2017年08月17日

【ノルウェイの森】村上春樹



いつか読んでみようと思っている小説はいろいろあるが、その中でも割と高いランクに位置していたのがこの小説。村上春樹の小説はいずれも人気が高く、つい最近も新作『騎士団長殺し』が発売されたり、ノーヘル賞のたびに受賞が期待されたりしている。しかし、個人的に何冊か読んだが(『1Q84』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』)、どれもピンと来るものがなく、したがって新刊にも食指が動かないでいる。ただ、この作品だけは、映画で観た時から、原作を読もうと決めていたこともあり、今回手にした次第。

物語は、37歳の主人公ワタナベが、ドイツに到着した時に機内に流れていたビートルズの「ノルウェイの森」を聞き、18年前を思い出す形で始まる。その18年前、ワタナベは東京で寮生活を送りながら私大に通っていた。高校時代、親友のキヅキとその恋人直子と楽しく遊んでいたが、ある日キズキが突然自殺してしまう。逃げるようにして出てきた東京で、その時、ワタナベは直子と再会する。

以来、ワタナベは毎週直子と会い、奇妙な散歩を重ねる。そしてある日、ワタナベは直子と寝る。てっきりキズキともそう言う関係であったと思っていたワタナベは、直子が初めてだったことに驚く。そして直子は突然ワタナベの前から姿を消し、京都の療養所に入ってしまう。ストーリーは映画と(当たり前だが)同じ。ただ、小説は描写が細かい。友人も少なく、本を読んで過ごすことが多いワタナベ。寮の同室のちょっと変わった男、突撃隊。ナンパが得意な先輩永沢。途中から登場する奔放な女の子緑。小説ならではか、みんな特徴を持って描かれる。

ワタナベは、よく本を読む。読んでいる本は、「グレイト・ギャツビー(『華麗なるギャツビー』)だったりする。当時流行っていたビートルズも当然、BGMとして流れる。療養所で直子は同室のレイコさんがギターで弾くビートルズが好きで、特に「ノルウェイの森」はお気に入り。それで冒頭、ワタナベは「ノルウェイの森」を聞いて直子を思い出す訳である。よく知っているだけに、読みながら頭の中で「ノルウェイの森」が流れる。

ビートルズの「ノルウェイの森」の歌詞は不思議な内容だ。この本の物語も歌の歌詞の雰囲気を醸し出しているような感じがする。誰もが過去に対して抱いているノスタルジーというものがある。この物語全編にわたって流れているのもそんなノスタルジー感と言える。次第次第にワタナベの経験が己のものになって行くような感じがして来る。なぜ、18年経ってもワタナベの胸に思い出が蘇ってきたのか、読み終えるとそれがよくわかる。

これまで読んだ『1Q84』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅』とはまったく別物の物語。これを最初に読んでいたら、間違いなく村上春樹のファンになっていたと思う。映画の方ももう一度見て観たくなったくらいである。本を読む幸せ感を味わえる本であると言える。

深い読後感を得られた一冊である・・・



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2017年08月15日

【世界標準の子育て】船津徹



第1章 「世界標準」の子育て 3つの条件
第2章 海外の子育て、日本の子育て
第3章 日本人の子育て7つの間違い
第4章 「自信」を育てる3つのステージ
第5章 「考える力」を育てる3つのステージ
第6章 「コミュニケーション力」を育てる3つのステージ
第7章 子育ての「壁」への対処法

子育ては、今の自分にとって関心の高い分野の1つ。そそられるタイトルがあれば、自然と手が伸びるというもの。著者はハワイで「TLC for Kids」というスクールを運営している方のようである。長年、子供の教育に携わり、多くの実績を出されているとのことである。様々な国の教育方法を日本人向けにアレンジした「ハイブリッド式」の子育てを紹介するのが本書ということである。

タイトルにある「世界標準の子育て」とは、@「自信」A「考える力」B「コミュニケーション力」という3つの能力を伸ばす子育てだという。AとBはまさに自分が日頃から大事だと思っていることなので、俄然興味をそそられる。まずはその「自信」だが、子育ての90%は「自信」を育てられるかだとする。過干渉は子供から自信を奪い、人前で叱るとプライドを傷つけるのは大人と同じ。なるほどと思う。

「褒める」ことはあちこちで賞賛されているが、よくあるように「我慢できて偉いね」はダメだという。それは単に従順を促すだけで、褒める時は「良い部分を具体的に」が基本。
「人に迷惑をかけるな」というのは、当たり前のように思えるが、自尊心の低い子になるという。周りの目を気にし過ぎる子育ては自尊感情を潰すというが、このあたりはよく考えてみたいところである。

・親のイライラは子供に伝播する
・しつけをする時は結論だけではなく理由を説明する
・急き立て言葉(早くしなさい!)でプレッシャーに弱い子になる
・「兄弟平等」は上の子にとって不平等
・身内への悪口を聞いた子供は人を馬鹿にする
・子育てにおいては「結果主義」ではなく「努力主義」
・継続が大事
・男の子はおだてて育てる、女の子は手本を示して育てる
なかなか唸る言葉が並ぶ。

「自分で考える力」を育てるには、9歳までは多読、10歳からはノンフィクションを増やし、親子で興味を持ちそうな記事について議論するといいという。これは是非とも意識したい。いい親子関係を築くには5つのルールがある。
1. 子供に話をさせようとせず自分から話題を振る
2. 子供が話題に乗って来たら見逃さずに話題を広げる
3. 話を遮ったり、急かしたり、否定したりせずに最後まで聞く
4. 上から目線で話をしない(馬鹿にしない、説教しない)
5. 話をしやすい環境を作る(車の中や食事中などリラックスした雰囲気で話を振る)
これは意識してみたい。

・思春期の犯行は大人へのステップ。放っておくのが一番
・ティーンエイジャーを暇にしてはいけない
・親が子供と一緒のことをする時間を持つ
・指示、命令、小言、説教をやめて人間同士のコミュニケーションを心掛ける
・子供の強みや好きなことを見つけて親が応援する
・選択に迷っている時は、難しい道をアドバイス
さすがに専門家だけあって、一つ一つがなるほどと思わされる。

中身は子供の年齢に応じたものになっていて、我が家の小学校6年と高校生の子供を意識して読み進める。もう過ぎてしまった年齢の部分は、「もっと早く言ってよ〜」と思ったりすることもあるし、「自分はできていた」と得意に思うこともある。そしてまさに我が子の年齢該当部分は自然と身を乗り出すことになる。いろいろと親としての意見はあると思うが、こういう本を一読しておくのも無駄ではない。

まだまだ我が子に当てはまる部分は、大いに参考にしたいと思わされる一冊である・・・



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2017年08月09日

【中原圭介の経済はこう動く2017版】中原圭介



第1章 【米国経済編】世界経済の牽引役の好調は、いつまで続くのか
第2章 【欧州経済編】経済の長期停滞で、EU分裂は進むのか
第3章 【中国経済編】中国経済の減速は、あと何年続くのか
第4章 【日本経済編】円高は続くのか、株安は止まるのか

昨年、『中原圭介の経済はこう動く2016版』を読んだが、当然今年も読まなければならない。こういう本はシリーズとして継続して読んでいきたいと思うところである。冒頭で、著者は世界経済を2000年で一区切りし、これ以前を「プレ・グローバル経済」と呼び、以後の「グローバル経済」と一線を画していると語る。中国の資本主義社会参入のインパクトをそう捉える見方は面白い。

構成は『2016版』と同じ。最初の米国経済では、クリントン大統領誕生を予測していたが、これは見事に外れる。しかし、それ以外は概ね当たっていた。米国経済の低成長を経済学会は批判するが、著者からすれば平均成長率2%は十分評価できるという。ビジネスルールの前提も変わりば、経済の中身も変わるので、20〜30年前と同じ見方をいつまでもするべきでないという。

そんな米国経済は、原油安の恩恵を受けて好調だとする。米国の家計はガソリン価格の影響を大きく受けるため、これが消費を刺激し、旺盛な消費が海外からの輸入を促進し、世界経済を牽引するとする。原油安に加えて低金利が自動車販売の好調に繋がり、これに金融緩和で溢れたマネーが住宅販売を押し上げる。しかし、これも長くは続かず、2018年には景気後退に陥る可能性が高いと指摘する。

欧州は、英国のEU離脱についての説明がわかりやすい。英国自身に一体どんな影響があるのか。移民排斥からEU離脱を選んだ英国だが、実は移民は経済にはプラスなのだという。英国人より真面目に働き、税金・医療費・教育費などは受けた恩恵以上に払っており、「仕事を奪われる」のは幻想らしい。離脱がいかに英国経済にデメリットをもたらすかという解説はわかりやすい。メイ首相は離脱撤回の方向を探るだろうとする。この章は予測よりもむしろこうした解説が勉強になる。

中国の経済成長は、実質のところ3%だとする。経済の牽引役となっている自動車販売は、「エコカー補助金」「小型車減税」「値引き競争」によって作られているもので、特に「エコカー補助金」は生産台数に対して支給されるため、不正の温床になっているとか。「供給過剰」「不動産バブル」「過剰な地方債務問題」「同民間債務問題」を抱え、実に危ういのだとか。このあたりも実に勉強になる。

日本については、アベノミクス批判は一貫していて変わらない。円安による企業収益の増加は、実質賃金が下がっており、国内消費は冷え込むとする。世界経済が減速する中、円安だけでは企業収益は伸びず、中小企業の労働分配率は限界に達していてトリクルダウンも起こらないと断定する。相変わらず素人でもわかりやすい説明で、納得である。

実質賃金の調査に、従業員5人未満の零細企業は含まれておらず、一番大事な部分が抜けていているゆえに指標としての正当性に疑問が残ると指摘する。インフレ期待の政策は、「物価が上がれば景気は上向く」ことを想定するが、物価が上がることによって経済が成長するのではなく、経済が成長するから物価が上がるのだとする。Jカーブ効果も、いかにそれが机上の空論かと説明してくれてわかりやすい。

最近は、有効求人倍率が上昇しており、私もこれは経済が上向いている証拠だと思っていたが、実は生産人口の減少によるものだとキッパリ! 既にアベノミクスの理論的支柱だったクルーグマン教授自身も自身の過ちを認めているという。倒産件数の減少も一方で増加している休廃業件数とセットで考えないと実態を見失うとする。相続税対策と低金利で供給過多の集合住宅の供給がさらに増えるという指摘は、自分の仕事に直結する問題。

ドル円相場については、いくらが適切かはその時々で判断すべきとする。今は95円から105円が適正だと著者は主張する。エコノミストが米国の利上げすなわち円安だとするが、そういう見方ではなく、「購買力平価」で長期的な流れを見ないとダメだとする。著者はそれであえて円高を主張する。こういう意見とその根拠は、非常に勉強になる。

予測が当たるか当たらないかも大事かもしれないが、なぜそう考えるのかも重要。その際、従来の考え方にとらわれることなく、様々な要因を分析しなければダメだとする。素人にはとても無理だが、著者の本を読み、その意見を知ることでカバーしていきたいと思う。これからも著者の書籍等は見逃す事のできないものである。

本書の意見を実体経済でフォローしてみたいと思う一冊である・・・




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2017年08月05日

【宝くじで1億円当たった人の末路】鈴木信行



第1章 やらかした人の末路
第2章 孤独な人の末路
第3章 逃げた人の末路
第4章 変わった人の末路
第5章 怠惰な人の末路
第6章 時代遅れな企業の末路
第7章 仕事人間の末路

「看板に偽りあり」というのは、得てして存在するものであるが、本の世界では記憶にある限りこれほどのものはあっただろうかという酷いもの。タイトルと内容とが全くマッチしない、そういう意味ではお粗末なのではあるが、それでもタイトルに目を瞑れば、なんとか読むに耐えるという一冊。

普通、こういうタイトルを見たら、「宝くじで1億円当たったが、大金に我を忘れて悲惨な末路を迎えた人たちのリポート」というイメージを持つだろう。取材に基づいた様々な人たちが登場し、そういう人たちの末路を見ながら、「当たらなくてよかった」とか「自分はそうならないぞ」とか思ったりするものだろう。ところが、さにあらず。冒頭から見事裏切ってくれる。

「第1章やらかした人の末路」と称し、冒頭から「宝くじで1億円当たった人の末路」が出てくる。ところが登場するのは、「マネーの専門家」と称する方で、この方が「一家離散、貧困化、人生の目的喪失などにならないようにするにはどうしたら良いか」を語っておしまい。
「はぁ???」と思わず本を落としそうになる。そんなことならわざわざ専門家に聞かなくても、ちょっと考えればわかるだろうというもの。そんなものを期待したのではない。

そして「事故物件を借りちゃった人の末路」だとか「キラキラネームの人の末路」とか、題は面白そうなのだが、いずれも専門家が出てきてありきたりのない説明をして終わりというパターンが続く。実在の人物など1人も出てこない。さらに、「友達ゼロの人の末路」では「心配いらない、友達は無理に作るものではない」と結ばれて終わったり、「子供を作らなかった人の末路」では、「子供がいない幸せを楽しめば良い」と誰が答えても答えられるような内容に終始。途中で何度も読むのをやめようと思うほど酷い内容。

それでも、ついでだからもっと粗探ししようと思って読んでいくと、柔軟法の真向法協会とか、武蔵小山商店街のクリーニング店「クリンハウス」とか、ちょっと知って良かったかもという例があって、それが唯一の収穫といえば収穫である(もちろん、それらが何で「末路」なのかはよくわからない)。あとは論ずるに値しない。

「末路」とは、「なれの果て」というマイナスのイメージがある。その言葉をキーワードとして使うのなら、そういう内容にするべきであろう。ただただ、無理やり「末路」にこじつけているだけで、お粗末の一言である。先のイメージでこの本を買った人は、詐欺だと思うだろう。
読むなとは言わないが、「看板に偽りあり」ということを理解した上で、さらに得るものは少ないと覚悟してから読むべき一冊である・・・


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2017年08月04日

【「自分らしさ」はいらない くらしと仕事、成功のレッスン】松浦弥太郎



CHAPTER 1 ようこそ!「心で考える」へ
CHAPTER 2 「心を動かす」のは、仕事のきほん
CHAPTER 3 「心をつかう」のは、くらしのきほん
CHAPTER 4 「心」と「頭」のバランスのとり方

著者は、「くらしのきほん」主宰でエッセイスト。元は「暮らしの手帖」の編集長を務めていた方だという。そんな方が、我々に肩の力を抜いて生きることを語った一冊。

タイトルにある「自分らしさ」であるが、著者はその考え方が既に「美しい呪縛みたいなもので、必要以上に人を力ませる」と説く。それゆえに、「何かを始めたいなら、『自分らしさ』など捨てた方がいい」というのが著者のこの本における主張である。

「自分らしさを捨てる」ことのほかに、著者がこの本でもう1つ強調しているのが、「心で考える」こと。これを頭で考えることとは区別している。
・心には限界がなく、心で考えれば自分の枠を超えられる
・(年齢に関係なく)これから何かやりたいなら、心で考えるスイッチを入れる
・正しい道を選びたいなら、意図的に「心で考えて」意思決定をする
・3つのエンジン「感受性」「想像力」「愛情」で心は働く
等々、「心で考える」ことを説く。

「自分らしさ」については、これを捨てろと著者は説く。それが「自分らしさはいらない」の意味。「自分らしさ」を捨てれば、心が解放されて伸びやかに心で考えられるようになる。「自分らしさ」を捨てると時代とともに変化できる。自分自身に執着しないということなのだろう。「自分の意見を変えることは勇気がいるが、自分をアップデートする近道」という言葉に思わず考えさせられる。

・心の働かせ方を学ぶ最良の道は人とのコミュニケーション
・人は「心で考えてつくられたもの」に時間とお金を使う
・最高のマーケティングとは、自分に関係ないものは何もないという意識で日々を過ごすこと
・心で考え、最高と最悪の結末を想定しておけば、失敗しても心が折れずにいられる
これらは、仕事でのヒントになる。

幸せを感じたいなら次の4つを目指すべきとする。
1. 役に立つこと
2. 褒められること
3. 必要とされること
4. 愛されること
まさにその通りだと思う。

力を抜いて読むといいことが次々と書かれている。まさに「自分らしさ」を捨てて読むということだろうかと思ってもみる。ビジネスでも日常生活でも、周囲と対立することなく、柔らかく生きていくことができそうなヒントの数々である。著者の人柄もなんとなく伝わってくる。

自分にとっては、「自分らしさはいらない」というところよりも、「くらしと仕事、成功のレッスン」というサブタイトルの方がしっくりきた一冊である・・・



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2017年08月02日

【GRIT−平凡でも一流になれる「やり抜く力」−】リンダ・キャプラン・セイラー/ロビン・コヴァル



原題: Grit to Great
How Perseverance, Passion, and Pluck Take You from Ordinary to Extraordinary

第1章 なぜ「グリット」が必要なのか
第2章 「才能」という神話
第3章 夢を捨て去れ
第4章 安全ネットなしで
第5章 ウェイトトレーニング=待つトレーニング
第6章 竹のようにしなやかに
第7章 期限は無限
第8章 グリットは善をめざす

つい最近、『やり抜く力−人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける−』という本を読んだが、この本はまた別の「グリット」本。前書が「グリット」研究の第一人者である研究者の手によるものであったが、この本はキャプラン・セイラーグループという広告代理店の創業者2人によるもの。同じような本を読むのはどうかと思ったが、この著者の2人は、かつて読んだ『ナイスの法則』の共同著者と知って俄然読んでみる気になったというもの。

さて、その肝心の中身であるが、「グリットとは、人生で成功を収めるために必要なもの」という定義はだいたい同じ。それは全盛期にもてはやされた言葉であり、それが今復活しているのは、我々が軟弱になっているからと指摘する。そう言えば、我が国でも「為せば成る」という言葉があるが、真理というものはいつの世も同じなのかもしれない。

そんなGRITの4つの要素は、
1. 度胸:Guts
2. 復元力:Resilience
3. 自発心:Initiative
4. 執念:Tenancity
だとする。そしてその利点は、「自分でコントロールできる」ことだという。

そうした定義的なところはともかくとして、それに続くのは具体例。そのあたり『やり抜く力−人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける−』とはちょっとテイストが異なる。この具体的な事例があるおかげで、グリットの実像がわかって来る。

発達障害が残る可能性が指摘されて生まれた女の子の母は、その子の忍耐と粘り強さを讃え、修士号を取得するまでに至らしめる。
ウェンディーズの創業者デイブ・トーマスは悲惨な幼年時代を送ったにもかかわらずウェンデーズの成功を獲得した。

ジェイムズ・パターソンは、諦めずに作品を書き続け、ベストセラー「スパイダー」を書き上げる。
マリン・オールソップは、男性の世界であったオーケストラの世界に果敢に挑戦し、初の女性指揮者となる。
チェスのファビアーノ・カルアーナ、グランドキャニオンで綱渡りに挑戦したニック・ワレンダ。そうした人々の具体例は読み物としても面白い。

・思い切って跳ぶ
・情熱を忍耐に変える
・小さな勝利を祝福する
・前向きに失敗する
グリッドに年齢は関係なく、逆に「歳相応に振る舞う(自分は歳だからと言い訳する)」ことを戒める。

『やり抜く力−人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける−』の著者アンジェラ・ダックワースにも言及していて、これはこれでグリットの具体例を学べるようになっている(でも結局は【為せば成る】なのである)。同じグリット本でもテイストが異なり、重複感は感じられない。これはこれで受け入れたいところ。

とどのつまり、古から大事な真理はそう変わらないものだと言える。そうであるなら、自分もその力を発揮しなければと思う。自分もかくありたいと思わされる一冊である・・・



posted by HH at 00:00| Comment(0) | 有川浩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月31日

【隷属なき道−AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働−】ルトガー・ブレグマン



原題: UTOPIA FOR REALISTS And How We Can Get There

第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?
第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい
第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる
第4章 ニクソンの大いなる撤退
第5章 GDPの大いなる詐術
第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代
第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば
第8章 AIとの競争には勝てない
第9章 国境を開くことで富は増大する
第10章 真実を見抜く一人の声が、集団の幻想を覚ます
終 章 「負け犬の社会主義者」が忘れていること

著者はオランダ出身の歴史家、ジャーナリスト。本国オランダでベストセラーになり、英語版は自費出版で火がついたというこの本。それほど深い興味を持っていたわけではなく手に取ったのだが、その内容に驚かされることになった一冊である。

現代は、人類史上最も豊かな社会であるという。1820年には世界人口の80%が極めて貧しい生活を送っていたが、現代ではそれは10%。オランダにおいては、公的補助を受けているホームレスの生活費は1950年の平均的なオランダ人より多いのだとか。世界的には、空腹に悩む人より肥満に悩む人の方が多いという指摘は、確かにその通りなのだろう。一方で、うつ病が10代の若者の最大問題で、2030年には世界の病気の第一位になるという指摘には愕然とさせられる。

そんな現代社会において、著者はこの世界を救う方法として、
1. ベーシックインカム
2. 1日3時間労働(週15時間労働)
3. 国境線の解放
を提案している。

ベーシックインカムとは、基本的な給付金のこと。わかりやすい事例として、イギリスでホームレスに3,000ポンドの現金を支給する実験をしたことを例示する。その実験の結果、対象の13人のうち9人が一年後には屋根のある生活を送り、あるいはその見込みが立つようになり、全員が生活改善へと向かったという。ホームレス対策にお金をかけるより、現金を渡す方が少なく、かつ効果的だという。なかなか我々の常識ではすぐに納得できそうもない内容である。

しかし、同様の実験はケニアやウガンダなど各地で行われてそれぞれ効果を見せているという。それらの実験では、フリーマネーをもらった人たちが買わなかった一群の商品は、なんとアルコールとタバコだったという。日本で言えば、生活保護の代わりに現金を渡せということになるのだろうが、本当に上手くいくのだろうかと疑問を禁じ得ない。

また、日本でもカジノの議論があるが、これもアメリカのノースカロライナ州でチェロキー族の土地に作られた例が紹介されていて興味深い。日本と同様、カジノを建設すれば犯罪の温床になったりギャンブルで身を持ち崩したりということが危惧されていたが、オープンしてみればカジノ効果で学校、病院、消防署が新設され、チェロキー族の人々も収入が4倍になったという。日本の共産党の人はこの事実に対し何ていうだろう。

また「ハウジングファースト」というホームレスに住宅を供給する試みも興味深い。ヨーロッパでは空き家がホームレスの2倍、アメリカでは5倍あるといい、ユタ州ではこれでホームレスが74%減り、オランダでもホームレス対策費の2〜3倍の効果があったという。自分の先入観を一旦クリアしないといけないのかもしれない。

「1日3時間労働」は、夢のような話だと思ったが、実は労働時間が増えて経済成長がもたらされても、一定限度を超えるとそれは借金をベースとした消費に向かい、その結果それを賄うために働かなければならなくなっているという悪循環が説明される。つまり、働く時間を減らしても今の生活は維持できるのだという。これもにわかには信じ難い。

さらに国境線の解放は労働者の自由な移動をもたらし、その結果、全世界で65兆ドルの富が増えるという。移民に対し保守的なわが国では、気を失う人が大勢出そうな意見である。しかし、移民は仕事を奪うことなく、逆に増やすものであり(イスを持ってイス取りゲームに参加してくるという言い回しがなされる)、安い労働力のせいで賃金が下がるという意見には、そうしなくても結局企業は製造拠点を安い海外に移すことで国内の賃金を下げてしまっていると説明する。

その他、銀行員や会計士など、「富を移転する」だけで有形の形を生み出さない人が高給を得ている現状を批判する。銀行が1ドル儲けてるとどこかで60セントの損失が発生するが、研究者が1ドル儲けるとそれは5ドル以上の経済効果を世にもたらすといる。アイルランドでは半年間銀行がストライキをしても影響はなかったが、NYでは清掃員が10日間ストライキをしたら大混乱になったとし、「富を生み出す」人を重視せよと説く。

目から鱗の意見の連続で、大いなる刺激を受けた。この内容の是非はともかくとして、自分の常識に凝り固まってはダメだと思うし、ここに書かれていることがわが国でも当てはまるのかどうか大いに興味をそそられた。是非ともトライしてみてはと思うところである。
手にした時は、特に期待もしていなかったが、久々に刺激を受けた一冊。こういう本は読んでおきたいと素直に思わされる一冊である・・・



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2017年07月28日

【ダメなときほど「言葉」を磨こう】萩本欽一



第1章 どんな逆境も言葉の力で切り抜けられる
第2章 子育てこそ言葉が命
第3章 辛い経験が優しい言葉を育む
第4章 仕事がうまくいくかは言葉次第!
第5章 言葉を大切にしない社会には大きな災いがやって来る
第6章 言葉の選び方で人生の終着点は大きく変わる

欽ちゃんの本はすでに2冊読んでいる(『負けるが勝ち、勝ち、勝ち! 「運のいい人」になる絶対法則』『ダメなやつほどダメじゃない』萩本欽一))。いずれも読んで共感できる部分が多く、また今まで知らなかった欽ちゃんの人柄に触れるところもあり、そのテイストが気に入っていたため、改めてもう一冊と手を出した次第。

前2冊が、「運」を1つのキーワードとしていたのに対し、この本は欽ちゃんが「運」だけでなくもうひとつ大切にしてきたものとしての「言葉」にスポットライトを当てている。「良い言葉には幸運を手繰り寄せたり人生を好転させる力がある」とするが、自分自身、小学生の頃から名言の類をメモってきた経緯もあって、素直に頷ける部分である。そして冒頭から良い言葉が並ぶ。

「人を説得したいときはあえて一歩引く言葉を」
会社で議論することの多い私としては、「はっ」とさせられる言葉である。力づくで説得しようと言葉を尽くしても、人はなかなか説得できないものである。
「迷ったら『遠い』と『辛い』を選ぶ」
物理的な距離や心理的なハードルがあったり、ちょっと大変かなという方を選ぶとするが、これはなかなか大変であるが、その通りなのだろうことは間違いないと思う。

「苦労は工労と思え」
これはモノは考えようの良い例だと思う。
「オンリーワンより少ない中でナンバーワンになる」
大企業から中小企業に転身した自分としては、痛いくらいに共感できる言葉である。

「不幸な出来事を不幸な言葉で語らない」
「喜びは短く、悲しみも短く」
「決められたことをより少しだけ多くやるのが『努力』」
「交渉事は自分の利益より相手の気分が良くなる言葉を」
短いながらも、実に含蓄のある言葉が続く。

一言ではないが、オリンピックについての意見には考えさせられるものがあった。
「オリンピックで大事なことって、そもそも競技を楽しむこと。それを経済効果とか復興アピールとかいろいろなものと関連付けて本来の精神を忘れている気がする」
言われてみればその通り。こういう感覚というのは自分自身もしっかり持ちたいと思う。

「みんなが右を向いていたら左を向こう。だってみんなが集まっているところには運がない」
アマノジャッキーな私としては、当然左を向くが、それを「運」という考え方を理由にしているのは欽ちゃんらしい。
「思考が言葉を変えるように、言葉もまた思考や行動を変えて行く」
まさにその通りだと思う。

過去読んだ2冊と同様、この本にも欽ちゃんならではの優しさが溢れている。読んでいて勇気付けられること、しばしばである。やはり言葉って大事だと改めて思う。
そう認識するとともに、「欽ちゃん本」にますます惹かれて行くところがある。まだまだ読んでいない本もあるし、次のを早く手にしたいと思わされる一冊である・・・



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2017年07月22日

【テクノロジー4.0「つながり」から生まれる新しいビジネスモデル】大前研一



第1章 「テクノロジー4.0」とは何か
第2章 「FinTech」で信用の概念が変わる
第3章 「位置情報ビジネス」が60兆円市場になる理由
第4章 「IoT」で生き残る企業、滅びゆく企業

定期的に手に取っている大前研一の本をまた一冊。「テクノロジー4.0」というのは耳慣れない言葉だが、避けていてはビジネス界でついていけなくなるというもの。興味深くページをめくる。「テクノロジー4.0」とは、産業革命から現代に至る経済界の大変動を表した言葉。その流れは以下の通り。

テクノロジー1.0 産業革命
テクノロジー2.0 大量生産
テクノロジー3.0 通信・インターネット時代の幕開け
そしてテクノロジー4.0とは、インターネットの次に来るテクノロジーの革命だそうである。

テクノロジー4.0が生まれた背景にある要素は以下の4つ。
1. リアル(実体)経済
2. ボーダレス経済
3. インターネットによる見えない大陸
4. マルチプル経済の理論がイノベーションを加速
そして、「スマートフォン・セントリック」と呼ばれるスマホがあらゆるテクノロジーの媒介役として機能する流れが起こっているとする。

今の政府は、「デフレは悪」としているが、中原圭介氏と同様、大前研一氏も「デフレは世界最適化のブロセス」と肯定的に捉える。これからのビジネスマンにとって必要なのは、「ビッグデータ」「ドローン」「FinTech」「AI」「Uber」等々、それぞれのテクノロジーのつながりを俯瞰する視点だとする。ボォーとしていてはいけないのは、言われるまでもない。

テクノロジーは、先進国より途上国の方が浸透しやすいという。固定電話が行き渡る前にスマホが普及してしまった例を採り上げた説明にはなるほどと思わされる。ブロックチェーンに代表されるFinTechが今や国家や金融機関に変わって信用を提供するという意見は、いろいろ見聞きしている通りである。

資産運用も、高い手数料を取られる人間によるよりも、手数料の安いAIに取って代わられるとする。すでに2016年にはこれで770億ドルが運用されていて、2020年には1.6兆ドルになると予測されているのので、絵空事ではない。「今ここにいるあなた」を狙った「ポイントキャスティング」を始めとする位置情報ビジネスの加速も興味深い。それらは建機の車両管理サービス、Amazonの倉庫を走るロボット、ゴルフ場の芝刈りロボット等々拡大している。

一方、そうしたテクノロジーの進歩に対し、「個人情報」「ロケハラ」「プライバシー」の3つの問題も起こって来るリスクがあるとする。IoTで全てがインターネットにつながる時代は、そうしたリスクを孕みつつも期待が持てると思う。特にアメリカのサクラメントで行われたという試みに興味を持った。それは原発に反対した住民に対し、それなら原子炉なしで電力を賄うべく、街全体で30%の省エネを実現するために協力せよとして行われたものだという。この取り組みにおいて、全家庭と連携してこれを実現してしまったというもの。そのまま日本に当てはめられるかどうかはわからないが、IoTにより日本でも実現できる可能性は十分にあると思う。原発ありきではないのである。

世の中は目まぐるしく変化しており、現役世代としてはこの動きを理解し遅れずについていきたいと思う。この本を読むと、そうした変化の一例に溢れており、知らないものもかなりあった。世の中の変化のアップデートという意味では、一読の価値ある一冊。これからも大前研一氏の本には目を通していきたいと改めて思わされる一冊である・・・


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2017年07月21日

【いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則】秀島史香



第1章 「話すとなぜか気持ちいい」人たちが心がけていること
第2章 「明日あの人に会う」ときに私がしていること
第3章 どんな想定外でも大丈夫!緊急事態にも揺るがない「切り返し」の方法
第4章 「また会いたい」と言われる人に共通すること
第5章 もう困らない!一生使える話題の拾い方・見つけ方

著者はラジオDJ。もうキャリア20年以上の大ベテランであるらしいが、私はこれまでまったく知らなかった方である。その道で苦労を重ねてきた人の言葉には重みを感じるが、もともと「人見知りで、人と会うのが不安でしょうがなくて、アガリ症」とおよそDJにはふさわしくないような著者が、それでも20年以上キャリアを続けられてきたのは、それこそ本一冊書けるくらいの苦労があったのであろう。そんなところに何かを探して手にした一冊。

まず、人といい関係を作るには、「いかに相手と自分にとって『いい空気を作るか』」だとする。
「初対面の相手にも受け入れてもらえる空気の整え方」
「心の距離を縮める空気の温め方」
「緊張する自分を落ち着かせるための空気の緩め方」
「苦手な相手にも対応できる空気のまとい方」
そんな空気を作る方法を42の法則にまとめてある。

まず相手といい空気を作るのに大切なのは、アイコンタクト。やわらかい気持ちで目と目を合わせるのは、お互いに「よろしく」の意思表示。最も効果的なアイスブレイクは視線・笑顔と語るが、確かにそうだと思う。著者は、写真で見る限り美人だからそれもあるかもしれないが、男でもある程度は通用することではないかと思う。

「顔を合わせたら、一番に相手の『いいね!』を探す」とし、例えば「髪切った?」と言うことでもいいとしている。だが、職場だとセクハラの懸念もあり、このあたりは男としては難しい。
「共通点が見つからない相手には、全面的に教えてもらう」としているが、これはなかなか参考になる。自分としてもしばし経験することだからであるが、今度使ってみたいと思う。

セールストークでは、「自分が持っている専門知識の中から相手が喜びそうなものを探す。相手にとって有益な情報はなんだろうかと考える」とする。これは仕事で使えそうである。と言うか、無意識のうちにできているかもしれないと思ってみたりする。
「会話の中で相手の名前を呼ぶ」は、あちこちで語られているテクニックだが、やはり有効だと言うことだろう。

「ギクシャクしたらまずは相手のペースに時間感覚を合わせてみる」
「悪意を向けてくる相手には無理せず心に『防水加工』」
「失言をしてしまった時は、逃げないで言葉を尽くす」
相手との関係がうまくいかなさそうな時の対応も書かれていて、これはこれで参考になる。

「人と人の関係において重要なのはフェアであること」は、相手が子供であっても真摯に質問に答えていた宇宙飛行士の毛利さんを例に挙げて説明。確かにその通りだと思う。「誰が言ったか、ではなく何を言ったか」ここも自分としてはこだわりたい。
「話題は大皿料理、取り分け上手は愛される」は、まさにその通りだと思うが、自分にはなかなか難しい。

「雑談力を上げるには、トホホ体験」
やはり自分をネタにするのは、1番害のない話題提供だろう。
「好奇心があれば日常生活は話題満載のドラマ」
これは本当にそうなのだろう。要は、「そう言う目で世界を見ているか」なのだろう。とても参考になる。

やはり苦労して得てきたものというのは、迫力があると思う。みんなさらりと書かれてはいるが、自分には向いていないと思いつつも、DJになりたいからと頑張った著者の汗と涙の結晶がこの本には詰まっている。やはり人見知りで他人が苦手な自分としては、少しでも身に付けたいと思うことがたくさん出てくる。いくつかは、早速実践してみたいと思う。

今度、このかたのDJを聞いてみたいと密かに思う。
似たような性格の人には、一読の価値ある一冊である・・・



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