遠だったとはいえ弟の妻という身を忘れて惹かれていく。

こうして、伯朗は楓とともにかつて関わりを絶ったつもりでいた矢神家の人々と再び交わるようになる。矢神康治は病床にあって明日をも知れぬ身。医師であった康治は、かつて伯朗の父一清の治療をしていたこともあり、最後に描いていた不思議な絵が物語のキーとなってくる。

康治が研究していたのは、サヴァン症候群と呼ばれる精神疾患。映画『レインマン』でダスティン・ホフマンが演じて有名になったが、患者は時として不思議な能力を発揮する。『レインマン』では、ダスティン・ホフマン演じる男が床に落ちたマッチの数を瞬時に言い当ててみせたが、ここではフラクタルと呼ばれる全体の形と細部が相似となった不思議な絵として取り上げられる。こういう雑学も身について面白い。

物語は、伯朗の過去に触れつつ、それがもたらす謎に興味をもたせつつ、楓という若い女性のこれもまたどこか謎めいていて、読みながら作者の隠された意図を探り出してやろうと思わされるキャラクターに惹かれつつ、進んでいく。東野圭吾の作品はどれもこれも物語に引き込まれていく。電車の中で読めば、最低一度は乗り越してしまうこと確実である。

ラストに至る急展開は、さすがに素人に先読みさせるほど甘くはない。謎もすっかり解きほぐしてくれて、なるほどと唸らせてくれる。何を読んでもきっちり満足させてくれるところは、さすがだと思う。文句はないのだが、そろそろガリレオ先生か加賀恭一郎に登場してほしいと思うのは、私だけであろうか。

次をまた期待したいと思うのである・・・



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2017年03月27日

【投資家の父より息子への13の遺言】高橋三千綱



第1章 千載一遇のチャンス
第2章 投資家の父より息子へ、投資の極意とは
第3章 投資の法則
第4章 証券マンを体験する
第5章 投資家はバフェットを真似る
第6章 ファンドマネージャーの道へ
第7章 相場には4つの局面がある
第8章 業績相場への転換期
第9章 中間反騰から逆業績相場
第10章 個人投資家として生きる
第11章 100年に一度の大相場
第12章 効率のいい投資法
第13章 バブルを楽しめ

もともと私自身株をやっている(と言っても今は休養中)こともあって、この手のタイトルには敏感に反応してしまうところがある。一読してよくわからないのは、この本の内容がどこまで実在の話かということである。一応、フィクションと断ってあるが、内容はとてもフィクションではない。実在の話をうまく組み立ててあるのだと思うが、中身の濃い内容であることは間違いない。

主人公である「私」は、投資家Mとなっている。1971年に大学を卒業し、あまり優秀できなかったため、銀行などには見向きもされずW証券に就職する。その後、香港赴任時にフランスの投資会社に転職し、さらに知人の設立した投資会社で50歳まで勤務し独立というキャリアを歩む。投資家として財をなし、そのノウハウを遺言として息子に残すというのが、この本の趣旨である。

まずは投資家として守っている4つのルールが説明される。
1. 10%損切りルールを守る
2. ピラミッティング、いわゆる買い乗せをする
3. 買い下がり、売り上がりはしない、つまりナンピンはしない
4. トレンドに逆らわない
実に簡単であるが、1,3,4は当たり前のように言われていること。これだけの投資家でも基本は大事ということだろう。特に1は、わかっていてもなかなか守るのが難しいのである。

主人公はファンダメンタル分析は苦手で、基本はチャート分析らしい。チャート分析は、当然過去の流れであり、100%あてにはならない。よって否定する専門家もいるが、著者はその欠点を熟知しつつも否定しない。このスタンスも参考になる。そんな主人公は、証券会社に入社して黒板書きをし、チャートを書いた経験が後々役立ったと語っている。このころの経験談はなかなか面白い。

投資の神様ともいうべきウォーレン・バフェットのことは主人公も崇めている。
「政治的、経済的不安がピークに達した時に買った株が最高の買い物になったことが多い」
「知らないもの、理解できないものを扱っている会社の株は買わない」
バフェットのそんな言葉を紹介しつつ、「辛苦を重ねた天才の前では、凡才の努力家は謙虚でいなくてはならない」と語る。

相場には4つの局面があるとする。「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」であるが、しかし実際に今がどの局面なのか、この本を読んだだけではわからないと思う。そして投資家として大事にしているのは、「積極性」だとする。90%の投資家が損をする世界。ミシガン大学消費者信頼感指数をウォッチし、黄金分割比率(61.8%)を参考とし、「生半可な情報を頼りに株式投資などするな」と戒める。「投資家にとって一番大事なのは、情報を求めることではなく、成長株をタイミングを捉えて売買を繰り返すこと」と語る部分は、自分の考えを補強してくれる。

「日銀が金利を下げたところでいきなり景気が良くなるわけではない。ただそれは金融相場の前触れ。金利が挙げられるのは景気がいいからであり、その後株価は下落する」という株価の基本公式はわかりやすい。日銀短観は外国人投資家にとって何より信頼感が高いという話はなるほど。投資家にとって、下落を予測することは成長株を見つけるより難しいという説明も得るところは大きい。

売りシグナルを読み取ることは、主人公のような専門家でもほとんど不可能だそうである。いわんや私などであろうことは、それなりに参考になる。CDSの急騰は株価下落のシグナルなどは、頭の片隅に置いておきたい。そして最後の言葉が印象的。
「株はむつかしいと言う前に難しさを克服する努力を続ける。40年前も今も私はそうやって投資家を生き抜いている」

大いに参考にしつつ、そろそろ私も投資を復活させようかと言う気にさせてくれた一冊である・・・



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2017年03月23日

【雪煙チェイス】東野圭吾



東野圭吾の新作であるが、タイトルをみれば「スキー(スノボー)関係」だとわかる。そういえば、過去にも『カッコウの卵は誰のもの』『白銀ジャック』があったなと思っていたら、読み進むうちにこれは『白銀ジャック』の続編なのかと思うようになる。というのも、登場人物の名前が同じだからである。

冒頭、新月高原スキー場(『白銀ジャック』で舞台となったスキー場である)で主人公の脇坂竜実がスノーボードを楽しんでいる。そして一人の女性ボーダーの写真を撮ってあげる。これがのちに竜実のアリバイになるための重要な出来事になる。もちろん、この時点では本人も知る由も無い。ただ、その美人ボーダーを誘い損なったことを後悔するだけである。

東京に戻った竜実。しかしその頃、かつて犬の散歩のアルバイトをしていた家の主人が殺されているのが発見される。実はその前日、現地を訪ねていた竜実は近所の人に目撃されており、しかも隠し鍵に指紋が残っていたことから、重要参考人としてマークされる。友人からその事実を知らされた竜実は、法学部の友人波川のアドバイスで警察に出頭するよりアリバイを証明してくれる女性を探すことを選ぶ。

わずかな手掛かりから、里沢温泉スキー場へと向かう二人。一方、所轄署の刑事小杉は、同僚の白井とともに竜実ら二人のあとを追う。事件は殺人事件であり、警視庁捜査一課が捜査本部を設置して捜査をすることになるが、捜査一課の同期課長を出し抜きたいと考えた所轄の刑事課長が密かに小杉たちを動かす。警視庁と所轄の手柄の奪い合いが水面下で進行する。

そして舞台は、里沢温泉スキー場へと移動するが、ここでは町をあげてスキー場ウエディングの準備が進んでいる。そこでパトロール隊の隊長をしているのが、根津昇平。『白銀ジャック』に出てきた根津と同一人物なのだろうと思うが、長岡慎太、成宮莉央、成宮葉月、瀬利千晶と言った面々が絡んでくる。

迫り来る警察の捜査網、アリバイを証明してくれる「女神」を探し求める竜実と波川。その展開がスリリングである。例によって電車の中で読んでいたら乗り過ごしてしまった。後半では、自らを駒と諦めて命じられるままに動いていた小杉刑事が、刑事としての本来の職務に目覚める。後味の良さもある物語。最後まで一気に読んでしまった。

相変わらず、ハズレのない東野圭吾作品。読まないのは損失だと言い切れる作家らしい作品である・・・



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